第2回『ショートショートのラストシーン』
どこから話をするべきか悩みます。
もしも、小説を書くコツを、ひとつだけ挙げるとしたら、迷わずに、物語のラストを一番最初に作ること、と答えます。
ゴールさえ決まっていれば、きっと小説は書き上げることが出来ますから。
でもね、ショートショートに限ってということならば、話は違います。
ショートショートの場合、”書き上げる”ことに対するハードルは、そこまであがりません。
ショートショートでの最難関は、落ちを用意することです。
落ちのアイディアがなければ始まらないけれど、物語のラストがあれば小説は書きあげられます、どちらも大切、うーむ。
やっぱり、先に、物語のラストについて、ほんのり軽く触れることにします。
終わらせるのは、始めるよりも難しいですから、その方がいくらか安心です。
とはいえ、あまり得意分野ではないんですよ。
説明できることは、ほんのちょっとです。
ショートショートは、他の小説とは、大きく違う点があります。
文字数です。
その分、ストーリーに、重きを置きません。
重視されるのは、シチュエーションです。
突飛な落ちを成立させるために、シチュエーションを整えることが、優先課題となります。
必要な伏線を洗い出し、それを成立させるシチュエーションが決まると、だいたいの話しの流れはできています。
この時点で、「落ち」が、「物語のラスト」を兼ねることが出来そうならば、それでOKです。
ところが、それだけでは、なんかいまいち物足りないな、と思ったとき、どうするのかで、面白いショートショートになるか、ならないかが決まります。
もうひとつ、アイディアを付け足してください。
ひとつのアイディアに固執せずに、潔く、もうひとつアイディアを付け足す、それがショートショートを面白くするための鉄則のひとつです。
付け足すアイディアには、色々なパターンがあります。
例えば、構成をいじって、物語の前半と後半を入れ替え、先に結果を書いてから、その理由をあきらかにする、それで急に面白くなることもあります。
そうした、付け足すアイディアのひとつが、「物語のラスト」です。
すでに「落ち」がひとつ存在していますので、「物語のラスト」は、そこまで高いハードルを求められはしません。
ぶっちゃけ、無難な終わり方でも、全然かまわないこともあります。
ただし、「落ち」のために張った伏線とは別に、あらためて「物語のラスト」のための伏線をしっかり張るのを忘れないで下さい。
ちなみに、うまくアイディアを付け足すことが出来なかったときには、お蔵入りさせて、ネタ帳で寝かせておきます。
いつか、シナジーの合うアイディアが生まれるまで。
そういう、お蔵入りしているアイディアを、たくさんストックしておくことが、ショートショートを書くためには必要不可欠なことです。
では、「物語のラスト」の書き方について、説明したいと思います。
小説には、いくつか、カッコイイ終わり方があります。
といっても、私の場合は、よく使うパターンがいくつかあって、それを使いまわしているだけなので、あまり多くは説明できないのですけれど。
①セリフで終わる。
物語の中で返事のないセリフは、読者への語りかけとなり、強く印象に残ります。
②答えの分かる疑問形で終わる。
質問の形で終わると、読者がその答えを考えてくれるので、余韻の残る終わり方にすることができます。
③含みのある終わり方をする。
はっきりとは言わないけれど、意味は分かるという終わり方で、②と同じ効果を持ちます。
④物語が終わった後の行動を宣言して終わる。
この先は、書かないけれど、次の始まりを書いておくと、これも余韻が残ります。
⑤読者の意識をひとつに向けて終わる。
そこまで、複数の可能性があったけれど、ひとつが選ばれたことを伝えて終わります。
これは、一人称の心の中で感想を述べたり、何かに注目が集まったりということで伝えます。
⑥繰り返してパターン化されている。
伏線として、あらかじめ何度か繰り返されている行為で終わります。
⑦固定されている。
登場人物が共通のシリーズ物などで、最後は、これ、と決まっています。
⑧ループする。
話が元に戻って終わります。
⑨種明かしをして終わる。
定番です。
⑩悲鳴で終わる。
「きゃあああ」というセリフで終わります。これは、本当にひどい目あっているわけではなくて、仲良く喧嘩している時の一種のポーズとして、コミカルな話の時につかいます。
直接的な描写はないのに、何が起ころうとしているのかと、登場人物の関係性が伝わります。
ここから先は、私自身は、あまり使いません。
⑪感情を表す仕草で終わる。
足を踏んづける、背中をつねる、凄みのある笑顔をみせる、などです。
私の場合、だいたい「きゃあああ」です。
腕を組むとか、好意を示すパターンもありますけどね。
⑫答えの分からない質問で終わる。
もやもやします。
⑬他の可能性がある事を示して終わる。
もやもやします。
⑭何か、象徴するものの描写で終わる。
立ち去った後に残された花束とか、ちょっと、おされ、です。
⑮第三者からの視点で終わる。
主人公がいなくなった後、残った人の視点になって終わるとかです。
他にもあれば、私にも教えてください。
読んだら、ちゃんとお代は、払ってくださいね。
お気に入りユーザーの登録、感想、お待ちしてます。
普段は、ショートショートでほのぼのコメディ集を連載しています。
ショートショートの実例がいっぱいありますので、良かったら見てください。
『月の音色』、『ほんのり、ほのぼのしてもらえたら嬉しいです』、『みどりの竜』です。