第23回『鍵かっこ』
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鍵かっこ。
登場人物が口に出して話している言葉であることを示す記号ですね。
ショートショートでは、時に、ギミックとして、この鍵かっこを使います。
『謎』
なぜか、僕の部屋から、長い髪の毛がみつかるのです。
もしも、その答えが見つからないと、なんだか恐ろしいことになる予感がします。
どうか、この謎の答えを教えてください。
「ほ、ほら、ねぇ見て、ネットの知恵袋で質問したから、きっと、この髪の毛にも理由があるに違いないよ、ねっ、ね。」
これは、鍵かっこを使う事で、描写はされていないけれど、話しかける相手、つまり、もう一人、傍に人がいることを表しています。
また、発言をしていないだけで、その場にはいたというのは、人数をごまかす叙述トリックとしても用いられる手法ですね。
鍵かっこを使ったギミックは、他にもあります。
鍵かっこがついていないという事は、口に出して話してはいない、という事なので、他の登場人物には伝わっておらず、読者にだけ伝わっているという、ズレを生じさせて、二重構造を作ることが出来ます。
例文を読んだ後で、もう一度、鍵かっこの中だけを読み直してみて下さい、また違う展開が生まれています。
『交差点』
交差点。
そこで人と人の道は交わる。
「ねえ、どうして私と友達になろうと思ったの?」
「君が、横断歩道の黒い部分だけを踏んで渡っていたから。」
「そこなの!」
ううん、本当は違う、口にはしないけれどね。
みんなが無視して渡ったその信号を、君はひとりだけ、律儀に守った。
小さな子供が見ていることに、気が付いたからだよね。
心から思っているよ。
「面白そうな奴という、私の目に狂いはなかった。」
鍵かっこの中だけを読み直してくれましたか?
まあ、このギミックは、読者に気がついてもらえないことが多いんですけどね、シクシク。
また、こんな使い方もできます。
テーマ『交差点』
https://ncode.syosetu.com/n4278gf/3/
一種の叙述トリックですね。
ショートショートでは、擬人化された物や動物が主人公ということも多いので、逆にこういうこともできるわけです。
ついでに、以下の例文は、出来が微妙だったので、お蔵入りしていたものなのですけれど。
『ティーカップの悩み』
スプーン部長には、困ったものだ、かきまわすだけかきまわして、自分はサッといなくなってしまうのだから。
しかも、口にすれば、大概、甘くなるばかりなのだ。
アチっ。
ふーふー、せめて、火傷しないように気をつけなくちゃ。
さて、そろそろ、休憩もおしまいだ、トレーさんがこっちをにらみながら近づいてきてる・・・
諸々全部、一息に飲み込む。
「課長ったら、また部長や私を食器に見立てて、愚痴ってたでしょう、もう片付けますよ。」
運ばれていく、カップを見ながら思う。
お前さんの方がマシかもな、部下に持ち上げられてさ。
勝手にアフレコしたり、逆に、介入して、現実に戻すきっかけにつかったりですね。
アニメーションとセリフをわざとシンクロさせないようにしたら面白いことが出来そう、みたいなことをここ数日考える機会があったもので、ちょっと鍵かっこについて、書いてみました。




