第15回『ショートショートにおける伏線の役割』
伏線には、色々な種類があります。
設定や先の展開を小出しにすることだけが、伏線ではないのですね。
ショートショートの伏線は、「落ちのための布石」です。
大きな役割が、二つあります。
ひとつは、「状況を説明して、落ちを成立させるための根回しをする」こと。
もうひとつが、「落とすために、持ち上げる」ことです。
ショートショートの落ちには、強度というものがあります。
いわゆる「使える落ち」と「弱い落ち」です。
「弱い落ち」は、比較的容易に作ることが出来ますが、その分、読者の心を動かす力の弱い落ちです。
ショートショートの面白さは、おおよそ落ちで決まります。
従って、弱い落ちをそのまま使うのは、ショートショート最大のタブーのひとつです。
そこで、弱い落ちには、なんらかの工夫を施します。
その工夫のひとつが、伏線です。
読者をハメる落とし穴が浅いのなら、読者を高い所に誘導してから、その穴につき落とせばいいのです。
伏線は、落ちの強度を上げることができます。
弱い落ちの代表選手である駄洒落を、伏線で強化してみます。
「もおっ、お父さんのばかぁ!」
フフフ、こんなの春の日差しの様なものだ、痛くないので、ぽかぽかされておく。
状況説明の根回しと、前ふりがあるだけで、単なる駄洒落を、ちょっとよく見せることが出来るというわけですね。
普段は、ショートショートでほのぼのコメディ集を連載しています。
『月の音色』、『ほんのり、ほのぼのしてもらえたら嬉しいです』、『みどりの竜』です。
ショートショートの実例がいっぱいありますので、良かったら見てください。




