第14回『変わり種の伏線の種類』
伏線とは、物語の今後の展開を暗示させたり、未だ隠されている設定をほのめかすこと、と思ってはいませんか?
確かに、映画や小説の感想を語らう時に、話題に上る伏線なので、代表的なものではありますね。
ところで、「ミスリードとは、伏線の一種である」という説明文を見かけたことはありませんか?
伏線の”一種”であるからには、伏線には、種類があるということです。
前回、「見立て」は、傍にあるものを題材にしていることが多いので、周囲の様子を伝える伏線としても使えることを説明しました。
今回は、ちょっと変わった伏線をいくつか紹介したいと思います。
【予言】
結果を先に書いておく、という伏線ですね。
『みどりの竜』第九話
https://ncode.syosetu.com/n6540dy/5/
【ループ】
読み進めると、「あっ、さっきのは、そういう意味だったのか!」と、それより以前に書かれていた文章に回帰する伏線です。
『赤いニシンがおぼれる』
「このケーキの空き箱に残るドライアイス、これこそが、消えた凶器の謎の答えだ!」
「ここはクルーザーの船室で、海のど真ん中だぞ、氷の凶器を使う意味がどこにある。」
「なるほど、海に投げ込んでしまえば良いという・・・、待てよ、これはいわゆるクローズドサークルという奴じゃないか。」
「ああ、疑いようもなくね。」
「つまり、犯人はこの中にいる!」
「それがダイイングメッセージで良いんだな?」
「きゃー」
「さて、消えたケーキの箱の中身について、”もう一度”、答えてもらおうか?」
【説明の省略】
「午後一でお願い」 → 今は午前中
「先方には、折り返し電話すると伝えてあります」 → 席を離れていて戻ってきた
というように、実際には、書かれていないことまで伝わる伏線の書き方ですね。
【入れ子】
お話の中に、別のお話を挟む伏線です。
『名探偵コナン』で、たまに見かける手法だったりします。
蘭の空手の試合を見に行ったコナン → 事件に遭遇 → 試合そっちのけで事件を解決 → ラストで、欄に試合を見ていなかったことがバレて怒られる、みたいなことです。
別の話を、伏線とその回収とでサンドイッチにします。
【並列処理】
時系列的に、裏で、同時進行で行われている出来事を暗示するヒントとなる伏線です。
例えば
「走者一斉にスタートしました!」
アナウンスが聞こえてきた。
さぁ、今のうちに、次の競技の準備をしなくては。
みたいなのです。
ひとつのコツとしては、音とか、香りとか、視覚以外の感覚を利用するとそれっぽくなります。
コポコポとサイフォンの音がして、コーヒーを淹れる良い香りが漂う
とか、そういう感じのものですね。
【分岐】
あの時、忘れ物を取りに行かなければ、別の結果になっていたかもしれない、みたいな、ターニングポイントを暗示させる伏線です。
【分かる人にだけわかる】
おまけ的な隠し要素ですね。答えを明示しないで、文中に、こっそりヒントだけ混ぜ込んでおくというものです。
普段は、ショートショートでほのぼのコメディ集を連載しています。
『月の音色』、『ほんのり、ほのぼのしてもらえたら嬉しいです』、『みどりの竜』です。
ショートショートの実例がいっぱいありますので、良かったら見てください。




