第13回『見立て』
第1回で、ショートショートの基本的な落ちとして紹介したものの他にも、落ちはあります。
例えば、「見立て落ち」です。
分かりやすく書くと、まるで○○のようだ、と何かを何かに見立てる落ちの事です。
これも、共通点を見つけて、くっつけるというタイプの落ちです。
色、形、音、香りなど、機能や本質に関係しない部分を、かなりアバウトにつなげることが出来るので、発想次第で、全く別のものどうしの意外な組み合わせを作ることもできます。
若干、弱い落ちに分類されるので、読者から強い共感を得られるように、伏線は入念に張ります。
『夏祭り』
https://ncode.syosetu.com/n6995ge/4/
見立ては、落ちとしてだけではなく、伏線としても使えます。
『ドライブ』
「夜間走行モード・オン!」
「あ、うん、ライトが点いたね。」
「アイハブコントロール。」
「いや、助手席って、名ばかりだから。」
「これより、サイレントモードに移行する。」
「えっ、なにそれ?」
「黙ってろ、舌を噛むぞ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
落ちとしては弱いですが、冒頭のつかみとしては、興味を引きやすく、向いています。
見えているものや、傍にあるものが題材になっていることが多いので、状況を読者に伝えるのに使えます。
ひとつでは弱いので、繰り返しています。繰り返すことで、パターンが見えてきて、上記の話だと、何かを何かに見立てて、ごっこ遊びをしているんだな、という状況が伝わります。
見立てだけではなく、繰り返しの効果もありますが、話題の方向性を誘導しておいて、最後でパターンを変えているのは、一種のミスリードにもなっています。
伏線としての見立ては、ミスリードや叙述トリックとしても使われます。何か別のものに見立てておいて、見立てているだけということを読者には隠して、勘違いさせるわけですね。
『偉い人にはわからない』
https://ncode.syosetu.com/n6995ge/5/
前にも言いましたけれど、この話は、友人に叙述トリックの説明をするために書いた物なので、色々と詰め込んであります。
話題の転換や、逆に、話を元に戻すときに、見立てを使うこともあります。
まず準備として、本来の落ちに関わるものを、何かに見立てます。その見立てたものの話題からスタートして、見立てを使って話題を転換し、落ちに持っていく、という書き方ですね。
二段落ちのようにできれば、少しグレードがアップします。
普段は、ショートショートでほのぼのコメディ集を連載しています。
『月の音色』、『ほんのり、ほのぼのしてもらえたら嬉しいです』、『みどりの竜』です。
ショートショートの実例がいっぱいありますので、良かったら見てください。




