第9回『擬音祭り・その1』
いつだったか、戦闘シーンを、擬音だけで描くというのに、挑戦したことがあります。
その時に書いた物がこちら。
『戦闘シーンの描写を擬音で乗り切ってみた』
https://ncode.syosetu.com/n6995ge/23/
そもそも、戦闘シーンを書いたのが、初めてなのですけれどね。
やればできるもんですね。
擬音語や擬態語は、避けるべきものと思われているふしがありますが、仕組みさえ知っていれば、物書きにっとて、便利な武器ともなるものです。
そもそも、文章で描写するのには、向いていないものって、ありますよね。
例えば、子供がクレヨンで、ぐりぐりと描いた、ぐちゃぐちゃな線とか。
まあ、「幾重にも折り重なり、無秩序かつ、力強く、渦状に描かれた曲線」とか、あるいは、比喩を駆使して、真っ向勝負を挑んじゃう人もいるかとは思いますけれど。
「ぐりぐり」とか、「ぐちゃぐちゃ」が、擬態語です。
これは、苦手を克服した文章表現が、勝利を収めた証なのです!
とまあ、ポイントは、そこではないのですけどね。
今回は、擬音語と擬態語の”正体”について説明します。
擬音語について、音を文字であらわしたもの、という認識をお持ちではありませんか?
定義としては正しいかもしれませんが、小説を書く上では、実は、その認識では間違っています。
擬音語の正体は、プログラム言語で言うところの「関数」のようなものです。
これだけで、ピンときた方もいるかもしれませんね。
擬音語は、一部の例外を除いて、それ単体では使われません。
必ず、それが何の音かを説明する伏線とセットで使われます。
これが、小説で擬音を使う上での、最も大切なルールです。
その上で、例えば、
幼い妹は、歩くたびにピコピコと音を鳴らしながら、いつも懸命に、僕の後をついてくる。
という一文があったとします。
すると、これ以降、「ピコピコ」と書くだけで、上記の一文を書いたのと同じ意味になります。
それが、擬音語の性質です。
例えば、繰り返す必要のある描写の代わりに、擬音を使うと便利です。
実際に、ショートショートで使った例文です。
『バールのようなもの』
突如、いい小噺を思いついた。
「バールは使うなって、あれほどクギを刺しただろう!」
かわりに渡されたバットには、いっぱいクギが刺してあった。
よし、さっそく、友人にメールしよう。
”どう、おもしろい?”
ピロリロリーン♪
おっ返事が来た。
”もう寝るからメールしないで”
うわ刺々しいな。
ピロリロリーン♪
ピロリロリーン♪
ピロリロリーン♪
ピロリロリーン♪
”もう寝るからメールしないで”
”もう寝るからメールしないで”
”もう寝るからメールしないで”
”もう寝るからメールしないで”
なんだよもう。
”わかったから、おやすみ”
ピロリロリーン♪
”いっぱいクギを刺したのに、メールしたね”
抜かった、私としたことが・・・
一連の動作や出来事を、一音に置き換えて、文章を書く代わりに、その一音を使います。
それが、擬音の使い方です。
機会がありましたら、意識して使ってみて下さい。
文章で描写するのに向いていないものに、擬態語が用意されているのは、みんなが共用で使うことのできる、構造化プログラムが用意されているようなものです。
先人の知恵と工夫ですね。
普段は、ショートショートでほのぼのコメディ集を連載しています。
ショートショートの実例がいっぱいありますので、良かったら見てください。
『月の音色』、『ほんのり、ほのぼのしてもらえたら嬉しいです』、『みどりの竜』です。




