0008
村長から使用許可された空き地なんだがな、村長宅から直ぐの場所だったよ。
本来は村長宅より離れた場所を指定するのが通例らしいのだが…
「儂が同行するでのぅ。
少し腰具合がな。
じゃて、此処にしようわい」だとさ。
村長の都合ですか、際ですか…
まぁ、立地的には露店広場から近いし、宿屋や飯屋などからも離れてない。
そう言う意味では良い場所だと言えるだろう。
村長に案内された空き地に着いたので、小屋と馬屋を空き地へとな。
村長は、いきなり現れた建屋に仰天して腰を抜かしてしまってなぁ。
「大丈夫ですか?」ったらね。
「流石に魂消たわぇ。
っと言うかのぅ…腰が…痛たたたたたっ」
うむ、ダメやね。
放置も出来ないので、札を玄関先へ吊るした後、村長を支えて小屋とね。
玄関に入ってからリビングへと。
取り敢えずはソファへ座って貰う。
「ちょっと小屋の使用準備しますから、待っていて下さい」
「ほぅ?
何をされなさるのじゃ?」興味津々とさ。
好奇心が強い方なのかな?
「小屋の魔導具を使えるようにするんですよ」ったらな。
「はて?魔石を設置すると言うことかえ?
毎度、魔石を外したり設置するのは手間ではないかのぅ。
何故、設置したままにせんのじゃ?」
そんなことをね。
「あのですね。
この小屋は魔石を使用しないタイプなんですよ。
実は空間魔術で魔石を仕舞うと空間へ魔石が吸収されてしまうのです。
だから空間魔術で魔石を仕舞うことは出来ないです。
まぁ例外として解体前魔獣の死体に内蔵された侭ならば吸収されないそうですけどね」
この情報は、小屋内に有った蔵書に書かれていたことだ。
リビングのテーブルへ置き手紙と共に置かれていた蔵書の内1冊だな。
「ほほぅ、便利な術とは聞き及んでおったが…そのような欠点もあったのじゃな」
村長が得心したように頷いている。
そんな彼へとな。
「なので、魔導具を魔術師以外でも使えるように貯魔機へ魔力を補充する必要があるんです。
ただ貯魔機へ補充した魔力も空間魔術内で吸収されるため、毎回補充しないとダメですけどね」
そう教えると納得してくれたよ。
因みに貯魔機から空間へと吸収される魔力は、空間魔術を行使する魔術師の魔力ならば、魔術師へと還元されるため空間への干渉はないそうだ。
だから貯魔機を使用する訳だな、うん。
さて、村長は腰をヤって動けないので待って貰うとして、貯魔機へ魔力を補充しますかね。
貯魔機は玄関ホールの左右に1機づつ設置されている。
補充口である宝珠は玄関飾りと一体化しており、パッと見には魔導具には見えないぞ。
その補充口より魔力を補充して行くとだ、補充口たる宝珠の色が白から水色へとな。
そして鮮やかな青へと染まったら補充完了ね。
2機共に補充を終えた俺はリビングへと戻る。
「もう魔力補充を終えたのかえ?」
そう尋ねて来たので、軽く応じるこてにさ。
「ええ、魔力を注ぐだけですから」っとね。
その後は空間よりお茶とお茶請けを村長へと出しす。
空間内で時止めしてあった品なので、共に出来立て状態だぞ。
やはり出来立てが美味いからな、うん。
「こりゃ…またまた魂消たわい。
なんで熱々の茶が現れるのじゃ?
夢でも見とるのかいのぅ…」
唖然としているのでな。
「熱い内が美味いですから冷めない内にどうぞ」ってね。
しかし村長が熱々と言っていたが、実際は、そんなに熱くない。
茶には茶葉により煎れるのに適切な温度があるんだ。
更には煎れ方により味も変わるしな。
状態の良い茶葉を適切な温度で最適な遣り方で煎れた茶は美味い。
更に薬効を含む場合、効能も上がるぞ。
この度の茶には腰痛に効く成分が含まれているんだ。
まぁ効果が出るには数週間ほど、毎日の飲用が欠かせないがな。
ただな、霊術を使用した治療と併用すれば別だ。
霊術は使用しても分からないのが特徴ね。
だからさ、村長の腰を霊術にて癒してっけどバレてない。
村長は茶を飲み終える頃には落ち着いたようで…
「しかし…外見では小さな小屋の中が、こがぁに広いとはのぅ。
魂消ることばかりじゃてな」ってさ。
「小屋内は空間拡張していますから。
指定空間を拡張した場合は定着するんです。
だから魔導具のように魔力補充する必要もないんですよ」
「まっこと、凄い物じゃてのぅ。
しかし、これ程の品を保持なされとると言うことは、貴族様じゃったかぇ?」などとさ。
「いやいや、まさか。
僕は平民ですよ。
ルトラ警備12部隊の隊長であるガムランの息子です」ったらな。
「なぬぅ!?鼻垂れガムランの息子じゃとぉっ!」なんてことをさ。
いや、鼻タレって…
「父をご存じで?」って聞いたらな。
「あやつは幼い頃、この村の知り合いに預けられておってな。
その時に色々と面倒を見たと言うか、見させられたものじゃて。
ヤツへ初めて剣術を教えたのも儂じゃな。
悪戯小僧でのぅ。
色々と面倒を起こしてくれよったわい。
その度に、儂が色々て後始末をのぅ…
会いに来れないようじゃから、代わりにと節目節目に贈答品を寄越しておるぞ。
聞いてはおらぬのか?」
いや、初耳なんですが?
親父…どゆこと?