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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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太陽の墓場、入り口

前回のあらすじ

 ・ルシファーの部下を召喚

さて、今度こそ誰に呼び止められるでもなく神殿を後にすることができた。まぁ、少しばかり神殿の職員さんやシスターに変な目で見られたけどな。


 あれだけの長時間を召喚陣のある空間で過ごして、尚且つドタバタ戦闘だのルシファーの変身だのをしていれば勘の鋭い人は何か気がついてもおかしくないな。


 過ぎたことを考えても仕方ない。今は攻略に行くダンジョンのことを考えようか。


 ここから一番簡単に行けるダンジョンは火属性のダンジョン【太陽の墓場】だ。ここは冒険者ギルドの総本山がある自由国家アドヴァン国内にあるそうだ。アドヴァンは冒険者ギルドの総本山があるだけに召喚院の勢力下にあるために神殿の転移魔法陣が使える。


 さらにこの国は冒険者の聖地とも呼べる場所で、【太陽の墓場】以外にも複数のダンジョンを国内に抱え、ダンジョンから産出される素材が主産業となっている。それだけにダンジョン攻略に関してのノウハウは他国より抜きん出ている。いくらか税などの規制があるものの自由国家の名に傷をつけるほどのものではなく、実力さえあれば億万長者になることだって夢ではない。


 神殿の転移魔法陣はアドヴァンの首都に飛べるようになっている。調べたところによると【太陽の墓場】へは馬車で3日ほど行ったところにあるそうだ。1日の馬車の移動速度が中世の駅馬車でだいたい112 kmから192 kmとすると戦闘や道路の舗装状況を考えてだいたい300kmほど離れていると考えた方がいいな。


 眠らずに行動できる来訪者とは言っても睡眠不足のバッドステータスはある。異常状態耐性スキルでは防げないし適度にログアウトも兼ねた休息は必要かな?


 そんなことをつらつらと考えつつ雑貨屋なんかで旅に必要そうな小物や保存食、さらには八百屋や肉屋で食材を買い込んで再び神殿にとんぼ返り。そしてすぐさまアドヴァンへ転移した。


 首都の観光は今回は後回し。場所の記憶だけして時間が出来た時に転移で来れるようにしておく。神殿の職員さんに【太陽の墓場】のある場所を聞いて移動を開始する。


 ちらりと街中を見た限り、冒険者の数がかなり多く、街を歩く人の半数以上がなにかしらの装備を身につけている。さらに見るからに低いランクっぽい冒険者の身につけている装備品ですらそれなりの品質で技術力の高さが窺い知れた。


 って言うか、見た目だけなら一番しょぼいの俺じゃね?今の俺、装備自体は神器だけど見た目は布の服だからなぁ。なんかさっきから周囲の目がどこか生暖かいと思ったら同情されてたのか?


 「さてさて、人目もだいぶ無くなったしそろそろ飛びますかね。」


 いろいろ準備して野宿も覚悟していたが、ふと上を見上げて鳥が飛んでいるのを見つけた時、【飛翔魔法】の存在を思い出した。


 いや、言い訳するわけじゃないけど【飛翔魔法】ってマジで飛ぶだけだからあんまり使ってなくてスキルレベルが低いんよね。だいたいの移動は転移で済むし、短距離なら走った方が速いし。だから影が薄くなっていましてですね・・・


 これを機にスキルレベルをあげようと人目のつかないところまで移動して飛び上がる。召喚院も利用する重要なダンジョンなので立派な街道が整備されており、その上を飛べば迷うことはない。


 「何かあっても対応できるから大丈夫だとは思うけど、一応護衛を召喚しておきますかね。」


 ルシファーとその配下二名を召喚しようかと思ったけど、積もる話(さいちょうきょう)もあるだろうと思って今回は呼ぶのをやめてそれぞれ光の魔力と闇の魔力で空を飛べるアークとレオーネを召喚することに決めた。


 空を飛ぶと障害物がほとんどなく、戦闘も地上を行くのに比べてはるかに少なく2回ほど鳥系の魔物と遭遇したが軽めの魔法で一撃で倒したので想定をはるかに超えてサクサクと進む。


 ものの三時間で【太陽の墓場】がある街、サンシャインまでたどり着いてしまった。予定はだいぶ狂ったが、時間短縮が出来たことはいいことだろう。


 そのままサンシャインの街の冒険者ギルドまで行って銀級シルバー召喚騎士のカードを示してダンジョンの情報を得る。召喚院にあった資料とあまり差はないが、やはり実地だけあって有効だった戦闘方法などより細かく、具体的な内容が書かれていた。


 まぁ、召喚院にいる人たちからしてみれば冒険者たちのような事細かな情報がなくても多少のハプニングなら実力で乗り切れるし問題ないだろう。そもそも召喚院でここに来る人は少なくとも銀級。冒険者のランクにすればA以上。多少資料がなくても問題ない実力者しかいないな。


 「さてさて、ログアウトまで残り1時間か。ダンジョン内で一夜を明かす準備も出来てるし、魔物は第2回の優勝報酬があるから平気。なんなら【召喚術】を刻印した魔石とかあれば見張りには事欠かない。よし、様子見がてら潜入するとするか」


 アークとレオーネを送還してフェルド、ルキナ、クリスタ、レイン、アルバセロを召喚する。火属性ペアは火属性攻撃が効かないので有利。水属性ペアは有利属性。そしてアルバセロは【探索魔法】目当ての斥候要員だ。


 「これからダンジョンの探索に入るけど、最初の方は経験値にもならないし、得られる召喚結晶も小さくて召喚院のリストには乗ってない。アルバセロと俺で最短距離を見つけるから戦闘は最小限で行くぞ」


 『『『『『了解!』』』』』

 

 英霊たちの了解が取れたのでダンジョンに突入する。一歩踏み込んだだけで一瞬にして空気が変わった。ウノのダンジョンや【憤怒の酒場】に入った時も感じたダンジョン独特の空気に加えて異常なほどの熱気。体感だと30°Cは超えてるんじゃないか?


 まぁそう感じたのも一瞬で、すぐに装備効果の【環境適応】が発動して不快感は無くなったけどな。英霊たちはどこ吹く風。暑さとか感じないんだろうか?


 『それじゃまずは俺の仕事かね。』


 ダンジョンに入ったところでアルバセロが地面に手をついた。その部分から急速にアルバセロの魔力が広がる。


 『わかったぞ。桃、これが本来の(・・・)【探索魔法】の使い方だ。それ以外は本流じゃなくて小技。この使い方が基本であり真理。少しずつでいいからやってみるといい』


 ものの数秒でアルバセロが最短ルートを特定した。【魔力察知】で見るかぎり一瞬にしてアルバセロの魔力が地面を通じて循環しているように見えた。


 俺の探知系スキルや【探索魔法】の使い方は魔力を薄くソナーのように飛ばしてその反応を見るものだったので純粋に魔力を消費するだけだったが、アルバセロの様子を見ると魔力の消費はほとんどなさそうだ。


 「と、言うことが循環がヒントなのか?」


 俺も地面に手をついてアルバセロの見様見真似で魔力を放出するのではなく、このダンジョンに流れる魔力の流れを掴み、把握し、自分もダンジョンの一部となって循環させる。循環を意識した瞬間、膨大な魔力が俺の中を駆け巡る。


 「ぐっ!?こ、これは!」


 『意識しろ、魔力の流れを掌握して従えろ。全ては意志の強さで決まるぞ』


 横からアルバセロが助言をくれる。要するに気合で魔力をねじ伏せろってことだろ?


 「うおおおおおお!」


 頭が割れるように痛い。目の前が真っ赤で鼻からも血が流れているのがわかる。燃えるような魔力が俺の身を焦がす。それでもその魔力を気力でねじ伏せる。


 どれくらい格闘していただろう。なんども気が遠くなるがその度に割れるような痛みと身を焦がす魔力で強制的に覚醒させられる。そんなことをなんどもなんども繰り返してくうちに次第に魔力を制御できるようになってきた。


 それからさらに幾ばくか経過した。


 <【魔力操作】が【魔力掌握】へ進化しました>


 不意にアナウンスが聞こえ、一気に制御が楽になった。そしてそれと同時に手に取るようにこのダンジョンに流れる魔力がわかるようになった。


 「・・・わかった」


 『さらなる高みに手が届いたな。桃』


 アルバセロの言葉が遠くに聞こえ、いつの間にか俺は意識を失っていた。

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