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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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新たな英霊

前回のあらすじ

 ・リア充フェルド

 フェルドの相棒であるルキナを召喚し、イチャラブ空間を作り出されたので思わずイラついて送還して一息つく。神殿の最深部にあるおそらく神聖な場所で一服するのはどうかと思うがインベントリから料理を取り出してかじりながらまったりする。


 それから他の六英雄を召喚してそれぞれの相棒を召喚することにする。


 クリスタの相棒レイン。皇女だったクリスタのお付きのメイドにして近衛兵の隊長も務める強者。いわゆるバトルメイドの究極系だ。


 クリスタはその国の皇女にして最強の剣士にして最強の水系魔法使いでもあった。そのため彼女は常に前線に立って神の先兵と戦っていた。その横に立って常に一緒に戦っていたのがレインだ。


 レインはクリスタに次ぐ国2番の剣士だった。そして奇しくもクリスタと同じく水系のしかも氷系の魔法を得意としていた。魔力量の関係でクリスタのように派手なことはできなかったがその代わり技を徹底的に磨き上げ、最終的に英雄神とまでなったクリスタとほぼ互角の強さを誇っていたそうだ。


 しかしクリスタとレインにも悲劇が襲う。クリスタは六英雄として一人決戦の地へ赴き命を落とす。そしてレインも激化する戦闘の中、流れ弾に当たった傷が元で死んでしまう。


 悲しい話だがよくある英雄譚の1つだ。フェルドとルキナのような恋人関係では無いがクリスタとレインは幼い頃から一緒に過ごしたほぼ家族のような存在だと神話には記されていた。


 2人は涙を流しながら再会を喜んでいた。レインは再び主であり戦友であり家族であったクリスタと再開させてくれた俺に感謝の念を示し、そのまま俺の力となることを誓ってくれた。


 まぁ積もる話もあるだろうし2人まとめて送還。


 お次はヴォート。ヴォートの相棒はエルフのヴォートらしいと言えばらしいのか神樹の精霊だった。名前はユグドラだった。うーん、この世界にも神樹だの聖樹だの世界樹だのあると聞いているが間違いなくその木の名前はユグドラシルだろうな。


 ちなみに世界樹と言うのが世間一般的な呼称でエルフや一部の獣人は聖樹と呼ぶそう。さらにその中でも限られた存在や精霊、妖精などは神樹と呼ぶそうだ。おそらく種族的な信仰の深さによって呼称が変わるのだろうとヴォートは言っていた。


 ヴォートは元々エルフだが六英雄に選ばれるほどの実力を持っている。その力の源泉は他の追随を許さない圧倒的な精霊との親和性だと神話には記されていた。


 その証拠が今召喚した神樹の精霊ユグドラ。ユグドラ自身には戦闘能力はないが補助能力がえぐい。常時HP・MP回復、身体能力向上、魔法威力極大上昇と戦闘に関する補助がとにかく豊富に揃っている。


 さらに元々エルフは魔法に親和性の高い種族であったことも幸いしユグドラをその身に宿すことに成功した。


 ヴィートはその力に溺れることなく森を守ることだけに専念。ユグドラはそんなヴォートを信頼し、ますます力を貸すようになり、最終的には精霊魔法の極地とも言える神器創造にまで至った。それがヴォートの主武装となり最終決戦までヴォートを支えたそうだ。


 ヴォートの死後、ユグドラがこの世界に姿を見せることはなかった。それもそのはずでもはやヴォートとユグドラは一心同体。すなわちヴォートが死ねばユグドラもまた消える定めだったのだ。


 ちなみにこの最後の部分はどこにも記されておらず、召喚する際にヴォートから直接聞いた部分になる。この話をする時ヴォートは少し寂しそうに自分の持つ槍を撫でていた。


 召喚されたユグドラは小さな女の子の姿していた。精霊は喋らない設定なのか、それともこの子が無口なだけかは知らないが一言も喋らなかったが、ヴォートを見つけるとふわふわと浮かんでヴォートの頬にキス。そしてそのままヴォートの持つ槍へと消えていった。


 これまでの2人と違った反応にこれで召喚主と認められているのか不安だったがヴォートからお墨付きをもらい、さらにステータスの英霊の欄にきちんとユグドラの名前が刻まれているのを確認した。


 うん、無口ロリっ娘ってよくない?(性癖)


 次はアルバセロ。割と自由人の印象が強いアルバセロに相棒なんているのかな?と思ったがいるらしい。こちらの関係は相棒というよりライバルに近い関係のようだった。


 召喚された英霊の名前はミリム。アルバセロと同じく土系と雷系の魔法を得意とする双剣使いだ。


 そしてミリムは召喚されたと同時にアルバセロを発見。直後背負った剣を抜いてアルバセロに切り掛かった。驚いた俺を差し置いてアルバセロは凄惨な笑みを浮かべて剣を抜きこちらもミリムに切り掛かっていた。


 2人の剣がぶつかる瞬間に2人の周囲にマジックシールドを展開して魔法陣や室内への被害を防ぐ。結果から言うとこの判断はこのゲームを初めて1番の好判断だと言えるだろう。2人の剣がぶつかった瞬間に凄まじい雷の魔力が迸り、衝撃波が吹き荒れた。


 剣をぶつけ合った2人はお互いに弾き飛ばされて距離をとったがその後再び接近し凄まじい剣の応酬を繰り広げていた。


 声をかける余裕もなく、ただただマジックシールドの維持に魔力を注ぎ込みながら俺は神話の1節を思い出してた。


 アルバセロとミリムの関係は特殊である。ミリムはご多分に漏れず軍所属の魔法剣士だった。当然、神の先兵との戦いも最前線で剣を取り戦っていたミリム。しかし軍だけでは圧倒的な物量を誇る神の先兵相手には分が悪かった。


 そこで現在の冒険者のようないわゆる民間戦力にも頼るようなり、その中の1人にアルバセロがいた。その頃すでに英雄的存在として名を馳せていたアルバセロ。


 武を磨き、同じく土と雷属性魔法を磨いてきた2人がお互いに相見えるまではそう時間は掛からなかった。


 しかし軍属のミリムと自由がモットーのアルバセロでは意見はいつも食い違う。規律と自由、その溝はどこまでも果てしなく広かった。


 その対立はやがて戦いの最中にも勃発。もはや神の先兵など関係なくミリムはアルバセロを、アルバセロはミリムを超える、ただそれだけに執着し、相手に勝ちたい一心で剣を振っていた。

 

 英霊となるほどの強さを持った2人が戦場でガチでぶつかりあえばどうなるか、答えは明白で、今まさに俺が被害を受けそうになっているこれだ。


 魔力と魔力、剣と剣が無数に入り乱れ周囲に飛び火。お互いの属性が一緒だったために相性がよく相乗効果で周囲へと降り注ぐ雷はそれは凄まじいものだったそうだ。


 普通に戦うよりむしろアルバセロとミリムの喧嘩に巻き込まれて死んだ神の先兵の数の方が多いのではとの仮説があるほどその戦いは激しかったようである。


 当時の人々は2人をそれぞれの持つ武器になぞらえてアルバセロを剛破の雷、ミリムを瞬迅の雷と呼んだ。そして2人まとめて剣の双雷と呼び称えたそうだ。


 つまり2人は喧嘩するほど仲がいい。ただしその喧嘩は破滅級ってところだな。ここまで15分ほど経過しているのだが一向に戦いは治る気配がない。そろそろマジックシールドの維持が辛くなってきたので2人まとめて送還することにしよう。


 あとで拠点で思う存分戦わせてやるから大人しくして欲しいものだ。ミリムとも言葉は交わせなかったがステータスにはきちんとミリムの名前が刻まれていたので良しとしよう。


 次はルーセント。ルーセントの相棒は割と職場のパートナーといった雰囲気のようである。召喚された英霊の名前はファースト。この名前は割といろいろなところで出てくる名前で六英雄の次ぐらいには有名な英雄だ。


 その理由は至って明確。現在まで延々と続く宗教関連最強の戦士に与えられる勇者の称号を得た最初の人物。つまり初代勇者なのだ。


 ここまでくればわかるとは思うがルーセントはかつて存在していた宗教国家の聖騎士長だった男だ。それだけに光属性を得意として型の綺麗な剣を振る。そして人々を守ることを第一に考えて行動する。


 神話ではルーセント率いる聖騎士団が守りを、勇者の称号を得たファーストが率いる超精鋭たちが攻撃を担うことで六英雄が所属していた国の中では一番被害が少なく神の先兵と戦っていたそうだ。


 さらに勇者ファーストは所属する宗教国家だけでなく近隣諸国まで遠征し、危機に陥っていた村や街を幾度も救ったそうだ。一方でルーセントはその圧倒的守備力でファーストが遠征に行っている間、国を完璧に守護。2人が共に同じ戦場で戦うことは少なかったがそれでも2人の間には確かな信頼関係が存在していた。


 2人の国は優勢でも世界情勢は確実に滅びへと向かっていた。その時六英雄の1人として勇者ファーストではなくなぜかルーセントが決戦の地へと赴くことになる。この理由はいまだに解明されていない。


 ルーセントの抜けた穴は非常に大きかった。このままでは国が滅ぶ。その危機を救ったのが勇者であったファーストだ。ファーストはそれまでに助けてきた近隣の小国群を平和的に統合。ルーセントの残した軍運営のノウハウを生かして軍をまとめ上げさらに自らが総大将として前線に立って戦った。


 ファーストの献身的な戦いの貢献もありなんとか最小限の被害で神の先兵を退けた宗教国家は戦時中の統合をそのまま維持し大きな国となった。その国の王としてファーストが就任。


 しかし戦争の無理が祟ったのかわずか5年でファーストが他界。その後国が荒れルーセント、ファーストと言う稀代の英霊を排出した宗教国家は戦後わずか10年で滅ぶことになった。


 命をかけて戦い守り抜いた国が同じく守り抜いた民のせいで一瞬にして滅びた。まさに報われなかった英雄たちだ。


 戦の中で死んでいくのはある意味武人としては誇りある死なのだろう。しかし彼らの死は果たして報われたのか。いや、報われてないだろうな。悲劇の英雄だ。


 ファーストと再会したルーセント。お互いに剣を構えてしばし対峙。アルバセロとミリムのような激しい烈火のような雰囲気ではなく凪いだ水面のような、ピンと張り詰めた糸のような静かな緊張感があたりを支配する。


 どれくらいそのまま対峙していただろうか。やがて同時に力を抜き歩み寄って固く握手。


 『腕はいささかも衰えていないようですね、ファースト』


 『そっちこそ、むしろ強くなったんじゃねぇの?』


 『ふふ、さて、どうでしょう?それより我らが主に挨拶を』


 『おっと、そうだったな。俺はファースト。よろしくな!』


 どうやらルーセントとは互角のようだ。これまた心強い仲間が加わったな。


 そして最後がヴィクティムの相棒だ。しかし、ヴィクティムは六英雄の中で一番謎が多い英雄でもある。とある小国の軍属だったこと、闇属性魔法と槍の使い手で守りに長けていたと言うことぐらいしか詳しいことはわかってない。


 一説では一匹狼だとも言われているが、召喚院の資料の中で僅かながら相棒らしき男の存在と仲間のような存在がいたことだけは記されていた。


 その英霊の名前はジャック。・・・この名前を聞いて最初に思い出したのがかの切り裂きジャックなのは俺だけか?


 そしてヴィクティムの魔力を注ぎ込んで英霊を召喚する。召喚した英霊を見た時俺は最初の自分の予想が間違っていないことを確信する。


 『おや?まさか私が呼ばれたのですか。珍しいこともあるものですね』


 『お前を呼んだのはこの俺だ。』


 『なんと懐かしい声と顔ですね。まさかとは思いました私を呼んだのはあなたでしたか。ヴィクティム』


 『お前のような者を主に近づけたくはないが、今回の敵は裏が関与している可能性が高い。裏はお前が一番詳しいだろ?ジャック』


 『そうですねぇ。ま、否定はしませんが。我が召喚主殿、貴方は私という存在を許容できるので?』


 「・・・俺は綺麗事だけで世の中が回ると思ってないからな。蛇の道は蛇だ。それにたとえ悪に落ちていようとお前は英霊でヴィクティムを支えてた相棒なんだろ?歓迎こそすれ拒む理由はねぇな。」


 『嘘はついていませんね。また貴方と組むのは思うところがありますがかつて共に戦ったよしみです。協力して差し上げましょう。』


 そう言ってジャックは闇の中に溶けるように姿を消した。


 「ヴィクティム、説明してくれ。ジャックとは一体何者なんだ?」


 『ジャックは俺のいた国の暗部の人間だ。特に暗殺では他の追随を許さない。そしてあいつは殺しを純粋に楽しんでいる。あいつが俺と組んだのも神という理の外にいる存在をその手で殺すためだった。そしてあいつ曰く俺と一緒にいるのが最も多く殺しをできそうだからだそうだ。だが、確かにあいつの言う通り、最も激しい戦場に俺は送られた。そして闇属性魔法の使い手は嫌われやすい。そこに俺自身の力も加わって通常では考えられない単騎での作戦も数多く組まれた。ジャックはそこで数多の殺しをした。あいつが徹底して殺し尽くしたおかげで救われた地域も多い。俺も幾度となく命を救われている。ただの殺人狂が本性ゆえに表に出せない、本当の意味で影の英雄だ。俺が決戦の地へ赴くことになっていこう俺の前に姿を見せることはなかった。どこで死んだかさえも知らないな。』


 「そうか、ヴィクティムとジャックの間にはそんな関係があったのか。しかし悪の英霊か・・・予想はしていたが確かに存在するんだな。まぁ、いい。ヴィクティムの言ったように確かに何かが闇で蠢いているのは確かだ。闇に生きるものが1人ぐらい味方にいると動きやすいな。」


 『あいつはこれまで幾度となく表の司法や貴族が捕縛に動いたが捕まるどころか捜査に浮かび上がることすらなかった男だ。腕は保証しよう。』


 「なるほど、それは心強い。」


 こうして俺は新たに6人の強力な仲間を得ることができた。準備はこれで良さそうだ。ではいよいよダンジョンに向かうと「少し待つがいい、我が召喚主」しよ・・


 ん?


 ルシファー?

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[気になる点] >「お待ちください、我が召喚主」 ルシファーのセリフだとすると、敬語は違和感。
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