ダンジョンについて
前回のあらすじ
・珍しく戦闘回でした
擬似ユニットとの戦闘を終えてフィールドを出る。そこにはすでにレオンが待っており、手には銀色の輝くカードが握られていた。
「桃のレベルと実力からすれば当然とも言える結果だったが、合格は合格だ。まずはおめでとうと言わせてもらおう。」
「そりゃどうも。」
「だがここまではあくまで通過点にすぎない。桃にとってはようやくスタートラインにたったぐらいだ。これで気を緩めずに精進してもらいたい。」
「もちろんだ」
「それでは新たな銀級召喚騎士の誕生を祝福しょう。おめでとう。」
銅級から銀級へ昇格した時の祝いの言葉はそれだけだった。それは俺という来訪者への期待の現れか、それともあの最強の召喚騎士の弟子ゆえの重みか。果たして。
「さて、金級への昇格試練とレベリングを兼ねた話はここで話すのもあれだから場所を移そう。」
そんなわけで再びあの会議室に戻ってきた。
「早速だが本題に入ろう。以前英霊の進化の時に話したとは思うがもう一度だ。俺たちに力を貸し共に戦ってくれる英霊は召喚した時には英霊となった全盛期の力はない。それはこの世界に再び顕現するのに大きく力を消費するからだ。
その英霊は俺たちと共に戦うことで経験値を集め、かつての力を取り戻してゆく。その中である区切り区切りでは存在の格を上げるために進化が必要となってくる。その進化のエネルギーとして用いられるのが精霊結晶だ。
その精霊結晶は主に俺たち召喚院が管理しているそれぞれの属性のダンジョンで入手することができる。この精霊結晶は召喚騎士にとって必要不可欠なモノであるために主に銅級〜金級ぐらいの召喚騎士が中心となって集めてもらっている。
桃にはこの任務をこなしつつ、ダンジョンの攻略を目指してもらいたい。」
「ダンジョンを攻略していいのか?大事なダンジョンだろ?」
「あぁ、すまない言葉が少し足りなかった。攻略と言ってもダンジョンの命とも言えるダンジョンコアは破壊しないで欲しい。それを守るガーディアンを討伐してそいつからドロップする最大級の精霊結晶を納品することが今回の任務となる」
「それなら大丈夫か。でも俺がダンジョンコアを破壊しないとも限らないだろう?それに戦いの拍子に壊れるかもしれない。」
「ハハハ、その心配はないさ。詳しくは実際に見て確かめるといい。この段階で俺から言えるのは破壊とか一切考えなくて大丈夫だってことぐらいだな。」
・・・そこまで言うのであれば本当に問題ないんだろう。きっと過去のそのガーディアンとやらを瞬殺してコアに仕掛けでも施したんだろうよ。
「肝心のダンジョンについて説明しよう。」以下はレオンの長い長い説明を俺なりに要約した結果である。
まず、これら精霊結晶がドロップするダンジョンは全て共通で100階になっている。そして1階がレベル1の魔物で階層を降るごとに1つレベルが上がってゆく。そして各属性のダンジョンにはその属性の魔物しか出てこないということが共通している。
火属性ダンジョン、名称【太陽の墓場】
このダンジョンは伝承に登場する伝説の聖騎士がその生涯を閉じた場所だと言われている。その聖騎士の二つ名は太陽の化身。その名の通り、太陽を身に纏っているかのように強力無比な火属性の魔法を駆使して戦ったと僅かながら伝承が残っている。
その太陽の化身は伝承では全ての悪を司る魔神の王と戦い、最後の最後で愛する人と国を守るためにその生命力まで燃やし尽くして魔神の王を討ったとされている。その後、その戦いの直後、太陽の化身は全身を炎に包まれたままチリとなって消えていったそうだ。
その後長い年月が経過し、太陽の化身とまで言われたその聖騎士の魔力が元となってダンジョンができたと言われている。
水属性ダンジョン、名称【海底神殿】
このダンジョンは文字通り海底に沈んでいるダンジョンだ。ダンジョンないは特殊な空間になっているのか、足元まで水があるだけで水没はしておらず呼吸もできる。しかしそこまでたどり着くのが非常に困難で人気のないダンジョンの1つだ。
この海底神殿はかつて海の神を祀っていたとされる神殿で大広間には強い魔力を感じる謎の石像が7つあるそうだ。
そしてその石像の数と同じ数の柱が大海原をまるで天井のように支えているらしい。そのメカニズムは世界最先端を誇るこの召喚院の技術開発局でも解析は不可能で神の御技ではないかとすら言われている。
残念ながらこの海底神殿に関する文献等は散逸してしまっており詳しい神話はわかっていない。
風属性ダンジョン、名称【暴風領域】
このダンジョンもその名称通り、ダンジョン内であるにもかかわらず常に暴風が不規則に吹き荒れている。そのせいで弓矢や魔法など遠距離攻撃はほぼほぼ当たることはない。
それに対して出現する魔物は風を味方にできる飛行系の魔物や風の影響を一切受けない重鈍なゴーレム系の魔物。そして飛行系の魔物やゴーレム系の魔法は弓矢や魔法で倒すのが一般的であるというなんともメタいダンジョン。
このダンジョンは自然発生のダンジョンらしく、英霊に繋がりそうな神話や伝承は存在しない。ただし、このダンジョンに向かうまでの道中にある【夢幻の森】というフィールドにはなにやら不吉な言い伝えがあるとかないとか。まぁ、この話はその時にすればいいだろう。
土属性ダンジョン、名称【アリノスの迷宮】
このダンジョンだけはちょっと他のダンジョンと違うらしい。この名前にもなっているアリノスはいわゆるアリの巣のことである。
その名の通り、このダンジョンは入り口を入ると小さな小部屋になっているらしい。さらにその小部屋には転移陣がいくつか設置されておりそれに乗ると別の小部屋に転移させられるらしい。
その小部屋には当然魔物、罠、宝箱などが設置されておりそれを攻略あるいは宝箱の場合は中身を回収すると入り口に戻る転移陣と別の部屋へと飛ぶことのできる転移陣が現れるようだ。
それならば攻略は簡単かと思いきや、後ろの迷宮と名前がついているように毎回転移先が変化しており有効な対策は取れない。はっきり言ってリアルラックに左右されるダンジョンのようだ。
しかも戻るのではなく先に進む転移陣に乗った場合、転移した回数分だけてきが強くなる。例えば50回目の転移で魔物が出る部屋にたどり着いたら出てくる魔物のレベルは50だ。
そして最後、100回目の転移の時にはガーディアンとコアのある部屋にたどり着くそうだ。
このシステムのおかげでこのダンジョンに潜る人は引き際を自分で定めることができ、さらに帰り道も安全ということで人気が高いダンジョンだ。そのせいか土属性の精霊結晶だけ地味に在庫が多いらしい。
残念なことにここにも目立った伝承などはない。しかしこのダンジョンがあるのは世界樹の森らしい。世界樹とか確実にいろいろある場所やん?土属性のダンジョンよりは世界樹関連がメインになりそうな予感しかしないな。
光属性のダンジョン、名称【天空の城】
先に言っておく。「バルス」で落ちるあの天空の城ではない。ではなぜこの名称がついているんだと運営を小一時間ほど問い詰めたくはある。
そもそもこの天空の城というダンジョンは空に浮いている訳ではなく遥か神話の時代に天使だの女神だのがまだこの世界にいた時に拠点としていた場所が長い年月を経てダンジョン化したものらしい。
現在は地上にあるらしいが当時のことを伝える文献では遥か天空に向かって誇示する城や文字通り空に浮かぶ城、はたまた人間には到達し得ない雲の上までそびえ立つ超巨大な山の山頂に建てられた比喩として天空の城なんてことが書かれていらしい。
その文献からとって【天空の城】と名付けられたようである。この【天空の城】に関しては文献が結構残っていることからも有力な英霊がいるのでは?と調査が続けられているらしいが未だ発見に至っていないそうだ。
何か仕掛けとか資格とか必要なのだろうか?
そして最後。闇属性ダンジョン、名称【光届かぬ悪魔の巣】
このダンジョンも割と変わり種なダンジョン。光届かぬというぐらいなので最低でも夜目、できれば暗視がなければ厳しい。どっちも持たない人は多少手間だが松明など光源を持って進まねばならないダンジョンだ。
そして悪魔の巣というようにここには基本的に悪魔系の魔物が出現する。だが、その代わりと言ってはアレだがゾンビやスケルトンなどのアンデッド系の魔物は出現しない。なぜかヴァンパイアは出現するらしいが。
悪魔系の魔物は総じて知能が高く身体能力、魔法能力に優れている。そしてダンジョンないで生活しているから暗闇でも向こうは余裕で見えているという結構なハンデ戦となる。まぁ、その代わり火属性や光属性にめっぽう弱いことがわかっているからそのどちらかに高い適正がある人にとっては結構稼ぎやすいダンジョンだったりするらしい。
俺の場合は【聖炎】を使えば階層丸ごと燃やしつくせるかな?と思ったり思わなかったりする。
このダンジョンに関する神話や伝承はほとんどないが、1件だけ、古い時代にいた稀代の大盗賊がここをアジトにしていた可能性があると当時の捜査資料に載っていたそうだ。見つかった文献はそれだけで、さらにその稀代の大盗賊に関する資料もほとんどなく、確かなことはなにもわかっていない。
つまりこのダンジョンも英霊にはあまり期待できそうもないってことだ。しかしこのダンジョンではないがこの地方は六英雄神のヴィクティムの故郷があったとされている。そっち方面でも探索が必要っぽい。
と、まぁ、レオンの長い長い話を要約してもこの長さである。聴き終わる頃にはだいぶうんざりしたが今後の方針が建てられた。時間がないのでサクサクと攻略を始めようじゃないか。




