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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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誇り

前回のあらすじ

 ・カインに呼び出されましたよ

 『緊急事態が発生した。このメッセージを見たら、至急、アリーシャ召喚院の本部まで来てくれ。』


 カインから送られてきたメッセージは短くこれだけ。その文面からその緊急事態とやらがかなり逼迫しているようである。まだログアウトするには時間があるのですぐに教会へ向かい帝国へと転移した。


 帝国側の神殿から外に出る。あれほどの戦力がここにはいるのでその心配はしていなかったが、万が一ということもある。カインの言う緊急事態がここブレイバー帝国で起きているのではと一瞬だけ身構えたが、街の様子は以前来た時となんら変わりない。


 「となるとその緊急事態はこの国でも俺たちがいる国でもないわけか。」


 独り言を呟きながら召喚院のあるエリアへ入る。召喚院があるエリアも人通りは活発で通りを行き交う人々の表情は明るい。まるで緊急事態なんて知らないかのようだ。


 いや、「ようだ」ではなく本当に知らないんだろう。ってことはこの緊急事態に関する情報は上層部で止められているってところか。


 受付でカインに呼び出された旨を伝えるとすぐさまカインが飛んできた。


 「よく来てくれた。思ったよりも早かったな。」


 「あぁ、ちょうど拠点で寛いでいたところだったんだよ。緊急事態って聞いて飛んできたんだ。」


 「それは都合が良かったな。ここでは詳しいことは話せない。レオン様より話があるそうだ。」


 レオン直々にか。この強大な力を持つ召喚院の中でもトップを務める召喚老の1人でさらにその中でもトップの筆頭召喚老であるレオン。彼直々の話となるほどの緊急事態か。これは思ったよりも事態は重そうだな。


 カインの後について召喚院の中を進む。案内されたのは以前召喚老たちを紹介されたあの会議室のような一室。


 「・・・っ」


 その部屋の前に立った瞬間に感じる凄まじい魔力。・・・この魔力はどうやらこの中に召喚老3人が勢揃いしているようだ。


 コンコン

 

 「第二十七討伐隊クラージュ隊長カイン、召喚騎士桃を連れて参りました。」


 「入れ」


 中からレオンのものと思われる声が聞こえてきた。その声は以前に聞いたものよりも冷たく鋭い。やはりよっぽど切羽詰まっているようだ。


 扉を開け中に入る。部屋の中にはやはりと言うべきか召喚老の3人、それから以前紹介されたエルモ(技術開発局局長)、レセウス、ウォレン、ユライが着席した状態で座っていた。生憎サーシャはいないようだ。


 「よく来てくれた。桃。」


 俺が席につくなりすぐにレオンが切り出した。


 「いきなりで申し訳ないが時間がないのも事実だ。先に結論から言わせてもらおう。隣の軍事大国であるアミレスト帝国、その帝都がたった一晩で陥落した。そしてその凶行を成し遂げた犯人は例のメライス六魔将の一人、暗黒覇王騎レグルスと名乗っていたそうだ。そして、恐るべきことにレグルスはたった1人で帝都を落としたとのことだ」


 なるほど、ここでメライス六魔将が動いてきたか。この手のゲームのワールドクエストはイベントごとに次に進むことが多い。今回のイベントでは進展がなかったからちょっと疑問に思ってたけど裏で動いてやがったか。


 「もう少し補足説明をしよう。この大陸には俺たち召喚院のような上位治安維持機構が後2つ存在している。1つが皇国。皇国はこの大陸の南部に存在するブレイバー帝国に匹敵るす国力を持つ国だ。この皇国は南の小国郡をまとめている。そしてもう1つが大陸北部に位置する大国、アミレスト帝国だ。正確にはアミレスト帝国軍だ。帝国軍はその数、質共にこの大陸では最強の一角と言ってもいい。さらに数の暴力だけでなく優れた個の力も保有している。大陸北部は強力な魔物が生息する原生林なども多く、たった一国でその全ての被害を食い止めている軍の力は俺たち召喚院にも匹敵する。」


 「もー、レオンの話は長いのよ!いい、桃。この大陸は私たち召喚院、帝国軍、皇国軍の3つで大陸の治安維持をしているのよ。戦力的にはあいつがいるから召喚院が少し抜きん出てるけど特異点を除けばどこもトントンなのよ。その一角のしかも最精鋭が集っているはずの帝都がたった1体の魔物に落とされたって言ってるよの。」


 ミーシャの説明ではっきりとわかった。これは確かに緊急事態だ。


 「これでわかってくれたとは思うが、事態はかなり切迫している。俺たち召喚院の統治範囲ではなかったゆえに把握が遅れてしまった。最悪なことに現在の帝都周辺には一切の干渉を阻む強力な結界が広大な範囲に渡って展開されており中の情報はさっぱり掴めなくなっている。」


 「その結界なんだが、先ほどようやく解析が終わった。終わったと言ってもその発生源を特定できただけだけどね。」


 なるほど、これで読めてきた。この召喚院とほぼ同等の戦力を持つ帝国軍の最精鋭が集う帝都が一晩で陥落させられた。相手はメライス六魔将で新しく登場した未知の力を持つ何か。


 救援しようにも謎の結界がありその解除は今のところ不可能で、発生源のみ特定されている。


 「我々召喚老と各隊の隊長で協議した結果だ。悪く思わないでくれ。これより上位統治機構アリーシャ召喚院の名において全来訪者に緊急依頼を発動する。目標は結界の発生源への到達及び結界発生源の破壊だ。」


 そこまでレオンが言った時だった。


 <お知らせします。ワールドクエストが進展します。それに伴い一部地域の通行が不可能になりました。>


 <これよりワールドクエスト【古代闘技場コロッセオ】を開始します>


 久々のワールドアナウンスが流れた。どうやらワールドクエストが動き始めたようだ。


 それにしても全来訪者に対する緊急依頼か。それだけ帝都陥落を召喚院は重く見ているってことか。そして明らかな罠とわかる結界の解除に来訪者を向かわせる。死んでも死なない来訪者を肉壁とする作戦か。だから悪いってレオンは言ったのか。


 「別に俺ら来訪者は死んでも蘇るから囮にされる分には構わないが、召喚院ではどうにもならないのか?」


 「ああ?何言ってんだよ!俺様たちがそんなチンケなところに行くわけねーだろ!俺様たちはお前らが結界を破壊した後に出てくるバケモンに備えてるんだよ!」


 俺の言葉に反応したのはスタンだ。


 「スタン止めないか。だがスタンのいう通りだ。俺たち召喚院は桃が考えるよりも最精鋭が揃う帝都を落とした六魔将を危険視している。それゆえに結界解除と同時に一気に帝都に侵入し状況の把握に努めたいんだ。」


 「そうね、イケすかないけど軍略の天才であるあいつがいるはずの帝都がなすすべもなく陥落してるんだもの、何か未知の力があると考えていいわ。だからこそ相手の出方を伺って後手に回るのは最悪なのよ。下手したら私たちも帝国軍の二の舞になりかねないわ。」


 これはミーシャ。ミーシャのいう「あいつ」がどんなやつかは不明だがミーシャが軍略の天才と認める相手だ。つまり化物級なんだろう。そんな化物がいても落とされた帝都に落とした化物か。確かに後手に回るのは危険だ。一気に戦力を集中して叩いたほうがいい。


 「だが相手はその化物なんだろ?召喚院までやられたら大陸が危ないだろ」


 「おいおい、舐めんてんのか!てめぇ!俺たちが負けるとでも思ってるのか?あぁ!?」


 またスタンが噛み付いてきた。


 「いや、そんなことは思っていない。思ってはいないが召喚老だって人間だろ?万が一の可能性が0ではない。それに人間である以上はどんなに強者でも倒せずとも殺す方法なんていくらでも存在する。だからこそ俺たち来訪者の中で最精鋭を集い攻撃を仕掛けたほうがいいと思うんだが」


 「・・・ほう、随分というじゃねぇか。だったらここでやってみるか?あ?」


 「スタンやめろ。桃、確かに桃のいう通り俺たちは生き返ることはない。それに強者を殺す方法があることは知っているさ。だけど、ここで俺たちが逃げるわけにはいかないんだ。この大陸を守りあいつが帰ってくる場所を守る。それが今でも1人で戦っているあいつへの俺たちなりのプライドなんだ。たかが未知ぐらいでは俺たちは逃げないよ。」


 静かなレオンの言葉。だがその言葉とは裏腹に息すらできなくなるほどの強大かつ凶大で氷のように冷たい魔力と禍々しい魔力が荒れ狂う。


 「ま、当然ね。それに私たちはこの大陸でも最強の一角なのよ。そんな私たちが後方で指を咥えて見てるわけないでしょ?」


 「ふん」


 ミーシャ、スタンもレオンと同じように言葉は穏やかなものだがその荒れ狂う魔力は内心を押さえ切れていない。その魔力はそれぞれ筆頭と呼ばれるレオンにも勝とも劣らぬ圧を感じる。


 「・・・すまなかった。どうやら俺はまだまだ召喚院の、いや召喚老の実力を正しく認識できていなかったようだ。」


 気圧された俺がなんとか謝罪の言葉を述べられたのはそれから3分後のことだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文の中の 匹敵るす は匹敵するじゃないですか?
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