第73話 第3回戦 VS筋肉塾♂③
前回のあらすじ
・知っているのか雷・・・レイ!
さて、今回の登場人物は誰をリスペクトしてるでしょうか?予想してくださいな?答えは後書きにあります
真田と名乗る漢と対峙する。先頭バッターの有地には悪いがこの男、段違いに強い。筋肉の美しさもそうだが、闘気の量が有地よりも遥かに多い。そして、有地のはきっと俺の【神道夢想流杖術】のようにスキルで得たであろう感じだったが、この男はなんらかの武術を身につけているな?
「あの白の爺と同じ匂いがするな。リアルでも武術をやってるな?」
「ほう?武術はやっていなさそうなのによく分かったな。」
「一度見たやつの気配ぐらいは覚えないと他のゲームではランカーなんてできねぇんだよ。」
「なるほど、にわかには信じ難かったが現実で武術はできなくても電脳世界では強者と至る人間がいると聞いたがその類のようだな。ちょうどいい機会だ。俺の武が電脳戦士とやらにどこまで通用するかここで試して見るとしよう。」
真田の放つ闘気が一段と膨れ上がる。やつの武器は槍。しかも十文字槍。突くと同時に斬ることもできる高性能な武器だ。そしてそれらの攻撃を全て膨大な闘気で強化してるだろうな。
多分こいつには軽気功は通用しない。もちろんボールを重くしても筋肉で粉砕される未来しか見えない。どうしようかな?割とまじで手がないかな?ここにきて汎用性の高い魔法スキルとPS頼りで武技を育ててないのが裏目に出たな?一撃必殺系の大技がないな。
仕方ない。とりあえずこの魔球で様子見するしかないな?
「魔球・全反撃!」
真田は確実に物理攻撃だ。この魔球なら相手に攻撃は返せるので仮にホームランを打たれてもそれだけの威力が真田に反射される。それで真田のHPを削れるのならまぁ、割安?
「物理攻撃を反射する武術家には恐るべき魔球だが、いくらでも対策はある!魔振・千刃穿!」
真田は目にも止まらぬ速さで連続突きを繰り出した。チッ、たった1球でこの技の弱点が見破られているか。この手の連続技は一撃一撃の威力は低い代わりにその手数で相手にダメージを与える技。一番全反撃との相性が悪い技だ。
全反撃で反射された攻撃がわずかに軌道をずらしたのか初球はギリギリきれてファールだった。
「ふむ、わずかに逸されたが、次はない。」
「クッソ、やっぱりリアルチート勢は強いな!だけど負けるわけにはいかねぇだろ!魔球・雷神ノ鉄槌!」
奇策はもう多分通用しない。だったら消耗覚悟で全力でぶっ潰すしかない。選んだ魔球は雷属性の魔球。しかも【魔纏】でボールを覆い、闘気を削れるように、対抗できるようにした上でボールに雷を纏わせた。これならダメージを与えられるはずだ。
「ふっ!無駄だ!そちらが魔でくるなら魔で対抗するだけだ!國士無双流闘気術・紅蓮!魔振・真空裂破!」
「何!?」
真田の闘気が突然変化した。その紅蓮の詠唱のように闘気の質が無機質なものから激しい炎の性質を帯びた。炎の闘気を身に纏った真田は槍の穂先に闘気を集中させ一気に解き放った。
螺旋を描いて闘気の槍が俺のボールと激突する。俺が使った魔纏はあっという間に削りとられ、雷は炎にかき消された。そして真田の魔振の威力を削げないままにボールに魔振が直撃する。
『何をうろたえている。我が召喚主。此度の遊戯には我がいるではないか。その程度の児戯が我に通用するはずもなかろう?空間魔法・断空』
「ルシファー!」
真田の打球が飛んだ方向にはルシファーがいた。そして俺の魔球を蹴散らしてなお、威力が全く衰えていない真田の魔振をたった1回の魔法だけで完全に封じこめてしまった。
ルシファーは空間魔法と言っていたがあんな魔法見たことも聞いたこともない。見た感じだと魔振もろともその空間を裂いたように見えた。そのせいか一瞬にして魔振が消し飛ばされていた。
そして一瞬の静止の後にゆっくりと落ちたボールをルシファーが無造作に掴んでアウト。これでツーアウトだ。
「な!?なるほど、そっちにも塾長並の怪物がいるってわけか。こりゃ一本取られたな。そんなわけだ。俺とそれから有地の敵は任せたぞ。倭」
「おう、任せとけ!」
真田の後にバッターボックスに入る男は日本刀を担いだ一人の男。この男も・・・!
「俺が筋肉塾総代、1号生筆頭の倭建命だ。有地と真田の敵は取らせてもらうぜ。」
「そのセリフ前にも聞いたばかりだな。」
「強がるなよ。真田との戦いを見る限りじゃお前さんは技の種類は多いけど威力が高い攻撃手段は持ってないんだろ?」
「・・・」
「肯定も否定もせずか。まぁ、いい。安心しろ、塾長に回すまでもねぇ。ここで俺がけりをつけてやる!」
この男が筋肉塾の総大将、倭建命か。確かに真田と同等かそれ以上の闘気とそして何より【百科事典】で見ても不明な項目がいくつかある。つまり俺の【百科事典】を弾けるだけの何か隠蔽系スキルを持っているのか、それとも何かしらの方法があるのか・・・
「覗きはおすすめしないぜ?どうせ見えねぇよ。」
どうやら倭が何かしているようだ。そして見えたものの刀術だの体術などで一向に参考にならない。何も見えてないと言っても過言ではないな。
はぁ、やれやれ。どうしてこうも強敵ばかりが立ち塞がるかねぇ?まぁ、倭の言う通り、俺には決め手となる大技がない。昨日今日で【魔纏】を身につけた俺とは違って奴らはずっとこのゲーム内やリアルで闘気と触れ合っている。それこそ年季が違う。そんなの相手にまともに力勝負しても勝てるわけがねぇんだよなぁ。
仕方ない。勝負はやめるか。もう相手の土俵で戦ってやらない。俺の持つ全ての能力を使って徹底的に嵌める。
倭の言葉には一切答えずボールをただ無造作に投げる。それはなんの変哲もないただのボール。魔球の威力は一切ない。極々普通に投げただけのボール。
「勝負を捨てたか?魔振・猛虎闘撃破!」
倭の持つ刀から闘気の虎が飛び出し、意思を持つように天を駆け俺の投げたボールを捉えようとする。
もちろんなんの変哲もない俺のボールは一瞬にして虎のアギトによって硬く咥えられ、そのまま闘気の虎は走る、奔る、疾る!
ルシファーのところはやばいと本能で理解しているのか的確にそちらを避けている。途中で他の守備陣にもダメージを与えようとするのか飛びかかろうとしたところで俺は魔球を発動する。
「遅効性魔球・召喚術」
俺の魔球が発動。虎の口に頑固として咥えられていたボールは一瞬にして俺の手元に召喚された。
「ピッチャーフライ、アウト!スリーアウトチェンジ!」
「なんだと?」
「残念だったな。倭建命。俺には一撃必殺の技なんてないが、手立てはいくらでもあるんだよ。そもそも俺は召喚師。ましてや過去の英霊を召喚して共に戦う召喚騎士だ。ボールの召喚ぐらい可能だ。あんまりゲーマー舐めんなよ?」
灼熱の大地が形ふり構わずその身を焦がす球場での攻防はまだ1回が終了したばかりであった。
ここから試合はさらに熱く燃え上がる。
有地・・・◯樫
真田・・・伊◯臣人
倭建命・・・剣◯太郎
でした。簡単だったかな?




