第66話 第1回戦 VS世紀末①
前回のあらすじ
・予選だよ
・注目チームを紹介するぜ!
本戦の一回戦が始まる。ランダムでチームが選出され、ランダムに決まる球場へと飛ばされる。そんな俺たち【高天原】の相手は全員が全員、トゲ付き肩パットにカラフルなモヒカンという超個性的スタイルのチーム名【世紀末】というチームだった。
球場は時間とともに水かさが増してゆき、最終的には水没するという超悪辣な「ウォーターフィールド」という球場だった。
「初戦から一段と濃いチームに当たったもんだな。」
「そうだね。彼ら自体は有名だけど予選では目立った活躍はなかったはずだよ。まぁ、あの風貌が目立つことを除けばだけどね。」
「ウノの街では見かけなかったけどな、あんな奴ら。いたらエリックが間違いなくしょっ引くだろ。なんかヒャッハー!とか叫んでるし?」
「彼らなりに気合の入れ方だろうけど、あれは流石に近寄りがたいね・・・」
俺とレイの視線の先ではなぜかユニフォーム姿にトゲ付き肩パットを生やし、帽子を突き破って乱立するカラフルなモヒカン達が集まってバットを舐めながらヒャッハー!となんども叫んでいた。
『なぁ、桃。あいつら焼却していいか?なんか知らないけど、汚物は焼却しろって俺の中の何かが騒ぐんだ』
なかなか珍しいユニフォーム姿のフェルドが何か|危険なこと(著作権に触れそうなこと)を言っておる。確かに俺もあの世紀末の住人を見ると無性に燃やしたくなるがここは我慢だ。流石に先制攻撃はスポーツマンシップに反している。
「試合になったら燃やせばいいと思うよ!」
話を聞いていたレイが素晴らしい黒い笑顔でフェルドに告げる。どうやらレイもあの集団は気に食わないようだ。
時間が来てホームベースの前に整列するとその異様さがより克明に伝わってくる。はっきりいうと燃やしたい!!!よし、今回の魔球と魔振は火属性メインで心ゆくまで燃やし尽くす!!!
さて、こちらのチームの先発メンバーを紹介しよう。1番センター:レイ、2番ショート:クリスタ、3番ピッチャー:桃、4番ファースト:フェルド、5番サード:ルーセント、6番セカンド:ヴォート、7番キャッチャー:ヴィクティム、8番レフト:アーク、9番ライト:レオーネのオーダーだ。
ちなみにルシファーは最後の切り札にしてバランスブレイカーなので控えに回ってもらったよ。だってルシファーには誰も勝てないもん。
「プレイボール!」
両チームが位置につくとどこからともなく現れた審判用の謎ロボットがプレイボールを宣言。あれ、一度だけ主審やったことあるけど実際に言ってみるとなかなか気持ちいいぞ(どうでもいい作者の経験談)
しかし、あのモヒカンども、打席に入ってもヒャッハー!ヒャッハー!とまじでうるさい。それにあのバット、舐めてたやつだよな?ばっちい。燃やそう!
記念すべき俺たちの第2回イベントの開始の合図だ。ド派手にかましてやろうじゃんか。第1球目はこいつだ。
「汚物は消毒だー!魔球・超炎ノ爆撃!」
ボールに込められた俺の熱き思いが爆発力となってモヒカンAに襲いかかる。しかしここは本戦でこいつらはこんな格好をしていても本戦に出場してきた猛者達、そう甘くはなかったようだ。
「ヒャッハー!そうくると思ったぜ!魔振・大津波!」
モヒカンAの放った魔振が俺の魔球の威力に打ち勝った。くそ、魔法自体はこっちの方が上なのに、地形効果で逆転された!
そう、今回のイベントでは球場も大きな鍵となる。例えば今回だと水がどんどん出てくるフィールド。その分水属性や氷属性の魔球や魔振の威力が増す。そのせいで俺の魔球が完全に押し負けた!
打球が飛んだ方向は三遊間。ルーセントとクリスタめがけて通常よりも威力を増した津波が襲いかかる。ただでさえフィールドには足首まで水かさがある中でこの津波、普通なら第ダメージもんだ。
そう、普通なら。
『水と氷を司る私に水属性の魔法?舐められたものね!』
こっちのショートを守るのは水と氷の英雄のクリスタだ。当然、水の扱いは手足を操るようなもの。力は制限されているがクリスタにとってウォーターフィールドはまさに本拠地そのものと言っても過言ではない。
まぁ、何が起こるかというとだ。ユニフォームに刻印した水魔法を操り、水上を滑るようにして一瞬にして津波に真正面に移動したクリスタはそっと津波に手を触れた。するとそれもまで全てを飲み込まんとばかりに荒れ狂っていた津波が一瞬にして凪いだ。
「なに!?」
クリスタは勢いを失って落ちてきたボールを拾うとそのまま1塁に送球。あっけなくモヒカンAはアウトになった。
原理は俺にもわからない。けど六英雄たちは全員進化した途端にこの技を使えるようになった。自分の属性の魔法系スキルの完全無効。どうやってやるのか聞いてみたところ、込められたMPや威力、速度などを全く同じにして逆ベクトルの魔力をぶつけるらしい。うん、全く理解できない。
それはともかくとしてアウトを1つ取ることができた。しかし、あのモヒカンのせいで水かさが増した。もうすでに脛まで水が上がってきている。やはり時間をかけるだけ不利だな。
でもこっちにはクリスタがいる。水が増えれば増えるほど彼女の独壇場になる。そして今の攻防でこっちには水系のスキルは通用しないってモヒカンどもの足りなそうな脳みそでもわかったと思う。
さて、次はどう攻めてくる?
「でもやっぱり汚物は消毒だー!」
【百科事典】は刻印できなかった。つまり相手の情報が不明だ。不明なら不明で力によるゴリ押しを選択するのがベターだろう。それにまだ序盤。ここで他の手の内を晒すなら愚直に燃やし尽くす方がいいはずだ。
「ストーライーク!」
魔球を込めたが見逃された。けどど真ん中なのでどうせストライクだ。
「ヒャッハー!見え見えの魔球なんかに手を出すかよー!」
そうきたか。要するに俺たちが予選でやった魔球見逃し作戦だな?でも無駄なんだよ。魔球が炸裂し爆発がキャッチャーのヴィクティムを襲う。しかしヴィクティムは微動だにせず、ほぼ無傷だ。
それもそのはず、ヴィクティムは六英雄の中で1番防御力が高い。物理でも魔防でもだ。そのハイスペックな守りをさらに強化するのが俺の刻印。物理魔法防御(極大・不動)を刻印した。これは動けなくなる代わりに物理と魔法に対する防御力が極大になるというピーキー仕様だがこのイベントでは特に相性がいい。
ルシファーの明けの明星ぐらいじゃないとこの状態のヴィクティムにダメージを与えることは困難だ。
ダメージを受けた様子のないヴィクティムにモヒカンBが驚いている間に2球目を投げる。動揺していたのか魔球ではないのに打ち損じてファールでツーストライク。
追い込まれたモヒカンBはかなり動揺しているように見える。全く、世紀末のモヒカンがヒャッハー!って言わなくなったら終わりなんだよ?それじゃ打ち取らせてもらおうか。
モヒカンBに投げる3球目は少し違った魔球にしよう。追い込まれたこの状況なら絶対に振る。その確信の元で第3球目を投じる。
ブン!なんかの魔振は発動させようとしたものの、バットは大きく空振り、一拍ほど遅れてボールがキャッチャーミットの中に飛び込んだ。
「ストライーク!バッターアウト!」
審判の宣言と驚いた表情のモヒカンB。ふふふ、さぞや驚いたことだろうよ。だって捉えたと思ったボールをバットが素通りして空振り、しかも遅れてボールがやってきた。うん、あれは初見では絶対に無理だろうな。
俺が使ったのは今や統合されて上位化してしまった【幻炎】のスキルだ。名付けるなら魔球・夢現ノ白球かな?くっ、中学2年生の病気が疼くぜ!
これでツーアウト。さてここまでは上出来かな?次のモヒカンは・・・緑か。ここから先は主軸。気合い入れて抑えに行くとするか!
たった4球投げただけで1話使うとか・・・




