第61話 レベルアップ!
前回のあらすじ
・燃やすぞおっさん!
以上!
落ちてきた魔物はゴブリンやらオークやらコボルトやらの本当に雑魚と呼ばれる魔物ばかりだ。確かにこれは召喚騎士としてレベルの高い人たちからしてみれば旨味がない。この仕事が塩漬けになるのも納得だな。
けど今の俺からしてみればこれほど美味しい依頼はないな!俺を見つけてよだれを垂らして襲ってくるゴブリン達を片っ端から斬り伏せる。武技や魔法スキルは封じられているが、それでも【戦場に立つ獣王の舞】や【鬼神の連撃】とかの補助系スキルは封じられてない。だから俺は戦えば戦うほどに強くなる!
「フフフ!これはいいですよ!溜まっていた魔物が一気に消化されていきます!次いきますよ!」
外野でおっさんがテンション高めに魔物の追加を宣言しやがった。最初に落ちてきた魔物は一掃し終わったが息つく暇ものなく次の魔物が降ってきた。
あのおっさん、これが終わったら絶対に燃やす!!!
とりあえず追加で降ってきたゴブリン(レベル42)をスライスしながらオークの顔面を蹴り抜き、コボルトの早贄を量産する。時折出てくる少し強めのゴブリンジェネラルなんかは入念に四肢をすり潰して殺す。
どんなシステムかは不明だが、ちょうどよく俺の適正レベルの魔物をまとめて投入してくれるので経験値がガンガン溜まってゆく。3時間ほどハイテンションのおっさんに殺意を抱きながら魔物と戯れているといつの間にかレベルが50の大台に乗っていた。
魔物が途切れたところを見計らっておっさんを血祭りにあげようと思ったが俺が戦闘エリアから出た頃にはなぜか知らないがおっさんの姿は消えていた。ちくしょう、逃げられた!
まるでどこかで見ていたかのようにタイミングよく警備員の筋肉おじさんが現れて入り口まで案内された。受付であの魔物量からするとスズメの涙ほどの報酬を受け取って研究棟を後にする。あのおっさんはムカつくがレベルが跳ね上がったことは確かだ。
研究棟のお姉さん曰く、明日もお願いしたいとのことだったので同じ時間に来る事にしよう。人が全くいないこの状況を活かさない手はないからな。
研究棟を出た俺は拠点に戻る。レベルアップして上昇したステータスと感覚のずれを調整しないと大変な事になる。特に俺の場合は六英雄神の寵愛もあって1レベルあたりのステータスの伸びが激しい。
従来のゲームではステータスアップは単なる恩恵だけだったがフルダイブ型のゲームの革命児とも言えるIWOではステータスアップは感覚のずれに繋がる。まぁ、現実世界でゴリゴリのマッチョメンや人外レベルの身体能力を持った人がこのゲームをやっているとしたらレベルアップすればするほど現実世界での自分の肉体性能に近づいてゆくが、一般人である俺は最初からほとんど違和感なく動けていたからな。レベルが上がれば上がるほど調整は必要になるんだよ。
そんな訳で庭先で英霊たちと模擬戦を繰り広げる事にする。地形や相手へのダメージ、それから手札を気にせずに全力で挑める相手は英霊たちしかいないからなぁ。
六英雄を全員召喚して決闘システムを起動する。英霊たちはこの決闘システムでなんども対戦しているせいか、決闘システムの起動と共に武器を抜き、システムの起動が終わったと同時に近くにいた相手に攻撃を仕掛けた。
俺もフェルドに攻撃を仕掛けたクリスタのがら空きの背中に攻撃を叩きこむ。うん、前は全然捉えられなかった六英雄たちの動きがわりかしはっきりと知覚できる。レベルアップの恩恵は大きいな。
さて、俺の攻撃だが、切っ先がクリスタに触れた瞬間にその切っ先から一気に凍りついた。どうやら全身に氷属性の魔力を纏っていたようだ。・・・いや、クリスタだけじゃない。他の六英雄も全員自分の得意な属性の魔力を纏って戦っている。
彼らの動いた軌跡が溢れ出した魔力が残滓となってはっきりと見える。うーん、これ、俺が何をしても無駄じゃね?強いて言うなら【獄炎】を纏うぐらい?いや、その【獄炎】もフェルドの展開している聖炎結界で無効化されるなこりゃ。
1段階進化した英霊たちに俺がついていけるはずもなく、ステータスアップによる感覚の微調整と言う名目で始まったこの戦いは、召喚主たる俺の圧倒的な敗北で幕をおろす事になった。
実に4時間以上彼らに殺され続けた結果、レベルアップによるステータスの違和感は完全になくすことができた。まぁ、これが唯一の救いだろうな。
決闘システムを解除すると同時に家のソファーに倒れこみながらログアウト。今日はもう疲れたよ。パト◯ッシュ・・・
翌日もレベリングとプレイヤースキルを鍛えるために魔物廃棄場と鬼ヶ島を行き来する。廃棄場のおっさん、昨日で味をしめたのか魔物の量を一気に増やしやがった。こっちは広範囲攻撃が全く使えないって言うのによ!いつか絶対にぶちのめす!!!
でもまぁそのおかげでレベルは上がる上がる。なんとまたレベルが2も上がったよ。一体俺はどれだけ倒したのやら。そしてあの研究棟には一体どれだけの廃棄魔物がいるんだ?
鬼ヶ島はあんまり進歩なしだな。レベルが上がった分だけ引きさがれるようになったのはいいけど出てくる鬼のレベルもそれに合わせて上昇しやがるから強くなった実感があまりないな。
で、報酬はランザとルビー君に俺の装備の素材として進呈しておく。鬼ヶ島の素材は高級素材。その分経験値も多いはずだ、どんどん生産してどんどんレベリングして良いものを作ってもらいたいな!
今日は冒険者ギルドに顔を出してウノの周辺の依頼を受けて魔物を狩りつつ感覚の微調整を行う。やっぱり多少のズレはあるもので首をスパッとするつもりが勢い余ってぐしゃっと潰れてしまうことが何度かあったが1時間ほどゴブリンの首なし死体を量産していくうちに違和感はなくなっていた。
依頼達成の報告を終えてその辺の屋台で買った串焼きをつまみながら拠点へ帰って行く最中にアナウンスが流れた。
<おしらせします。プレイヤー名「アーサー」がプレイヤーの中で初めてレベル60に到達しました。これにより新しい職業機能が解放されます>
<三次職への転職が可能となりました>
<セカンドジョブが解放されました>
<解放された職業機能につきましてはレベル60になるとご利用いただけます。なお、レベル60に到達した後に獲得した経験値につきましては次回のレベルキャップ解放まで蓄積されます>
<おしらせします。レベル60に到達したプレイヤーが現れたため一部住民のレベルが上昇します>
<おしらせします。ワールドクエストが進展しました『蠢く闇』を開始します>
おお!?なんかいろんなアナウンスが流れたぞ!?一つ一つ確認してみるか。プレイヤーレベルのキャップに到達したのはあのアーサーか。どうやら彼は精力的にレベリングに取り組んでいたらしい。どうせトレスの迷宮だろう。ご苦労なことだ。
それで注目するべきは三次職への転職とセカンドジョブか。こうやって分けているってことは三次職はこれまでのように進化するタイプ、そしてセカンドジョブはサブ職業の解放ってところだろう。今回のイベントではこの職業たちが鍵になりそうだな。
住民のレベルアップは統治機構として必要だから別にいいとして問題なのはワールドクエストの更新だな。名前が「蠢く闇」か。前回のことを踏まえるなら今回のイベントで何か仕掛けてくるのか?
いや、でも今回は野球大会だしなぁ。動きがあるとしたら次はPvP大会だと思うんだが・・・。考えても仕方ないな。
とりあえず召喚院のカインとサーシャ、それからここウノの街の中心人物たちには俺たちの神様から啓示があってあのメライス六魔将が動き出す可能性があることだけはメッセージで伝えておこう。
さて、少し早いが今日はこの辺で終わりにしようかな。明日にはレイからも返信がくるだろうし、それに大会に向けてスキル上げも並行してやらなかきゃな。明日は忙しくなりそうだな。




