第59話 第2回イベント告知!
前回のあらすじ
・ゴーレム相手に無双
・手品はチートでは?
・天下無敵!!!
「お知らせ?一体何だろうね?」
「レイのところにも来たのか。ってことはワールド系かな?とりあえず確認してみるか」
「そうだね」
俺とレイは揃ってお知らせの内容を確認する。件名は「第2回公式イベント開催のお知らせ」か。第1回の王都防衛戦が終わってから現実世界で約1月が経過した。プレイヤーのレベルも上がってきただろうしそろそろ2回目のイベントが開かれてもおかしくはないわな。
メッセージをタップして詳細を確認する。えーっとなになに、イベントのタイトルは【No Baseball No Life】か。ベースボールってことは野球がテーマのイベントなのか?まぁ、とりあえず詳細を確認しようかね。
・剣と魔法の世界で野球大会を開催
・普通の野球ではなく剣と魔法、スキルを用いた超次元野球(一部スキルに制限あり)
・人数は1人から参加可能。最大で9人まで
・イベント開始から1週間(現実時間)は予選のレートバトル。
・レート上位がトーナメントを行う
・参加賞あり、本戦出場、上位入賞でも豪華賞品あり
・野球に関する諸要素はファンタジーなテクノロジーでみんな楽しめる仕様となっている
・使用される球場は次回イベントPvPで使用するフィールドと全く同じ
・詳しくは公式生配信で発表。
ざっとこんなところだろうか。よくわからないけどスキルを使って野球をするみたいだな。いわゆる超次元サッカーやテニスの野球版と考えればいいか。後のイベント内容はやってみないとわからんな。
参加するか迷うけど、公開されてる4位までの報酬が王都防衛戦より豪華なんだが?これは参加するしかないかなぁ。それにPvPのフィールドを事前に経験できるのはありがたいな。参加しない理由は見当たらないな。
「桃、読んだかい?」
「おう、ちょうど読み終わったぜ。新イベントの告知だったな」
「まさかここで野球なんて色物イベント持ってくるなんてね〜。ここの運営は何考えてるんだろうね?」
「どうせあの室長とかいう奴が悪ノリして強行したんじゃねぇの?で、レイは参加するのか?」
「うーん、どうだろう?参加しないメリットはないけどパーティーのみんながどうするかかな?その後PvPがあることが正式に発表されたしフィールドは経験しておきたいかも。それに報酬が結構豪華だからね。僕はダンジョンで結構装備を更新できたけどまだまだ揃ってないからね。それを狙って参加するのは十分ありだと思うよ」
「だよなぁ。どうなるかわからないけど参加しないって手はないよなあ。」
レイは参加予定と。俺ももちろん参加する方向ではあるがイベントの詳細が全然見えてこない。もし、運営がテニスや超次元サッカーみたいな野球を期待してるなら魔球とか必殺打法とかをスキルで再現して戦うのか?
「詳しいことはまた放送するみたいだよ。結局、それを待つしかないみたいだね〜」
レイの言う通り、お知らせの最後には公式生放送の開始時間が記載されてた。急な話だけどこっちの時間で1時間後だそうだ。随分と急な話だがここの運営に文句を言っても仕方ないな。どうせあの室長とやらが独断で始めたんだろうよ。
レイと迷宮での成果を報告しあっているとすぐに時間が過ぎ、気がつけば公式生放送が始まろうとしていた。
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『ハァーイ、みなさんおはようこんにちこんばんわ。室長です♪それでは!第二回イベント告知公式生放送を開始するよー!』
いきなりのハイテンションで始まった公式生放送。そのあまりのキモさに俺とレイがドン引きしている。
『なんと!今回は古き良き時代の生放送みたいにコメントが流れるように設定してみましたー!みなさんどんどんコメントしてね?』
そう室長が言った瞬間に画面を埋め尽くすほどの室長に対する罵詈雑言。自業自得だな。中には秘書さん出せとかなんかよくわからんコメントも流れている。
『室長?遊んでないで仕事をしていただけますか?』
そして聞こえてくる直接言われていないのに背筋が凍るような冷たい声。一部のファンの願いが通じたのか、どうやら秘書さんの登場のようだ。
『わ!?なんでここが!?』
『監視カメラで常に室長の動向は監視しておりますゆえ』
『プライバシーって概念知ってる?』
『存じ上げておりますが、あいにく、室長に関してのみプライバシーは適用されません。それよりも早く告知をなさってください。室長がごり押ししたイベントなので』
おっと、まさかの室長がごり押ししたイベントだとは。変なイベントだからどうせこの人が主犯だろうと思ってはいたけど本当にそうだったとは・・・
『えー、じゃあもっと遊んでたかったけど始めようかな。みんなお知らせはみてくれたと思うけど、今回のイベントは野球がテーマだよ!いや、ずっと前から思ってたんだけど、サッカーとかテニスって必殺技ってあるじゃん?人気漫画で。でも野球ってないよなーって思ったのがきっかけなんだよねー。だからちょっとやってみようって思ったのさ。』
『このイベントの企画の発端はそんな動機だけど中身はちゃんと作ったから安心してね?まずは何をするのかーってわかんない人も多いだろうから、スタッフが試しにやってみたプレイ動画をみてもらおうか。はい再生ー』
画面が切り替わり、仮想空間にある野球場が映し出された。そういえばお知らせではPvPで使用するフィールドとか言ってたけどぱっと見は普通の野球場のようだな。
また画面が切り替わり選手が映し出された。人数比は4対9で4人の方は全身黒タイツっぽい表情のない人型が選手として加わるようだ。
『はい、一回ストップね。本来野球は9人でやるものだけど今回は人数を問わないよ。多い方に人数が合わせられる。その数合わせには今見てもらったように黒タイツ君が参戦するからね。またあとで説明するけどこの黒タイツ君は野球に関する基本動作プログラムしかインストールされてないよ。それじゃあ続きをスタート』
再び切り替わった画面が写し出しているのは野球中継であるような構図。しかし少し違うのは各選手の頭上にはHPバーみたいな緑のバーが表示されている。
そしてピッチャーがボールを投げた。バッターはそれを打ってセカンドゴロでアウト。ここまではなんの変哲もない野球だな。緑のバーにも変化はない。ちなみに今攻撃している方は人数が9人の方。セカンドの守備についているのは例の黒タイツ君で軽快にゴロを捌いてアウトにしていた。なるほど、野球に関する基本的な動きをインストールしてるってのはこういうことね。
映像は進み、2人目のバッターが打席に入った。このバッターも見た目は変わらんな。ピッチャーがボールを投げた。当然のようにバッターはそのボールを打ちに行ったが、バットがぶっとい釘でも打ったかのようにひしゃげてしまった。
そしてそのボールはキャッチャー(黒タイツ)の腹部に刺さり、緑のバーを8割ほど削った。
『はいストップ。見てくれたかな?これが魔球だね。ボールに【槍術】の武技【一閃突き】を発動して投げるとその効果が発動するんだ。今のはほんの一例だけど、魔法を発動することもできるよ!そして今回のイベントではフレンドリーファイヤーを実装した。今見てもらったように魔球を何の対処もせずに食らうとダメージを受ける。そしてHPバー、あ、頭の上に表示されてる緑のバーね。これがゼロになるとその試合からは除外される。このイベントの勝ち負けは普通に規定回まで行うか、相手チームを全員ゲームから除外するか、その2つだよ。ちなみに、デッドボールでもHPは削れるから気をつけてね〜。それじゃあ今度は魔球に対抗する魔振について説明するよ。はい再生ー』
うーん、マジかこれ。結構ハードな内容だな。このイベントはバットやボールを媒介にスキルを発動して派手に相手のHPを削りながら点をもぎ取る超脳筋バトル漫画的野球なんだろう。デッドボールにもダメージがあるとか怖いな。こりゃデッドボールだけを狙う輩とか出そうだな。注意しなくちゃ。
画面が切り替わる。状況はワンストライクノーボール。ピッチャーが振りかぶり第2球目を投げた。今度も【一閃突き】が発動されている槍のように尖ったボールだ。
「魔振・タイダルウェーブ」
うお!?インパクトの瞬間に津波が出現してボールを飲み込んでピッチャーもろとも押し流した!?ボールを飲み込んだ津波は瞬く間に内野を埋め尽くした。突然のことで全く対応ができない黒タイツ君たち。その間に打ったバッターは波に乗るように悠々と1塁を蹴って2塁へと進もうとしていた。
「させるかよ!魔球・ブリザード!」
しかし、プレイヤーの1人がボールのところまで猛烈な勢いで泳いでいくとボールを掴んで魔球をセカンドベースに向かって投げた。途端に海水が凍りつき、打ったバッターの足まで一瞬で凍りつかせた。
ランナーはそれ以上進めず、ボールを受け取った他のプレイヤーにタッチされてあっけなくアウト。しかしその魔振は多くの黒タイツ君を押し流し、プレイヤーにも少なくないダメージを与えた。
『はい、今のでわかってもらえたかな?これが魔球と魔振だよ。君たちにはこの2つを駆使して戦ってもらいたい。細かいルールを言うと、このイベントではスキルの発動がバットとボールとを通じてしかできない。だから状況を打開するにはボールに触れる必要があるね。だからボールには不壊属性が付与されているよ。で、もちろん今回のイベントが戦闘職だけのものって訳ではないよ。むしろ上位を狙うなら生産職の協力は欠かせないよ。今回のイベントではバット、グローブ、ボールが試合開始と同時に支給される仕組みになっている。これらのアイテムは生産の素材になるんだ。それも職業が生産職ならすぐに加工できるようになっている。で、加工した道具を使うと魔球と魔振の効果が1.5倍になる。魔法だろうと武技だろうとね。だから生産職の有無は大きく試合に影響するよ。』
『あと細かいルールだけど、球場によって特殊条件があったり、タイブレークで始まったりする。その辺は完全にランダムだから臨機応変に対応してね?あとは予選のレートバトルだけど参加する方法は大きく2つ。このあと開設される各町の冒険者ギルドに設置されるイベント専用受付でランダムマッチをするか、街の中でイベントに参加してるプレイヤーや住民に試合をふっかけるかのどっちかだね。そうそう言い忘れたけど住民も参加するからね。で、街中での試合は勝っても負けてもレートが2倍変動するから気をつけてね。あと、挑まれる方はレートが100以上、上に離れていると拒否できないよ。格下に100以上離れて挑んで負けた場合はレート半減かつ現実世界で24時間試合ができなくなるから注意してね。細かいルールはこんなところかな?あとでまたお知らせとホームページで掲載するけど、まだ放送時間あるし、疑問があればコメントしてねー。拾っていくよー』
俺は特に質問がなかったのでここで画面を閉じた。隣のレイも同じように画面をちょうど閉じるところだった。
「なかなか面白そうなイベントだね。」
「そうだな。案外魔球とか魔振とかって心が踊るもんだな。あんまり乗り気じゃなかったけど全力で挑もうとは思っているぞ」
「ふふ、僕もさ。あとはパーティーメンバーがどう言うかだけど。あ、噂をすれば集合がかかってる。僕もう行くね!今日はありがとう!」
パーティーメンバーに呼び出されたレイは慌ただしく拠点を出て行った。さて、時間も遅いし俺はログアウトすっかな。明日からはレベリングと戦術でも構築するかな。それじゃおやすみ。
イベントでわからないことがあればご質問を〜
それから、いつぞや募集してたレインボーランダムオーブ、そろそろ登場させようと思います〜まだまだ募集しているのでじゃんじゃんどうぞ!




