第54話 トレスのダンジョンー3
前回のあらすじ
・【全反撃】炸裂!
・ユニークボス!?
・【獄炎】強化!!!
ログインしました。今日もプレイ可能時間としては昨日と同じぐらいで現実時間で3時間ほど。今日はできればレイが【剣鬼】の称号を獲得できるエリアまで進むことだな。昨日到達した20階から下は適正レベルが40を超えてレベリングにちょうどよくなってしまう。
魔物と一層強力になる罠を避けて進むんだ。時間がかかるのは仕方ないだろうな。もしあまりに時間がかかるようなら英霊たちの力を借りるのも視野に入れないとなぁ。
そんなことを考えているとレイがログインしてきた。
「おっと、待たせてしまったかな?」
「いや、俺も今来たところだ。早速だけど行くか?」
「もちろん行くとも!」
レイの準備はログインした時にはすでに出来ていたようでそのまま拠点を出てトレスへと転移する。直接ダンジョンに転移しないのはシステムに弾かれて出来なかったからである。
ゲーム視点でシステムに弾かれたと言ったが、おそらくダンジョンは異次元空間となっているために脱出は出来ても侵入はできないといったところだろうか?転移に必要な座標軸を特定できなかった感覚だった。
ダンジョン前に移動する俺たちを周囲のプレイヤーたちが遠巻きに眺めてくる。俺とレイにリアルでも交友関係があるのは知れ渡っているはずだからさほど珍しくもないだろうに。まぁ、芸能人が街中に現れた程度の反応なんだろうな。
ダンジョンの前で転移の魔法陣に乗る。ここのダンジョンは1度行ったことのある階層には直接転移ができる仕様になっている。他のゲームでは一度抜けたら最初からっていうダンジョンもある中で、この仕様はなかなかにプレイヤー思いの仕様と言えるだろうな。
さて前置きはこれぐらいにしてダンジョンの攻略を続けよう。昨日は変なボスにエンカウントしたので今日は20階のボスからスタートだ。
「「「「「GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」」」」」
足を踏み入れると咆哮の五重奏が俺たちを出迎えた。どうやら今回は普通のボスを引いたようだ。レイが言っていたようにオーガが5体。それぞれが鬼の金棒のような棘の付いた棍棒を持っている。
「今度は普通のボスみたいだね。どうする桃?」
「そうだな、時間がないから速攻で片付けるか。【獄炎】からの波状の獄炎」
獄卒のピアスによって強化された獄炎が一瞬で広がり、迎撃しようとオーガが振りかぶった棍棒ごと一切合切を燃やし尽くしてその悉くをドロップ品へと変化させた。
「・・・相変わらず君の攻撃はチートじみたものが多いねぇ」
「これぐらいだったら一撃で無効化してくる奴らばっかりだぞ。住民には」
「桃が一体どんな人たちと知り合いなのか興味があるけど聞くのが恐ろしいね」
「まぁ機会があれば紹介するよ。とんでもなく強い人たちばっかりだけどな。俺が手も足も出ない奴らばっかりだ」
そんな話をしながらドロップ品を回収する。いくつかのオーガ素材に混じって棍棒もドロップしていた。
「そういえばレイたちはここを周回してるって言ってたよな?その理由ってなんなんだ?」
「僕たちの目的はその棍棒さ。見た目は普通の棍棒だし、【鑑定】してもただの棍棒だったんだけどね。これ、実は【錬金術】の素材なんだよ。しかも分解専用。試しに分解してみた錬金術師のプレイヤーの情報だと総重量の1%ほどだけどミスリルが含まれていたんだって。」
なるほど、ミスリルね。それがこんなところでドロップするとはな。うん、【鬼ヶ島】で散々手に入れてランザとルビー君に渡してきたことは内緒にしておこう。きっとそのほうがみんな幸せだ。
そういえば俺も【錬金術】のスキル持ってたような気がする。ドロップしたのはちょうど2本だし、レイと山分けだな。
ドロップ品を回収して下の階に向かう。レイの情報によれば21階から25階に出てくるのは20階のボスだったオーガと同じぐらいの大きさだが全身が脂肪で覆われていて動きは鈍いがその代わりに耐久力に優れ、繰り出される攻撃の半分がクリティカルとなる面倒なトロールが出現する。
オーガは1体〜3体、トロールは単体で出現してくる。ここの階の適正レベルは45。ちょうど俺の適正レベルだな。レイはもう少しレベルが高いからガンガンレベルが上がるってことはないけどこの先のことを考えれば少しでもレベルは低いほうがいい。
目当ての階層にたどり着くまでの俺がメインで戦闘した方がいいかな。
「レイ、これ以上レベルをあげるとこの後がきつくなるだろう?ここから先は俺に任せてくれ。」
「・・・そうだね。僕をしっかり守ってくれよ。」
「おう、任せろ」
レイが俺の後ろに下がった。
「よし、出てこいアルバセロ!ヴォート!アーク!レオーネ!」
俺は4人の英霊を召喚する。ここから先、殺意の高い罠がどんどん出てくるので俺は【探索魔法】に専念したい。そうすると戦闘できる人間が減る。なので彼らを頼ろうとしたわけだ。
「アルバセロとヴォートは前衛で俺と一緒に索敵と戦闘。索敵は俺がメインでするから戦闘をメインで頼む。」
『おう!任せてくれ!』
『わかったよ。ここは閉じた洞窟ではなさそうだ。風があるなら僕の力も活かせるからね。任せてくれ』
「アークは殿で後方の警戒、それと余裕があれば遊撃として動いてくれてもいい。それからレオーネはレイの護衛と俺たちの誰かが負傷した時に備えてくれ」
『おう、わかったぜ』
『はい!お任せください!』
英霊たちの頼もしい返事を聞き、俺たちは行動を開始する。俺の【探索魔法】と察知系のスキルで魔物の気配を探り、罠を見つけ、レベルが上がったことで使えるようになった「罠作動」を使い、見つけた罠を作動させて無効化してゆく。
途中で出てくる魔物は全てアルバセロの持つ大剣によって真っ二つにされ、突然地面から生えてくる岩の槍に貫かれる。また別の魔物はヴォートの放つ風の魔法に切り刻まれ、ランスで貫かれる。そしてヴォートは合間合間に【歌唱】のスキルを使って俺たちを鼓舞してくれる。顔もエルフの特徴なのかイケメンだし、ほんと最高だわヴォート。
時折背後にポップした哀れな魔物は戦闘状態になったアークがその身から放っている獄炎に焼かれて死ぬ。その獄炎から逃れられたとしても一瞬でアークが倒してしまうので背後の問題は何一つない。
レオーネはアークの戦いを見ながら時折遠くにいる魔物を聖櫃で消滅させていた。それをレイと話しながら片手間にやるんだから怖いよねぇ。さすがは英霊で聖女だけあるよ。
「こうして見ると桃の力って本当に規格外だよねぇ」
なんのハプニングも起こることなくスルスルっと順調に25階にまでたどり着いた。確かここのボスはレベル50のミノタウロスが1体だったな。
「EX職だからな、まだまだ他のプレイヤーよりは総合力では上だろうな。ただ、召喚騎士の中じゃ多分俺が最弱。イベントの時王都のギルマスが言ってた上位統治機構に行ってきたわけよ。そこにはレベル100超えがゴロゴロいたぞ。」
「げぇ、何それ〜。そんなじゃ僕たちプレイヤーは一生住人には勝てないじゃんか〜」
「うーん、そうでもなさそうなんだよね。レイだから言うがこの世界にはまだまだ隠されていることが多い。例えばダンジョンだってここだけじゃない。俺はすでに隠しダンジョンを1つ制覇してるし、少なくともあと6つは最低でもある。それ以外にもこの国だけじゃなくて他の国にもまだまだ強くなる要素はある。まだ始めて半年も経っていない。諦めるには早すぎる。」
「そっか、そうだよね。あんまりに桃との実力が離れてるからちょっとネガティブになっちゃったなぁ。」
・・・こればかりは仕方あるまい。いつもはレイと肩を並べて戦ってたんだ。こうしてどちらかが一方的に強くなるなんてことはなかったからな。レイにも思うところがあるんだろうな。
「その話はまた今度にしよう。今はレイが強くなることの方が先だ。」
「うん、そうだね」
答えの出ない問いにいつまでの悩んでいても気持ちが停滞するだけで何の進展ものないならば今は体を動かすべきだろう。
扉を開けて中に入るとバタンと扉が閉まり魔法陣が出現。魔法陣が回転しながら光を放ち、中からミノタウロスが現れた。
「目的の場所はこの下なんだ。お前程度に時間を掛けるわけにはいかないんだよ!アーク!」
『おう!行くぞ桃!』
「獄炎龍」
『破滅の流星』
「『合技!|死と破滅を齎す無数の禍災龍!』」
ここで初披露となる俺とアークの合技。一発一発が全て相手を一撃で破壊する質量を持った獄炎の魔力の塊である「破滅の流星」を俺の「獄炎龍」が飲み込み侵食。
その結果、「破滅の流星」の威力はそのまま、いやむしろ向上した状態で、その全てが龍を型取り相手の一切合切を飲み込み、死と破滅を齎す。流星のごとく無数に襲いかかる龍から逃れる術はなく、幸運にも逃れられたとしても撒き散らされる獄炎にわずかでも触れればたちまち燃え上がりその身が朽ちてゆく。
まさに必ず相手を殺す技の意味での必殺技の完成だ。
流石のミノタウロスもこの技の前にはただただ死を待つのみであり、登場とほぼ同時。登場したよと咆哮をあげる間も無くミノタウロスは灰すら残さずに姿を消した。
最後の|死と破滅を齎す無数の禍災龍は某聖◯士◯矢の廬◯百龍覇的なあれです。




