第50話 更なる力をこの手に
前回のあらすじ
・トリミテウス戦
・魔法の乱打戦
・【全反撃】!!!
それから現実世界で1週間ほどが経過した。ここ最近は結構リアルで忙しくしていたために短い時間しかログインが出来なかった。
この1週間を少し振り返ってみよう。俺はログインするとすぐに鬼ヶ島へ直行して各種鬼のダンジョンを巡った。魔鬼、槍鬼×2回は確定として残る1回分を剣鬼と杖鬼を交互に周回することにした。
俺が槍鬼に力を入れている理由はもちろん苦手だからということもあるが一番の理由は第1回のイベントで総合ソロ討伐部門で優勝したβ最強のソロプレイヤーにしてリアル武人の槍使いの『白』を想定していたからだ。
あの時公式生放送でPvPが開催されると室長が漏らしていた。武人としてこのゲームに参戦している白なら絶対に参加するだろうし、確実に上位に食い込んでくるはずだ。槍使いなんて滅多にお目にかかることが出来ないし、出来るだけ訓練しておきたい。
そうそう、魔鬼のダンジョンで乱入してきた覇魔鬼トリミテウスとはそのあと1回だけ対戦した。前回は最後の最後に【全反撃】でやられたので大技を打たないように気をつけて戦ったが俺のMP切れであっけなく敗北してしまった。やはり壁は厚いようだ。
そのほかにも覇剣鬼護法魔王尊、覇杖鬼夢想権之助、覇槍鬼ゲオルギウスと対戦することが出来た。結果?聞くまでもないでしょ。魔法系ならまだしも武術系のガチボスに一介の大学生が勝てるとでも?
護法魔王尊は鞍馬寺に伝わる武の化身だし、夢想権之助は杖術で一番有名であろうあの神道夢想流杖術の創設者だ。ゲオルギウスは知らんな。ネットで調べた限りだと槍で龍を討伐した猛者らしい。
ここまで戦ってよくわかった。スキルが圧倒的に足りない!なので溜まりに溜まったポイントを一気に使うことを決意。【剣術】の上位派生スキル【刀術】【抜刀術】をそれぞれ4SPで取得。
【杖術】の上位派生スキル【神道夢想流杖術】を5SPで取得。これはなぜか知らないけど夢想権之助と戦った後にその動きをなぞるように繰り返し素振りをしていたら取得可能になっていた。
そして【槍術】の上位派生スキル【強槍術】というスキルを4SPで取得した。多分だけどこれは槍における俺の戦い方から生えたスキルだと思う。まぁ、詳しくはPvPの時にお披露目としようかね。
さらに【生命力操作】【闘気】【魔法陣】【料理】【錬金術】【付与魔術】を新規で取得。さらにレベル30になっていた【無属性魔術】を【無属性魔法】に進化させた。ここまででスキルポイントの消費は21。【魔法陣】に関しては以前購入してあった「魔法陣学入門」を読破したら取得できたので消費は0だ。
さらに、調べてみて初めて知ったのだが、俺の武器はそれ専用に特化されたものと比べるといささか弱いということがわかった。
幻創霊器ヴェルガンドは非常に強力な武器ではあるが物理攻撃力と魔法攻撃力の両方を兼ね備えている。俺みたいなどっちもこなす魔法戦士タイプには使い勝手がいいけど純粋に物理特化の武器の現在の最高水準が110なのに対して俺のは70だ。やはり相手がはっきりとわかっている時は特化した方が強そうだ。
そんなわけでランザとルビー君の元を訪ねて装備の作成を依頼した。召喚院の工房に頼ろうかなと思ったけどやはりここはもともとの付き合いを大事にしたい。特に武器に関してはね。というよりむしろ召喚院の方には頼めなかった。金がかかるし素材は全て自分持ちだった。
もちろんランザやルビー君に頼んでも金はかかるが召喚院の方は桁が1つ違った。下半身装備1つで散々稼いだ俺の全財産を超える金額を提示されるとは・・・
とにかく、これらの装備が出来上がれば今よりもはるかに強くなることができるはずだ。あとはレベルと俺自身の技術向上をするだけだ。
それからこれは説明せねばなるまいよ。俺が【料理】を取得した理由だよ。話は遡ること今から4日前。あのマーチンに食材を渡してからちょうど3日後のことだ。
俺はその時ちょうど鬼ヶ島へのチャレンジを終え、六英雄たちと追加の戦闘訓練を行なっていた時だった。六英雄には槍使いが2人もいるからいい訓練になるんだよ。
約束していた通り師匠とやらの元で【料理術】でドロップした食材を使った料理の修行を終えたマーチンがやってきた。
タイミング良く、クリスタを召喚していためにその場でマーチンが料理してくれることに。クリスタの願いは美味しいものをたくさん食べたい!だったから料理を本職でしているマーチンの料理には期待値がとっても高かったんだ。
しかし考えて見てくれ、もちろん肉系の食材はいい。ドラゴンの肉とかいかにもファンタジーって感じでうまそうだろ?けど渡した食材の中にはゴブリンの目玉を筆頭にトンデモ系の食材も含まれていたんだ。
さらに運の悪いことに肉系は料理のメイン。そうなると最初に出てくるのはゲテモノ食材を使った前菜。しかも何を思ったのかマーチンのやつ件のゴブリンの目玉の姿揚げを最初に出してきやがった。
そこから先は賢明な読者諸君は余裕で想像できるであろう?期待していたところいきなりのゲテモノ。それに当然のようにクリスタがブチギレた。
クリスタの放つ怒気が一瞬にしてあたり一面を氷の世界へと豹変させた。吹き荒ぶ吹雪がクリスタの怒りの激しさを物語っている。そしてその一面の銀世界から現れる無数の氷狼。その1体1体が確実にブラックウルフよりも強いことが感じられる魔力でわかった。
「お、おい、桃。助けて、くれるよな?」
あのゲテモノとクリスタの表情を見た瞬間に俺と他の英霊たちは逃げ出して遠く離れたところに避難していた。唯一逃げ遅れたマーチンだけがその場に取り残され遠くの方で俺へ助けを請うている。
しかし、それと同時に邪魔したら貴様を食ってやろうか?と言わんばかりの形相でクリスタが俺たちを睨みつけているのもまた事実。
怒れるクリスタとマーチン(その原因)どちらをとるのかと聞かれれば言うまでもない。
「そんなわけだ。骨は拾ってやるから安心して死んでくれ、マーチン」
「何がそんなわけだ!骨は拾うって安心できるかぼけ!」
そんな掛け合いをマーチンとしているとブチギレたクリスタ配下の氷狼が一斉にマーチンへと飛びかかった。しかしここはセーフティーエリアなので戦闘行為は俺が許可を出さない限り行えない。
もちろんマーチンが死んでもの困るので許可は出さないがこのセーフティーエリアの仕組みには実はこんな抜け道が存在する。
例えば戦闘行為ではなく単純なツッコミ行為は仕組みに引っかからずに相手の頭を叩くことができるように、狼と遊ぶということなら生み出された狼は存分にプレイヤーに触れることができる。まぁ、そうしなければもふもふ目当てでこのゲームを始めた人から大いに苦情がくるからな。
そう、今俺の目の前で無数の氷狼がマーチンに群がり、まるでボールのようにマーチンが空中を舞っているがこれはあくまでクリスタの生み出した狼がマーチンと戯れているだけだ。うん、そうって言ったらそうなのだ!
10分ほどだろうか?マーチンが空を飛んでいたのは。ここ最近の戦闘で空中を飛び回っている俺からしてみれば大したことではないがマーチンからしてみれば壮絶な体験だったのだろう。地面に落ちると同時に強制ログアウトで消えていった。
一応謝罪のメッセージを飛ばしておこう。これで関係がこじれてもまた未知の食材を手に入れたって言えば飛んでくるだろうしな。
この「マーチン空中乱舞事件」が発生した時から俺はクリスタの要望を叶えるべく【料理】スキルを取得したのだ。
【錬金術】は「魔法陣学入門」に魔法陣と錬金術は深い繋がりがあると書かれていたので取得。いつかは真理の扉に到達して両手を合わせただけで錬成ができるようになりたいもんだ。個人的には炎の大佐の方が好きだけど。
【付与魔術】はそのままの意味。これも錬金術や魔法陣との相性がよく、さらに戦術の幅も広がるので取得。そして【無属性魔法】へと進化もさせた。トリミテウスが使った消滅の光がなんとなく無属性のような気がしてちょうどレベル上限に達していたので進化させてみた。魔法のレベル1で使えるのは瞬間増力というMPを消費して次の一撃の威力を上げる代わりにその後10分間与ダメージが半分になるというなんとも言えないピーキー技だった。
そして今回の目玉が【生命力操作】と【闘気】。【闘気】はドラゴンなボールとかでサイヤな戦闘民族たちが戦う時に体から出てくるあれ。物理系のステータスをアップする効果だ!極めれば空とか飛べそうだよな。オラ、ワクワクすっぞ!
【生命力操作】は【魔力操作】のお友達っぽいスキル。HPを消費して物理攻撃を上昇させたりできるそうだ。説明が伝聞口調なのはスキルレベルが低いせいでそれしか分からないからさ☆彡
そんな感じで強化を終えた俺は装備ができるまでのレベリングをかねて攻略を後回しにしていたトレスの迷宮へと足を向けるのであった。
迷宮攻略が終わったらイベントに入りまーす




