第46話 進化した英霊と鬼ヶ島
前回のあらすじ
・英霊進化
・新しいスキル
・やらかす桃
レオンとエルモの圧に屈した俺はカクカクシカジカマルマルウシウシと全ての事情を説明した。
「なるほどな。きっと桃の英霊に新しい生き方を魅せるということが今回の特殊進化に繋がったんだろう。長年の召喚院の夢を叶えてくれたこと感謝する。」
「やっぱり君は面白い子だね。ノルンが期待するだけのことはあるよ。まさか英霊の特殊進化についてこの目で見る機会に恵まれるなんてね。」
それぞれ俺の話を聞いたレオンとエルモの言葉である。別に俺は感謝されるようなことはしていないんだがな。それとエルモはなぜ俺がノルンから期待されていることを知ってるんだろうか?フシギダナー。
レオンとエルモは俺の話を聞いてすぐにその結果とデータをまとめて公表する準備があるとかなんとかでここに来た時よりもさらに速い速度で部屋から消えていった。
残ったミーナは進化した六英雄と戦いたがっていた。俺としても進化した英霊の力を見るいい機会だと思いミーナの申し出を快諾した。決して断ったらどうなるかわかってんだろうな?的な凄まじい圧のこもった視線に負けたわけではない。ないったらない!
進化したとはいえ、いまだに第4階級の英霊。ルシファーですら瞬殺したミーナ相手では1対1だと試すも何もなくなると言うことで1対6の特別マッチにしてもらった。
結果?聞くまでもないでしょ?もちろんミーナの圧勝・・・と言いたいところだけど特殊進化した英霊の力はミーナの予想をほんの少しだけ上回っていたようだ。まぁ、全滅するのが一撃じゃなくて二撃になっただけだけど。
そもそも進化したことで全体的なステータスが1.5割増ぐらいになっている。ますます俺が勝てなくなったぜ・・・。そしてやはり進化した時につけたスキル。これがミーナにとっては少し厄介だったようだ。
まずフェルド。【聖炎】をフィールド全体に展開して味方にはリジェネ。敵にはスリップダメージと言うチートフィールドを展開していた。まぁ、相手は炎属性のバケモノみたいなミーナ。いくら【聖炎】といえどもダメージを与えることは叶わなかったが味方の回復があったからこそ一撃で死ななかったんだと思う。
次にクリスタ。フェルドはまぁいいよ。割と納得の出来るスキルの使い方だった。けどクリスタは可笑しかった。自分で生み出した氷の狼を巧みに操って攻撃していた。そして最後はミーナの一撃への盾にしてた。んーこんなことがありえるのだろうか?まぁ、英霊なんだしなんでもありか(現実逃避)
もっとも輝いていたのがヴィクティム。【百科事典】でミーナの攻撃を即座に分析してルーセントに伝える。ルーセントが【教授】のスキルを悪用してその内容を他の英霊に教えた。すると教えられた生徒達はその内容をより深く理解して次の行動に繋げる。
それを後押ししたのがスキル【歌唱】持ちのヴォート。風魔法に【歌唱】ですよ?そりゃもう超広範囲バフデバフじゃないですかーやだ。見事に味方にバフを入れてミーナにデバフを入れた。まぁ、ミーナからしてみればスキルを習得したてのデバフなんてあってないようなものだけどね。
こんな感じで進化した英霊達のスキルが奇跡的に噛み合った結果、ギリギリ、ほんとHPバーに1ドット残るかどうかってところでミーナの一撃を耐えた。
え?アルバセロ?浮いてただけで知らない子ですね〜
しかし、これに腹を立てたのがミーナ。先ほどエルモに散々怒られたことが効いてたのか俺たちと戦った時よりは威力を抑えめにしていたらしい。それでも本人は一撃で全員を屠れると思っていたらしいが。
ところが英霊達が耐えてしまった。これによって召喚老としてプライドを傷つけられた(?)ミーナが切れた。
その時の様子を聞いてみた。
「あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!おれはミーナの前で剣を構えていたと
思ったらいつのまにか炎に飲まれて死んでいた。な…何を言っているのか、わからねーと思うが俺も、俺達も何をされたのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった…魔法だとか武器の効果だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。」
横からみていた俺の感想だ。一撃を耐え、回復の本職であるルーセントが回復して立て直そうとしたその瞬間にフィールドが炎に飲まれた。そしてそのまま試合終了。うん、俺も何が起こったのかわからなかった。
ただ、詠唱もしていなかったし剣で何かしたような魔力も感じなかった。確かにもっと恐ろしいものの片鱗をみた気がする。
得意げなミーナに対してジト目をお返しすること数十秒。最初は得意げだったミーナだが、流石にやりすぎたと思ったのか用事を思い出したと宣ってそそくさと逃げていってしまった。
そしてここでカインとサーシャともお別れ。ここまで付き合ってくれていたがこの後はあのレジナルドがいっていたメライス六魔将なる組織について会議を行うらしい。アリーシャ召喚院が世界の守護を掲げているのであれば人間と対立するあいつらは明確に叩き潰さなきゃならない敵だからな。
一人になった俺は今後の予定について考える。まず何よりレベルをあげることが必要だろう。それからプレイヤースキルももっと高めなくては。
召喚院の拠点では今はやることがない。なので一度自分の拠点へ転移で戻りさらなるレベルアップを測るべく兼ねてよりその存在が俺にのみ知らされていた『鬼ヶ島』へ行くことにした。
『鬼ヶ島』
鬼たちが居住しているとされる想像上の島で、鬼の所有している不思議な力をもつ宝物をはじめとするさまざまな財宝があるとされる。海に囲まれた島であり、舟を用いた移動が挟まれる点が特徴である。
昔話の「桃太郎」では鬼たちの本拠地として登場する。鬼たちが住んでおり、鬼退治に向かう桃太郎たちの目的地となっている。おなじく昔話の「鬼の子小綱」でも鬼の故郷として登場することもあるが、「桃太郎」にくらべると一定しているわけではなく鬼の家のある場所は単なる「山」であったり、山にある「鬼の岩屋」と語られてる例も多い。
明確な位置情報は語られないことがほとんどで、昔話の多くが「あるところに」と語られるのと同様、どこに位置しているかが触れられる機会は乏しい。明治期以後の児童向けの絵本などでも一般的には岩で出来た島で、鬼の要塞としての門や砦が築かれていると想像されるのみである。描かれる門や砦などのイメージは「酒呑童子」などで親しまれていた画様と共通しており、それぞれ厳重な門、立派な御殿として描かれることが多い。
日本各地の伝説や昔話で、鬼の住んでいるところとして登場するものの多くは山や森、岩屋などであって、海をへだてた「島」であると明確に設定されている例は、「桃太郎」や「百合若大臣」など異なる土地への移動をともなう展開が登場するものにしか濃厚には見ることは出来ない。役割としては、龍宮などが鬼ヶ島には近い環境の異境であるといえる。
鬼たちの存在する島が海の先にあるという描写は、軍記物語などに収録された説話にも見られ、『保元物語』には、鬼島(「おにがしま」と読まれる。本文の見出し以外では「鬼が島」や「鬼の島」とも表記されている)として登場している。源為朝が鬼の子孫であると称する島人と会話をし、隠蓑、隠笠、浮履といった神通力を有する宝物を所持していることが描写されている。この鬼ヶ島は、青ヶ島の古名であるとされる。
〜ウィキペディアより抜粋〜
要するに鬼がいて宝ものがある島のことだ。俺がこの島へ行けるようになったのは【鬼】の称号を4つ集めた時だった。これはイベント前のことで随分前に感じるな。
鬼ヶ島への行き方はすごく簡単だ。称号の【鬼ヶ島へ挑むもの】をタップすると鬼ヶ島へ挑戦しますか?と表示される。ここで「はい」を選択すると行けるのだろう。
俺は覚悟を決めて「はい」を選択する。その瞬間に床に魔法陣が現れ俺を光が飲み込んだ。頬に風を感じて目を開ける。目の前に広がるのは寒々しい岩肌。見上げるとその岩山の形は鬼の顔面を模しているのはわかった。
<おしらせします。初めて鬼ヶ島に到達したプレイヤーが現れました。よって情報を開示します>
<鬼ヶ島は条件を満たしたものだけが入ることのできる特別なダンジョンです>
<一定の条件を満たすと【鬼】の称号を入手できます。>
<このダンジョンは一日に保有する【鬼】の称号の数だけ挑戦できます。>
<通常のダンジョンとは違い、死亡によるデスペナルティーはございませんが、レベルアップの経験値も獲得できません。ご注意ください>
<詳しくはヘルプよりご確認ください>
ここでアナウンス。やはり鬼の称号を4つも持っているのは俺だけのようだ。ん?このタイミングで運営からメッセージ?
ふむふむ、色々と長ったらしいことが書いてあったが、運営からのメッセージを要約すると【鬼】の称号自体保有者が少ない上にそれを4つ取らないと鬼ヶ島が解放されないのは流石に厳しすぎるので前回のアップデートで制限を緩和したこと、その発動を俺が鬼ヶ島へ到達したタイミングにしたので【鬼】の称号が1つでも来れるようになったことでの不満は勘弁してくれってことだった。
んー、中には俺は苦労して4つも称号とったのに1つで来れるなんてずるいとかここを独占したかったのに!とかクレームをつける奴がいるのだろう。運営もかわいそうに。俺としては挑戦回数が増えるから問題ない。
その旨を返信すると感謝のメッセージと共に鬼ヶ島への挑戦権が1枚送られてきた。これは後日実装する課金アイテムでこれを使えば1枚で1回鬼ヶ島への挑戦権を増やせるそうだ。
せっかくもらったので早速その1枚を消費して鬼ヶ島へ挑戦するとするか。もらった挑戦権を破くとウィンドウがポップした。
<挑戦する称号を選んでください。なお、このダンジョンでは一部のスキルの使用ができなくなります、ご注意ください。>
挑戦する称号で選択可能なのが俺が持っている鬼の称号の4つ。まずは様子見ってことで一番無難な【剣鬼】の称号を選択する。
<【剣鬼】の挑戦を開始します>
そのアナウンスが流れると同時に景色が一瞬で変化する。どうやら俺は闘技場に立っているようだ。周りに観客はいない。とりあえず何が起こるかわからない。警戒だけはしておこう。
すると俺からちょうど10メートルぐらいのところに魔法陣が現れ、その中から1体の剣を持った鬼が出てきた。その鬼が出てきたところ魔法陣は消滅。それ以上の追加はないっぽい。
剣を持った鬼は俺を視界に入れるなり、こちらに向かって駆け出した。
来る!と思ってとっさに身構えたものの思いの外遅い。それになんとなく知性を感じさせない。圧力もない。疑問に思った俺は【百科事典】を発動。それを何回か繰り返してようやく俺はこのダンジョンの本質を理解した。
今俺に向かってきている鬼を看破するも見れたのはレベルだけ。そしてレベルは1。つまりあの剣を持った鬼の動きがどうも雑魚っぽかったのは本当にレベルの低い雑魚だったからだ。
このまま見ていても仕方ないのでとりあえず一撃でその鬼を倒す。するとすぐに死体が消えて再び魔法陣が現れた。
中から出てきたのは先ほどの鬼とは全く様子が違う。どことなく武人のような気配を感じるしステータスも間違いなく先ほどの鬼とは比べ物にならないほど強い。看破の結果レベルは21だった。
しかし、剣術が少しお粗末だった。まだ力に任せて振り回すような剣術だったので上段からの振り下ろしを半身になって躱し、剣が地面を叩いたところでその剣を踏みつけて眼球に剣を突き入れて剣を捻って脳をかき回す。ビクンと一回震えただけでその鬼は消えていった。
三度魔法陣の登場。そして中から出てきたのはまたしても前回の鬼とは全く次元の異なる鬼。体格も随分とよくなりその瞳には確かな知性を感じさせる。看破の結果だと相手のレベルは41。俺とほぼ同格の相手だ。
魔法陣から出た鬼は剣を構えてこちらの様子を伺っている。ここもこれまでの鬼とは違う。いきなり飛びかかってこないあたり格段に頭がよくなっているのだろう。なので俺も剣を構えて相手の様子を伺う。その間にスキルの確認をする。
魔術系は全てダメ。武術系も剣と鎧以外は使えない。特殊スキルもいくつか使用出来ないみたいだ。それらを踏まえるとこのダンジョンは【鬼】の称号を得るまでに成長したスキルをさらに育てるためのダンジョンっぽいな。
俺がスキルの確認に一瞬気を取られ相対している鬼への注意がおろそかになった。その隙をその鬼は見逃さなかった。これまでとは全く別次元の速さでこちらに踏み込んできた。
とっさに【見切り】を発動しようとするも発動しなかった。くそ!制限がかかっているのを忘れていた!苦し紛れに剣を出すもそんなことでは同格の相手の攻撃を防げるはずもなく、下からの切り上げで剣を弾き飛ばされてしまう。
流石にこのままではまずいと思い、剣を飛ばされた勢いそのままに地面に転がって追撃を躱して距離を取る。
幻創霊器ヴェルガンドの効果で再び剣を生み出して構える。もう油断なんてしない。お返しばかりに今度はこちらから攻めるとしよう。
これまでの鬼とは違って相手は一定以上の剣術を使えるのだろう。そしてその剣はフェルドやアルバセロのような剛の剣。レベルは下であっても体格差的にSTRは負けてると考えた方がいい。
だったら俺は速度と手数で勝負する!
剣を横に構えて鬼を見据える。少し体勢を低くしたまま全力で地面を蹴って鬼に肉薄する。当然鬼は迎撃のために上から剣を振り下ろそうとするが俺の方が早い。
体のバネを使って十分に威力の乗っていない剣に下から上へ飛び上がるように突きを放つ。対空の刺突のアレンジ版だ。
俺の剣は力の乗っていない鬼の剣を見事に捉え大きく弾くことに成功した。その絶好のチャンスを逃さず、手の中で剣を回転させてそのまま太ももに突き刺す。なんとか俺から離れようとする鬼を太ももに突き刺したままの剣をさらに深く差し込むことで押さえつける。
俺から逃げられないと悟った鬼は体勢を瞬時に立て直し、俺の背中に剣を突き立てようとする。鬼からして見れば唯一の武器を自分の太ももに突き立てているこの人間に防ぐ手立てはないと思ったのだろう。また、防ぐには太ももに刺さった剣を抜かなくてはならないと考えたのだろう。
それが普通の相手ならそれは有効。しかし相手は自由に武器を生み出せる俺だ。その動きを察知した瞬間に空いている左手に短剣を生み出して驚いて目を見開いたままの鬼の心臓部分に突き刺して捻りながら引き抜く。
その鬼は驚きの表情のまま消えていった。
そして魔法陣が出現して次の鬼が出てきた。看破の結果レベルは50。上がり幅が抑えられたな。
相手は格上、さて、どうやって戦うかね。
鬼ヶ島の説明は次回しまーす。ネタバレになりそうなので・・・気になる方は感想じゃなくてメールで聞いてください〜(明日には載せるけど)




