第43話 召喚老
前回のあらすじ
・アリーシャ召喚院のメンバー紹介
・称号とイベント
・試験開始!
「さて!久々の実戦だから燃えるわね!そうそう、先に英霊を召喚しておいていいわよ。むしろそうしないと早く終わっちゃうからね!」
決闘システムを起動させた後、向かい合ったミーナが俺に言ってきた。どうやらハンデのようだ。
それならばとお言葉に甘えて俺は現在の最高戦力であるルシファーとアーク、それから回復要員でレオーネを召喚した。
『・・・っ!?なんなんだこの人間は!?』
『これはマジでやばいかもな』
『アーク!桃様!危険です!』
召喚した途端に俺よりもはるかに強い英霊3人が即座に身構えた。俺は彼女の強さをなにも感じない。しかし彼らは感じてる。これは想像をはるかに超えてやばい状況なのかもしれない。
「へぇ、その子が第7階級の英霊ね。なかなかの力を持っているじゃない。それでそっちの2人は第5階級ってところね。」
一方のミーナはこれだけのメンツを見ても動じた様子が微塵もない。強者の余裕と言う奴だろうか?
「こっちの準備は完了したよ。いつでも始めてくれ」
展開された結界の外からエルモの声が聞こてくる。それを合図にミーナは背負っていた剣を手に取った。
その瞬間、俺は死を悟った。ミーナから感じる圧力、いや魔力がこれまでの数千倍にまで跳ね上がっている!その魔力は初めてあった時に感じたように荒々しく猛る烈火のような魔力。
なにも起こっていないはずなのに空気を焼かれたような息苦しさすら感じられる。
「始め!」
結界の外からレオンの開始の合図が聞こえる。ミーナの魔力の圧力で意識が朦朧としていた俺とは対照的に、ミーナの危険性をいち早く理解していた英霊たちは開始の合図と同時に即座にミーナに攻撃を仕掛けた。
『明けの明星!』
『破滅の流星!』
『聖なる白鯨!』
3人の英霊による必殺技がミーナに向かって放たれる。一撃一撃が全て禁獣のHPを大幅に削る現状の中では最強と呼んでもいいほどの一撃だ。こんなのの直撃をくらえばあのランザだってひとたまりもないだろう。
「まだまだこんなものなのね!ヴォルカニックエラプション!」
ミーナが剣に炎を纏わせてなぎ払った。たったそれだけで3人の攻撃は何事もなかったかのように消滅してしまった。
『なに!?』
思わず声をあげてしまうルシファー。いつもどこか傲慢じみた強者の余裕はどこにもない。
「全てを燃やし尽くせ!炎姫レーヴァテイン!」
大技を放った反動で動けなくなっている3人の英霊に向かってミーナが剣を振り下ろす。剣から放たれた炎は俺たちが使う魔法など比ではない。世界を全て焼き尽くすとされた伝説の魔剣レーヴァテインを体現したかのような炎だった。
その炎は俺の中でも最強の英霊3人に一切の抵抗を許すことなく全てを飲み込み灰燼へと帰した。
「なん・・・だと!?」
あの3人がなにもできずに瞬殺されるなんて誰が想像できただろうか?しかもアークは炎属性の強化版とも言える獄炎の使い手。炎への耐性は尋常じゃないほどあると言うのに!
「実戦でも英霊を瞬殺するぐらい強い敵と出くわすことなんていくらでもある。そんな時にその感じだと命がいくつあっても足りないわよ?」
先ほどまで10メートル以上は俺とミーナの間に距離があったはずなのだが、コマ落としのように目の前に剣を振り上げた状態でミーナが現れた。
その声に反応してとっさに【未来視】と【見切り】を発動。【未来視】では俺の死亡がはっきりと写っていた。当てになんねぇ!
回避は不可能と判断して【全反撃】は発動させる。
「迎撃?舐められたものね!」
しかしそれは叶わなかった。ミーナの持つ剣がさらに激しく炎を吹き上げた。その熱量は幻影でできているはずの俺の武器を完全に蒸発させるほどの熱量だった。
【未来視】で見た通り、俺の体はミーナの剣によってもの見事に真っ二つにされた上に完全に灰が消滅するまで燃やし尽くされた。
俺の意識は真っ二つにされた時点で飛んでおり、LOSEの文字が目の前に浮かんでいたがしばらくの間呆然として反応できていなかった。俺がようやく気を取り戻したのが俺の体が完全に消滅したあとだったというわけだ。
まさに完敗。手も足も出ないどころの騒ぎではない。もはや赤子と大人ぐらいの差があった。
「ミーナ、やりすぎだよ。これじゃあまともなデータが取れやしない。」
決闘システムが解除され、結界が解かれたフィールドに側で見ていたレオンたちがやってきた。ミーナに苦言を呈したのはエルモだ。決闘が終わった直後になにやらPCみたいのを覗き込んでいたがどうやら戦闘時間が短すぎてデータが取れなかったみたいだ。
そんなことはどうでもいい。それよりも俺からしてみればこの敗北はかなりの衝撃だった。レジナルドみたいに何かのトリックとかで攻撃が通用しないのならまだわかる。真正面からぶつかればまだどうにか出来るかもしれないのだから。
しかし、ミーナとの戦いは俺の中で最強の布陣で挑んで完膚なきまでに叩きのめされた。ここまでなにも出来なかったのはこの世界に来て初めてだ。まだランザの時だって戦えたはずなのに。
知らず知らずのうちにルシファーたち強力な英霊を手に入れて、自分でも強力な装備にいろんな魔法まで手に入れて強くなった気でいた。その伸びた鼻っ柱を完全に折られたな。この敗北でまた一から自分の力を見直すいい機会になったな。
「桃、あんまりこの結果は気にしないで欲しい。君はまだこの世界に来て数ヶ月だろ?レベルだってまだ50にも届いていないはずだ。」
「そうだけど・・・」
「はは、そんなに落ち込まないでくれ。そういえば言ってなかったかな?俺たち召喚院の階級をあげるにはもちろん実績も必要だがその基準の大半を占めるのはレベルだ。銀級へは最低でもレベル60以上、金級へは80以上が必要となる。そして隊長を任せられるようになる白金級へは120以上。その上の金剛級へは160以上が必要となる。そして俺たち召喚老は最低でも250以上。今戦ったミーナのレベルは269だ。」
269。この数字を聞いた俺がフリーズしても誰が責められるだろうか?嘘だろ?プレイヤーのレベルキャップをはるかに超えてるぞ!?そんな化け物に勝てる訳が無い。あぁだから負けても気にするなと言ったのか。
「俺たちは英霊と共にこの世界を守るためにずっと戦ってきた。そしてこれからも戦い続けるだろう。ちょうど君たち来訪者の活躍と君の機転で被害を最小限に食いとどめることが出来たあのスタンピード。それを引き起こしたメライス六魔将なる組織についても俺たちが対処しなければならなくなってくるだろう。今は情報を集めている最中だ。ノルン様から認められ、あいつが認めた君にも一緒に戦って欲しい。この世界を守るために」
これが、この世界で生きている人たちの覚悟か。この世界の人たちは死んだら生き返らない。その中でそこまでレベルをあげるには死線をくぐり抜けた回数なんてもう数えきれないほどあるのだろう。
世界を守る。これだけ聞けばただのお伽話にしか聞こえない陳腐なセリフだ。しかしそれを実際に口にしたレオンの、アリーシャ召喚院の背には文字通り世界が背負われている。言葉の重みが違う。
「こんな弱い俺でよければ、死なないと言う特性も十分に生かしてこき使ってくれ」
俺がレオンに言えたのは強がりが混じったそれだけだった。同時に言葉には出さないがもっと強くなることを改めて誓った瞬間でもあった。
それからデータが足りないとエルモが言ったので今度はミーナではなく、カインと戦うことになったが、英霊を召喚する暇さえ与えてもらえずよくわからない飛ぶ斬撃+炎魔法っぽいよくわからない攻撃によって一撃でHPを全ロストさせられた。ちなみにカインのレベルは134だそうだ。
またしても一撃だったゆえに全然データが取れず続けてサーシャとの戦闘になった。消えるようなサーシャの初撃を【未来視】と【見切り】でなんとか受けたものの二の太刀で体勢を崩され、三の太刀で首と胴体がおさらばした。
「もう!本当に手加減が下手だな。なんで攻撃するのかな?レベル差考えなよ。」
満足するほどデータが取れなかったエルモがガチギレ。召喚老を含めた3人が床で正座する羽目になった。
そしてついにエルモが作った絶対に壊れない機械に向かって自身が放てる最高の一撃を放てと言うので【超克】【限界突破】【覚醒】【鬼神の連撃】【六天幻衝】【戦場に立つ獣王の舞】【宣誓】(メンテナンスのおかげでクールタイムは0に戻った)を全て使って自身の最高火力を叩き込んだ。
「うん、これでデータはバッチリだ。これから忙しくなるから帰った帰った」
俺の一撃は何事もなかったように機械に吸い込まれた。PCらしきものを覗き込んだエルモに一方的に研究室を追い出された俺たちは再び本部へと戻って行った。
絶対にミーナが強すぎるって意見がくると思うので先に!
最強の召喚騎士、レオン、ミーナ、スタンはこの世界の中でもトップクラスの強者です。
こいつらに匹敵する登場人物は現在は出ていません()




