第40話 あっ・・・
前回のあらすじ
・スキル・称号の整理
短めです〜
ピーンポーンと気の抜けるような電子音が俺の拠点のリビングに流れた。このゲームにそぐわない電子音はフレンド登録をしているが拠点へ入る許可を出していないプレイヤーがここを訪れた時に流れるものだそうだ。
「はて?レイ以外のプレイヤーでのフレンド?誰だろう?」
自慢では無いが俺のフレンドは極端に少ない。というより住人のフレンド以外だとレイぐらいしか思い浮かばないが・・・
そう思ってフレンドリストを表示したところで俺は思わず静止した。そこに燦然と輝く【マーチン】の文字。そしてその名前を目にした瞬間にイベント前の記憶が一気に蘇ってきた。
そう、料理人の職についたマーチンに【料理術】のスキルでドロップしたリザードマンの内腿肉の情報を流すだけ流してその後、イベントにカマかけてすっかり放置してしまったことを。
恐る恐るメッセージを見てみるとイベントの最中からイベントが終わったあとまで大量のメッセージ。そして最後のメッセージは今から1時間前。内容は「そこを動くなよ」だった。
「・・・さて、どうやってここから抜け出そうか?」
「どこへ行くつもりだ?」
「ひぇえ!?」
とりあえずほとぼりを冷ますために転移でどこかに逃げようとしたその瞬間、背後からいきなり肩をガッチリと掴まれた俺は驚いて変な声を出してしまった。
振り返ってみるとそこには怒りでこめかみをヒクつかせたマーチンの姿があった。俺は許可してないのに誰が中に入れたんだ?
『そちらの男性は我が召喚主の知己であったゆえ、中に入れたが問題なかろう?我が召喚主よ。』
なんと犯人はルシファー様でした。ルシファーがなぜマーチンと俺の交友関係を知っていたのかはさておくとしてこうなってしまっては逃げ場はない。仕方ない。ここは我が草薙家に伝わる最強の技で持ってマーチンを出迎えねばならぬな。
俺は力ずくでマーチンの手を振り払うと短距離転移を無詠唱で発動してマーチンとの距離を取る。一瞬の出来事で呆気に取られているマーチン。その隙を見逃さず、俺は地面へと我が身を放り出した。
「申し訳ありませんでしたー!」
そして地面に膝と頭を擦り付け、マーチンに謝罪の言葉を述べた。これぞ我が草薙家に伝わる秘伝の奥義、ジャパニーズ土下座である!
「お、おう。別にそこまでしてもらうほど怒ってるわけじゃねぇが。・・・まぁいい。反省してるってならそんなことしてねぇでさっさと例のブツよこしな」
「はい!かしこまりました!」
早速アイテムボックスの肥やしになっていた食材系のアイテムを取り出す。リザードマンの肉とワイバーンの肉だけかと思っていたが、あのイベントの際にイベント専用ドロップだけだったはずが、なぜか知らないが【料理術】で得られる食材も一緒にドロップしていたのだ。
食材アイテムは使える生産職がいなかったのと、その見た目から他の女性プレイヤーの目もあるのでアイテムボックスにしまっておいたのだ。まぁ、その配慮はレイドボスのSAN値直葬の姿で台無しにされてしまったが。
「これは一体どういうことだ?俺が聞いたのはリザードマンの内腿肉とやらだけなんだが?」
そういうマーチンの目の前に俺が並べた食材を紹介しよう。ゴブリンの目玉、ウルフの心臓、武器持ちゴブリンのタコ、グレイウルフの水晶体、ロックリザードのタン、ゴブリンジェネラルの肝臓、ブラックウルフの肩甲骨、オークの膵臓、オークジェネラルの脂身、さらにはワイバーンやリザードマンの肉、さらには岩鎧リザードの涙なんていう食材アイテムもあった。
「詳しくは言ってなかったな。俺のスキルに【料理術】なるスキルがあってな。実はこれ戦闘系スキルなんだわ。料理ってつくから生産系かと思ったけどな。それでこいつがドロップ品の中に食材アイテムを追加するって効果なんだわ。それでこんなアイテムが手に入るわけ」
「ちょ、おま、それって誰も知らない未発見情報だぞ!?ましてこんな食材なんて見たことがねぇものばっかりだ!」
「ふーん、この手のゲームなら解体スキルとかあるだろうから食材アイテムの情報は流れてると思ってたわ。俺がマーチンにお知らせしたのは流石にリザードマンで食材アイテムは出回ってないだろうからと思ったんだがな。」
「解体スキルは生産職の間でも話題になってな、もちろん取得したプレイヤーもそれなりにいるんだが、効果は桃が言うようなものじゃなくてドロップが増加するだけだった。もちろんレアドロップ率が増えるから有用なスキルっちゃ有用なんだが桃が出した食材アイテムの話は聞いたことがねぇな」
「ドロップ率上昇ね。俺にとっちゃ悪くないスキルかもな」
ちらっと取得可能スキル一覧を眺めたところ【解体】を取得するのに必要なスキルポイントは3であった。スキルポイントも有り余っていることだしこっそりと取得しておく。
「しかしまぁ、忘れてたことで食材アイテムの代金をチャラにしようと思ってたが、これだけの量があると流石にそれは無理だな。いくら払えばいいんだ?」
マーチンのやつ、なんと恐ろしいことを考えていたんだ・・・。いやまぁ自業自得っちゃ自業自得なんだけどさ。しかし、未発見の食材アイテムかいくらになると聞かれてもなぁ。
「未発見だし値段はつけられねぇな。だからさ、この食材を使ってマーチンが飯を作ってくれよ。それでチャラにしてやるぜ」
「本当にそれでいいのか?俺からしてみりゃ未知の食材を使えてスキルレベルも上がるしいいことづくしなんだが。」
「いいんだよ、それで。」
この時、俺の脳裏には俺にこのスキルを授けたあの女神様の姿があった。多分だけどこのスキルで得た食材アイテムで料理を、できればスイーツを作れってことだと思う。まぁ、ゴブリンの目玉でどうやってスイーツを作れと言うのか、甚だ疑問ではあるが。
「むぅ、そこまで言うならこのマーチンが腕によりをかけて最高の料理を作ろうじゃないか!けどよ、流石に初めてみる食材ばっかりだ。いくつかレシピは解放されたけど全てじゃねぇ。師匠に聞いてみるのと俺自身の研究も含めてリアル3日後でどうだ?その日なら俺は飯とか風呂以外ではほぼ一日中ログインしてるんだが。」
「それで構わないぞ。」
「よし、そうと決まったら俺は早速師匠の元に行く。食材はもらっていくぜ。慌ただしくてすまんな!」
そういってマーチンは足早に俺の拠点を後にした。この桃との約束がきっかけでのちにゲテモノ料理人のマーチンと住人、プレイヤーを問わずその異名を轟かせ、この世界の名だたる美食家、奇食家を唸らせる伝説の料理人来訪者の誕生の瞬間であった。(笑)
さて、物語風にマーチンのオチもつけたところで本題に取りかかるとしますかね。俺がアリーシャ召喚院に行かねばならない本当の理由。もちろん、召喚騎士として最初に出会ったあの最強の召喚騎士様が所属する組織だけあって、もっと強くなれることは間違いないし、俺の受け入れをしてくれるとのことだ。行かない理由がない。
それよりも大切な理由、それはイベント開始前、俺がレベル40の当時のレベルキャップに到達した時に一緒に流れたアナウンスが原因だった。
<英霊【フェルド】が成長限界に達しました。進化が可能です。※進化素材が不足しています>
<英霊【クリスタ】が成長限界に達しました。進化が可能です※進化素材が不足しています>
<英霊【ヴォート】が成長限界に達しました。進化が可能です※進化素材が不足しています>
<英霊【アルバセロ】が成長限界に達しました。進化が可能です※進化素材が不足しています>
<英霊【ルーセント】が成長限界に達しました。進化が可能です※進化素材が不足しています>
<英霊【ヴィクティム】が成長限界に達しました。進化が可能です※進化素材が不足しています>
このアナウンスを聞くや否や俺はすぐに英霊一覧から進化の詳細を確認。しかし進化素材についての情報は何もなかった。
俺は新しい力と俺にまだ見ぬ未来を託したこの世界の英雄たちのためにアリーシャ召喚院に行かなければならないんだ。
スキル追加
【解体Lv1】(3SP)
効果:スキルレベル%分ドロップアイテム数が上昇する。
レインボーランダムオーブのスキルまだまだ募集しております!




