表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
40/143

第36話 イベント3日目ー4(alter)

今日は連続2話投稿です!ご注意ください!(1話目)


前回のあらすじ

 ・ドスの街は大混乱

 ・キザン?

 ・きたねぇ花火だ

 side レイ


 イベント終了まで残り6時間を切った頃、ついにイベントのラスボスであるレイドボスが出現した。あのレイドボスを倒せばイベントクリアは間違いないけど挨拶がわりの一撃が酷かった。


 遠距離攻撃が出来るプレイヤー全員で迎撃してなんとか相殺できたブレス。流石に連発はできないと思うけどたった一撃で魔法職はMPの大半を、前衛職でも切り札に1つを切らされた。当然クールタイムも長い手札だ。


 このボスはやばい。そうプレイヤー全員が確信した。まぁ、僕からしてみればそもそもこのイベント自体やばいけどね。だってさ、僕が選んだ北門の人気があまりにもなさすぎたんだ。有名な攻略組は僕だけ。生産職では【万屋】と【職人】がいるだけ。当然のようにプレイヤーの代表に選ばれてしまった。本当は適当に誰かに押し付けて僕は自分のペースで楽しもうと思ってたんだけどね。


 この如何ともし難いプレイヤーの質の差。正直桃がいなければ詰んでた。


 そう、桃。一緒にプレイしたのはほんの最初の時だけでいつまでたっても前線に来ないから不思議に思っていたけどまさかここまで力を身につけてるなんて思いもしなかったよ。


 EX職が弱いわけないけどルシファーや六英雄神、それに謎の強力なキャラを次々と召喚して魔物をまるで紙くずのように一掃したかと思えば、その英霊とガチンコで戦って一矢報いる。どう贔屓目に見ても僕たち攻略組よりもはるかに強い。


 でも、桃が頼りになったのは戦闘力だけじゃない。もちろんそれもかなり貢献してくれたけど、プレイヤーで初めてのAランクとしてギルドと僕たちを繋いで、目立つことが嫌だったのに僕がプレイヤーの代表に選ばれたやいなや自分の職業を公開した。


 きっと僕が代表に選ばれて面白くない人の嫉妬の矛先を自分に向けるためだったんだ。昔から桃はそういうところあるから。それで圧倒的な力の差を見せつけて僕が過ごしやすいようにしてくれた。僕がプレッシャーに押しつぶされずにここまでできたのも桃のおかげだ。


 そんな僕の心の支えだった桃が突然抜けるって言い出した。正直僕は混乱した。だってあれだけの攻撃をしてくるレイドボスだよ?普通のボスですら精一杯だった僕たちだけで防げるとは思えない。桃の力がないと絶対に無理だ。


 でも桃の目を見たときに止めるのは無理だってわかった。桃は頑固なんだ。一度決めたら絶対に譲らない。


 送り出すときに強がって「そっちこそ」なんて言ったけど不安で仕方ない。でも僕はプレイヤーの代表なんだ。僕が折れればみんな折れてしまう!周りのプレイヤーは桃が突然いなくなって不安そうな表情をしている。なおさら僕が弱音なんて吐けない!


 「みんな桃は別件で動いているだけだ!この際だ!桃に負んぶに抱っこじゃ格好がつかない!桃が帰ってくるまでにあのレイドボスを倒してやろう!」


 「「「おう!」」」


 よかった、僕の拙い演説でも士気は戻ったようだ。実際に桃がいない以上は桃ぬきで戦略を立てなきゃならない。ボス相手に様子見っていうのも危ないけどまずは盾職が前に出て動きを止めるしかないかな。


 「どんな能力かわからない以上はセオリーで行く!盾職は前に!ただあの体液は危険そうだ!いらない装備で受け止めるんじゃなくて受け流すことを重視してくれ!」


 盾職が横一列に並んで準備が整ったところでレイドボスの腕らしきものが盾職めがけて振り下ろされる。それを受け流した数人の盾職の盾が煙をあげて融解し始めた。やっぱり腐食の効果があるみたいだな。


 「あの体液は装備を溶かすぞ!直接当たらなように気をつけろ!次!前衛職!武技または付与を試してみてくれ!」


 僕の指示で武器持ちが一斉に攻撃を仕掛ける。結果は武技を使えばダメージは与えられるけど武器がダメになる。付与は有効。武器の損傷も半分程度に抑えられる、か。


 ん?一斉攻撃した結果HPバーが半分も削れてる?おかしい。おかしいけどここは一気に畳み掛ける!


 「魔法職!撃て!」


 発動状態で保持してもらっていた魔法を一斉に解き放つ。マトが大きいから外すはずもなく、全てが命中してHPバーを全て散らす。


 「よっしゃ!イベントクリアだ!」


 どこかで騒ぐ声が聞こえるけどこんな簡単なはずはない。その証拠にまだアナウンスが流れていない。何かあると考えた方がいい。


 「お、おい!あれをみろ!」


 さっきとはまた別のプレイヤーがさっきまでレイドボスがいたところを指差している。その指の先では先ほど倒したはずのレイドボスが何事もなかったかのように復活していた。


 「これは長い戦いになりそうだね」


 僕は思わず呟いた。


 この僕のつぶやきはフラグだったのだろうか。それから3時間ほどレイドボスと戦った。いや、過去形じゃない。今まさに戦っている最中だ。


 ここまでの戦闘でいくつか特徴が判明した。このレイドボス、どうやら今まで僕たちがこのイベントの最中に倒してきた敵の数によって残機みたいのなのが決められているらしい。1人の生産職が鑑定の上位スキル【看破】を高レベルで持っていてそれで判明した。


 残機1あたりの強さはびっくりするほど強くもないが弱くもない。酸の体液と一発で盾職のHPを6割近くを吹き飛ばすほど強力な物理攻撃。それから広範囲デバフが厄介だ。しかもこのデバフ、魔法ダメージを減少させる厄介なデバフだった。魔法が一番有利な攻撃手段だけにこれには悩まされている。


 そして一番きついのが・・・ほら、今まさに来ようとしている


 「みんなくるぞ!防げ!」


 それは復活するたびに門に向かって強力な遠距離攻撃を放つこと。幸い最初の時のようなブレスはここまで数回しかないけどブレス以外に腐食攻撃を巨大なボール状にして放ってくるのでその度に打ち落とさなければならず、苦労していた。


 なんどもなんども倒しては生き返りを繰り返されていた僕たちの集中力は限界を迎えていた。魔法のタイミングが早くなってしまい、ダメージ計算をミスった。復活するまでの迎撃手段は取れそうもない。ここまで100%の耐久度を誇ってきた門に傷をつけるのは残念だが、死に戻りするよりはマシだ。


 「ーーっ!?やばい!」


 僕としたことが、この可能性を考えていなかった。復活したレイドボスが放とうとしていたのはボールではなくあのブレスだった。


 「くそ!間に合わない!」


 そんなことをしても無意味だが、僕たちは襲いかかってくるであろう衝撃に耐えるために目をきつくつぶった。


 しかし、いくら待てど衝撃は襲ってこない。恐る恐る目を開けてみると、門の前に謎の壁が出現している。これは一体?


 「これは・・・マジックシールドか。いや、でもこの規模と強度のマジックシールドは見たことがない。一体誰だ、こんな規格外なことを仕出かす奴は」


 ギルマスの呟きを聞いてはっきりとわかった。これは桃だ。桃が万が一のために張って行ってくれたんだ。


 桃の置き土産のおかげで九死に一生を得た僕たち。気合いを入れ直して再び戦場に出る。しかし、レイドボスの壁はあまりにも高かった。残機数が途方もなかった。倒しても倒しても復活してくるレイドボス。油断すれば一撃で持っていかれるHPに復活の際にも気を遣う。


 そんな極限状態をイベントの最終盤で長く続けるのは到底無理だった。一人、また一人と死に戻ってゆく。ギルマスに聞いたが桃が張ってくれたマジックシールドは全部で3枚だそうだ。


 イベント残り2時間、僕たちはついにそのマジックシールドを使い切り、MPが残ってるプレイヤーも少ない状態でレイドボスのHPを削りきってしまった。


 そして復活するレイドボス。その口から放たれるのは幸いブレスではないけどこのままだと門が!そう思った瞬間には僕の体は自然と動いていた。


 「ぐわああああ!」


 とっさに門を庇った僕にレイドボスの攻撃が直撃する。本来なら盾職とは違ってスピードタイプの僕のステータスでは一撃で死に戻りだけど、このイベントの準備期間で【ルーセントの祝福】を手に入れた僕は現実時間で24時間に1回だけ即死をHP1で耐える【光の奇跡】というスキルを手に入れていた。


 そのスキルの効果でギリギリ生き残ったけど、直撃を受けて吹き飛ばされたせいで頭がクラクラする。HPを回復させたくてもポーションなんてとっくに尽きてる。もうどうしようもない。


 僕はなんとかメニューを開き、桃に「助けて」ってだけ送る。本当はこんなことしたくないけど、僕だってここで死ぬのは嫌だ。桃がどこにいるか知らないけどきっと何かのイベントに巻き込まれているはず。だからこれは僕の叶うはずもない願いだ。


 くそ、もう目の前までレイドボスが迫ってる。でも体は動かない。


 「ここまでか・・・」


 レイドボスの腕が大きく振り上げられ僕目掛けて振り下ろされる。僕は思わずぎゅっと目を瞑った。


 「レイから離れろ!【全反撃】!」


 もうだめだ。そう思った瞬間に僕が心のそこから待ち望んでいた声が、力強い桃の声が響いた。桃がスキルを使う、あのルシファーの一撃を跳ね返してた強力なスキルだ。そのスキルの効果でレイドボスが逆にダメージを受けて吹き飛ばされる。


 「遅くなって悪かったな。よくここまで持ちこたえた。もう大丈夫、あとは俺に任せろ」


 僕はこの時少し泣きそうになった。なんてタイミングがいいんだってね。だって最高のタイミングじゃないか。ジャンプコミックかよーって思う。本当は感謝の思いでいっぱいだけどそれを伝えるのは恥ずかしいから僕は照れ隠しにこういうんだ。


 「遅かったじゃないか、桃」ってね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] これってキザンを助けに行く前に他の英雄神を王都に一体でも残してくれば良かったのでは? 主人公はあの描写でトレ?の街の殲滅に5時間もかかってたって事ですか? そしてキザンのいた街のNP…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ