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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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第34話 イベント3日目ー2

前回のあらすじ

 ・イベント3日目開始

 ・ボスラッシュ!

 ・噛ませのワイバーン

 目が覚めた。おはようございます?途中で起こされなかったので俺が寝ている間にイベントは動かなかったようだ。いや、全体での動きはなかったようだが、門のバフ効果がレベル5のMAXに上がっている。どうやらケル君をはじめとする生産職の人たちが頑張ってくれたんだな。


 街の方を見ても火の手とか煙とか上がってないので街中に出現した魔物の討伐は順調のようだ。現在の時刻は20時を過ぎたところ。イベント終了まで16時間ってところか。ここからどこまでポイントを伸ばせるかが勝負だな。


 横を見てみるとレイが寝ている。こいつのことだ、日付が変わる頃には起き出すだろう。それまではイベントも動かないだろうしな。


 とりあえず日付が変わるまでノンストップで魔物を狩る。俺とレイがいない間に門の耐久値が削られていないか心配だったが、幸いにして空を飛んだりする厄介な魔物は出なかったようだ。


 そんなことを思ったのがフラグだったのだろうか?俺が門の外に出た瞬間にワイバーンさんが襲来。しかも今回は5体もいる。慌てふためくプレイヤーたちがレイを呼びに行こうとしたのでその場でルシファーを召喚。


 あの羽を飛ばす凶悪な「黒白の羽」であっさりと風穴をあけ、事なきを得た。流石にルシファーはそれだけでは消化不良なのでそのまま低空を飛び、次々と近くにいた魔物を狩っていった。


 しかもルシファーはとんでもない速度で飛行しながら首を一撃で刎ねるので倒された魔物がポリゴンとなるまでのタイムラグのせいであたり一面を首なし死体が直立しているというなんとも言えない恐怖の光景を生み出していた。それを見た他のプレイヤーはもちろんドン引きしていたね!


 そんなことをしている間に日付が変わった。何かイベントが動くのでは?と思い一旦門の上に戻るとレイが起きて門の上で待機していた。


 「起きたか、レイ」


 「うん、イベント終了まで12時間。何かしらの動きはあっておかしくないからね。」


 『おやおやおや、まだ抵抗するんですかぁ?いい加減しつこいですね。温厚な私でもそろそろイライラしてきますねぇ。と言う事で〜追加で〜す!』


 今回のメッセージは短くこれだけ。何が追加されるのだろうか?


 「桃、あれを見てくれ」

 

 レイに言われて魔法陣の方をみる。なるほど追加の意味はそっちか。魔法陣からは今までの血走った目のボス魔物に加えてさっぱり姿を消していた雑魚魔物が這い出てきていた。全部の合計数はこれまでの最大数のおよそ倍。


 ここにきて物量作戦で来たか。


 「ギルドマスター!」


 ここでギルドの職員さんが登場。ってことは街中でも魔物が増えたのか?


 「街中にあった魔物が出てきていた魔法陣が全て消失しました!ただいま来訪者の冒険者が交戦しておりますがこれ以上の出現はないと思われます。」


 「そうか、街の被害はどうだ?」


 「一部の家屋が損傷した程度で住民に被害はありません!乗り切りました!」


 その報告を聞いて一安心だ。どうやら街中に魔物が出現するターンは終了して今度はプレイヤー総出で門の外で戦えってことのようだ。まぁ、魔物も増えているしそうしなきゃ間違いなく詰むからな。


 とりあえず俺は六英雄神と共に他のプレイヤーじゃ厳しそうな奥の方でボス魔物を狩りに狩る。この手のイベントの最後を飾るのは大抵がレイドボスなのでレイドボスが出てしまえばそこでポイント稼ぎは終了になってしまう。ポイント稼ぐならレイドボスが出るまでが鍵だ。


 ここでいくつかイベントに小さな変化があった。魔物の上限数が倍以上になったことだ。最初は倒したぶんだけ補充されていたが、だんだんと補充される数が増え、倒しても倒しても次から次へと、むしろ数を増すように魔法陣から出てくるようになった。


 最初の3時間ほどはゴブリンなどの雑魚は完全に後ろに流していたが、レイからキャパオーバーになりつつあるとメッセージが飛んできて方針を変更。一定間隔で獄炎鳥を放ち、ボスと雑魚の区別なくある程度は一掃することにした。


 そのかいあってなんとか午前6時を迎えるまでは門に被害を及ぼすことなく抑えることが出来た。しかしそれは5時をすぎたあたりから魔物のポップ数が減り始めていたことが要因の一つだった。


 そして迎えた午前6時と夜明け。この時すでに門の外にいる魔物はゴブリンが数匹と日常生活とほぼなんら変わりないところまで減っていた。そのゴブリンを低レベルプレイヤーに任せ、俺たちを含めた北門で参加しているほぼ全てのプレイヤーが門の上に集合していた。


 『・・・まさかここまで抵抗するとは思いませんでしたよ。これじゃあ私の計画は台無しじゃないですか!全く、あの方に私が怒られてしまうじゃないですか!他の計画もほぼ全てが防がれましたし、もうこうなったらなんとしてでも王都を落として汚名返上しなればなりませんねぇ。もちろん私の可愛いペットを散々嬲り殺しにしてくれた来訪者の皆さんには仕返しもしたいですしねぇ。それでは絶望を味わってください。反魂怨呪混沌錬成、召喚・【禁獣フィルシィーコープス】』

 

 レジナルドの言葉で魔法陣がこれまでとは違っておぞましい黒い瘴気のような魔力を放つ。するとイベントエリアになっていた門の外と街の中から白いもやが魔法陣の中に次から次へと吸い込まれていった。


 「これは・・・」

 

 魔法陣による白いもやの吸収が終わったと同時に魔法陣から這いずり出てきたのは形容し難い悍ましい何か。全身が流れるヘドロのようなもので構成されており、ポタポタと地面に垂れては煙をあげている。その全長は見上げるほど大きく、門の大きさなんて優に超しているだろう。その頭部と思わしき場所からは眼球がこぼれ落ちており、その瞳があったと思われる空洞はどこまでの暗く、わずかに赤い光が灯っているだけである。


 まさにこの世の悪意を憎悪で煮詰めて無理やりスライムにしたらこんな形になるであろう怪生物。禁じられた獣にふさわしいレイドボスの降臨だ


 「ひっ」


 誰かの息を飲むような悲鳴が聞こえる。無理もない。これは流石にヤベェだろ。夢に出てきそうだ。

 

 『フィルシーコープスは今まであなた方が倒してきた私のペットたちの怨念が集って出来た合成獣。下手な竜よりもよっぽど強力ですよぉ!これで王都は完全におしまいですねぇ。さぁ、フィルシーコープスよこれまでの恨みを晴らしておやりなさい。さて、ここで崩壊する王都を眺めるのもいいですが、まだ仕上げが済んでないところがありますからこの辺で失礼させてもらいますよ〜。それじゃあ、良い絶望を』


 レジナルドの言葉が聞こえなくなると同時に完全に魔法陣から這い出てきたフィルシーコープス。長いな。禁獣でいいや。挨拶がわりなのだろうか、口元に黒い光が集まっていく。これはブレスの兆候か?


 「まずい!遠距離攻撃を使えるものは今すぐ準備!あれを何としても食い止めるぞ!」


 レイが拡声器の魔道具で叫ぶ。確かにあのブレスっぽのを食らったらこんな門なんてひとたまりもねぇだろうな。イベントだから一撃で終わるってことはないだろうけど、耐久度50%は確実に削られそうだ。


 こっちの迎撃準備が整ったとほぼ時を同じくして禁獣からブレスが放たれた。


 「今だ!放て!」


 レイの号令で一斉に放たれる魔法に武技。俺も一応放ったよ?適当にだけど。その場にいた全員の攻撃でなんとかブレスは防ぐことが出来た。しかし、魔法職の人とか顔色が悪く座り込んでいる。MP切れだ。もうあのブレスを相殺するのは厳しいだろうな。


 禁獣からしてみればそのブレスは今まで自分たちを蹂躙した憎き相手へのほんのささやかな復讐の合図でしかなく、確実に自らの手で捻り潰そうと王都に向かって進行を始めた。


 「・・・レイ、この場は任していいか?少し抜ける」


 「はぁ!?この状況で何言ってんだよ!睡眠は十分なはずだろ!?それに見ただろあの火力を!桃がいないと次は防げないぞ!もしこの状況で君が抜けたら間違いなく戦線は崩壊するぞ。」


 「・・・」


 「・・・はぁ、その目をしている君に何を言っても無駄か。でも、さっきも言ったけど君が抜ければこのイベントは失敗に終わる可能性が高くなる。それでもこの場を離れるって言うのかい?」


 「あぁ。俺の予想が正しければこのイベントだけじゃなくてゲーム全体に影響を及ぼす。」


 「そっか、なら行ってくるといい。ただ、戻ってきたときにはイベントが終わってるかもしれないぞ。」


 「それならそれでいいけどな。じゃあ、行かせてもらう。死ぬなよ、レイ」


 「そっちこそ」


 レイの言葉を背に受け俺は門を飛び降りて中央にある神殿に向かう。その際にそのまま離れるのは流石に申し訳ないので少し仕掛けを残しておく。これで少しはなんとかなるはずだ。


 この状況で俺が動く理由。それはイベント開始の前、俺がAランクの昇格した時まで遡る。


=========================================


 「ただいま戻りました、ギルドマスター」


 「おう、戻ったか桃。首尾はどうだった?」


 「もちろん大丈夫でした。ですが、いささか疑問な点が。これを」


 Aランク昇格への試験を余裕で終えた俺はギルマスの部屋へと通され、そこで依頼の報告をすることになった。ギルマスの部屋で報告と同時にギルドカードを提示する。ギルドカードには討伐記録が残っていることを最近になって知ったのだ。


 「お前さん、無茶苦茶な戦い方してんのな。って集落でこの数?おかしねぇか?」


 「やはりこの数は異常でしたか。先ほども言った疑問ですが、このオークの集落が確認されたのはいつの話ですか?」


 「だいたい1週間ほど前だな。」


 うん、これではっきりした。確実にあのオークの砦には人為的な介入がなされている。これが集落じゃなくで街とかならば単純に規模が拡大しただけであり、そこで生活するためにオークたちはやって来たと想像できる。


 しかし砦は違う。砦はれっきとした軍事用の建造物。1週間前まで集落だったオークが1週間で砦を建造できるとは思えないし、その知識があるとは思えない。それを可能するとしたら砦の建造という一定以上の知識を持ち、さらに1週間で砦を建設できるだけの何かしらの、そう本当の意味で魔法みたいな力の持ち主があのオークたちの背後にいることになる。


 思い返してみれば、あのオークたち、分隊で周辺を捜索していたようだし、生産職っぽいのもいた。あれは周囲へ侵攻するための前線基地なのではと考えることも出来てしまう。


 そして、今回のイベントは周囲に魔物が少ない地域に立地している王都に対する魔物の侵攻。この現象を引き起こすには何かしらの形で魔物を王都の周辺に召喚しなければならない。この時点でこの国、あるいは人類に対する敵対者の存在が伺える。なんならレイが王都に到達したことで解放されたワールドクエストのタイトルが「胎動する悪意」だったことも踏まえると敵対者の存在は明らかだな。


 偶然かもしれないが最悪を考えて行動するべきだろう。例えば、王都にプレイヤーを集めて、その隙に同じように他の街に魔物を嗾けて他の街を機能させなくするとかね。俺が悪役でロールプレイするなら確実にその手段を選択する。


 あの規模のオークが一斉に街を襲うだけでも被害は免れない。そして街に残っているのはNPCの住人たち。つまり死んだら生き返らない。さらに運が悪いことに各街の上層部は王都に魔物襲来。来訪者がそれを迎撃するという情報を持っている。こうなると王都に視線が集まり足元がおろそかになることだって十分に考えられる。


 俺はこの考えをギルマスに伝えてみる。もちろんワールドクエストとかの言葉は色々工夫して伝えたけど。


 「む〜、その可能性は否定出来ない。否定できないが王都だっててんやわんやな状態だ。この話の根拠は桃の推理だけ。もちろん疑うわけでもでっち上げだというつもりもないが、そもそも王都が落とされたらこの国は終わる。その状況で他の街にまで手を回すのは厳しいというより無理だな。」


 「いや、俺が確認したかったのはギルドマスターから見ても俺の考えが的外れでないってことだけなんですよ。」


 「そ、そうか。できれば桃の言うことが杞憂であって欲しいがな。」


 ギルマス、それはフラグってもんですよ。


 ギルドをでた俺は即座にNPCFに登録されているメンバーに連絡をとった。【ランザ】【エリック】【カルディアス】【カイン】【サーシャ】【キザン】である。みんな忘却の彼方に忘れ去っているであろうルビー君は杖職人で子供なので今回はスルーだ。元気にしてるだろうか?


 俺の対NPC好感度上昇の称号のおかげだろうか、みんな俺の話を真剣に受け止めてくれた。無駄骨に終わる可能性は大いにあるがイベント期間中である3日間は警戒してくれるとのことだ。


 ちなみにウノ組はエリックをはじめとする衛兵組とランザを筆頭に有志と冒険者が、ドスはキザンが中心となって冒険者ギルドが、トレスとクアトロはそれぞれサーシャとカインがアリーシャ召喚院の強権を発動して警戒体制に入ってくれるそうだ。


 ここまでが俺がイベント前にしていた下準備。そしてイベントの合間にちょくちょく連絡をとって現状を確認していた。向こうサイドも北門限定ではあるが戦闘の細かい様子にメライス六魔将なる組織やレジナルドなる召喚術の使い手などの情報をほぼリアルタイムで得られるために積極的にメッセージを送って来ていた。


 最初の2日間で何も起こらず杞憂だったかと安堵していたのも束の間、3日目に入ると徐々に魔物が増え始め、12時間後には王都よりも規模も種類も少ないが魔物が一斉に襲って来たそうだ。


 しかし、俺からの情報で前もって備えていた各街は撃退に成功と次々と俺に完了のメッセージを感謝の言葉と共に送って来ていた。ただ1つキザンが率いてたドスの街を除いては。


 確かに他の街に比べると戦力が劣っているのはわかっていた。しかし、それでもAランク冒険者。なんとかなると願っていたが午前6時を迎えても連絡がない。そしてレジナルドの最後の言葉。「ほぼ全ての」が引っかかった。このほぼの中に含まれていないはドスの街だ。そう俺は確信した。


 そしてレジナルドの「仕上げが済んでないところ」これもドスの街だと仮定すると、王都のレイドボスになっている禁獣クラスがドスの街を襲う可能性がある。


 そうなれば確実にドスの街は壊滅しキザンは死ぬ。だからこそ俺はイベントの真っ最中でありながらレイにレイドボスを任せて神殿に向かっているのだ。もちろん神殿から向かう先はドスの街だ。


 これで何事も起こっていなければすぐに王都に戻ればいい。しかし、一向に返ってこないメッセージからもそれは願望にすぎないことは明らかだ。


 「間に合ってくれよ」


 逸る気持ちを抑えつつ、俺はドスへと転移した。

次回でイベントが終了する予定です。

その代わりめちゃくちゃ長くなるかもしれないっす。お付き合いください。

そのあとはリザルト回からの掲示板回そしてここまでの桃のステータス更新と第1話の前にこれまでのスキルとか称号とかの備忘録を作るって流れで更新していこうと思います。


リアルがバタバタするので少し更新が遅れることもあるかと思いますが、なんとか続けようと頑張るのでみなさん生暖かい目で見守ってください。


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