第31話 イベント初日
前回のあらすじ
・イベント開幕です
・奇術師登場
・ルシファー無双
今回のイベントは現実時間で13時から16時までの3時間だが、IWOの中では普段よりも時間を加速させて3日間かけて行うらしい。俺とレイは3日目に何かしら新しい動きがあると踏んで、初日と2日目にポイントを一気に稼いで逃げ切る作戦に出た。
しかし、魔物のリポップが俺の想像よりも遥かに早い。ルシファーが一旦フィールドを空にしたにも関わらず、3分もしないでまた最初とほぼ同程度の群れになっている。しかもレイを筆頭にプレイヤーが倒しているにも関わらずだ。
このまま増え続けるようなら間違いなくジリ貧になる。このイベントをもう少し探るためにちょっと攻撃してみるか。
短距離転移でレイのすぐ近くまで飛んで驚くレイを横目に【獄炎】を発動する。雑魚相手に広範囲攻撃をするならこれが一番だな。
「波状の獄炎」
俺がウノの領主に放った放射状に獄炎を放って触れたもの全てを焼き尽くすお手軽な広範囲攻撃。周囲にいる魔物はゴブリンとかウルフといった雑魚しかいないので触れたそばから灰になって消えてゆく。
それでも加減して放ったので倒したのは30体ほどか。
すると、レジナルドが設置した魔法陣が光を放ち、新たに30体ほど魔物が追加された。どうやら一定数が決まっていて、倒しても倒しても新たに湧いてくるタイプのイベントらしい。
まぁ、スコアランキングがあるのでそう簡単に尽きてもらっちゃ困るからある程度は大歓迎なんだけど、ずっとこのままだとジリ貧は間違いないな。またどこかで一掃するか。
「桃!そこは僕の獲物だよ!」
「悪いなレイ。でも見てみろよ。今俺が倒した数とほぼ同数が魔法陣から出てきた。ペース配分考えねぇとあとがきついぞ。」
「言われなくてもわかってるさ!君はさっきものすごいポイント稼いだだろ!?ここは僕に譲りなよ!」
「へいへい、わかったよ。」
こうなるともう今はレイはダメだ。熱くなりすぎてる。こいつが顔がいいのにモテない理由がこれなんだよな。熱くなりすぎると見境なく誰にでも噛み付く。なまじっか頭が回るから地味に正論入ってるから反論もできない。これで熱が冷めた後で関係がギクシャクするんだよな。
まぁ、今回はレイが言ってるのが正しいし、俺も確認したいことは確認できたし戻るとするか。ルシファーの一撃でどれだけポイントが入ったか気になるしね。
短距離転移で北門の上に戻ってイベント専用の画面を表示する。ここには各種ランキング他、門の耐久度や各門の重要NPCのバフの段階を確認できる。ちなみにここ北門の現在のバフレベルは1で効果はイベント獲得ポイント10%上昇だ。
さて、獲得ポイントのログを確認しますかね。
ゴブリン(1P)×489
ウルフ(1P)×337
ホーンラビット(1P)×356
各種武装ゴブリン(2P)×223
グレイウルフ(2P)×189
オーク(3P)×109
ビッグベア(5P)×12
ブラックウルフ(5P)×5
2418P×ボーナス10%×全殲滅ボーナス50%
合計3990P(小数点以下は四捨五入)
お?バフのボーナス以外にも全殲滅ボーナスなんていうのがあるな。名前からして一人でフィールドに存在する魔物を全部倒せばこのボーナスがあるっぽいけどこれはあの最初の一回しか無理だろうなー。
で、気がつかなったけどエリアボスやフィールドボス級が数は少ないけどいたのか。今はビッグベアとかブラックウルフとか雑魚ばっかりだけどきっとイベントが進めばもっと強い岩鎧リザードとかオークジェネラルとかが高ポイントが出てくるようになるんだろうな。それに雑魚モブもだんだんと強くなるんだろうな。
果たしてこのポイントはどれぐらいの位置になることやら。まぁ、北門に限って言えば討伐と累計では1位なのは間違いないけど。
うーん、このまま参戦しても他のプレイヤーに恨まれそうだし、先にドロップした素材を納品するかね。
「ギルドマスター。先ほどの一撃で掃討した魔物からのドロップ品です。お納めください。」
「おお、すまないな。どういうわけからんがこの魔物どもからはいつもと違う素材がドロップするらしいな。それを英雄神様に捧げれば来訪者たちの有利になるような恩恵がもらえるんだったけか?」
「多分そうだと思います。」
「せっかくだ、いっちょやってみっか。」
俺が渡した大量のドロップアイテムを前にギルマスがなにやら祈りを捧げるとそのアイテムが光の粒子となって空に舞い上がり、代わりに謎の光がギルマスを包み込んだ。
「へぇ、こんな感じになるのか。残念ながらこの量じゃ次の段階に行くには全然足りねぇみたいだな。なんかもっとポーションとか役に立つものの方が恩恵が次の段階に進むまで早いらしいぜ。なんかそうやって神様が言ってたぜ。」
まぁ、足りるわけないよな。これは一人用のイベントじゃなくて、みんなでやるタイプのイベントだ。たった一人の納品量でバフレベルが上がってしまってはそもそも生産職とかいらなくなってしまうからな。
うーん、今はすでにやることなくなったな。少し仮眠しておくか。今回のイベントではプレイヤーもちゃんと睡眠を取らないとステータスが下がるという効果がある。だが、夜の間だからと言って魔物が待ってくれるわけではないので交代で眠りにつく必要がある。
だが、実際のところ、1日の中で5時間睡眠を取ればいいのでここで一旦寝て、夜に備えるってことも可能だ。実際、ちらほらと他のプレイヤーも仮眠を取りにセーフティーエリアに行っている。
起床設定を5時間後にして目を閉じる。……目覚ましがなって目を覚ます。おお!まじで一瞬で夜になったな。よくわからないけど、寝ようと思った瞬間には眠ることができて、時間が経ったらパッと目が覚める仕組みらしい。
さて、この5時間でどれほどランキングが変わったかな?どれどれ……どこの門もバフレベルが2に到達と。俺が関係ありそうな討伐ポイントは北門除けば1位はだいたい1000〜1200ぐらいだな。北門の2位はレイで1378Pか。これはバフの分だけ上乗せされていると考えるのが妥当かな。
しかし、各門の累計ポイントでは東門がトップだ。参加人数が多かったぶん討伐される魔物も多いんだろうな。
さて、確認はこれぐらいにして俺もポイント集めに勤しみますかね。時刻は19時かまだ人がいるだろうけどこれからどんどん減っていくだろうし別にいいか。
「英霊召喚、フェルド、クリスタ、ヴォート、アルバセロ」
俺は4人の英霊を召喚して門を潜る。そろそろ暗くなってきてるけど【暗視】があるから問題ない。俺という新しい獲物を見つけたことで群がってくるゴブリンを剣で一掃して俺の後ろでうずうずしてる英霊たちに声をかける。
「他の人間の獲物さえ取らなきゃ全力でやって構わないぞ。ここにいるのは人々の平和を脅かそうとする害虫だけだ。思う存分、暴れてこい」
そういうと英霊たちは凶暴な笑みを浮かべてそれぞれが邪魔にならないところに散っていった。少ししてプレイヤーがいないと思われる魔物の集団の奥の方で火柱が上がり、氷の壁が出来て、竜巻が魔物を吹き飛ばし、土の槍で無数の串刺しが完成した。
「これは俺も負けてらんないな!」
俺は【飛翔魔術】を使って飛び上がる。スキルレベルが上がったことで最初はふわふわと浮かぶだけだったのがだんだんと思うように飛べるようになった。現在では走るより少し速いぐらいの速度で飛ぶことができる。
空を飛びながら当たるのを幸いに眼下の魔物に魔法を放つ。どうせイベントが進めば出てくるだろうけど、今は空を飛ぶ魔物がいないので空は俺のもの。適当にばらまくだけで
面白いようにポイントが入ってくる。
英霊たちが戦っているのよりさらに奥。魔法陣にもうすぐ手が届きそうなところで着地する。おっと、ちょうど俺の着地したところにオークがいたようだが着地と同時に首をへし折ってしまった。すまんな!
俺の予想では奥に行けば行くほど強力な魔物が出るはずなんだが。あたりを見回すとそこにはゴブリンやウルフなどの1Pの雑魚はおらず、最低でも武装ゴブリンなどの2Pの魔物。さらにはオークやこれは夜だから出て来たのであろうアンデッドモンスターで溢れ帰っていた。
「スケルトンとかの雑魚が何ポイントかは知らないけど、これは好都合!『発光』」
俺は光魔法で敵の注意を集める『発光』を使い周囲の魔物の注意を俺に向けさせる。ん?思った範囲よりも効果が広くなってるな。夜だからかな?
それまで門にしか注目していなかった魔物たちが俺目掛けて殺到する。1体1体は雑魚でも数で来られればそれは容易に脅威となり得る。しかし俺のスキルからすれば好都合以外の何物でもない。
今回は練習のつもりで【見切り】は使わずに純粋な身体能力だけで躱す。同時に【戦場に立つ獣王の舞】を発動して避けるたびにステータスを上げてゆく。このスキル、かなり【舞踏】との相性がよかった。獣王の舞は実は結構めんどくさい設定があることがわかった。それはスキルの名前に舞とつくように単に躱しただけではスキルが発動しないのだ。
文字通り、舞を踊るように敵の攻撃を避けなければ効果が蓄積して行かないのだ。現実世界での踊りなんてステップ踏む系の某音ゲーしかしたことのない俺にとってこれは結構痛手であった。しかし【舞踏】のスキルがあればスキルがアシストしてくれるのでだいぶまともに舞えるようになった。
「ふぅ、これでフルチャージ完了。今度はこっちから行くぜ!」
幻創霊器ヴェルガンドで実体化させるのは一番手に馴染んでいる剣。今回は周りに敵がわんさかいるということで二刀流だ。
「ハァ!」
手始めに一番近くにいた剣持ちゴブリンに横薙ぎの攻撃を放ちガードに構えた剣ごと真っ二つにする。そのままの流れで反対に持った剣でもう一体のゴブリンの喉元を切り裂く。
【鬼神の連撃】が発動し、与ダメージがわずかの上昇する。そのままくるくると回るように俺の周囲を囲み袋叩きにしようとしていたゴブリンたちを片っ端から斬り飛ばす。
うん、無双ゲーみたいで楽しいな。ゴブリンを倒したかと思ったら死体の影に隠れてグレイウルフが4頭同時に飛びかかって来たので瞬時に槍に持ち替えて2体を倒し、もう2体の攻撃は軽く避ける。
突き刺していた槍をまた剣に変えて、俺の横を通りすぎるグレイウルフの後頭部に突き刺せば2体同時にポリゴンへと変わってゆく。ポリゴンに変わるのを最後まで確認せずに近くにいたオークに剣を投擲。スキルレベルも相俟って眉間に綺麗に刺さり、その命を散らす。
仲間がやられたことでさらにヘイトが集まり一気にやって来たのでマジックシールドを蹴って上空に飛び上がり、下に向けてライトニングピラーを放つ。これで一網打尽。大量ポイントゲットだ。
地面におりた俺の後頭部目掛けて弓が飛んでくるが危機察知でわかっていたのでしゃがんで避ける。気配察知で方向を探ってマジックシールドに魔力糸をつけて某蜘蛛男のように飛ぶ。イベントゆえなのか木すらも再ポップしており、その木の上からゴブリンが矢を放ったようだ。
「これは使えるな。」
俺は森の中を弓に注意しながら駆け回る。その際に、木と木の間に【魔力操作】で強度マシマシ、太さ極細に設定した魔力糸を張り巡らせる。
そして一旦森の外に出て、【範囲魔法】【並列起動】【多重起動】の全てを使った強力な発光を発動して魔物を森の中に誘導する。
するとどうでしょう。驚くことに魔物たちが次から次へと粉々になってゆくではありませんか。最初の方の魔物は何も知らずに、その後ぐらいの魔物は残念ながら後ろの魔物に突き飛ばされ一瞬で死の森と様変わりした森の中へダイブしてゆく。
そして運が良く残った後ろの方にいる魔物たち。それを俺が逃すわけないじゃないですかー。
「威力は最低限で吹き飛ばしを重視した、トルネード」
最後尾にいて止まっていた魔物たちをまとめて森の中に放り込む。これで作業完了。あとはこの狙撃ポイントになっている森に消えてもらうだけだ。いや、待てよ。もしかしたら採取ポイントかもしれない。
「そうだ、アンデッドもいたことだしこれを使うか。【聖炎】発動。からの『聖炎鳥』」
俺が森に向けて放つのは【聖炎】でできた鳥。こいつは害意ある存在のみを燃やして浄化するある意味聖なる鳥だ。燃やされる側からしてみればまさに死の鳥だろうけどな。
こいつの便利なところは範囲指定すれば勝手にその範囲を飛び回り、敵を燃やし尽くすか構成している魔力が切れるまで消えることはない。今回は魔力を半分以上つぎ込んだので相当な時間燃え続けるはずだ。
聖炎鳥を放ってから数秒もしないうちに森の中からは短い断末魔ときらびやかに燃える聖炎があちらこちらから上がっている。これでここは放置して大丈夫。さて、初日のフィナーレにふさわしく、ちょうど魔法陣から出て来たボスを狩りますかね。
魔法陣から出て来たのはゴブリンジェネラルとブラックウルフ。しかしどこか様子がおかしい。具体的にはもともと理性なんて魔物にないだろうけど、目が赤く染まり余計に凶暴になってる気がする。
「まぁ、それでも雑魚には変わりないけどね。」
しかも今回は周囲にお供がいない。1対2とか英霊たちとの乱戦に比べれば軽すぎるよ。
「それじゃさっさと死……は?」
俺が武器を構えて踏み出そうとした時にはどこからか飛ばされて来たフェルドとアルバセロがそれぞれゴブジェネとブラックウルフに着弾し、即座に飛び起きると何事もなかったかのようにそれを足場にして飛び上がり戻っていった。
……そして残された俺とゴブジェネとブラックウルフの死体。あ、ポリゴンになって消えた。振り返ってみるとあたりに魔物はおらず、暇つぶしなのか4人の英霊がガチバトルを繰り広げているのが見えた。
「……もう今日はやめよう」
すっかり気の抜けてしまった俺は4人の英霊たちを送還し、なんとも締まらない形でイベントの初日を終えたのだった。
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