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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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第30話 イベント開幕!

前回のあらすじ

 ・王都に着きます

 ・オークの砦殲滅戦です

 ・槍鬼


ついに!VRゲーム月間ランキング9位に載りました!感謝感激雨霰です!!

 レベリングとスキル上げに勤しんだ準備期間は瞬く間に過ぎ去り、ついにイベント開始当日を迎えた。俺はレイと2人で俺たちが選択した北門の上に立ってイベント開始を今か今かと待ちわびている。


 もちろん俺のレベルはレベルキャップの40に到達し、スキルも軒並み20を超えた。成長する装備であった幻創霊器ヴェルガンドとローブオブカーディナルシンスも性能が遥かに向上した。


 さらにレベルキャップに達したあとは英霊たちとひたすら決闘システムを使って時間が許す限り戦闘訓練を積んだので自分でいうのもあれだが、間違いなく強くなっているはずだ。今回はレイも一緒だし、思う存分暴れてやろう。


 「お、いよいよ時間だね。さてさて、IWOで初めてのイベントだ。どんな風に楽しませてくれるのかな?」


 俺の隣でうろうろしながら時計を見たり、門の外を見たりと落ち着きのなかったレイが急にピタリと動きを止めた。確かにメニューの時計を見ると予告されていた通りの時間になった。しかし俺の察知系の範囲にはまだ何も引っかかっていない。


 それでも警戒を緩めないために門の外を眺めていると突然何もなかった平原に金色にドクロの蝶番がついた趣味の悪い扉が現れた。


 ついにイベントが始まったかと思い固唾を飲んでその扉を凝視する。その扉がゆっくりと開き、中から全身緑の服装をした白塗りのピエロが現れた。


 『これはこれは、盛大なお出迎え、誠にありがとうございます。初めまして、この世界の住人の方々、そして来訪者のみなさん。』


 そのピエロは拡声器でも使ったかのようにかなり離れているはずの俺たちのところまで声を届けている。しかし、なんていうか、どことなく人をバカにしたようなイラっとくるような話し方だな。


 『私はメライス六魔将が一人、奇術師レジナルドと申します。以後、来訪者の皆様とは長い付き合いになるかと存じますのでお見知り置きを。さて、いきなりの本題で心苦しいのですが、これでも忙しい身でしてね。単刀直入に申し上げますと、我々メライスは人類の滅亡を目標と掲げ、あなた方人類に宣戦布告を申し上げます。その手始めと宣戦布告の狼煙として、ここ王都シンコを今から私の可愛いペットたちで蹂躙いたします。あぁ、これはあのお方が私に出した指示ですので撤回はできませんよ?それではせいぜい足掻いてください』

 

 言いたいことだけ言ってさっさと扉の向こうに消えようとするレジナルド。どうやらワールドクエストに関係ありそうな重要キャラっぽいけど明確に敵って言ったし、別にここで待つ必要もないよな?


 「そう簡単に逃すと思うか?」

 

 俺は【空間魔法】のレベル15で覚えた短距離転移でレジナルドの背後に転移してそのままレジナルドの首を剣で切り裂いた。


 しかし、完全に捉えたはずなのに俺の剣はレジナルドの首をそのまま素通りして反対側にすり抜けて行った。


 「チッ、幻影の類か」


 『えぇ、もちろんですとも。あなたのような来訪者がいないとも限りませんでしたのでねぇ。用心することに越したことはないですよ。それより、あなたですね?私たちの尖兵を次々と殺して回っている来訪者というのは』


 「尖兵?なんのことだ?」


 『なるほど、無自覚ですか。それに今の、空間魔法ですね?確か来訪者がこの世界にやってきたのはほんの数ヶ月前でしたが……やはり来訪者というのは厄介ですねぇ。そしてその中で特にあなたは厄介そうだ。厄介な芽は成長しないうちにここで摘んでおきましょうかね』


 レジナルドの雰囲気が急に変わった。幻影から実体に変わったのか?ひしひしと肌に突き刺すような殺気を感じる。こいつ、確実に俺よりもレベルが上だな。


 「そう簡単にやれると思うなよ?」

 

 『これは……魔力糸の結界ですか。少々まずいですね……なーんてね』


 【無属性魔術】のレベル15で覚えた魔力糸。その名の通り、魔力でできた糸なので使い方によっては簡単に物を切断できる強力な糸になり得る。


 その糸のをレジナルドの周囲に瞬時に張り巡らして、逃げ場を完全に無くしたはずなのに、レジナルドが手を一つ叩くといつの間にか糸の結界の外に出ていやがる。しかもご丁寧に俺の【空間把握】の範囲の一歩外だ。


 「ならば!」


 【瞬歩】で間合いを詰めて剣で心臓を突き刺す。しかも剣には【獄炎】を付与してあるので掠っただけでもダメージを与えられるはず……


 「なんだと!?」


 思わず叫んでしまった。剣に突き刺され、獄炎で体を燃やされたはずのレジナルドが弾けたかと思うと2頭身のデフォルメされたレジナルドに分裂してしまった。


 そしてその分裂したミニレジナルドはどこからともなく取り出したトランプを一斉に投擲してきた。得体のしれないものは攻撃してはダメ。PvPの基本なので俺はそれを躱したが意味がなかったようだ。


 そのトランプは地面に落ちた瞬間に煙を吐き出した。とっさに顔を手で覆う。これが俺の判断ミスだった。


 『今日のところは私も忙しいのでまた今度、じっくり遊んであげますよ。来訪者桃君』


 耳元でレジナルドの声がしたかと思うと、次の瞬間には俺は北門に叩きつけられていた。


 「ぐっ……」


 「大丈夫かい!?」


 慌ててレイが門から飛び降りて俺のそばにやってくる。


 「全く君ってやつは。いきなり消えたかと思えばあの訳の分からないピエロと戦闘始めるし、その戦闘も全然目で追えないし。かと思ったらいきなり壁に叩きつけられてHPを9割減らしてるし、ほんと、何考えてんのさ!」


 珍しくレイの口調に余裕がない。これはレイが本当に焦っている時や感情的になった時に出る癖だ。マジで心配かけたみたいだな。


 ってか、俺のHPが9割減だと?あれほどアホみたいな耐性のついたローブ来て、レベルカンストして、しかも装備の防御力もそれなりにあるはずだぞ?ってことはあのレジナルドとかいうクソピエロ、マジで強いんだな。


 「悪い、レイ。もう大丈夫だ」


 「もう、ほんと、昔から無鉄砲なところはあるけど気をつけてくれよ」


 「悪いって。ところでイベントの進行状況は?」


 「それなら君が向こうでレジナルドと戦っている間にいかにもな魔法陣が出現してね、きっとすぐに魔物が出てくるぞ」


 「そうか、ならこうしちゃいられないな。持ち場に戻るか」


 「そうしよう」


 門の上に戻ると今回の北門の重要NPCであるギルマスが俺たち来訪者の冒険者に指示を出しているところだった。北門ではギルマスの指示の元で俺たちは動くことになっている。まぁ、指示と言っても雑魚は個人で殲滅してよくて、重要なのは個人じゃ手に負えない敵が出てきたときにどうするか、その指示だけは俺たちより現場に詳しいギルマスがするってことの再確認だけだった。


 「おお、桃。大丈夫だったか?今回の主犯格と思われる人物と交戦に入ったところまでは確認できたが」


 「手酷くやられたけど、レイに回復してもらったから問題ない。それよりすまなかったな、勝手な行動をして」


 「いや、桃が時間を稼いでくれたおかげで北区の住民を避難誘導することができた。」


 「そういってもらえると助かるな」


 「むっ」

 「お?」

 「おや?」


 俺とレイ、それにギルマスの3人が同時に魔物が魔法陣から出てくるのを察知した。いよいよ本格的にイベントが始まるみたいだな。


 「この国とはなんの関係もない来訪者に頼むのは心苦しいが、王都を頼むぞ」


 「任せといてくれ、ギルマス。それに俺たちだってこの世界で生きてるんだ。全力で守るさ。行くぞ、レイ。開幕はド派手に告げねぇとな」


 「ふふ、何をしてくれるのか楽しみにしているよ」


 「しっかりと見とけよ。まずは【英霊召喚】」


 俺はここで初めてルシファーを召喚する。今回のイベントのキーマンはこいつだ。


 『久しぶりだな。我が召喚主よ』

 

 「あぁ、初めて会った時以来だな。悪いな、条件は整ってたんだがお前を召喚できなくて」


 『なに、我が加護をもつ召喚主のことであればある程度把握している。なぜ我が召喚されなかったかもな。何よりこのような楽しげな宴が我の初陣とはなかなかに面白いではないか。』


 「はは、気に入ってもらえたなら何よりだ。さて、話したいことは色々あるが他の来訪者たちを待たせてるんでね。まずは一発派手にブチかましてきてくれ」


 『それは全力を出してもいいということだな?』

 

 「もちろんだ。いや、むしろ見せつけてこい。お前のその力を、お前がこの世に顕現したってことを!」


 『クク、クハハ、アーハハハハ!最高だ!我が召喚主よ。それでこそ我が主人にふさわしい。それでは行くぞ!』


 ラスボスみたいな笑い声を残して凄まじい速度でルシファーが飛び上がった。そして上空で白黒の美しい翼を大きく広げ剣を掲げた。


 ルシファーの剣の鋒に恐ろしいほどの魔力が集まってゆく。それまで早くイベントに参加させろだの祭りだ!などと騒いでいた他のプレイヤーすらも息を飲んで天に立つルシファーを見上げる。


 『矮小な愚物ども、その骸に刻むがいい。これがルシファーの最高の一撃。【明けの明星】』


 高まり切った魔力が解放され、純粋な光と闇の魔力で構成された黒白の球がゆっくりと地上に降りていった。


 ゆっくりと降りた黒白の球は地上に触れる寸前に弾けた。次の瞬間、世界から音が消えた。弾けたと思った瞬間には全てを光と闇が覆い尽くし、気がつけば全ての感覚が消え失せていた。何が起こったか俺でもわからなかった。


 少し遅れて轟音がそれを見ていた全員に叩きつけられた。中にはその轟音だけで吹き飛んだプレイヤーもいる。


 思わず顔を覆い、目を瞑る。どれくらいそうしていただろうか。結構な時間そうしていた気もするが実際はほんの数秒だったのかもしれない。パラパラと細かい砂が顔に触れ、ハッとなって顔をあげる。


 レイも同じように顔をあげていた。


 そして魔物が襲来してくるはずの方角を見る。全てが無に帰していた。細かな個体数や種類まで把握できていなかったが、イベントの開始に合わせてかなりの数の魔物が押し寄せていたはずだ。


 それが影も形もない。魔物どころか周囲に生えていた草や樹木すら存在しなくなっていた。更地とはこのことをいうのであろう。そんなアホみたいな感想しか出てこないほど俺は目の前の光景が信じられなかった。


 『ふむ、思ったよりも脆い敵のようだったな。今ので大半が消し飛んだぞ。我が召喚主よ』


 あたりを静寂が包む中、ふわりとルシファーが舞い戻ってきた。


 「お、おう、よくやってくれた。とりあえず今は敵の姿が見えないし、いったん召喚を解除するからゆっくり休んでくれ。今度は強そうな魔物が出たら呼ぶ」


 『うむ、今のは手応えがなさすぎたな。今度はもっと強敵と相見えることを期待するぞ』

 そういってルシファーは魔法陣の中へと消えていった。


 「どうだ、レイ。少しは驚いたか?」


 とりあえず、ギルマス含めて俺に注目して誰も一言も発さない異様な光景が広がっていたので現実逃避がてらレイに話を振る。


 「ど」


 「ど?」


 「どうだ?じゃないよ!この大バカもの!なんだあれは!聞いてないぞ!こんな馬鹿げた威力の魔法は!」


 「そ、そうだよな?」

 「え?魔物が大半消滅してる?」

 「魔物どころじゃねぇだろ」

 「それよりあのバケモノ召喚主とか言ってなかったか?」

 「あ、それ俺も聞いた」

 「ってことはあいつサモナー?」

 「いや、あんな召喚獣聞いたことねぇぞ!」


 「落ち着けってレイ」


 「これが!落ち着いて!いられるか!」


 レイが俺の襟首を掴んでガクガク振るのでいい加減気持ち悪くなってきた。そしてプレイヤー達の間でもルシファーの一撃の衝撃からだんだんと回復してきた奴らがざわざわとざわめき出した。


 「桃、随分と派手にやらかしてくれたな」


 「ぐ……、ゲホ。ナイスギルマス。まさか俺もここまでとは思わなかったが景気付けにはなっただろ?」


 「……はぁ、全く、何事にも限度ってもんがあるだろうが」


 「いや、おっしゃる通り、面目無い」


 「まぁ、あれだけのものを見せつけられれば否が応でも気合入るだろ。それじゃ、いっちょ北門も出撃と行きますか。聞け、冒険者ども!たった今、想定外のことが起こったが、気にすんじゃねぞ!ここからはお前達の出番だ!思う存分暴れてこい!」


 「「「「「おお!!!」」」」」


 さすがは荒くれを束ねるギルドの長。一瞬にしてざわめいていた冒険者をまとめ上げ、再び湧いてきた魔物たちに突撃させた。


 「……絶対に詳しく聞くから、覚悟しておくんだね」


 なにやら恨みがましい目を向けてレイも光を纏って駆け出していった。おおーもう先頭を追い抜いてらぁ。あいつも相当強くなってんな。


 「さて、俺も英霊にばっかり頼ってないで参戦するとしますかね!」


 こうして、俺とルシファーという存在をこれでもかというほどに他のプレイヤー達に見せつけたオープニングと共に、記念すべきIWOの第一回イベント、王都防衛戦が開幕した。


ついに始まりましたイベント回!ここでようやくルシファーさんを登場させられましたね。よかったよかった。

なんでルシファーが強いのかと申しますと、こいつのレア度というか階級が星7なんですよね。他の英霊は星3の設定なのでここまで戦力差があるんです。チートですねぇ、桃。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 読み物としては面白いけど、いわゆるゲームとして成り立ってない系ですよね。 だってプレイ時間少ない、効率とか考えてない相手に完敗するゲームってやる気にならないと思うし。 でも作者様はわか…
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