第16話 召喚騎士の戦い方
前回のあらすじ
神殿に行きます
謎解きです
英霊が増えました
他のプレイヤーに見つかることなく神殿を後に出来た俺は空腹度を満たすために適当に屋台で買い食いしながらサーシャと合流するために冒険者ギルドを目指すことにする。
おお!?ついこの間まで閑散としてたはずなのに結構人が増えたぞ!?【隠密】を発動して気配を消しつつ話をこっそりと聞き耳を立てるとやはりさっきのワールドアナウンスのせいで人が集まってるようだった。
聞けば、当然この街を隅から隅まで歩き回ったが神殿なんて存在しなかった。もしかすると何かのイベントで行けるようにならないと発見出来ない仕組みなのではないか?などなど。住人との交流を推奨してる部分があったからもしかしたら、住人との会話の中で出てこないと解放されない施設があるのでは?といった会話が繰り広げられていた。
その推測があたりか外れかは俺にはわからんのでここらで会話の盗み聞きをやめてサーシャと合流し、街の外に出る。向かうはブラックウルフが出るあの森だ。
「私から教えることは3つよ。一つが召喚騎士っていう職業そのものの特性ね。例えば剣士の職業の人はSTRが上がりやすくてMIDが上がりにくい。そして魔術系のスキルの成長が遅いわね。あとは剣以外の武器のスキルも上がりにくいわ。召喚師や魔術師はその逆なのはわかるわよね?」
「あぁ、それぐらいは知ってるぞ。あと付け加えるとしたら武器にしろ魔術にしろ3つ以上獲得するとその成長が遅くなるんだろ?」
「その通りよ。でもね、召喚騎士は違うの。召喚騎士は召喚師としての能力と国や世界を守る騎士の能力の両方が得られるの。だからステータスは満遍なく成長するし、スキルもそうよ。そして何よりスキルの数による成長の制限を受けないの。何故なのかは私も知らないけど、きっと英霊たちと世界の命運を賭けて戦う最前線に召喚騎士がいるから、それなのに成長が遅いっていうのは致命的でしょ?だから制限がないんだと思うわ。もしかしたらそんな制限が関係ないほど才能がある人や努力する人しか召喚騎士になれないのかもしれないけどね」
サーシャの説明は結構衝撃だった。それと同時に俺の選択がある意味では一番効率の良かった結果であったことの証明でもあった。なんせアホみたいに偏ったスキル選択したもんな。それを職業で補ってるの知らなくて底上げスキル取ったから成長度やばいんじゃね?
とりあえずマイナスはないってことで、よし!
「なら俺も、過去の先輩たちに恥じないように精進しなきゃな。」
「えぇ、頑張りましょ。それで2つ目は召喚騎士としての戦い方ね。基本的には召喚師と同じように英霊を召喚して戦うんだけど……まぁ、見せた方が早いわよね。ちょっとそこで見てて。行くわよ、【アーネル】!」
ウルフを見つけたサーシャが英霊を召喚する。召喚されたのは緑色のローブを着た魔術師っぽい、ショタだ。そうかー、サーシャショタコンかー。
「変なこと考えてたらぶっ飛ばすわよ!集中して見なさい!」
おっと、心の声が漏れてたかな?集中しろと言われたのでサーシャの戦い方をみる。敵のウルフは全部で5体。そこそこの群れのようだ。
「アーネル、一番の右のウルフにウィンドカッター!そのあとは自由に戦って!」
サーシャの指示は案外適当だった。それでもアーネルと呼ばれた英霊は軽く頷くと指示された通りに右のウルフに魔術を放った。その間にサーシャはすでに2体のウルフを屠ってる。早いな。
瞬く間にウルフは全滅した。なんか召喚師やテイマーと違ってサーシャは存分に動いてたし、英霊も自分で考えて行動しているようだ。搭載されてるAIが高性能なのだろう。
「今みたいに指示をしてもいいし、指示しなくても英霊は強いから戦えるの。普通の召喚師と同じように術者が倒されたら終わりだけど私たち自身も戦える力を持っている。英霊と互いに背中を預けて戦うのが召喚騎士の戦い方よ。注意点なんだけど、英霊召喚してすぐの英霊は私のアーネルみたいに動けるわけじゃないわ。なんども戦闘を重ねて信頼と経験を積んで初めてあそこまで動けるのよ。」
「なるほどな。だいぶ戦い方が見えてきた。ありがとなサーシャ」
「べ、別にあんたのためにしたわけじゃないわよ。任務だもの。」
お?お?ツンデレですかな?それは我々のような紳士からしてみればご褒美ですぞwww
おっと、キャラぶれしたわ。
「……次が最後よ。私たち召喚騎士が強大な力をもつ英霊と一緒に戦うためのスキルを身につけてもらうわ。」
「へぇ、スキルね。今の戦闘でもサーシャは使ってたのか?」
「えぇ、もちろんよ。というより常日頃から使ってスキルを鍛えているの。今から教えるスキルは召喚騎士にとっては基礎中の基礎だけどそれと同時に奥義でもあるの。」
「そ、そんな大層なスキルなのかよ。俺そんなすぐに覚えられっかな」
「大丈夫よ、覚えるだけならきっとすぐだから」
「そうなのか?」
「えぇ。早速始めるわよ。ちょっと背中を私の方に向けてくれるかしら?」
サーシャに言われた通り背中を向ける。するとサーシャが俺の背中に触れた。ひやっとした感覚に変な声が出そうだったがなんとか堪える。するとサーシャの手を通じて腹のあたりが熱を帯び始めた。
「わかるかしら?今私の魔力を使って桃の魔力を操作してるの。そうそう、言い忘れてたけど身につけてもらうスキルは【魔力操作】よ。このスキルを身につければスキルに囚われないMPの運用ができるようになるの。私たちはこのスキルを最大限生かして英霊達と肩を並べて戦ってるのよ」
【魔力操作】ね。そしてスキルに囚われないMPの運用か。なんとなく予想は出来るけどこれはスキルが芽生えてから要検証かな?
<スキル【魔力操作】を取得しました>
<条件を満たしたためにスキル【無属性魔術】を取得しました>
「お、サーシャ。スキルを獲得できたみたいだ」
「え?もう?さすが来訪者は早いわね。私は1ヶ月以上かかったっていうのに。まぁ、早く習得できたっていうのなら良いことよね。なら私の役目はこれで終わりだわ。あとは桃が思うように進んでいってちょうだい。私は本部に戻るわね。向こうで会えるの楽しみにしてるわ。」
「そっか、短い間だったけどありがとな。俺もなるべく早くそっちに行けるようにするわ。」
サーシャは少し照れたように頬を赤く染めながら、次元の扉を使って本部へと戻っていった。
これ以上この森にいてもやることはないのだが、せっかくなのでドスの街に向かいながら英霊と一緒に戦ってみよう。
「そういうわけで、【アルバセロ】召喚」
この世界で初めて召喚術を発動すると白い魔法陣が地面に現れ、アルバセロが召喚された。うーん、見た目は普通のNPCみたいで神殿で会った時のようなTHE神みたいな装備ではない。
「俺は桃だ。よろしく頼む。早速だけど一緒に戦ってくれるか?」
俺が呼び出したアルバセロは無言でコクリと頷いた。ここの森に出てくるウルフは全て風属性だった。だから相性の良いアルバセロを選んだんだけど。さて、英霊様のお手並み拝見と行こうか。
少し歩くと【気配察知】にウルフが引っかかった。全部で3体か。今の俺なら適正レベルよりも下だしどうにでもなるけど……アルバセロのレベルは1なんだよなぁ。どうするべきか。
「アルバセロ、一番右の1体は任せて平気か?」
「(コクリ)」
「よし、行くぞ!」
アルバセロの戦闘の様子を見たいので速攻で決めることにする。今の武器は黒鉄のバールと黒鉄の槍の二刀流。【瞬歩】で一気に間合いを詰めて脳天に叩きつける。【弱点特攻】と【ウルフスレイヤー】の効果でダメージマシマシ。一撃でポリゴンとなる。一瞬の出来事に呆然とするもう一体のウルフ。その隙を逃さず槍で心臓を一突き。その姿をあっけなくポリゴンへと変えさせる。
「ふぅ、もうさすがにこれぐらいは楽勝だな。アルバセロは……」
アルバセロに任せた方をみればすでに戦闘は終了していた。なんと……結構な速度で倒したにも関わらず戦闘が見れなかったか。どうやら英霊様にとってはレベルが1でもウルフ程度の魔物では相手にならないらしいな。
「すまん、アルバセロの戦い方が分からんかったわ。もう一戦やってもらって良いか?」
「(ふるふる)」
なんと首を横に振っての拒否!まさかの展開に少々フリーズする俺。えぇ……召喚した英霊に指示を断られるなんてことあるのかよ……。
そう思っていたが、アルバセロはその手にした大剣で周囲を薙ぎ払うと、俺から少し離れて構えた。
あー、なるほど。そういうことね。
「良いだろう。乗ってやるよ!」
対峙する俺とアルバセロ。要するに雑魚相手にするんじゃなくて知りたいなら拳(剣)で語ろうぜってことだろう。流石は英雄神、脳筋が過ぎるぜ!
示し合わせたように2人同時に地面を蹴る。さっきの戦闘でレベルが上がったのか、はたまたそもそものステータスが高いのか、速度は俺とほとんど変わらない。
先手をとったのはアルバセロ。大剣を振り上げ、上段からの渾身の力を込めた振り下ろしを放ってきた。それを半身になって避けてそのまま反撃に出ようとするも叩きつけられた大剣がそのまま地面を爆散させたせいで体勢を崩され、続けざまに放たれた横薙ぎの攻撃を躱すために、一度距離を取らされてしまった。
「マジかよ。召喚したてで俺が押されるのかよ。」
武器を握り直し額の汗を拭う。舐めてた訳じゃないけど予想より遥かに強い!これが英雄の中でも世界を守って戦った6英雄の力か!
「じゃあ今度はこっちから行!?」
間合いを詰めようと地面を蹴ったが、【危機察知】が警笛を鳴らすのにしたがってその場を転がるように離脱する。間一髪、俺がいたところを弾丸のような速度で土や石が通過していった。
アルバセロが放った技だろう。【魔力察知】でアルバセロの魔力が一瞬高まったのを感じたからおそらく土魔術。アルバセロの足元の大地が何かに抉られたようなあとが付いてるし、あの大剣に魔力を込めながら地面ごと振り抜いて攻撃してきたってところだろう。
「やっべぇな。英霊ってのはここまで強いか!」
自然と頬が釣り上がる。やっぱり戦いはこうでなくっちゃな!
ふっと短く息を吐いて意識を切り替える。ここからは本気で行かせてもらう!
左手に持っていた槍を投擲。投擲と同時に【瞬歩】を発動して一気に間合いを詰める。しかし相手は英霊。そんな見え透いた戦法など全く通用しない。俺が【瞬歩】で着地する場所目掛けて豪剣の横薙ぎが襲ってくる。
それを【全反撃】でダメージもろともアルバセロにお返しする。流石の英雄もこれには驚きダメージを受けたようだ。怯んだ隙に初めて戦闘で魔術を使う。選択したのは【光魔法】のライトという周囲を明るくするだけの魔法。それに【魔力操作】でありったけの魔力をつぎ込んでその光量を爆上げする。
【全反撃】の衝撃から立ち直ったところでいきなり目に強い光を浴びたアルバセロは一時的に視界を失う。俺は目を閉じて視界を守り、視力を奪われ動きが鈍くなったアルバセロの手をバールで打ち付け豪剣を落とさせる。そしてその落ちた大剣を拾い、アルバセロに突きつける。
その気配でアルバセロは自身の敗北を悟ったのだろう。降参だとでもいうように両手をホールドアップした。
「ふぅ、疲れた。」
俺はアルバセロに豪剣を返して帰還させる。自分の想像以上に6英雄とやらは強いようだ。それから少し休憩して日が暮れるまで6英雄を召喚しては対戦してを繰り返した。
フェルドはアルバセロとタイプの似た剣豪。違うのは魔術の使い方。剣に炎を纏わせたり、自分で火を纏って身体能力を上げて戦うスタイルのようだ。結局、高火力、高機動に翻弄され負けた。
クリスタの戦い方は優美華麗。舞うような足捌きでヒットアンドアウェイを繰り返す。一度力勝負に持って行こうとするも軽く受け流され、しかも最後は剣を巻き上げられ敗北。
ヴォートは槍に不可視の風の刃を纏わせていた。完全に躱したと思っても追撃のように風の刃に刻まれ、遠距離攻撃は全て風壁で逸らされた。手も足も出ず完敗。
ルーセントは超がつくほどの正統派みたいな戦い方だった。理にかなった剣術と所々でフェイントのように撃ってくる魔術。闇魔法で光魔術を無効化して【瞬歩】による不意打ちがなんとか決まり辛勝。多分次は無理。
そして最後がヴィクティム。これが一番どうしようもなかったと思う。ヴィクティムの戦い方は盾で受けて槍で貫くというオーソドックスなスタイルだけど、その盾の固いこと固いこと。バールで殴ってもビクともしねぇの。きっちり盾で受けられて、そのまま槍で突き刺されてHPを全ロストするギリギリ一歩手前までいってしまった。
結論、やばい奴らしか英雄にはいない。なんとか勝ったアルバセロとルーセントも次は勝つ自信ない。もっと強くならなきゃなぁ。
散々やられまくって時間を見るともう11時。街に向かうのは諦めて、以前もらったチーズインハンバーグを食べてテントでログアウト。明日はドスの街を散策するか。
桃 Lv,12
Dランク
職業 召喚騎士
HP 170
MP 340
STR 26
VIT 23
INT 26
MID 23
DEX 23
AGI 22
LUK 26
NPCF 【カイン】【サーシャ】【エリック】【ランザ】
英霊 【ルシファー】【フェルド】【クリスタ】【ヴォート】【アルバセロ】
【ルーセント】【ヴィクティム】
称号
□一般
【来訪者の召喚騎士】【到達者】【最速の頂点】【EX職の解放者】【困難に立ち向かう者】【絆を紡ぐもの】【光の先駆者】【闇の先駆者】【英雄神の試練に挑みし者】
□スレイヤー系
【ウルフスレイヤー】【ゴブリンスレイヤー】
□鬼
【剣鬼】
□祝福
【最強の召喚騎士の祝福】【ノルンの祝福】【ルシファーの祝福】
□神々からの称号
【ノルンの期待】
スキル(20SP)
□武術系
【剣術Lv25】【スラッシュ】
【槍術Lv7】【杖術Lv7】【鎧Lv3】【武術の心得】【体術Lv20】
【☆全反撃(物理)Lv3】
□魔術系
【火魔術Lv5】【水魔術Lv5】【風魔術Lv5】【土魔術Lv5】
【☆光魔法Lv1】【☆闇魔法Lv1】【◎☆無属性魔術Lv1】
【召喚術Lv5】【◎☆魔力操作Lv1】【魔術の心得】
□察知系
【気配察知Lv25】【危機察知Lv5】【魔力察知Lv5】
□ステータスアップ系
【☆逆境】【☆限界突破】【☆覚醒】
□耐性系
【恐怖耐性Lv5】
□その他
【看破Lv5】【夜目】【☆瞬歩】【☆フルチャージ】【☆英雄の守護】
【☆弱点特攻】【☆二刀の心得】【☆鬼神の連撃】【☆見切りLv6】
【回避Lv7】【隠密Lv4】【平衡感覚Lv3】【瞑想Lv3】【☆六天幻衝】
◎は今話で追加されたもの
☆は初取得、イベント特典などで強化されているもの




