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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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ダンジョンボス−1

 現れた警告を無視して城前広場に足を踏み入れた俺たち。どんな敵が出てくるのかと思いきやパッと目に付くところには何もいない。さっき感じた強敵の気配は一体なんだ?


 そう思ったのも束の間、不意に風が強まりあっという間に目の前すら見えないほどの吹雪となった。【ダンジョン適応】を持っている俺ですら吹雪で視界を奪われている。つまりこれはダンジョンの仕掛けじゃなくて何者かによって引き起こされた現象ということだ。


 目は見えなくても【極界】はいつでも使える。その探知範囲にここに入る前に感じた気配が飛び込んできた。その気配は城のある方角から飛んで(・・・)来た。つまり飛行系の魔物だ。


 そいつが城前広場にたどり着くと急停止。その衝撃で吹雪となっていた雪が全て巻き上げられた。視界が晴れ、俺たちの目に飛び込んできたのは空を統べる王者、古龍の姿だった。


 「あれがレイドボスか・・・飛行系は厄介だね」


 「だな。このクラスになると俺の【獄炎】でのゴリ押しは不可能だ。地道に削るしかないな」


 【百科事典】先生の情報によるとこのボスは【古氷龍ゲフリーレン Lv100】というらしい。見た目はよくある西洋の竜ではなく東洋の龍の姿をしている。感じ取れる魔力は属性ダンジョンの裏ボスだったツインヘッドにも匹敵するだろう。


 「GYUWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 空中に佇んでいたゲフリーレンが咆哮をあげると周囲の吹雪がゲフリーレンに向かって収束し、奴を覆う天然の防壁となった。この間、攻撃を仕掛けようにもなぜか体が動かなかった。多分だけどここまでがいわゆる登場シーンなのだろう。


 「さて、厄介なことになったな。あの吹雪の暴風壁は生半可な魔法では突破は難しいだろう。さらに飛んでいるから普通では物理攻撃も難しいと来たか。さすがは廃人用イベントのボスだな。」


 「でも桃の【獄炎】ならすぐに削れなくても削ること自体は可能でしょ?それにボク達だって飛べないわけじゃない。どうにでもなるでしょ?ね?召喚騎士様?」


 「だな。とりあえず一当てしてみるか。火魔導・鳳翼乱舞」


 氷には火ということでフィニクスも使っていた相手の特殊効果を打ち消す火魔導を発動する。ふわっと広がった羽が荒れ狂う吹雪を鎮めてさらに舞う。そしてゲフリーレンを覆う吹雪の暴風壁に羽が触れるとそこだけパッと壁が消えた。


 「今!光魔法・ホーリーレイ!」


 吹雪の壁が消えたのを見てレイが足の速い魔法を放つもすぐに壁は再展開され防がれた。直後上空にいたゲフリーレンが凄まじい速度でこちらに向かってきたので回避。


 吹雪の壁に触れると危険なので今回はギリギリではなく余裕を持って回避する。その際にどれぐらい削る力があるのかと手当たり次第に魔法を叩き込んだが今の俺の魔力を以てしても魔術レベルではお話にならないようだ。


 「俺のマジックシールドも削るか。なかなか厄介だな、あの吹雪」


 何より厄介なのがマジックシールドすら削られたことだ。そこまで魔力を込めていないとはいえ咄嗟に作っても俺のマジックシールドは足場にできるぐらいの強度はある。それが一瞬で砕けるとなるとこの状態の時は防御は厳しいものがあるな。


 2人で左右に別れていたので合流。


 「どうする?」


 「あの防壁はこの環境があってこそだ。だったらあいつ有利なフィールドを書き換えてやるまでだ。溶岩魔法・イラプション、灼魔法・灼熱波、付与魔法・効果延長、魔法陣・爆発」


 俺は4つのスキルを連続発動。溶岩魔法で大地を溶岩へと変え、灼魔法で吹雪を封じ込めて熱波を呼び、すぐに消えないように付与魔法で効果を延長。さらにゲフリーレンのさらに上空に爆発の魔法陣を無数にセット。


 これでゲフリーレンは自身の天下の閉ざされた世界から真っ逆さまにこの灼熱地獄に落ちてくるというわけだ。


 「まずは、その図体、落としてくれよう。魔法陣起動。」


 カッと魔法陣が鋭く光、続けて爆発音が連鎖する。その度にゲフリーレンの怒りとも悲鳴ともつかない声が響き渡る。もちろん爆発そのものでダメージを与えられるわけもないが、本来周囲に拡散するはずのエネルギーを一方向に集中させているのでその威力は倍増。


 俺の魔力で組まれた爆発魔法の魔法陣は全部で100以上。いくら廃人向けレイドボスでも逆らうことなど出来はせず、その身を溶岩の中に叩きつけられた。


 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 今度はれっきとした悲鳴をあげるゲフリーレン。ハッハッハッ!痛かろう、熱かろう!すでにその身を覆う吹雪は熱で蒸発し無防備となっている。そのご自慢の鱗を溶岩で溶かされ、熱波に煽られ逃げようとしても爆風で戻される。周りに自分を助けてくれる雪はなし。このまま悶え死ぬがいい。


 しかし、相手は何度もいうが廃人向けレイドボス。そう簡単にやられてくれるわけでもなかった。


 「GYEEEEEEEEEEEEEE」


 突如、これまで苦しんでいたゲフリーレンの鳴き声が変わった。しかも驚くべきことにゲフリーレンが奇声をあげた瞬間、俺たちは吹き飛ばされ、さらに全ての魔法がかき消えた。


 「くそが!波動持ちかよ!」


 これは予想外。まさかここでノックバック+効果を打ち消す波動を使ってくるとは。おかげで全ての魔法が消え、再び吹雪だした。さらにゲフリーレンは距離が空いている間に再び上空へと戻っていった。


 振り出しかと思ったが、あの吹雪の暴風壁は展開されない。さらに所々鱗から黒煙が立ち上っているのを見るとどうやらダメージは与えられているようだ。


 次は何を仕掛けてくるかと構えているとゲフリーレンは地面に向かってブレスを放った。そのおかしな行動に首をひねっていると【極界】に多数の反応。ブレスの向こうからオーロラに包まれたリザードマンが姿を現した。


 「うーん、よくわかんないけど第2ラウンド的な?」


 「そうだな。ってことはさっきの俺の攻撃で一定以上ダメージを与えたか。次はあのオーロラに包まれたリザードマンをぶっ潰しながらあいつに攻撃せにゃならんのか。数が多いな。」


 「そうだね。でもリザードマンには魔法が効きそうだし、ボクも貢献できると思うし大丈夫でしょ。」


 「だな。」


 レイとそんな会話をしているうちにリザードマンはどんどん増えてゆく。いったいどこにそんな数がいたのかと突っ込みたくなるがその数はすでに1000を超えた。しかも雑魚いっぺん通りではなく統率個体もいると思われる。さらにリザードマン共はゲフリーレンの影響なのか変なオーラみたいのを纏っており、余計に厄介そうだ。


 ここは近接よりも魔法で遠距離攻撃するのが正解だな。流石にこの数を相手に真正面から挑むのが愚かだ。レイも俺の意見に賛成してくれている。


 レイはここで光の精霊を召喚した。あの時見せてくれた精霊を用いた威力の底上げをするのだろう。俺は【魔の理】を発動。周囲に散らばる魔素が俺の支配下に置かれる。


 さらに【魔纏】を発動。そもそも魔纏は魔力を纏うスキル。身体能力が上がるだけじゃなく、人間のキャパを超えて魔法を使えるようになるスキルでもある。


 今回は動く必要はないので回復にリソースを割かなくてもいい。その代わりに魔力を火属性へと変換する。火属性へと変換された魔力は高く掲げた俺の左手に集まってくる。


 これは俺が今回のイベントと次のPvPイベントのために密かに練習していた切り札の1つ。ミーナの必殺技、レーヴァテインに着想を得た俺だけのオリジナル魔法。【魔の理】を得た魔人である俺がそのほかのスキルを使って強引にシステムを騙して使えるようになった技。


 「行くよ!精霊術奥義・アトミックライトニングボルト!」


 「概念魔法・終焉の炎!」


 レイからは凄まじい魔力を帯びた空を埋め尽くすほどの光の矢が、俺からは目の前に存在する全ての事象を焼き尽くす魔法の根源たる炎がそれぞれ今まさにこちらに向かって突撃せんとしていたリザードマン諸共ゲフリーレンに襲いかかった。


 轟音と閃光があたりを包む。前の方にいた奴らは運がよかった。おそらく何も感じることなく消滅しただろう。運悪く、このダンジョンに現れたばかりの奴らはレイの魔法で四肢を砕かれただけの奴もいる。


 そいつらの悲鳴が聞こえ始めたころ、俺の炎が一切の抵抗を許さず飲み込んでゆく。どのみち死ぬ運命だったんだ。即死の方が苦しまずに済んだだろう。


 俺が使った技は概念魔法と呼ばれる魔導の上に存在するスキルらしい。召喚院にある大図書館の古い書物に書かれていた。ミーナのレーヴァテインの発動の速さと威力から考えるとこの概念魔法かあるいはそれに類するものと推測。その対策を練るためにまず再現を試みた結果、【魔纏】を火属性特化に構成した上で【火魔導】と【獄炎】と【聖炎】を最大火力で同時発動してようやくそれっぽいものが再現できた。


 それでもスキルでもないないのに無理矢理発動しているためか、ミーナや他のスキルのような自由度はなくただただ炎を放つだけになってしまっているがそれでもまともなガードはできず、ルシファーですら迎え撃つよりは避けた方が楽だと判断した強力な技だ。


 たかがイベントモンスターのリザードマンごときに耐えられるはずもなくレイが撃ち抜いた死体もまとめて一切合切を無に返した。


 もちろんゲフリーレンにも俺とレイの魔法は直撃している。間違いなくさっきの溶岩地獄なんかよりもダメージを与えたはずだ。


 今は魔法の影響で城前広場を土埃と黒煙が覆っているために何も見えない。【極界】の反応ではリザードマンの反応はなし。だけどゲフリーレンの反応はいまだに健在。このまま追撃をかけたいが、流石に俺もレイも技の反動があり小休止。


 HPは多分それなりに減らした。向こうの戦意も衰えていない。この煙が晴れたら第3ラウンドだな。気合入れていこう。

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