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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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凍てつく帝都


 さて、俺はここまで来るのに属性ダンジョンに潜っている。そこで身につけた【探索魔法】の正しい使い方は【極界】へ進化してより一層の精度を得た。日々の積み重ねもあって最初は意識してダンジョンに接続しなければ情報が得られなかったが、今は呼吸するようにダンジョンの情報がわかるようになった。


 そんなわけで先頭は俺だ。


 ここのダンジョンはその外見と環境が示すようにどこかの氷雪地帯の環境をそのまま持ってきたらしい。出てくる魔物はフロスト系統やアイス系統がほとんど。これだけなら火属性でごり押しできるが、時折火属性対策なのかほぼ同じ見た目のアクア系統やウォーター系統の魔物が混じっているため非常に攻略が面倒なことになっている。


 今俺たちが戦っているのもそんな混合系の筆頭であるフロストリザードマンとアクアリザードマンの群れだ。


 「クソトカゲが!なんで爬虫類の癖に低温に適応してんだよ!!!」


 なんか頭いい感じでレイが切れている。気持ちはわからんでもないが。このダンジョンに出てくる魔物は最低でも80は超えている。しかも大抵が群れで出てくる。レベル100となったプレイヤーからして見れば80の敵単体は危なげなく勝てる相手だが、無双できる相手じゃない。


 ゆえに群れで来られると一瞬で飲み込まれてしまう。さらに群れる魔物は大抵が知能も高く連携が上手い。外に追いやられていた竜種の方が種族的に強いとは言っても的がでかく行動パターンも限られていたので個人的には外の魔物の方が圧倒的に弱かったと思う。


 リザードマン系の魔物は強くなればなるほど厄介だ。特に80になってくるとトカゲより竜に近くなり、ブレスまで放ってくる。ここにいるリザードマン共のブレスはアイス系で異常状態として凍結や凍傷を付与してくる。凍結は文字通り動けなくなるし、凍傷はSTRとVITが下がる。前衛物理には厄介な相手だ。


 おまけに集団でブレスを放つもんだから前衛が防ぎ切れない可能性も十分にあり、後衛も危険に晒されるという実に厄介な敵だ。


 しかし、それはあくまで一般論。俺には通用しない。今も目の前にレイがキレる原因となった三度目のブレスが迫っている。


 「喰らえ、獄炎龍。ブレスもろともクソトカゲ共を蹂躙しろ。ついてだレイ、付与・獄炎。これまでの借りを返してこい」


 「これは・・・!よし、任せろ!」


 獄炎の龍がそのアギトを大きく広げブレスもろともリザードマンを飲み込む。こいつは炎だが普通の水では消せない。この手の相手にピッタリだ。何匹か悪運が強い奴が俺の獄炎龍から逃れたようだが、そこにストレスが溜まったレイが突撃する。


 レイの武器には獄炎を付与したのでリザードマン程度ならあっさりと貫けるだろう。ブレスはそう連発できないし、奴らの最大の武器である数の暴力も一撃で無に帰した。もはや俺とレイの敵じゃないな。


 さらにダンジョンを進むと出てきたのは巨大なホッキョクグマのような魔物が3体。【百科事典】先生はヒュージフロストベアと教えてくれた。


 「でかいね」


 「そうだな」


 氷のクマさんたちは俺たちを見つけると例によって2本足で立ち上がり、威嚇のつもりか咆哮をあげた。多分だけどこの咆哮には怯み効果があるようで、それが複数重なることでかより重いスタン状態にさせることができるようだ。


 「ま、進化した俺たちには効かないけどな」


 「そうだね!」


 当然たかがクマごときの咆哮など進化した俺たちに効くわけがなく、咆哮の時間をこれ幸いの隙と見て一気に間合いを詰める。


 しかし相手は廃人向けイベントに用意されたイベントモンスター。咆哮が効かないとみるや否や即座に咆哮をキャンセル。そのまま流れるように後退すると4つ足に戻り、その頭上に魔法陣を出現させる。


 そして一瞬の間の直後、俺たち目掛けて無数の氷で出来た刃が飛翔してきた。


 「なかなかやるもんだね!」


 レイは最小の動きで刃を躱し、躱し切れない物だけを魔法か剣で撃ち落としている。この程度の乱射など生ぬるいのだろう。ほとんど速度を落とすことなく進んでいる。


 「いい練習になるんじゃないか?」


 それに対して俺は久々に【戦場に立つ獣王の舞】を発動してその全てを避ける練習をしている。前にみたラージャの【大地ノ神舞】に少しでも近づけるように俺は舞う。この効果でステータスはどんどん上昇していくので俺の方がいささか早くクマさんに近づくことができた。


 3体のクマのうち2体が魔法を止めて俺に向かってきた。もう1体はいまだにレイを攻撃しているが、密度が下がったのならレイの敵じゃない。すでに速度が上がり始めている。


 レイはあのままでも勝つだろう。俺は俺に集中しよう。


 1手目、左右に別れて前足を大きく広げ俺の逃げ場を失くし、その鋭い爪で切り裂こうと向かってくるクマさんたち


 2手目、それを見てわずかに足の遅い左のクマに狙いを定めて【瞬歩】を発動。【戦場に立つ獣王の舞】の効果で増加したステータスと【瞬歩】の合わせ技で、クマの目を掻い潜り懐に入る。


 3手目、俺を見失った左右のクマの焦る気配が伝わる。まずは1体目、獣王の舞で増加したステータス、そして【瞬歩】の運動エネルギーを全て拳に集中させガラ空きの胴体に叩きつける。


 残念ながら魔人として爆発的に高まったステータスをベースにさらに獣王の舞でステータスが加算された俺の拳はたかがクマさんぐらいは簡単に撃ち抜いてしまうらしい。たった1撃でこの極寒の地を生き抜ける分厚い毛皮と脂肪と筋肉に守られていたはずの胴体には特大の風穴が開いてしまった。


 4手目、仲間の断末魔を聞いて俺の位置がわかったのだろう。俺の方に振り返ろうとする右にいたクマさん。結構賢いこのクマさんは俺が背後にいるとわかった瞬間に4つ足に戻ることなく直立し、体をひねる勢いをそのまま爪での斬撃へと変化させて背後にいる俺目掛けて振り抜いた。


 5手目、俺は振られた腕を仰け反りながら躱し、すれ違いざまに【千桜華】を一閃。振り抜いた勢いそのままに腕は切り飛ばされ、遠くに飛ぶ。


 6手目、腕を切断されたことでクマさんが怯んだ。その隙を見逃さず、飛び上がりざまに首を切り飛ばす。


 これで目障りなクマさんはいなくなった。レイの方を見ていると、魔法より剣が早い距離まで近づいたレイがレイビアでクマさんを滅多ざしにしていた。美しい純白の毛皮を自身の血で真っ赤に染めたクマさんには同情しちゃうね!


 危なげなくクマさんの攻略終了!


 さらにダンジョンを進む。中ボスとして帝都への道中でも出てきたフロストドラゴンがパワーアップして出てきたが、これをレイと2人で瞬殺。少しデカくなってレベルが上がっていたようだが、【獄炎】の前にはそんなものは無意味。【獄炎】を破るには生物由来のものだけでは不可能で、最低でも魔力での防御が必要となる。


 生まれながらの強者として君臨していた竜種はこの魔力での防御が比較的下手なので属性有利なら割と勝てる。


 フロストドラゴンを倒してからさらに何度か雑魚と戦闘し、俺たちはこのダンジョンの最深部である城前の広場に辿り着いた。


 「桃、いるね」


 「あぁ、いるな。」


 広場に足を踏み入れたわけではないがひしひしと伝わってくる紛れもない強敵の気配。ここまでこのダンジョンで戦ってきたどの敵とも一線を画す強さだ。


 俺たちは俺のスキルで最短距離を迷わず進んできたので俺たちの周りには誰もいない。今回のイベントがレイド系である以上はこの先の広場で待ち受ける敵は間違いなく城への道を守る最強の門番にしてこのダンジョンのボス兼レイドボスだろう。


 レベル100超え限定イベントのレイドボスがたった2人で倒せるほど弱いはずがない。はずがないが俺たちに待つという選択肢は初めから存在しない。


 「2人でレイドなんて久しぶりだな」

 

 「そうだね。他のゲームでは2人でバカやってたけど、IWOでは初めてだね。」


 「どうする?強そうだし誰か待つか?白ならすぐ来るんじゃないか?」


 「誰に物言ってんのさ。流石に桃でも叩っ斬るよ?」


 「ハハ、悪りぃ悪りぃ。久々だからな。さっきは俺が勝手に2人でレイドって言ったからな。一応は確認しとかねぇと。」


 「もう、何年君とつるんでるだと思ってるんだい?こんな楽しいこと邪魔させるわけないじゃないか」


 「そうだよな。よし、いっちょ派手に行きますか!」


 「おう!」


 <警告!これより先、強敵が出現します!引き返せないので注意してください!>


 今までにないポップが浮かび上がる。それをみた俺たちは顔を見合わせニヤリと笑うとそのウィンドウを無視して広場へと足を踏み入れた。

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