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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
134/143

激戦

続き

 さて、向こうはミーナがいるとはいえ相手はあの帝国を落とした六魔将。実力のそこが見えてないのが不安だ。ミーナがいるとはいえ危険であることには変わりない。できるだけ早く片付けて援護に向かいたいところだ。


 「そういうわけだ。さっさと片をつけさせてもらうとしよう」


 「あぁ?そんなつれないこと言うなよ、召喚老サマぁ。俺はこの日を楽しみにしてたんだぜ?」


 喋りながらも剣と槍が火花を散らす。すでにレベルの低いものには見切れないほどの速度だ。


 初めは隙を見て攻撃を仕掛けていた勇敢な来訪者もいたが、そのことごとくをすり潰された。さらにレオンが本格的に戦闘を開始したことで戦闘が激化。下手に入り込むと逆に邪魔になるか巻き込まれて死ぬだけなのでレオン達の周りで雑魚を倒すことに注力し始めた。


 『これはある意味チャンスだな。コロッセオの内部からは六魔将クラスの魔力は感じない。俺たちが釘付けにされているのは裏を返せば六魔将の足止めを出来ていることになる。このまま俺たちがここで戦闘を続ければ来訪者達が自由に動けるか。一刻も早く倒せることがベストだが一定数が内部に侵入するまでは長引かせるのもありか』


 一瞬で考えをまとめると来訪者が内部に侵入しやすいように僅かずつではあるが戦いの場をコロッセオの外へ外へと移していった。


 「おいおい、引いてばっかりか!?そんなんじゃ召喚老の名が泣くぜぇ!!」


 「・・・調子に乗るなよ?」


 ここまで単調な攻防に終始していたレオンだがすでにある程度の来訪者がコロッセオ内部に侵入したのを見て自分の戦いに少し集中することにした。


 バルザードの挑発は極めて幼稚でとてもではないが召喚老がしかも筆頭たるレオンが乗るはずもなかったが、今回はタイミング的にそれが引き金となった。


 バルザードの体躯は3メートルは超そうかという長身に全身は筋肉の鎧に覆われている。見た目は獅子の獣人だが魔力のそれは魔物に近い。人類の最高峰たるレオンとまともに打ち合っていることからもその技量、身体能力ともに極めて高いレベルにあることがわかる。


 そんなバルザードがその体躯に見合った大剣を上段から振り下ろす。並の人間なら抵抗することすら叶わず真っ二つに両断されるだろう。レオンもこれまでは受けることなどせず躱すか受け流すかしていた。


 しかしこの冗長な攻防の流れを変えるべくレオンが動いた。


 これまでなら躱されようが受け流されようがバルザードはその自慢の腕力で振り下ろしから振り上げへと流れるように繋いでいた。だが今回は振り上げることができなかった。


 「なん・・・だと?」


 レオンが軽く剣に足を置いている。ただそれだけでバルザードは剣を振り上げることができなかった。


 「こんなものか。悪いが向こうにも六魔将とやらがいるらしい。お前だけに構っていられるほど暇ではない。先に行かせてもらおう」


 「そういうわけにはいかねぇんだよ!」


 バルザードから魔力が吹き上がり、筋肉が隆起する。


 「剣を抑えただけで俺に勝ったつもりか!獅子王炎爪斬破!」


 「!!」


 突如バルザードが剣を手放したかと思うと一瞬で鋭く伸びた爪がレオンに襲いかかった。その兆候を事前に掴んでいたレオンは宙返りで軽く躱す。しかし着地したところでハラリと数本前髪が燃え尽きながら落ちた。


 「完全に躱したつもりだったが・・・」


 油断なく槍を構えているレオン。バルザードは爪を振り抜いたまま残心を取っている。しかし様子がこれまでとは全く違う。これまではただただ少し強いだけの相手だったが、今バルザードの体から迸る魔力は雑魚とは一線を画している。


 「まだまだ勝負は始まったばかりだぜ?召喚老サマ!」


 レオンとバルザードの戦いはお互いのエンジンがかかり始めより激しさを増していく。


ミーナ視点


 一方こちらはミーナ率いる部隊。どちらかといえば相性的にこちらの方が分が悪く、幾分か苦戦していた。


 「はあああああ!」


 ミーナの剣戟がレグルスを襲う。しかしレグルスも六魔将とだけあり、その装備は超がつくほどの一級品。ミーナの剣をまともに受けても刃こぼれせず、ミーナと互角に打ち合っている。


 ミーナの剣は戦場の剣。決まった形などなくただただ敵を殺すことだけに特化したいわば野生の剣。圧倒的な火力をもつミーナの火属性魔法との組み合わせは極悪の一言。どちらかに気を取られれば即死は避けられず、初見でこの剣に対処できるものはそうそういなかった。


 しかしレグルスは凌ぐどころか互角に打ち合っている。もしこの場に他の召喚院のメンバーがいたら驚きで目を見開いただろう。


 この状況が成立している理由はもちろんレグルスの装備や技量が他の雑魚と一線を画してることもあるが・・・


 「全くもう!腹が立つ魔法ね!それ!」


 そう、それはレグルスの放つ魔法だ。


 「・・・カオスブレイカー」


 再びレグルスが魔法を放つ。一定周期でミーナを強く弾き飛ばしこの魔法を放つ。この魔法があるからミーナ率いる部隊は苦戦を強いられていた。


 この魔法の効果は極めて単純。【恐怖】【絶望】の2つの異常状態を付与することだ。これが実にタチが悪い。スキルのクールタイムを【恐怖】は通常の2倍に【絶望】は通常の10倍に引き伸ばすスキル。


 ミーナの部隊はクランが多かった。そして多くのクランは基本的にスキルの取り回しが連携で何より重要視される。要するにスキルありきで戦術が組み立てられている。それがレグルスの魔法でスキルのクールタイムが伸び普段の戦闘が出来ないでいた。


 さらにタチが悪いことにこの異常状態を治す回復系スキルはない。唯一抵抗できるとすれば【全耐性】の高レベルのみ。そして【全耐性】はいくつもの異常状態耐性を取らないと取得できない。基本的に取れる耐性は回復系のスキルで治療可能なのでソロプレイヤー以外で取っている人間は意外と少ないのだ。


 現状、アーサーなど近接系の高レベルプレイヤーが比較的クールタイムの短いスキルを要所で使いながらなんとか戦線を維持している状況だ。このままではジリ貧になるのが目に見えている。


 「・・・音に聞く召喚院もこの程度か」


 「なんですって!?」


 不意に漏らしたレグルスの言葉をミーナが拾う。それは普通の召喚院のメンバーなら聞き流すことができた至極平凡な挑発だった。しかし相手は召喚老はいえ喧嘩っ早いミーナ。自身が手こずっているせいで召喚院そのものを貶められていると思った瞬間、ブチギレた。


 「見極めようと思って手加減してあげたけどもうやめるわ。もう死んでいいわよ」


 突如ミーナの体が炎に包まれた。


 「・・・無駄なことをカオスブレイカー」


 レグルスは新しいスキルを見るたびにカオスブレイカーを発動して次の発動を潰してきた。そして自身には強力な再生能力があり、そう簡単にやられることはない。これを繰り返してレグルスは帝都を落としたのだった。


 大陸最強の軍事力と謳われる帝国軍でさえ簡単に落とすことができた。同格と言われている召喚院もその程度だろうと甘く見ていたレグルスだったが、それはすぐさま覆される。


 「・・・闇が侵食しない?」


 「当たり前でしょ?そんなチンケな魔力ごとき私が燃やせないとでも?」


 簡単にミーナは言うがそんな容易な内容ではない。そもそもレグルスのカオスブレイカーは厳密には魔法ではなく固有のスキルだ。ユニークスキルと言い換えてもいいかもしれない。六魔将になるほど強力な魔物のユニークスキルを火属性という一般的な魔法で燃やして無効化するのは通常では考えられない。


 「・・・概念魔法か」


 「よく知っているわね?ま、知ったところでどうしようもないけどね!」


 「ならば我も本気を出すとしよう」


 様子見を止め本来の戦闘スタイルで戦い始めたミーナ。それに呼応するかのようにカオスブレイカーと同じ魔力を全身に纏い禍々しさをましたレグルス。両者の戦いはさらに激しさを増していく。

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