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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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降臨

引き続きコロッセオ編、第3者視点

 来訪者による魔法の一斉攻撃。その威力はやはり凄まじかった。しかしそれでもなお古代闘技場コロッセオを覆う結界は健在。戦いは次の局面を迎えようとしていた。


 「最初の一撃で決められればそれに越したことはなかったが無傷か」


 「そのようね。どうする?もう一度やってみる?」


 「それも手だがこれ以上来訪者を抑えてはおけない。次の段階に進もう」


 「了解よ」


 レオンとミーナは召喚院が開発した遠距離通信技術を用いて手短に情報を共有。レオンの判断で魔法による第2撃目ではなく次の段階へと進むこととなった。


 「来訪者諸君!作戦は第2段階へと移行する!ここからは正真正銘、真正面からの攻略になる。突撃こそしてもらうがこの先確実に強敵との戦いが予想される。全力で攻撃して欲しいが余力は残して置くように」


 レオンが再び演説を行う。反対側ではミーナも同じような演説をしていた。


 「「突撃!」」


 双方示し合わせて突撃の号令が出された。今回のイベントは祭り(レイド)になると聞かされ期待に胸を膨らませて参加した来訪者達。しかし蓋を開けてみれば開戦は派手な突撃ではなく魔法攻撃。


 基本的に戦うのが大好きなプレイヤーは前衛職を選ぶ傾向がある。それだけにこのイベントの開始では何もできずフラストレーションが溜まっていた。そこにきた突撃の合図。解き放たれたお祭り好きたちは我先にとコロッセオへと突撃していった。


 「本当はもう1回ぐらい魔法で削っておきたかったんだがな」


 突撃の指示を出したレオンはつぶやく。結界には多様な種類があるがそれが結界である以上は魔力を使うし、ダメージを負えば修復に魔力を消費する。無限に魔力を供給できる存在がいれば話は別だがそんな存在をたかが結界維持に使うはずはない。


 つまり結界とはイレギュラーを除けば攻撃すればするだけ破壊しやすくなるというわけだ。今回の結界は比較的魔力に対する抵抗が弱かった。できれば突撃する前にもう少し削っておきたかったところだ。


 「まぁ、来訪者たちのあの士気の高さを見る限りでは削り切るのも時間の問題か。さて鬼が出るか蛇が出るか。」


 レオンとミーナはここコロッセオには確実に結界の守護者がいると見ている。それもメライス六魔将のうち1人か2人はいると見ている。そいつらが出てくるタイミングがいつになるかはわからないが出てきた時が仕留めるチャンスだ。それゆえにまだ彼らは動いていない。その時が来るまで力を温存しているのだ。


 一方来訪者達は順調に結界にダメージを与えてた。それもそのはず、相手は動くことのないただの的。適当に攻撃しても必ず当たるので作戦というよりはむしろ作業に近くなっている。目には見えていないが、着実に結界へのダメージは蓄積していってた。


 ところでこの結界、召喚院すら把握していない事実があった。それはこの結界の主設定が空間の遮断であったために外側からの攻撃を通さないことはもちろんだが内側からの攻撃も通さないということだ。


 これが何を意味するかというと、敵からしてみればコロッセオは帝都を覆う結界を設置した重要拠点。それを落とされるのは避けたい。だから同質の結界をコロッセオにも展開している。それに対して召喚院はその結界を来訪者という数の暴力で破壊しようとしている。


 しかし内側からの攻撃手段はなく一方的に指を加えて見てるしかないわけだ。結界が壊されるのを。


 となると敵が取る手段はただ1つ。体勢を整えて出撃する、これしかありえない。


 つまり、結界が壊されることなく消えた時、それは敵がすでに出撃準備を整えたことを意味する。


 「うおおおおお!」


 とある来訪者の1人が剣を大きく振りかぶって結界に叩きつけようとした。これまでなら剣は結界に弾かれるのでその弾かれた勢いを利用してまた次の攻撃へと繋げようとその来訪者は思っていた。


 しかしこれまでとは違い、振り下ろした剣は空を切った。


 「へ?」


 硬い感触が返ってくると思っていた来訪者の剣は止めることなどできるはずもなく地面へと吸い込まれ大きく前につんのめった。


 そして何か鋭い刃物で首を一閃され、その不幸な来訪者は死に戻ることとなった。今回のイベントでの初めての死に戻りである。それをきっかけとして結界に近いところで相次いで死に戻りが発生。


 ついに敵が動き出したのだった。


 結界の外縁部に現れた敵は大きく2種類。カインの方はいわゆる狼男のような魔物でミーナの方はリビングアーマーなどのアンデッドだった。


 突然の出来事に混乱する現場。もちろん即座に反応し敵に攻撃を仕掛ける来訪者もいたが奇襲を受けたせいもあり統率が全く取れていない。


 「氷龍蒼撃波」


 「炎剣レーヴァテイン」


 混乱する最前線。そこに現れた氷の龍が敵を薙ぎ払い、炎が不死者を強制的に黄泉へと送り返す。そしてぽっかり空いた最前線にはそれぞれの隊の指揮を取る総大将、すなわち召喚老の姿があった。


 「狼狽えるな。多少手強いとはいえ冷静に対処すれば大した敵ではない。」

 

 レオンの冷気と冷静な声が


 「この程度でやられてんじゃないわよ!あなた達の力はこんなものなの!?」


 ミーナの熱気と煽るような檄が


 それぞれの隊の来訪者たちの動きを変えた。レオンが率いている来訪者たちは独りよがりのプレイヤーが多かったが知らず知らずのうちに近くのプレイヤーと協力するようになり、ミーナの率いる来訪者たちはクランの枠に囚われることなくより貪欲に攻撃を仕掛け始めた。


 敵が多少強いとはいえ数で勝る来訪者たち。戦況は次第に来訪者へと傾いていった。このまま押し込める。戦場に僅かであるが弛緩した空気が流れた。


 「「・・・ッ!!」」

 

 その存在に気がついたのはやはり数々の修羅場をくぐり抜けてきた召喚老の2人。その気配は急に現れたため警告するのが遅れてしまった。


 その遅れは致命的だった。レオン率いる部隊は一瞬にして燃やし尽くされ、ミーナ率いる部隊は一瞬で細切れにされた。


 再び敵の魔力が膨れ上がる。流石にこれ以上の犠牲は出せないと召喚老2人は一番前へと飛び出した。そして敵の技を迎撃するべく自身も技を繰り出した。


 衝突する技と技。敵の正体は今のところ明確ではないがこちらはこの大陸最強の一角である召喚老の放った攻撃。全力の一撃ではないとはいえその威力は他と文字通り格が違う。


 しかし召喚老の放った技は相手の技を押し切ることなくその場で爆発した。それによって相手もかなりの強者であると召喚老達は認識を数段引き上げる。


 「何者だ」


 「あんた一体なんなのよ!」


 召喚老たちが誰何する。


 「ガーハハハ!俺はメライス六魔将が1人、炎獣武将バルザードだ!テメェが大陸最強とか謳ってる召喚老とかいう雑魚だな?俺が捻り潰してやる」


 「・・・メライス六魔将、暗黒覇王騎レグルス」


 召喚院予想通りコロッセオには守護者がいた。しかしその予想は帝国を1人で落とした六魔将の1体に加え、見るからに戦闘専門の六魔将がもう1体という最悪の形で実現したのだった。


 『ミーナ聞こえるか。レオンだ。こちらにメライス六魔将と名乗る敵が現れた交戦に入る』


 『こちらミーナ。レオンの方にも現れたのね。こっちにも現れたわ。しかも暗黒覇王騎レグルスって名乗ったわ。』


 『想定しうる限りで最悪に近いが敵の力を測る機会だ。第一目標は撃退。相手の手の内が見えない以上は慎重に行こう』


 『わかったわ!』


 秘密裏に高速で通信を行い方針を決めた召喚老達。コロッセオは新たな局面を迎える。

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