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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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神への挑戦

 スタンが呼んでいるとユライに言われ、連れて行かれた先は例によってあの召喚老たちが待っている大部屋だ。スタンが呼んでいると聞いていたが室内からはレオンとミーナの魔力も察知できる。相変わらず化け物みたいな魔力だな。


 俺の先を歩いていたユライが部屋に入ったのに続いて俺も部屋に入る。


 「呼び出してすまないな。」


 「ん?レオンが呼び出したのか?ユライからはスタンが呼んでるって聞いたんだが」


 「おい!誰がテメェみてぇな雑魚を呼ぶんだよ!思い上がりもいい加減にしやがれ」


 ふむ、ユライと言ってることが違うな。まぁ、些細なことか。それよりも召喚老が俺のことを呼んでいることの方が重要だ。


 「桃を呼んだのは他でもない。今回の作戦の詳細が決定した。それを今回の作戦の要となる桃には先に伝えておこうと思ったからだ。概要ぐらいは聞いているな?」


 「もちろん。でもなんで調査隊の隊長がスタンなんだ?他国が絡む内容ならレオンが出てもおかしくないだろ?」


 「あぁ!?そんなこともわからねぇのか?本当に無能だなぁ!いいか?ミーナの脳筋はまずテメェの魔力を完全に抑えることができねぇ上に得意属性が火で戦闘も馬鹿みてぇにド派手だ。調査とか隠密とかは無理だ。」


 「何よ!私だってできるわよ!」


 「・・・レオンはミーナとは別の意味で無理だ。魔人へ進化したのならわかるだろ?こいつに眠る魔力を。普段はうまく隠しているがわかるやつにはわかる。根源的なもんだからどうしようもねぇ。したがって俺しか適任がいねぇんだよ。」


 騒ぐミーナを完全に無視。レオンも苦笑いするだけで止めることもない。なるほど、ミーナの性格と戦闘スタイルが向かないっていうのはレオンも公認か。


 そしてスタンに言われたようにカインの魔力へと意識を集中させる。カインの魔力で色濃く出ているのは氷だ。鋭利なナイフのような鋭く研ぎ澄まされた冷たい魔力がカインからは溢れている。


 スタンは隠してると言っていた。ならば探るのはより氷の魔力が濃いところだ。


 凍てつく世界の中心を目指して進む。そして俺は辿り着いた。


 信じられないほど巧妙に氷の魔力で覆われたレオンの魔力の根源。そこには足を踏み入れるのすら躊躇するほど深く暗い闇の魔力が広がっていた。


 そこでハッと我に返る。


 「わかっただろ?知らなければなんともないが知ってしまえば無視できねぇ。」


 言われた通りレオンからは闇の魔力を肌で感じることが出来てしまった。この魔力はアークの魔力に近いな。アークは魔神族だったからレオンにも魔神の血が混じっているのか?


 「今回の敵は用意周到だ。こっちが得られてる情報は相手の名前と帝都をたった1人の将軍だけで落とした武力。それから帝都全体を覆うほどの結界を展開できる技術力があるってことだけだ。はっきり言って細かいことは何1つわかっていない。対して敵は俺たち召喚院と同等の戦闘力を持つとされている帝国軍の中でも最精鋭が集っているはずの帝都を落としたんだ。前もって情報は調べ尽くしているだろう。そんな奴らが召喚院の情報をもっていないとは考えられない。それに今回の作戦の情報も漏れていると思った方が確実だ。だからこそ最高戦力であるレオンは裏に回せない。ムカつくが向こうがもっとも警戒するのはレオンだろうからな。」


 なるほど。それでスタンが率いるのか。


 「でもそうなるとここがもっとも手薄にならないか?」


 「その心配はいらないな。何せ今回は・・・」


 俺の疑問にレオンが答えようとしたその瞬間、レオンの背後に見慣れた扉が現れた。


 「・・・っ!?」


 その扉の向こうから出てきたのアノ人。最強の召喚騎士としてこの世界の最高峰の戦力を持つ俺の師匠にして人にして神へと足を踏み入れている生きる伝説。その人だ。


 「何せ今回はこいつがここを守る。これ以上ないほどの守りだろ?」


 バチっと星が流れそうな爽やかなウィンクを俺に決めるレオン。このクール系イケメンは何をしても様になるな・・・


 師匠は俺のことをチラリと見るとレオンの方をチラリと見た。


 「いいぞ。正直話と言っても何もわかってないからな。むしろお前に引き合わせるために呼んだようなもんだ。こっちの用事は済んでるから好きにしろ」


 レオンの言葉を聞き、コクリと頷いた師匠。 


 なぜレオンはあの短いアイコンタクトで師匠の言いたいことがわかるんだよ・・・


 師匠の背後にあの扉が出現。眩い光が放たれ、師匠はもちろん俺も光に飲まれた。


 光が収まるのを感じて目を開ける。以前にもこんなことがあったな。あの時は何もない謎の空間に辿り着いたが、今回は闘技場のような雰囲気だ。もちろん観客はおらず静寂があたりを支配している。


 <お知らせします。特殊イベント【最強への第一歩】の最終クエストを開始します>


 <最終クエスト【神への挑戦】を開始します。特殊ルール。ペアバトル。使用可能英霊:フェルド、クリスタ、ヴォート、アルバセロ、ルーセント、ヴィクティム。>


 突然目の前にポップアップが出現。読んでみるとだいぶ前に発生した特殊イベントの総仕上げのようだ。あまりに内容が漠然としすぎて記憶の彼方に消し去っていたが、まさかここで出てくるとは。


 ルールは1対1か。それにルシファーとか特殊な英霊は使用不可。使えるのは師匠と同じ六英雄だけか。となると相手の英霊に有利な英霊をぶつけるのがベターか?


 師匠は俺から距離を取るとフェルドを召喚した。俺はそれを見てクリスタを召喚しようと思ったがなぜか出来ず、代わりにフェルドが強制召喚された。


 「なるほど、同じ英霊で戦わせろってわけね。この感じだとあと6回はやらなきゃいけないのかな?」


 『よくわからねぇがあいつと戦れるんだ。最初から全力で行くぜ!』


 相手が師匠と言うことで俺の英霊がどう思っているか不安だったがこれなら大丈夫そうだ。こっちはチャレンジャー。出し惜しみなんてしている余裕は一切ない。最初から全力で飛ばすとしよう。


 俺の弱い水魔法とフェルドの最高火力であるフィールドを覆い尽くすほどの火魔法が融合して引き起こされた水素爆発が開戦の合図となった。


 俺とフェルドはそのまま爆炎の中に突っ込む。フェルドの炎は【聖炎】だ。【獄炎】に比べて火力こそ落ちるものの、敵は燃やし、味方は癒す効果がある。この爆炎でダメージを与えられるとは思ってはいないが、流石に目潰しぐらいにはなるだろう。


 しかし俺の考えは甘かったと言わざるを得ない。いや、舐めていたわけでも自分が強いと思っていたわけでもない。ましてや相手はあの召喚老たちも一目置いている神にもっとも近いと言っても過言ではない人だ。それだけに警戒はしていた。


 それでもなお、俺の警戒は足りなかった。いや、師匠は俺の想定よりも数十倍は上を行っていた。


 たった一撃、たった剣を一度振っただけで爆炎がかき消された。爆炎に紛れて接近しようとしていた俺たちの姿が晒される。次の瞬間には師匠のフェルドが剣に炎を纏わせ斬りかかってきた。


 火には水と思い、咄嗟に水魔法を行使しようとするも発動しない。流石に発動したそばから蒸発するような感じではなく、魔法の行使そのものが妨害されたようだ。俺の【魔素支配】に似ている。こんなことができるのは師匠だけだ。


 「フェルド!そっちは任せるぞ!」


 『おう!』


 正直師匠1人でも俺とフェルドだけでは絶対に太刀打ちできないだろう。だから戦力を分けるなんて自殺行為にも等しい。だけどこのまま師匠とフェルドが連携していたら絶対に勝ち目はない。ならば1%でも可能性がある方法を選ぶ。


 「胸を借りるなんて言わねえ。殺す気で行く!【魔纏】」


 もともと身を滅ぼしかねないほどの強化を可能にする【魔纏】。それが魔人へと進化したことでさらに爆発的な進化を遂げた。強化倍率も今までの比ではない。もちろんその代償も大きくなったが。


 そしてこれまでは魔力を纏うだけだったが、進化したことで魔法も纏えるようになった。今までは意識して回復系の魔法を並列起動していたがその必要が無くなった。全て【魔纏】の中にプログラムできるようになったのだ。


 これで壊れはするが壊れたそばから回復するゾンビ戦法が使えるようになった。そして爆発的に引き上げられたこの身体能力なら師匠が相手でも牽制ぐらいはできるはずだ。


 転移魔法と勘違いされてもおかしくない速度で師匠に迫る。この状態になった俺ならあのアークも圧倒できるほど身体能力は上がっている。ある程度の強者でも捉えるのは難しいはずだ。


 しかし師匠はきっちりと俺の方を見て殺すつもりで放った斬撃を軽々と受け止めた。


 「なっ!?」


 さらに師匠は受け止めただけではなく鍔迫り合いのまま俺を押し始めた。このままではまずいと思い転移で背後に回り蹴りを放つ。師匠は俺がいなくなった勢いそのまま地面を転がり俺の蹴りを躱す。


 体勢を崩すことには成功したのでそのまま追撃をしようとしたところで【極界】に反応あり。咄嗟にその場を飛び退いたところでさっきまで俺が立っていたところを熱波が地面ごと溶かしていった。


 「フェルド!」


 この炎は俺のフェルドの炎ではない。つまり師匠のフェルドが放ったというわけだ。英霊として差があるのはわかっていたがここまで早く乱入されるとは。俺のフェルドの方を見てみると同じ炎を司る英霊であるはずなのに炎の檻に囚われていた。


 フェルドを助けるためにその場を離脱。これで師匠と師匠のフェルドが合流してしまうが仕方ない。


 「・・・」


 師匠とフェルドが合流して雰囲気が変わった。何か来る。そう確信した。


 『まずいぞ桃!』


 「んなことはわかってる!」


 フェルドも何かを感じ取ったのだろう。その瞬間、背筋が凍るほど膨大な魔力が師匠とフェルドから迸った。この瞬間、逃げたり防いだりするのは不可能を悟る。しかし俺の手札ではこの状況を打開する手段がない。ここにきて必殺技がないという致命傷が露わになったな。


 「考えても仕方ねぇ。フェルド、今までやったこともねぇけどぶっつけ本番!師匠たちと同じことするぞ!」


 『マジかよ!でもまぁ、それしかねぇか!気張れよ桃!魔力だけは負けんじゃねぇ!」


 「そっちこそ!」


 俺とフェルドからも魔力が迸る。まぁ、流石に質も量も負けてるけどそこは俺とフェルドの絆パワーを信じるしかないな!


 俺たちの行動を見て師匠と師匠のフェルドがニヤリと笑った気がした。そしてぶつかる両者。凄まじい力の奔流があたりを埋め尽くし、全てを溶かし尽くした。そして俺は気を失った。

 

 その戦闘から実に10時間ほどが経過した。


 <特殊クエスト【神への挑戦】をクリアしました>


 不意にこのアナウンスが流れ、特殊クエストは終了した。師匠は俺に報酬を渡すとあの例の扉を潜って召喚院へと戻っていった。


 あー、疲れた。


最後不完全燃焼かと思いますが、何卒お許しを。後々わかります。

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