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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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調査隊、顔合わせ

イベントの導入部分

 どうやら召喚院に着いたのは来訪者では俺が一番最初のようだ。タイミングよくログインしてたし召喚院の場所も街も知っている。俺に攻撃を仕掛けてきた奴らも前に倒した奴らと大差ないし、何より街を直接破壊してきた。


 まさに最短距離を歩いてきたので俺より早いやつはいないだろう。噂程度だがプレイヤーの中でめぼしいやつの情報は手にしてる。その情報を元に考えても街を丸ごと破壊できるような火力の奴はいないだろう。


 レイがもしかしたらできるかもしれないがあいつはそう言うことはしない。もっとスマートに切り抜けるはずだ。


 他のメンツが集まるまでにまだまだ時間がかかる。流石に何もせず時間を浪費するのも勿体無いのでカインが駆り出されて隊での行動がなくなり暇してたサーシャを拉致して対人戦を行う。魔物相手は散々ダンジョンでやったからしばらくはいい。それよりこの次のイベントPvPを見越して少しでも対人経験を積んでおきたい。


 英霊たちとやってもいいけどあいつらと俺では地力が違いすぎてまず勝てない。あの手この手でだまくらかしてかなり負けよりの引き分けに持ち込むのが精一杯だ。本音を言うならもう少し対等な相手と戦いたい。


 その点サーシャは非常にいい相手だ。以前は俺が初見スキルを使ってはめ殺しにして勝利を手に入れたわけだが、はっきり言ってあれは奇襲だ。そう何度も通用する手じゃない。サーシャレベルがゴロゴロいるとは思わないが、逆にいないとも限らない。奇襲だけではなくもっとちゃんと勝てるようにならねばPvPで優勝はできないだろう。


 魔人となってかなり強力になった魔法系スキルを主体にして戦うのか、それとも刀を主体に魔法は補助で使うのか、いまだに戦闘スタイルが確立できていない。俺としては欲張って魔法剣士なんて目指したいがどっちも中途半端になりそうで怖い。


 まぁ、今のところは技を磨く方が先ということで魔法なしでサーシャと戦っている。サーシャのメイン武器は俺と同じく刀。そしてサーシャの刀は俺の戦場刀法とは違いきちんとした型がある。


 サーシャいわく刀術と風魔法を組み合わせた流派なので魔法なし縛りだと威力が半減するらしいがそれでも漫画の見様見真似や魔物相手に効率化しただけの俺からしてみればかなり参考になった。


 そんなこんなで時間を潰していると人数が揃ったとカインから連絡が入り、決闘システムを終了する。ほんの軽い気持ちで初めた模擬戦だったがヒートアップしすぎて互いに汗だくだ。


 【生活魔術】でサーシャと俺の身を清めてから集合場所に向かう。集合場所にはたくさんの気配。なるほど、街中でのあれは1次試験か。どう考えても100人より人数が多い。そういえばあの試験へのチャレンジ制限は特になかった。パーティーで来た奴らもいるのだろう。


 パーティー全員がレベル上限か。廃人集団か何かか?


 しかしざっと見回して気になるのがちらほら。なんていうか他の連中と比べて格が違う。


 「なるほど、俺と同じく種族進化した奴らが現れたか」


 その呟きとともに部屋に入る。その瞬間俺に一気に視線が集まる。その中に見覚えのある視線の主が。


 「おや?君が一番最後だなんて珍しいじゃないか」


 「バカ言え、ここは俺のホームだぞ?一番最初に辿り着いて今まで模擬戦してたんだよ。いや、俺のことはどうでもいい。進化したのか、レイ」


 見覚えのある視線の主はもちろんレイだ。しかし少し前に【憤怒の酒場】を一緒に攻略した時のレイとは天と地ほどの差があるな。確実に種族進化を果たしたのだろう。


 「まぁね。おそらくあのダンジョンでの出来事がトリガーなんだと思うよ。君の拠点で目覚めると同時に進化が始まったから」


 「だろうな。あいつ(ヴィクティム)から直々に祝福を得たんだ。ブレイクスルーには充分だろうよ」


 この場は他のプレイヤーの目もあるので言わなかったがレイからはヴィクティムの他にルーセントの力も感じる。この2柱からの力でようやく進化できるようになったのだろう。


 「だね。」


 「それよりどんな進化したんだ?」


 「僕の種族は半人半精。ありていに言えば人間と精霊のハーフみたいな感じかな?言えないこともあるけど全体的にステータスが上がった感じだよ。」


 なるほど、人間と精霊のハーフか。俺の魔人のように魔法特化してるわけじゃなさそうだけど精霊の血が半分入っているんだ。魔法もお手の物だろう。それを裏付けるかのように魔力の量も質も格段に跳ね上がっている。


 魔力だけじゃない。人間の血も半分入っているんだ。これまで培ってきた剣を操る物理面のステータスも普通以上に上がっているはずだ。これで強力な召喚獣や英霊を従えるようになれば1人軍隊も夢ではない。かなり強くなるはずだ。さすがはレイだな。


 「まだまだ何ができるか手探りだけど君に負けないぐらい強くなれるはずだよ」


 「ほほう、それは楽しみだな。だが俺も簡単に負けるつもりはないからな」


 互いにビシッとカッコつけたところで馬鹿馬鹿しくて笑い出す。その間にチラリとあたりを見渡してみる。


 進化した連中は文字通り格が違うので目立つ。有名どころは俺・レイ・勇者パーティー御一行の勇者君、それから目下PvPで最大の障害と思っている白だ。


 勇者君は面識はないがなんか豪華な鎧と剣を身に纏っているし、御多分に漏れず周りを美女美少女たちで固めているからすぐにわかった。しかも勇者、僧侶(神官)、魔法使い、戦士、盗賊とバランスが取れている。まるでゲームの中の勇者をそのまま持ってきたかのようなパーティーだ。


 このゲーム内で勇者と呼ばれる存在がいるのは風の噂で聞いていた。どうせ勇者のロールプレイだと思っていたがこうしてみるとマジモンの勇者だな。持っている剣は見慣れない魔力を帯びてるし鎧の方は防護機構がいくつも組み込まれてるみたいだな。まさに聖剣と聖鎧って感じだな。


 勇者パーティーの他のメンバーも随分といい装備を身につけてるな。見た目だけは私服っぽい格好にしている俺とは大違いだ。


 その他にも進化してる奴らがちらほらいるけど、なんだろう?レイや勇者君と比べると弱く感じるな。やはり種族によっても差があるみたいだな。あとは経験というか覇気の差かな?


 そして白だ。なぜか白は一番目立たない。理由は至って明確。進化して気配が爆発的に膨れ上がったにもかかわらずその気配を消している。俺が白の存在に気がついたのは単にジャックと模擬戦を重ねていたからだ。


 あの神をも暗殺してみせた稀代の暗殺者は目の前にいてもよく見失う。それどころか【極界】の探知すらも掻い潜りやがる。そんな相手と戦闘を繰り返していれば嫌でもなれるようになる。


 しかし、一度白を見つけて仕舞えばその異様さがわかる。はっきり言って魔人に進化した俺と同等かそれ以上の圧だ。魔力はむしろ少ない方だが闘気が尋常ではない。あの青龍寺の烈火のような荒れ狂った闘気ではなく全てを飲み込む大海のように雄大な闘気だ。


 何より恐ろしいのはその尋常ならざる闘気を完全に制御下に置いていること。俺ですらこの身から吹き出す魔力を制御するのは至難の技だ。制御に少なくないリソースを割いている。それでもなお周りから見て気がつけるぐらいには魔力が溢れてしまっている。


 それに対して白は周りが気が付かないほど精密に闘気を制御している。本当に底の見えない恐ろしい人だ。


 さほど待つことなくこの部屋に近づいてくる尋常ならざる気配を察知。暴風のような荒々しい魔力だ。俺が気がついてから3秒ほど遅れてレイが何かに気がついたようにバッと入り口の方を振り返った。


 そして、レイが反応してから間髪入れずに殺気が膨れ上がり、入り口のドアを破壊して室内に暴風が吹き荒れた。


 なるほど、これが第2の試験ってわけだな。


 召喚院で暴風のような魔力を持っている人間はただ一人。召喚老の1人であるスタンだろう。問題はなぜスタンがこっちに来たかということだ。魔力の質からしてもあのキレやすい性格からしても調査なんて向いてないだろうに。


 これが試験だというのならレイに手助けは無用。むしろしたら機嫌が悪くなるタイプだからなあいつは。なのでレイのことは考えずに自分に危険が及びそうな攻撃だけ適当に弾くことにする。


 普通の風属性の魔法ではないのか、吹き飛ばすだけではなく鎌鼬のように斬撃の属性も持っているようであちらこちらでご自慢の装備が切り裂かれた悲鳴が聞こえてくる。


 暴風は5分ほど室内を蹂躙して消えていった。【極界】で感知はしていたけど人数が減ってだいぶすっきりしたな。第2の試験を生き残れたやつは思ったほど少ないらしい。


 「なんだぁ?150はいるって聞いたからもう少し残ると思ったのに100切ってるじゃねぇか。来訪者ってのは雑魚しかいねぇのか?」


 瓦礫の山と化したドアを蹴散らしながら部屋に入ってきたのは予想通りスタンだった。相変わらず口が悪いな。あ、この前名乗りすらしなかったユライとかいう忍者っぽいのもいるじゃん。


 「チッ、桃の野郎は生き残ってやがるな。」


 俺の方を見て吐き捨てるように言う。本当にこいつ召喚老かよ・・・


 「思ったより生き残ったのが少ねぇが関係ねぇか。俺が今回の調査隊を仕切る召喚老スタンだ。お前らが付いてくるのは勝手だがせいぜい俺様の足を引っ張るんじゃねぇぞ」


 それだけ言ってスタンは出ていった。


 流石にこれはひどい。そう思っているとスタンに付いて行かずに残ったユライが今回のイベントの詳細を説明してくれた。


 簡単に言ってしまえば結界攻略組が攻略に成功し結界が壊れた瞬間に帝都に突入。内部の調査を行うとのこと。これまでも結界の周囲に人を放つも情報は得られず。なので中に何が待っているかは完全に不明。


 「また、今回の調査では帝都の現状調査及び想定される外敵の排除が第1目的となりますがそれと同時に帝国における重要人物の捜索も行います。この後捜索者のリストをお渡しします。作戦開始は1週間後とします。何かあれば召喚院までお問い合わせください」


 それを最後に初回の顔合わせは終了になった。さて、レイはダンジョンで調整するって言って先に行ってしまったので1人だ。俺もダンジョンに行こうと思い移動しようとしたところでユライに呼び止められた。


 「桃殿、スタン様がお呼びです」


 さてさて、ご用件は一体なんだろうな?

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