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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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レイと 後編

キリが悪くなってしまったので今回は少し長め

前半が少し短かったので

 憤怒の酒場の2階はスケルトンたちが躍り狂うクラブだ。心なしか骨と骨が擦れる音がクラブミュージックに聞こえなくもない。


 「しかし、誰得なのかな?骸骨の踊ってる姿なんて見てもしょうがないのにさ」


 レイがいつぞやの俺と全く同じセリフを吐く。うん、俺もこれを見るのは二度目だけど同じ感想を抱いている。


 「うーん、骨が相手か〜。ならこの子じゃない方がいいかな?送還、そして召喚!ホーリースピリット!」


 レイが召喚したのは光属性の精霊だ。スケルトンを相手にする際には斬撃は効果が薄いので魔法か打撃系で攻めるのが常道。レイの選択は正しいな。


 「桃、見せてあげるよ。君みたいな英霊じゃなくてもこれぐらいなら一撃で殲滅できるんだよ!ホーリーレイ!」


 レイの放った魔法は光属性の光線で貫通性の高い魔法だ。その分効果範囲は狭くここのクラブのように多数を相手にするには向いてないと思うが・・・


 しかしそれも召喚士であれば違うようだ。なんと召喚されたホーリースピリットがレイの放った魔法を吸収したのだ。そしてその拳大の塊から幾筋にも増幅されたホーリーレイが放たれたのだ。


 「うちの子に限らずスピリット系の魔物はその体のほとんどを魔力で構成されている。当然同系統の魔法との相性は最高に良い。ボクのように召喚士として従えることができればその特性を生かして極めて強力な魔法増強の手段として使えるんだよ。ま、うちの子はちょっと特別で収束と拡散の両方ができる凄い子なんだけどね」


 得意そうなレイの解説を聞いてなるほどなと思う。召喚士と聞くと魔物との共闘っていうのが一番に浮かぶけどこうして補助的な感じで使うこともできるのか。それにしても収束と拡散か。確かにそこそこの太さがあった光線がより細くなって縦横無尽にクラブ内を駆け巡りスケルトンたちを消滅させていっている。収束もできるならかなり強力な手段となるな。


 「なかなかやるな。ではレイが手札を明かしてくれた代わりに俺も1つ見せてやる。俺が見つけた新しい力だ。レインボーデトネーション」


 消滅の力を持った魔力の弾丸があたりに撒き散らされる。スケルトンはもちろん魔石を破壊しても死ぬけど体の5割を失えば存在を維持できなくなり消滅するという特性を持つ。そんなスケルトン相手ではレインボーの魔導は非常に有効だ。触れたそばから消滅してゆくのだから。


 「これは・・・一体?普通の魔法じゃないってことだけはわかるけど・・・」


 「基本属性の6属性+無属性の魔力を込めて発動してる俺オリジナルの魔導だ。効果は消滅。触れた相手を文字通り消滅させる効果を持っている。」


 「うわぁ、チートじゃん。」


 「進化したからな。いろいろ無茶ができるようになった。しかし無敵って訳でもないおそらくMIDが高ければ消滅の効果はない。普通に魔法ダメージだけになる」


 「君の攻撃を防げるほどMIDが高いプレイヤーなんているのだろうか?」


 「そこは進化に期待だな。」


 そんな会話をしているうちにクラブにいたスケルトンは全てお亡くなりになられた。かわいそうに。


 続く3階のキャバクラはゴースト系の魔物が多かったため俺がもらうことにした。上2階はレイメインで戦ってからちょうど良いだろう。レオーネを召喚して一瞬で浄化してもらったわ。流石は聖女。この手の魔物相手にはめっぽう強い。


 実にあっさりとして浄化が終わり続けて4階へ。4階はヴァンパイアたちのホストクラブ。ヴァンパイアは高い物理・魔法攻撃に加えて再生力も高い。さらに連携を取る知能もあるので確かにこいつらが相手ならレベル80以上は必要かもしれない。


 しかしここはすでにクリアしている俺がいる。さらにヴァンパイアに有効な光属性を得意としているレイがいるんだ。負ける訳が無い。大きな山場もなく実にあっさりとヴァンパイアたちを殲滅し終えてアークがいた5階へと到達する。


 アークがいなくなったからどうなっているのかと思ったがかつてアークがいた場所には真っ黒な人型が。気になって【百科事典】で見てみることにする。


 憤怒の影 Lv100


 影かぁ〜まぁ、本人は俺が連れ出したし仕方ないのかな。能力は落ちてそうだな。


 「・・・桃、あいつはボクにやらせてくれ。」


 「良いのか?強いぞ」


 「多分だけどあれぐらい1人で倒せなきゃ進化はできないと思うんだ」


 「そうか、なら俺は手を出さない。けど危なくなったら割り込むぞ」


 「もちろん。というより一度攻略した君がいるから安心して戦えるよ。背中は任せた、相棒」


 「任された。」


 

〜レイ視点〜


 ゲーム内では久しぶりにあった桃はボクの想像以上に強くなっっていた。ワールドアナウンスで種族進化なんていうウルトラC級の爆弾をプレイヤーに落としたのは知ってたけどまさかここまで違っているとは・・・


 あのアナウンスから掲示板は大いに荒れた。いや、今も荒れている。桃がってところはもうみんな諦めてるから別に良いとして話題はその条件だ。


 ボクと桃の関係はもうみんなに知られているから桃がどこにいるか全くわからない以上ボクに連絡がくるのは必至だった。


 まぁ、ボクも種族進化には興味があったし何より桃がここ最近忙しそうで一緒に遊べてなかったからこれを機に一緒に遊びたいなと思って誘ってみた。遊ぶにしては少々過激だけど場所はかつて桃が単独で攻略した「憤怒の酒場」とかいうハイドダンジョン。


 約束の時間、少し早くダンジョンにたどり着いたボクはダンジョンの中を少し覗いて引き返していた。正気かあのダンジョンは。なんで1階にゾンビがひしめき合っているんだよ。しかも上位種がゴロゴロいる。ボクみたいに光属性に特化でもしていない限り即死案件だ!


 ひとまず桃を待とうと思い外に出た瞬間、突如として凄まじいの一言では済まされないほどの魔力を持った何かが現れた。ほとんどのソロプレイヤーは察知系のスキルを持っている。もちろん【魔力察知】も持っているからね。


 よく目を凝らしてみると桃だった。マジかよ桃、君から感じる魔力はボクがこれまで対峙したどんな相手よりも遥かに強大だよ。全く、このゲームでは最初からそうだったけど瞬く間に離されるな。これでもボクも少しは強くなったと思ったのに。


 桃が予想以上に強くなったことに少し拗ねたボクはちょっと裏技を使って桃の背後をとった。少し驚いた顔をしていたのでよしとしよう。


 桃と一緒にダンジョンに再突入する。桃はこれを単独で攻略したんだよな。よしここはボクの実力を見せるのも兼ねてボクに任せてもらおう。ボクはホーリーフェンリルと一緒にゾンビたちを蹴散らしたけど桃は何もせず、ただ溢れ出た魔力だけで捻り潰してしまった。仮にもレベル70以上はあるゾンビを攻撃もしないで倒すのか・・・ますます遠くなった気がするよ。


 ゾンビのひしめく酒場を抜け、スケルトンのクラブを蹂躙し、ゴーストのキャバクラを殲滅し、そしてヴァンパイアのホストたちを斬殺した後に最終階である5階に降り立ったボクはついにボスと遭遇した。


 桃いわくそいつの名前は「憤怒の影」でレベルはなんと100だそうだ。間違いなくここまでボクが戦ってきた相手の中でトップ3に入る強敵だ。ここはボク一人で戦うなんてことはしないで桃と共闘するのがベストなはずだ。けど・・・


 「ここで桃に頼ってたらいつまでも桃と並べないよね」


 桃に聞こえないように小さく呟き桃に1人で戦わせてほしいと伝える。桃の横に並べなくなるなんて正直には言わない。ボクは素直じゃないから、進化できるかもしれないって誤魔化すんだ。


 桃はボクの言葉を信じてくれた。久々に相棒なんて言ったよ。他ゲーではいつものように交わしてた言葉だけどこのゲームで使うのはちょっと新鮮だな。


 いざとなったら桃が助けてくれる。これほど心強い味方はいないだろう。後のことは気にしないで良い。ボクは今ボクに出せる全力をぶつけよう。


 「いくよみんな!召喚!オールレギオン!」


 ボクは仲間になってくれた子達全員を召喚する。ホーリーフェンリルにホーリースピリット、さらに盾役として勇者の鎧、回復役としてホーリースライムを召喚する。まだ隠している子もいるけどここでは狭すぎて召喚できない。


 「みんないくよ!」


 相手はこっちの言葉を理解しているかもしれないので【念話】で指示を飛ばす。相手がどんな攻撃をしてくるかわからないけどそう簡単に勇者の鎧の防御は抜けないはずだ。


 ホーリーフェンリルが聖属性を付与した爪斬撃を飛ばし、ホーリースピリットがホーリーレイを放つ。勇者の鎧は相手のヘイト集めるスキルを使い、ホーリースライムはいつでも回復できるように待機している。そしてボクは伸縮自在な光の剣を発動して憤怒の影に切り掛かった。


 『・・・』


 一斉に迫ったボクたちの攻撃を見ても憤怒の影は一切の動揺が見えなかった。一瞬で手の中に禍々しい魔力を集めるとそれが防壁のように広がり僕たちの攻撃を全て飲み込んで無効化してしまった。


 憤怒の影は背中に背負った片手剣を手に取り大地を蹴った。来る!と思った瞬間にはもう目の前にいる。まずいと思ったが勇者の鎧が間に入って防いでくれた。


 ギャリギャリギャリギャリ!金属と金属が擦れあい耳をつんざくような音が響きわたる。さすがは勇者の鎧。あれだけの速度だったのにとっさに割り込んでしかも受け止めてくれた。


 『・・・』


 不意打ちに失敗したのが気に食わないのか若干表情が険しくなったような気がする。憤怒の影と勇者の鎧はその場で拮抗していたが、突如として憤怒の影の持つ剣から【獄炎】が吹き出して勇者の鎧に襲いかかった。


 流石の勇者の鎧も【獄炎】までは防げないようだ。ゴリゴリとHPを削られる。しかも体は鉱石でできている分余計に削られている。


 けどこれはある意味ではチャンス。勇者の鎧が引きつけている間に一気に畳み掛ける。


 ボクは縮地で憤怒の影の背後に回ると出来る限り全力で剣を振った。ボクの意図は勇者の鎧にも伝わっているのでその身を焼かれながらも憤怒の影を抑えてくれている。


 「光剣流奥義・千本桜」


 ボクの剣術スキルが光剣に派生して獲得できた武技を発動する。MPを消費するけど一息に千の斬撃が相手を襲う奥義だ。相手に有利な光属性ということもあって大ダメージを与えることができた。


 たまらず勇者の鎧を強く蹴飛ばして間合いを取る憤怒の影。追撃としてホーリーフェンリルが光のブレスを放つがこれはあっさり躱されてしまった。


 『・・・』


 ある程度距離をとって仕切り直しかと思ったけど空気が変わった。最初にボクたちの攻撃を防いだあの禍々しい魔力が憤怒の影の全身から立ち込め、その体を鎧のように覆い始めた。まずいと思ってそれを阻止するために魔法を放つが効果はない。変身時無敵でもついてるのか?


 仕方ない。変身が終わった時に全力の一撃を叩き込めるように準備しておくしかないね。ボクは剣に込められるだけの魔力を込めてスキルの準備をする。うちの子たちにはそれぞれが持っている最強の技を準備しておくように指示する。


 ボクのスキルの準備が終わると同時に魔力が弾けた。これまでとは比較にならないプレッシャーがボクたちを襲うけどそんなのは無視だ。


 「光剣流真奥義・斬影」


 ボクが剣を振り下ろす前に憤怒の影が斬れた。流石に動揺を隠せない憤怒の影の隙をついて従魔たちの攻撃が殺到する。憤怒の影がいかに強いとは言っても流石に上半身を半ばまで断ち切られ、その傷を治す前に自身の弱点属性の攻撃を一気に畳みかけられたら生きてはいられなかったようだ。


 憤怒の影がHPを全損し砕け散るのと同時にアナウンスが流れる。ボクはそれを聞き流しながらゆっくりと倒れる。全MPと引き換えに1日1回だけ放てるこの技の反動は凄まじい。攻撃が成功してもしなくても全ステータスが24時間8割減というおまけまでついてくる。ボクにはもう立ち上がる元気はなかった。


 「桃、ボク勝ったよ。」


 倒れ込みそうなボクを支えてくれた桃にそれだけ言うとボクの意識は闇に溶けていった。

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