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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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VS サーシャ 前編

 カインと仲良くレオンにドナドナされて向かった先は初めて召喚老たちにあったあの部屋。そこには既にレオンと同じ召喚老のミーナとスタン、それから技術開発局の局長のエルモさんが席についていた。


 「レオン、その様子だと件の侵入者は桃みたいだね。うん、計測した異常な魔力の波形も一致した。この目で見るまでは信じられなかったけど魔人に進化してるなら僕の作った結界もその魔力でゴリおせるだろうね。レオン、僕はこの件の事後処理があるから一足先に失礼するよ」


 「あぁ。忙しいのに時間を取らせてすまなかった。」


 「いいって。何せこの僕が開発した結界が破られたんだ。開発者としてその原因究明は必須だからね。」


 エルモさんは俺の顔を見るなり納得したような表情を浮かべ、挨拶する間も無く部屋を出て行ってしまった。うーむ、どうやら俺の軽率な転移が召喚院を揺るがしているようだ。


 「けっ、ちょっと見ねー間に物騒なもん身につけやがって。生まれたてのクソガキがハイハイぐらいはできるようになったか?ま、それにしてもこの召喚院に白昼堂々と攻めてきやがるクソ馬鹿野郎をぶっ殺すいい機会だと思ったのによ。ちっ、これじゃ興醒めだな。」


 スタンは俺を見るなり一瞬だけ目を細めて驚いたように見えた。だがそのあとは相変わらずの罵詈雑言。いつにも増して口が悪いな。なんか侵入者をぶっ殺せなかったとか言ってたしフラストレーションが溜まってるのか?


 スタンはバタン!と大きな音を立てながら乱暴に扉を閉めて出て行ってしまった。


 「やれやれ、一時はどうなることかと思ったけど桃だったとはね〜。それからカイン、あなたの様子も見てたけどもの見事に桃にやられたわね〜。油断がすぎるんじゃない?」


 「返す言葉もございません。」


 「やれやれ、隊長格なんだからしっかりしなさいね。レオン、私も行くわよ。もう緊急事態態勢は解除したんでしょ?」


 「そうだな。手間かけた。」


 「いいわよ。何せエルモの結界が壊されたんだから。それは正しく緊急事態だわ。カイン、精進するのよ」


 「はい!」


 そう言ってミーナも出て行った。広い部屋に残されたのは俺とカインとレオンの3人のみ。


 「カインは先にエルモのところへ行っててくれ。桃はそこへ座ってくれ」


 「「はい」」


 カインが去ってからの1時間は思い出したくない。今回俺が引き起こした召喚院の緊急事態についてそれはもう懇切丁寧に禁則事項を含めて1から召喚院の規則について筆頭召喚老様直々にご講義いただいたのだ。


 「さて、説教はこれぐらいにしておこう。召喚院のシステムを通じて桃が精霊石が産出される6つのダンジョンを全て裏ボスまで含めて討伐完了しているのは知っている。そしてその人ならざる魔力。エルモの設置した結界をいとも簡単に破るほどの膨大な魔力量。エルモも言っていたが魔人へと進化を果たしたようだな。異世界からの来訪者が種の高みへと至れるのはレベルが100を超えてからと聞く。つまり俺が出した2つの課題、見事クリアしたようだな。おめでとう桃。」


 「英霊達に頼りっぱなしだったからなんとかってところだな。まぁ、レベリングだけは頑張ったけどな」


 「俺たちは召喚騎士だ。英霊の力に頼るのは悪いとは言わん。もちろん頼りすぎもいいことではないがな。その点桃はカインを倒した技からしてもきちんとスキルに頼らない技術を磨いているようだ。第1試験は合格だな。」

 

 「第1試験?」


 「あぁ、金級の召喚騎士になるための条件として桃には6つのダンジョンの攻略とレベル100の到達を課した。それに見事合格した桃は次の試験、同じ金級の召喚騎士との模擬戦を行ってもらう。この模擬戦で相討ち以上の結果を残せれば晴れて金級へ昇格が決定する。銀級の時も戦っただろ?あれと一緒だ。」


 「次は対人か。いいぜ、いつでも受けてやる」


 「そういうと思って既に準備してあるんだ。エルモのところに行こう」


 レオンに連れられエルモさんの職場である技術開発局へ。確か前回の戦闘試験をしたのも技術開発局だったな。そこには先に出て行ったカインとサーシャの姿があった。


 「久しぶりね、桃。ちょっと見ない間に随分と強くなったみたいじゃない。今日は楽しみにしてるわ」


 「久しぶりだなサーシャ。サーシャも強くなったのか?前とどこか雰囲気が違う。」


 「あら、分かるのね。ま、詳しくはその身で体験するといいわ。」


 「その身で体験?」


 サーシャの言葉を不思議に思っているとエルモと話していたレオンがこちらに声をかけてきた。


 「桃、こちらの準備は整った。早速試験を始めよう。相手は金級召喚騎士、サーシャだ。」


 なるほど、だからさっき体験すれば分かるなんて言ったのか。それにしてもサーシャには借りがあるな。前に戦った時には3回目には首を飛ばされていた。今回はそんな惨めを晒すのではなくてもう少し善戦したいところだ。


 「ルールは簡単だ。英霊に頼らず己の技量のみで勝負すること。決闘システムを使うから存分にりあってくれ。準備はいいな?それでは・・・始め!」


 合図だ


 「強くなったみたいだし、ちょっと本気で行くわよ!」


 サーシャから魔力が噴き上がり長く美しい緑色の髪が棚引く。予想以上!まさか17歳ぐらいだろうサーシャが並大抵の魔物ですら感じえないほどの魔力をその身に秘めているとは!これが金級召喚騎士の実力か!


 「だからといって俺もそう簡単に負けるわけにはいかねーんだわ」


 俺も英霊達に言われて制御していた魔力を解き放つ。俺の周囲にも魔力が吹き荒れ髪を逆立たせる。


 サーシャの武器は珍しく刀だ。ならば俺も一番自信のある刀で受けて立とう。今回の武器は「千桜華」だ。


 サーシャは刀を抜いて中段に構え、俺は鞘ごと片手に持ち抜刀術の構えを取る。一呼吸おいて双方同時に地面を蹴った。


 硬いはずの床が凹むほどの蹴り出し。一瞬にしてサーシャが目の前に現れる。初手はサーシャ。中段の構えから一歩踏み込んで抉るような突きを放つ。2手目、突きを読んで上体を少し逸らして躱す。そのままカウンターで抜刀して攻撃を仕掛けようとしたところでダメージを食らう。3手目を放棄してその場から飛び退く。


 「・・・風か」


 神聖魔法でダメージを回復しながらそのダメージの正体をサーシャに突きつける。完全に躱したはずなのに不可視のダメージを受けた。サーシャの見た目から判断して風しかないだろう。


 「ご名答。でも今のはほんの小手調べ。私の風はそんな緩くないわよ?」


 サーシャがその場で一呼吸で10回ほど刀を振る。その度に不可視の斬撃が俺を切り裂かんと飛来する。俺は【魔素眼】で魔素の流れそのものを見て躱し、避けられないのは叩き切る。


 「風脚エアステップ。」


 サーシャの魔法を発動する声が聞こえたと思った瞬間には背後に殺気を感じた。風脚エアステップの魔法は確か自分の移動速度をあげる魔法だったな。まさかこの目で見切れないほどの速度が出るとは。


 しかし見えない程度の速度ならなんども経験している。焦ることはない。態々近寄ってきてくれたのなら歓迎するべきだろ?


 無詠唱で獄炎を展開。これだけで生半可な魔物なら俺に触れることなく一瞬で燃え尽きる。サーシャの反応速度ならダメージを与えることは出来なくても風ぐらいはかき消せるだろう。


 「きゃ!?」


 随分と可愛らしい悲鳴が聞こえた。おそらく反応出来ないと思っていたのだろう。舐められたもんだ。


 かなり広範囲に獄炎を発動したので回避は出来ないだろう。そして自身にかけていた風脚エアステップの魔法も獄炎で消し飛ばされたようだ。いまだに背後に気配がある。


 俺は体をその場で回転させつつ一息に抜刀。もちろん魔力を込めるだけ込めてサーシャのように斬撃を飛ばすことも忘れない。


 「ぐ!?重い!」


 残念ながら刀が届く範囲からは既に離脱しており届いたのは飛ばした魔力の斬撃のみ。それもなんとか体勢を立て直したサーシャは刀で受け止めようとしていて直接のダメージはない。


 「なんとか受け止めたようだけど、それで終わりじゃない。」


 飛んで行った斬撃にさらに魔力を込める。一層巨大化した斬撃は勢いを増してサーシャを弾き飛ばしそのまま壁に叩きつけた。


 「これで終わりだ。七色ノ閃光(レインボー・レイ)


 6つの基本属性+無属性の魔力を束て放つ俺のオリジナル魔導。効果は消滅。触れたものを片っ端から消滅させていく現時点で最強の魔導だ。その分MP消費もえげつないことになっているが。


 今放ったのは人1人なら軽く飲み込める程度には太くしている。流石に召喚騎士でもこれに飲まれれば死ぬだろう。


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