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召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
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テンプレ!

前回のあらすじ

 ・暴風領域クリア!

 【暴風領域】の攻略も無事終了。残るは【アリノスの迷宮】【天空の城】【光届かぬ悪魔の巣】の3つだ。1日1個のペースでダンジョンを攻略していることを考えれば異常なペースだな。


 英霊がいなけりゃこのペースでの攻略はとてもじゃないが無理だな。ましてや中層以降の魔物を殲滅して、裏ボスまで攻略することはたとえレイと組んでも、ましてや1人では絶対に不可能だ。


 公式チートっぽいけど英霊達との出逢いには感謝だな。


 さてさて、いつものように【暴風領域】を攻略後は転移でウノに戻りいつものように宴会で減った食料品の買い出しと【錬金術】のスキル上げ。そろそろ中級ぐらいの各種ポーションなら高品質で大量に生産出来るようになったのでギルドにまとめて納品して金を巻き上げる。


 最近ではプレイヤーが適度に散っている。基本はこの最初の街がある王国を中心に戦闘系ではダンジョンがあるトレスと辺境故に魔物が強く経験値が稼ぎやすいここウノに。非戦闘職系のプレイヤーは王都を中心として様々に展開しているそうだ。


 もちろん国を超えて活動するプレイヤーも上位層にはちらほらと見受けられる。レイもちょくちょく帝国やアドヴェンに行っては難易度の高い依頼を受けたり、ダンジョンに潜ったりして経験値と名声を稼いでいるそうだ。


 さて、次なる俺の目的地は【アリノスの迷宮】だ。その名前の通りアリの巣状の形状をしているが、階層と階層は階段ではなく転移陣でつながっているそうだ。


 そして転移するたびに敵のレベルが上がる。引き時を自分で見極められるが、一歩間違えると撤退できずに死を待つのみというある意味危険なダンジョンだ。


 そしてこのダンジョンがあるのが学園都市キャンパスだ。学園都市は学問と同時に武術系スキルを磨くことのできる都市である。もちろん型稽古も重要ではあるが実戦で魔物を倒した方がスキルレベルが上がるのは早い。そこで授業料の一環として一定の素材を回収することを条件にダンジョンを生徒にも開放している。


 また、召喚院は学園に対する資金援助をする代わりに精霊結晶の納品、及びダンジョンに関する権利を手に入れているそうだ。政治的なアレコレは不明だが、主だって対立はしていないので寝首を搔かれるようなことはないと信じたい。金と利権が絡むとややこしくなるのは人間の性ではあるが。


 ささっと神殿で転移して学園都市キャンパスにたどり着く。【アリノスの迷宮】はこの都市の大事な資源にして修行場らしいのでなんと街の中心にその入り口があるそうだ。


 神殿のシスターに話を聞いたところ、資源であり修行場であり召喚院の管轄下でもあるダンジョン。さらにここには様々な権力者の子息もいることからダンジョンへの出入りの管理は結構厳重で召喚院のメンバーであっても一度登録が必要とのことだった。


 登録所はダンジョンの入り口近くと学園本部にあるらしい。別に本部に用事があるわけではないのでダンジョンの入り口で登録すれば十分だろう。


 シスターに礼と差し入れでバタークッキーを渡してお布施をしてダンジョンへと向かう。なるほど、流石にこの都市の重要施設だけあって登録所もそれなりに大きいな。裏話によると登録所とは名ばかりでその運営は冒険者ギルドがしているそうな。まぁ、どうでもいいか。


 扉を開けて中に入る。喧騒と酒の匂いが俺を出迎えてくれる。一瞬入り口付近で飲んでいた奴らは俺に視線を向けたがすぐに興味を失ったようだ。


 こういった場所故に多少ガヤガヤしてはいるが荒れた様子はなく、どことなく品があるように見えるのはこの学園都市に住む人の続柄ゆえか。


 受付と書かれたところに並び順番を待つ。


 「【アリノスの迷宮】登録所へようこそ!初めましての方・・・ですよね?」


 「あぁ、初めましてだな。俺は来訪者の桃だよろしく頼む。」


 「おぉ〜、来訪者の方ですか。学園都市では初めてかな?ともかく私が担当するのは初めてなのでよろしくお願いします。あ、私はノノです。」


 「ノノさんね。うん覚えた。それで【アリノスの迷宮】に潜りたいんだが、ここで登録したらすぐに潜れるのか?」


 「えーっとですね、一般にダンジョンを管理している側としましては実力の伴っていない方がダンジョンに挑んで命を散らすのを止める役目もありますので、学園都市在住の方はみなさん何かしらの武術の流派に所属しておられるか学園の生徒ですのでそれが強さの証明となります。また外部からの方ですと冒険者ギルドのランクやその他戦闘系の職業の証明書等が必要になります。ですが死んでも神の加護で蘇る来訪者の方にその原則が通用するかどうか・・・」


 「なんだ、実力が証明できればいいのか?」


 「え?えぇ。実力を証明できるものがあれば別段問題ないかと」


 「それなら話は簡単だな。俺はAランクの冒険者だ。これがその証拠」


 流石に召喚院のタグを見せるのはばれた時に面倒なのでAランク冒険者としてのカードを提示する。


 「Aランク冒険者ですかー!久しぶりに見ましたよ、このプレート。おっと、失礼しました。桃さんをAランク冒険者として処理しておきますね。問題なくダンジョンに潜れますよ。」


 「そりゃよかった。」


 何事もなく処理が終わり、さてダンジョンに行こうかという時にその声は響いた。


 「オイオイオイ、こんなヒョロいガキがAランクの冒険者だって?」


 それなりに騒がしいはずの登録所なのに響く男の声。登録所内の喧騒がピタリと止んだ。


 「だったらなんだ?」


 まさかの異世界テンプレをこんなところで味わえるとはと内心興奮しつつ声のした方を振り返る。男は身長2メートルぐらいで筋骨隆々の大男。なるほど、確かにそいつから見れば日本人男性として平均的な体格をしている俺はヒョロいし日本人は童顔に見られるからな、ガキと言われても納得できるところではある。


 「あ゛ぁ゛!?なんだその口の利き方は!この俺を誰だと思ってやがる!」


 なるほど、身分に凝り固まった典型的な噛ませ犬か。まぁ、どこかのお偉いさんだろうと来訪者である俺には関係ないし召喚院の一員だ。そこらへんの貴族よりこの大陸の治安維持を担っているので権力は上だと聞いている。ちなみに、その権力に溺れるような人間はそもそも召喚院のメンバーになることは出来ないので召喚院はかなりこの世界では信用度が高い。


 「知らないし興味がない。で?俺がAランクだったら何か問題でもあるのか?」


 「な、なんだと!?貴様この俺に対して知らないし興味がないだと!?これだから礼儀の知らぬ下賤な来訪者などという存在はダメなのだ。どうせそのAランクもその来訪者とやらの下賤な力で手に入れたものなのだろう?身の丈に合わぬ身分などここで通用すると思うなよ!」


 さっきから言いたいことが支離滅裂で相手の目的がわからない。だいたいこの手の輩はこちらを馬鹿にしたいか脅して金銭あるいは装備などを巻き上げるのが目的だろう。なのにこの男は単に言いがかりをつけているだけに聞こえるが。


 「あぁ、なんだ。お前羨ましいのか。来訪者でポッと出の俺が世界的にも認められる高位の冒険者でお前は見たところBランクかどうかだもんな。身のこなしを見てもそんなに強いとも思えないし・・・

 あぁ、可哀想に。【百科事典】で見たけどお前アドヴェンの伯爵家の4男か。上の兄弟は父親から受け継いだ才能があり名を上げている。対してお前は幼少期は遺伝とスキルでそれはもう手がつけられないほど強かったんだろうけど?それに胡座をかいて努力を怠り、さらに実家の権力を振りかざし暴力で自分に従う取り巻きばかりを集め有頂天になる。うん、典型的な馬鹿だね。

 そしてとどのつまりが弟に咎められ逆上して襲いかかるも尽く失敗し国では笑いもの。そこで心を入れ替えればよかったのにこれまでぬるま湯に浸かってた世間知らずのガキに耐えられるはずもなくここに逃げ出して来たと。

 さらにさらに学園都市ではどこかの流派に所属するも素行が悪く相次いで破門を食らうと。今では同じく落ちこぼれた奴らとつるんで半グレ集団を形成。ダンジョンに潜って日銭を稼ぐ日々か。こうして威張り散らしているけど50階にも到達してない。

 さっきは俺のこと、いや、来訪者全てを下賤な者扱いしてくれたな?努力もしないで威張り散らして落ちこぼれているお前の方こそ下賤だろうが!」


 初めは新人が絡まれてるとばかりに野次馬根性丸出しで俺たちのことを見ていた奴らはすでに鎮まり返っている。


 俺に絡んで来た馬鹿も最初は怒りに顔を真っ赤にしていたが俺が話すにつれてだんだんと顔が青ざめていった。


 そもそもこの世界にはあの女神ノルンに導かれて俺たちはこの世界にやってきた。その俺たちを下賤な者と呼ぶことはすなわち俺たちを呼んだノルンを馬鹿にすることと同義だ。ノルンは誰よりも思い入れのある女神様だ。


 ノルンを馬鹿にされてはっきり言おう。ブチギレた。最初は煽るように話していたがだんだんと苛立ちが抑えられなくなったのだろう。無意識に声に魔力が乗り、全身から威圧と殺気が漏れていたようだ。


 「ふ、ふ、ふざけるなー!」


 俺の怒気を間近で受けて顔面蒼白になっていたが突然叫び出して殴りかかってきた。なるほど、半グレ集団を率いるほどの力はあるようだ。1秒間に340発とは言わないがそれなりの威力があるであろうラッシュを放ってきた。


 「ひっ!」


 誰かが息を飲む声が微かに聞こえた。まぁそうだろう、普通に考えてこの状況で俺に攻撃を仕掛けるなんて馬鹿以外の何者でもない。


 「はっ!」


 せっかくだ、身の程というのを分らせてやろう。俺は短く息を吐くと手刀でそのラッシュを全て捌く。同時に魔力でコーティングして肉体の強度を上げて指を全てへし折る。


 「ぐあああ!い、いてぇ!お、俺の指がぁ」


 「身の程知らずが。実力差も分らずに攻撃を仕掛けるからだ。」


 「て、てめぇ!この俺にこんなことして許されると思うか!俺の家は伯爵家だぞ!」


 「なるほど、自分から家を飛び出したにもかかわらず、自分の都合が悪くなるとすぐに家の権力に縋ろうとする。まるで子供じゃないか。お前一体いくつだよ。

 それに伯爵家が黙っていないならそれで結構!俺は今あったことを正式に上に報告させてもらう。」


 「上だと!?」


 「あぁ、言ってなかったか。なら改めて名乗ろうか。アリーシャ召喚院所属銀級召喚騎士兼Aランク冒険者、来訪者の桃だ。」


 俺は見せないつもりだった召喚院のカードを目の前に見せてやる。


 「あ、あ、あ、」


 もはや俺に絡んできた男は”あ”しか言えない壊れたレコードになった。あんまり権力を振りかざすのは好きではないが向こうが権力をチラつかせたのが悪い。


 「どうせ叩けば埃なんざいくらでも出てくるだろう。これを機に全て洗い晒い調べてもらうんだな。覚悟しろ!」


 この言葉を最後に男を泡を吹いて気を失った。その後、事態に気がついた登録所の最高責任者が治安維持部隊と学園の管理者を呼び男は気絶したまま連行された。予想通り男は権力を笠に来て後ろ暗いことをしていたようで当局も手を拱いていたそうだ。


 今回は召喚院のメンバーである俺に対する暴行未遂。目撃者も多く揉み消しは不可能、一発で現行犯逮捕と相なった。


 その後すぐに召喚院に対して国を通じて男の実家から謝罪が入ったそうだ。男は国で無期限の奴隷刑となったそうだ。


 一連の騒動で俺のことは一気に学園都市に知れ渡った。不本意な形で目立ってしまったが男の実家からかなりの慰謝料ももらったので、テンプレということで大目に見よう。


 思わぬ時間を食ってしまったがダンジョンには問題なく挑めることになっている。さてさて、攻略を始めますかね。

ドラマ半沢直樹面白いですよね〜。ハマってます。

桃の長台詞と一連の騒動は影響をバリバリ受けてます。倍返しはしませんが。CV堺雅人で想像してくださいw

はっきり言って自己満足です、お付き合いありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の自分の身分を明らかにするところは、むしろ水戸黄門とか遠山の金さんとかの時代劇の系譜を感じる……
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