表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚騎士様は我が道を行く  作者: ガーネット
111/143

死中に活

前回のあらすじ

 ・カミカゼイーグルと戦うよ!


少し多め。

 久々に力を振るうことができて満足そうなルシファーを送還。その際に俺を見てまたふっと口の端で笑っていたのは気のせいだったのだろうか。


 ともかく他の英霊達と別れて行動した目的は全て完了したな。気配は感じないがあの豪華布陣ならもうそろそろ攻略も大詰めだろうな。


 急いで【飛翔魔法】で上を目指す。どうやら英霊達の気配を探るとちょうど山になっている部分の頂上付近にいるみたいだ。


 周囲に落ちている取りこぼしの精霊結晶の大きさからもここらの魔物レベルは90を超えているだろう。つまり英霊達がいるのはレベル100の魔物が出るところ、すなわちこのダンジョンのボスのところだ。


 『ほぅ、この私に攻撃を仕掛けるというのですか?身の程知らずも甚だしいですね。分を弁えなさい。鳳翼乱舞、鳳凰天舞』


 俺が頂上にたどり着いたときには既にボスである風を操るであろう龍はその身を業火に焼かれて死への旅路を高速ジェットで向かっている最中だった。


 しかし恐ろしいのはフィニクスの技だ。トドメを刺した鳳凰天舞はここの攻略の最初に見た技だ。あの時よりはめちゃくちゃ威力が上がっているように見えたが。そして見たことないが鳳翼乱舞だ。


 見た感じでは凄まじい熱を持った羽。本当にそれだけだ。しかし本当の恐ろしさはそこではないように見えた。その羽はボスが纏う桁違いの暴風に吹き飛ばされることなく、寧ろその羽が風に触れた瞬間にその風が完全に消え去っていた。


 無数の羽の動きは存外素早く、逃げる間も無く羽によって風の防壁を壊されたボスはなすすべなく鳳凰天舞の直撃を受けその身を灰燼へと帰した。


 ボスの討伐が一撃で終了した。まぁ、いつものことではあるが信じがたい光景ではある。レベル100のボスを一撃で屠れる存在はプレイヤーの中には現時点ではおそらく存在しないからな。


 英霊達がいる時点でほぼ間違いなく俺はプレイヤー最強ではあるが、その立場に胡座をかいてしまえば確実に抜かれる。強くならなきゃ。


 「お疲れさん。相変わらず一瞬だな。ボスがボスである必要ないんじゃね?」


 英霊達に声をかける。俺の声に反応して後ろを振り返った英霊達の目が一瞬だが見開かれる。そしてルシファーと同じようにわずかに口角をあげた。


 みんな一体どうしたんだろう?


 そんなことを思っていたが不意に影が差し一瞬だけあたりが暗くなった。俺の察知系スキルの範囲外ではあるがビリビリとした存在感が地上にいる俺にもはっきりと感じ取れた。


 なるほど、隠し部屋がないとは思っていたがここだけはボス二連戦なのか。今俺たちの頭上を横切ったのはおそらく隠しボス。何らかの条件でも満たしのかな?


 とにかくさっきフィニクスが倒したボスよりも強いツインヘッドの風を操る龍が間も無く俺たちも前に現れるはずだ。


 そして1分も待たずにそいつは現れた。【百科事典】で調べてみるとツインヘッドストームドラゴンというらしい。強いのはわかる。何せレベル100だ。立っているのもやっとなぐらいの暴風が絶えず吹き付けている。


 「ゴアアアアアアアアアア!!!」


 降り立った龍が咆哮を上げる。その単純な行為にすら魔力が込められており、並大抵のものはその衝撃波だけでダメージを受けるだろう。


 しかしここにいるのは並大抵の存在ではない。百戦錬磨の英霊にそんなチンケな攻撃は通用しない。無意識に纏っている魔力だけでいとも簡単に相殺できる。そして俺にも通用しない。音とは波だ。それに魔力が乗っているだけ。カミカゼイーグルとの戦いでより一層研ぎ澄まされた俺の察知系の能力はそのわずかな疎密まで明確に伝えてくれる。あとは単純。武器に魔力を込めて疎の部分を断ち切ってやればいい。それだけだ。


 居合のように腰の位置に剣を置き、さらに集中して一息に抜刀する。それだけでいとも簡単に咆哮の衝撃波を断ち切ることができた。


 多分暴風龍は咆哮で怯んだ俺たちを狩ろうしていたのだろう。誰一人として気圧されることなく、魔力を帯びた衝撃波をくらってもびくともしなかったことに腹を立てたようだ。


 怒りに狂った目でこちらを睨み付けるとその身に纏う暴風の力で通常はありえないが後ろへ大きく飛んだ。


 【未来視】が1秒後、目の前に迫る暴風龍の姿を映し出した。このままでは確実に即死する。意識をさらに集中させるように潜る。周囲に景色から音と色が失われ始める。カミカゼイーグルの時と同じだ。


 この状態では俺の全ての動作は重く遅い。ノロノロと動きながら暴風龍の攻撃コースを予測し躱す。暴風龍も俺と同じか少し早いぐらいでノロノロと動いているので1秒という短い時間ではあったがわりかし余裕を持って躱すことができた。


 だが俺には余裕を持って暴風圏から逃れるので精一杯だ。とても反撃なんてできるわけがない。そもそも尋常じゃないほどの暴風を纏っている龍種だ。近寄れば吹き飛ばされるし強引に中に入れば切り刻まれる。


 しかし神となった英霊達は違う。俺や暴風龍がカクカクと出来の悪いパラパラ漫画のように飽き飽きするほどの遅さで動く中、彼らだけはほぼ止まりかけた時間の中でまるで時間を支配しているかのように我が物顔で、堂々と動いている。


 「そうか、これが英霊達の見ている世界か。通りで俺の剣が届かないはずだ。いや、届くわけもないか。」


 この鈍色の世界で自由自在に動き回る英霊たちは美しく雄大でそして神々しかった。まさに世界にその名を刻んだ英霊の名にふさわしいと畏怖すら覚えた。


 そして、ルシファーをはじめとして英霊達が俺を見てニヤッとした理由がわかった。あれは英霊達なりの歓迎の証だ。言葉にするなら「ようこそ、世界へ」というところだろうか。


 なんてくだらないことを考えていたらいつの間にか双頭の暴風龍はラージャとアルバセロ、ミリムの発動した土の牢獄に捕らえられ、フィニクスとヴォートwithユグドラの身に纏う暴風を無効化され、アークとレオーネの必殺技の前に散っていた。


 思えば聖女とされた戦闘に向いていなさそうなレオーネですらあの世界で普通に動けていた。やはり英霊とは偉大だ。


 <お知らせします。ーーーーーー>


 いつものように怒涛のアナウンスが流れるのをスルーする。どうせまだまだダンジョンを巡らにゃならん。確認するのはその時でいい。いろいろ称号とか手に入れてるだろうけどみるのはあとのお楽しみにするってのも乙ってやつだ。


 それからいつもの晩餐会を行う。むしろこれがダンジョンの醍醐味と言っていいほど道中よりも料理を追加したりする方に体力を使う。おかげで【料理】スキルがグングン伸びる。【錬金術】も併用しているのでこちらの伸びもいい。


 前2つのダンジョンは洞窟だったから最深部は一面壁に囲まれていたけど今回はフィールド型のダンジョンなのでなかなかに景色がいい。しかもボスがいたのはダンジョンで一番高いところだから尚更だ。


 そういえば崖下の攻略で協力を要請したルシファーを召喚するのを忘れていた。わずか1分ほどしか戦闘していないとはいえ一緒に戦ってくれた仲間だ。晩餐会に呼ばないのは申し訳ない。


 「遅れてすまなかったな。ここを攻略した記念だ。好きに飲み食いしてくれ」


 『ほう、これはなかなか。だが先に我が召喚主。構えるがいい』


 ・・・え?


 俺は召喚して晩餐会です楽しみましょうねと言った。そしたらルシファーは剣を構えろと言う。何かしたかな?機嫌を損ねた訳ではないはずだ。だって先にって言ってるし。


 ルシファーがとち狂ったかと思ったがルシファーの目は真剣だ。とても機嫌が悪いとか伊達や酔狂で言っている訳じゃない。それに真剣を抜いている。


 これまでルシファーが俺と立ち合う時は真剣は使わなかった。実力差がはっきりしすぎているから。ルシファーが真剣を使うと俺にかすっただけでも一撃で殺される。それほどに俺とルシファーには超えがたい差があった。


 そのルシファーが真剣を抜いた。現時点で俺の英霊の中で最強は間違いなくルシファーだ。ルシファーの予想外の行動に晩餐を楽しんでいた他の英霊達も食事をやめて俺たちの方を見ている。


 ルシファーが構える。ぞわりと背筋が震えた。ピンと張り詰めたような空気に一瞬として変わる。しかしそれは英霊と対峙する時にはいつものこと。この空気はいつ体験しても生きた心地がしない。


 ましてや相手はルシファーだ。一段と空気が重く鋭く冷たい。常に首筋に真剣を突きつけられているような息苦しさを感じる。


 居合の構えを取り、息を短く吐くと同時に大地を蹴ってルシファーに迫る。ルシファーは動かない。いつものことだ。俺の剣速程度はルシファーにとってはハエが止まるのも同じだろう。


 だから工夫するしかない。幸いなんども正面から挑んでいるためにルシファーの初動のタイミングぐらいは掴めている。抜刀と見せかけて【幻炎】で作った俺の虚像を飛ばす。俺はそのタイミングでルシファーの真後ろに転移。この間に抜刀する。


 だがルシファーに幻覚など通用するはずもない。俺の剣を撃ち落とそうとした動きを即座に剣を持っていない方の手による虚像破壊へと切り替え、残った剣は振り返ることなく背後をなぎ払った。


 それすら俺には読めている。ルシファーならこれぐらい対応して当然だ。そう確信していた俺はさらにルシファーの目の前に再転移。ここであの止まった世界へと潜る。


 ルシファーの剣はすでに背後で振り切られている。いかなルシファーといえどそう簡単に剣を戻すことはできないはずだ。狙うは一撃必殺、その首ただ一つ。


 俺が格上に勝つためには最小の動きを最速でシンプルに行い、相手の攻撃より一瞬でもいいから早く相手を倒す。それしか方法はない。


 この最速の先制が成功するのはどこか。答えは簡単。超近接領域、そこにしか俺の勝てる場所はない。武器には間合いがある。その間合いは武器によって変わってくるが根本は一緒。傷を負うとも死なずに生き延びれる場所。それが武器の間合いだと考えている。


 その間合いはそれ以上踏み込んだら死ぬ最後のラインだ。


 だが俺はそこにあえて踏み込む。何、相手より先に攻撃すれば死なない。それに死んでも蘇るし、何より死地で戦ってこそ得られるものがある。


 俺はこれまでルシファーに幾度となく振ってきた剣の間合いからさらに一歩踏み込んだ。そして最初の動きで、この止まった世界の中で出来る限り早く剣を振るった。


 『覚悟を決めたいい目をしている。まさかここまで早く成長するとは。だが、それでも我には届かん。奴ら純な英霊とはまた違うがしっかりと脳裏に刻め。宵の明星』


 止まった世界では音も聞こえないはずだ。それなのにルシファーの言葉ははっきりと耳に届いた。そして後で振り抜かれてたはずの剣がいつの間にかルシファーの正面にある。そして最小で最速で繰り出したはずの俺のたった一太刀よりも早く、正確に煌く無数の剣閃。


 前に受けたことがあるルシファーの最強の剣技、宵の明星だ。前はその速さにただただ圧倒されただけだが、今は違う。その無数に繰り出される斬撃の1つ1つが正確無比、そして一切の無駄がない。俺が追い求める理想のさらにその上を余裕で超す斬撃が無数に放たれている。


 斬撃の暴風雨に俺の不完全な攻撃では太刀打ちなどできない。あっという間に俺の攻撃は飲まれて消えた。


 「ぐわあああああ!!!」


 ルシファーの攻撃の直撃を受けて急速に世界が色と音を取り戻す。本来ならあの攻撃を受ければ即死は間違いないが生きている?


 俺の体を優しい光が包んでいる。これは?


 『こうなることは最初からわかっていた故にそこの聖女に祝福を使わせていた。高レベルの聖女の祝福は一度の死ならば超越出来るからな。』


 「そうか、助かったぜ。レオーネ」


 『いえ、大したことではありませんので。それよりルシファー様?やりすぎないようにと言いましたが?』

 

 『生き返るのだから良かろう。だが我が召喚主。最後の攻撃、わざと死地に踏み込んだな?なぜだ』


 「そこしか俺に格上を殺す術はないことに気づいたんだよ。お前らと肩を並べて戦うにはそこしか無理だ。まさに死中に活を求めるだな。」


 『わかっているのならばよい。だが、その道は修羅の道だ。』


 「そんなことは百も承知。あの人の弟子として強くなるためだ、死地の1つや2つ恐れてどうする。」


 『ならば我から言うことはない。時間をとったな。晩餐を楽しむとしよう』


 俺とルシファーの戦いを見守っていた英霊達も俺の言葉を聞いて納得したように宴会へと戻っていた。


 疲れ果てた俺はそのまま大の字で倒れ込む。


 ルシファーに真剣を抜かせたんだ。強くなっていることは間違いないんだろうな。


 「まだだ。まだあの人には届かない。もっと強くならなきゃ」


 宴会が続く英霊達を背に、俺の小さな呟きは風に乗って消えていった。

区切りをよくしたかったのでこの話のまとめてぶち込みました!


次回からはまた速攻でダンジョンを攻略!ステータスと戦利品(無数にあるけどどうしよう・・・)の更新!ワールドイベ!PvP!と大まかな流れを考えてます〜


誤字を指摘してくださる人がいるおかげで読まれているなぁと実感しております。感謝申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ