第1話 ロマンを求めて
初めてゲーム物書きます。よろしくお願いします
簡単なあらすじ
ゲームをもらいます。スキルを設定します。ちょっと長めのプロローグです
「やあやあ桃君、今日も相変わらず一人でゲームですか」
「なんだよ急に、一人とかいつものことだろ?」
今日の講義は出席さえすれば単位は確実に来るので出席表だけ提出した後は授業を抜け出して、誰もいないサークルの部室で一人ゲームをするのが日課だった。
いつものように電源を入れたところで今日は思わぬ来客があった。そいつの名前は一ノ瀬玲。小学校のころからの幼馴染で中学までの9年間クラスが一緒だった腐れ縁だ。高校は違っていたが大学で再会し今に至る。
「授業をさぼってまでゲームをする廃人の君なら当然IWOは知っているよね?」
「…あぁ、勿論知っているさ。βテストの段階からどのゲームサイトを見ても高評価の化け物ゲームだろ?」
もうすっかり慣れてしまった若干の皮肉の篭る玲の質問に答える。人のことをゲーム廃人と言っておきながら玲だってそれなりに廃人と呼ばれる類の人間なのだがそんなことは棚の上らしい。
VRが登場してからもうすぐで10年が過ぎようとしている。初めはヘッドギアを被っての視覚だけの状態から始まったVR技術は画期的な新技術として世界各国で開発が進められた。そんな中、ある一人の天才が視覚だけじゃなく触覚、嗅覚、味覚、聴覚と人間の持つ五感を全てバーチャルで再現することに成功。それをきっかけに加速度的にVR技術が進んだ。
少し考えただけでも軍事や介護、教育など様々な分野で活用が期待できる技術だ。当然ゲームの分野にもVRMMOは進出してきた。各ゲーム会社が先を競うように新作を出したが如何せん新技術なものでバグや不具合が相次いだ。
もちろん俺もゲーマーの端くれとして機体を買い、様々な会社のゲームをやってみたもののどれも従来の携帯型ゲーム機の自由度とは大きくかけ離れていたためにすぐに飽きてしまった。それ以来ここ数年は技術が追い付くのを待とうと思いVRMMOゲームからは遠ざかっていたのだ。そんな俺とは対照的に玲はVRMMOにのめり込んでいたようだが。
そして今日、そんなVRMMOの新たなゲームが世に出されることになる。それが玲が言っていたIWOだ。こいつはよくあるような剣と魔法の世界で自由に活動しましょうというファンタジーゲームだ。これを見たゲーム掲示板の住民は俺も含めてまた同じようなものが出るのかと大した期待はしていなかった。
しかしその評価はβテストの映像が一部公開されると覆る。これまでのゲームでは再現できなかった様々な職業やなめらかな動き、グラフィックの美しさなどが掲示板で一気に話題になった。
さらなる燃料としてβテスターの証言もあり一気に期待度が高まった。掲示板の評判をみて俺もこれならやってみるかと思い予約しようと思ったがどこも売り切れ。入手機会を逃した俺は第二陣からのスタートと言うことになり少々不貞腐れているのだった。
ちなみに今目の前にいる玲は件のβテスターの一人でその特典として本日発売のIWOの優先購入権を貰いすでに手に入れているとのこと。あぁ、羨ましいったらありゃしない。
「お〜嫉妬にもえる目だこと。何か物騒なこと考えていないかい?」
「いや、別に。んで、そのIWOについて話があるんだろう?もし単なる自慢話だとしたら貴様の黒歴史をばらしてやるから覚悟しておけ」
こいつとは腐れ縁も腐れ縁。ガキの頃は一緒に風呂に入った仲なので全身のホクロの数から中学生の時のいたーい黒歴史の封印場所までなんでも知っている。
「…それは流石に止めてくれないかな?悪い話じゃないからとりあえず聞きなよ」
「ほう。一体なんだ?まさか俺にIWOをくれるとでも言うのか?」
絶対にありえない冗談のつもりで言うと玲の目がパッと見開かれた。
「全く、君はゲームとなるととんでもない勘をしているねぇ。その才能をもっと他で生かせばいいのに」
「うるせぇ、一言余計だ。それでマジなのか?その話」
「あぁ、マジさ。おおマジだとも。まさかダメ元で応募したβテスターに受かるとは思わなくてね、あらかじめ予約しておいたのだよ。2つも持っていても仕方のないことだしここはひとつ幼馴染でもあり同じ廃人ゲーマーの君に1つ譲ることにするよ。どうせなら一緒のゲームをした方が面白いだろ?」
今ならオークションにでも流せば相当な高値が付くはずなのに俺に譲ってくれるとは…なかなか友達思いなやつだ。そんなことを思っていたのだが…
「それにこのゲームはβテスターである私の方が断然有利だしね。どんなに努力しても私に追いつけなくて悔しがる君の顔を見るのも一興ってやつだ。」
…前言撤回、本当にこいつは性格がねじ曲がってやがる。
「よーし、そこまで言うならとっととお前を抜いてぎゃふんと言わせてやるぜ」
声高に玲を指差して宣言する。まぁ、同じゲームを始めるときのお約束みたいなもんだ。俺と玲は協力もするが基本的には別行動でライバル同士だ。変にべたべたしないでいいからやりやすい。
「君ならそう言うと思ったよ。はい、これがIWOのソフト。初回特典付きの超豪華版で〆て20,000円と消費税になります♪」
……今月の昼代がぶっ飛んだ。
今月の昼飯という尊い犠牲を払った俺はその日の講義は全て切って全力で自宅に戻った。確か開始時間が今日の19時からなのでそれまでにはキャラメイクを含めたもろもろの準備を終わらせておきたい。
そんなわけで家に帰った俺は単なる椅子としてしか役目を果たしていなかった機体の電源を入れた。
ではさっそく…
「ダイブイン!」
意識がふっと浮かぶような感覚がして目を開けるとそこは真っ白な空間にただぽつんと全身が映る鏡があるだけだった。同封されていた説明書によればここで容姿の設定や名前、その他の初期設定を行う場所だ。
「んーここで超豪華版の特典のコードを入れられると聞いたんだが」
そんなことを思った瞬間に目の前にスクリーンが現れた。プロダクトコードの入力と書いてあったので機体に登録したメモからコピペ。・・・よし、承認されたみたいだ。えーっと特典内容はこの後に選択する職業に関するプラス補正って書いてあった。
例えば剣士を選べば初期装備が初心者の剣じゃなくて少し性能のいい剣になるとかその程度。あんまりここで差をつけると数量の関係で手に入らなかった人からクレームがくるから、程よい特典だろう。
続けて課金の有無を聞かれた。このIWOは最初のソフト代と月々の利用料以外の課金はほぼ意味がない。もちろん課金できるがそれは完全に見た目だけのアバターなどの無くても全く困らないおしゃれアイテムだけだ。
しかしゲームを始める設定段階で唯一このゲームで課金ができる。IWOはスキルポイントを割り振ってキャラクターを作成する。ここで課金すればそのスキルポイントを増やせると言うわけだ。
最低金額は1000円で1ポイント。で、上限金額が5万でボーナス付きでなんと100ポイントになる。迷わず上限金額をぶち込む。これで向こう半年ぐらいは倹約生活を強いられそうだ。
よし、これで完璧だ。
ここからいよいよ本格的にキャラクターメイキングが始まる。
最初は容姿。このゲームの対象年齢が18歳以上と高めなためにかなり自由度の高い設定が出来る。やろうと思えば現実世界ではムキムキなおっさんが金髪褐色ロリ巨乳幼女になることも可能ならしい。βテスターだったレイによればβテストの段階ですでに自身の性癖の塊のようなプレイヤーもいたらしい。
閑話休題
さて、俺はどうしようか。基本的に俺は自身の姿から大きく弄るのはあまり好きではない。以前、似たようなゲームで大きく姿を変更してみたら違和感が酷くて操作に影響が出たので大きく変えないことにしている。
身長と体型はそのままに髪形を変える。普段は短髪だが思い切って長めに…そうだな大体膝裏ぐらいまで伸ばしてみよう。色は黒から暗めの銀髪に。瞳の色は黒に近い青色にしよう。よし、大体こんなもんでいいか。本音を言えばデフォルトが一番楽でいいのだがこの手のゲームが出来てから頻繁にニュースでゲーム間のトラブルの事件が報道されているからな。出来るだけ身バレはしないようにするというのは今のネチケットであり身を護る術として常識となっている。
次に決めるのは名前か。プレイヤーネームは他の人と被るのはシステム上不可となっていたので人気ネームは早いもの順だ。俺のゲームネームはいつも決まって桃。単に俺の名前を略しただけだ。仲のいい奴は全員そう呼ぶので一番慣れている名前だ。認証されるといいが…どうやら認証されたようだ。IWOでは被りの名前は使えないのでひとまずは安心といったところだろう。
次に決めるのは種族。初期設定で選べるのはヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人の4種族。ここにスキルポイントを費やすことで新しくハーフリングやダークエルフなど特殊な種族を選ぶことができるようになる。βのまとめサイトでは見かけなったから正式リリースからの追加だろう。
玲に聞いたそれぞれの種族の特徴としてはヒューマンを基準にするとエルフが魔法特化、ドワーフは力と器用さ、獣人は魔法への適性が低い代わりに筋力と速さに特化するらしい。
まぁ、俺は生産職はするつもりはないし前衛も後衛もしたいということで無難にヒューマンを設定した。
そして次がメインとなるスキル設定だ。IWOでは最初に10個のスキルを設定できる。このスキルの構成によって次のステップで設定できる初期職業とステータスが大きく異なってくる。ゆえにこのゲームの最初のポイントはこのスキル設定にあるとレイが力説してた。
ここで獲得できるスキルは後々でも手に入れることが出来るスキルで、基本スキルと呼ばれるものばかり。これらのスキルはゲームが始まってからの行動でも獲得できるのでさほど悩む必要もないがそれでもやはり最初に設定した方がスキルの成長率がいいらしい。やはりここは玲の助言通り丁寧に選ぶとしよう。
選べるスキルは大きく分けて武術系、生産系、魔法系、その他に分類される。悩みに悩んだ結果俺の選んだスキルはこうなった。
【剣術】【槍術】【杖術】【鎧】【火魔術】【水魔術】【風魔術】【土魔術】【召喚術】【鑑定】
我ながらアホみたいなスキル構成だが仕方ない。βの検証班曰く武術系と魔術系のスキルは3つ以上取ると成長にマイナスの補正が掛かり、スキルレベルの上昇スピードが急激に落ちるそうだが関係ない。どうせ玲とはかなり離されてるんだ。攻略組になる気はさらさらないし自由に決めていいだろう。
それから外せないのが召喚術。つい最近読んだラノベの影響もあるがやっぱりパーティープレイに向いてなくソロ向けって言うところがぼっちたる俺にはちょうどいい。テイムと迷った結果、召喚するときの演出が好みな召喚術を選んだ。
レイに負けるのは少々悔しいが序盤は慣れるためにゆっくり進もう。何より俺自身が楽しみたいし。そして最後にお待ちかねの職業選択。召喚術を選んだんだし、召喚師一択かな?と思いつつ選択可能の画面をスクロール。剣士や魔術師などが候補に出ていたがやっぱり召喚師ほど惹かれるものはなくそれに決定することにする。
「ん?なんだこれ。召喚師・・・じゃなさそうだな」
しかし、決定をタップする直前、選択可能な職業一覧の片隅にあったその職業に目が止まった。
「召喚騎士?んーどんな職業だ?βではそんな職業聞いたことないな。もしかしたら正式版で実装された職業かもしれないな。」
召喚師といささか迷ったが召喚騎士にも召喚と付いているのでサモナー系の職業だと推測する。せっかく新しいゲームを始めるんだからβにない職業を選択するのもまた一興だと思い召喚師ではなく召喚騎士を選択する。
そして最後にスキルポイントの振り分けだ。無課金だと最初に与えられるスキルポイントは100。尊い昼飯代を費やした俺はその倍の200ポイント振ることができる。
それをここで様々な項目に振り分けることができる。例えば最初に選んだスキルのレベルをあげたり、初期装備を強力な物に変更したり、ステータスをあげたりと様々なことができる。種族の変更もここで出来る。
スキルポイントの割り振り可能な一覧の中から職業と召喚術スキルを呼び出す。とりあえず召喚術のレベルをあげる。召喚術のレベルは召喚可能な数に直結する。レベル5で1体増えるのでここで最低でもレベル5にしておけば開始と同時に俺を含めて3人でパーティーを組める。
スキルレベルを上昇させるのに必要なポイントはレベル1で5必要だ。ちなみにここで上げられるスキルレベルの最大値はレベル5までだ。20消費して召喚術をレベル5にする。これで残りは180。
次に職業ボーナスにスキルポイントを割り振る。まずは20消費してアドバンス召喚を追加する。これは召喚師が最初に召喚できる初期モンスのランクが1上がる。強さ的には初期エリアから2エリアほど進んだレベルではあるがスタートダッシュとしては十分なアドバンテージになるはずだ。
続けて30消費してエクストラ召喚を追加。さらに召喚できる魔物のランクが1上がる。これで残りは130。
さらに30消費してミラクル召喚を追加。これは最初に召喚できる個体がユニーク個体という他の魔物と比べて強力になっている個体を召喚できるボーナスだ。これで残りは100ちょうど。
そこからスライドを変更していくとちょうどいいものが目に止まった。【武術の心得】と【魔術の心得】という職業ボーナスに含まれるレベルなしのパッシブスキルのようだ。共に必要なスキルポイントは50とかなり多いが武術と魔術のスキルレベル上昇に補正が入る便利スキルだ。
スキル選択でアホみたいなビルドにした俺からしてみればこれはありがたいスキルだ。これで多少のマイナス補正は補えるだろう。
あ、そういえば召喚師って武術系のスキルの成長にマイナス補正があるらしいんだが召喚騎士はどうだろうか?
情報が全くないので考えるのをやめてキャラクター作成を終了する。
さて、時刻は18時55分。思ったより時間がかかったみたいだ。このあとはチュートリアルで、それが終わったら初めは玲が付き合ってくれるそうなのでギルドの前で待ち合わせることになっていた。
お、そんなことを考えている間に19時になった。さぁ、ゲームを始めよう!
ステータス
桃 Lv.1
職業 召喚騎士
HP 80
MP 160
STR 15
VIT 12
INT 15
MID 12
DEX 12
AGI 11
LUK 15
スキル(0SP)
□武術系
【剣術Lv1】【槍術Lv1】【杖術Lv1】【鎧Lv1】【武術の心得】
□魔術系
【火魔術Lv1】【水魔術Lv1】【風魔術Lv1】【土魔術Lv1】【召喚術Lv5】
【魔術の心得】
□その他
【鑑定Lv1】