果てを目指すネズ一族
我々は果てを目指す。
伝承によるとこの暗い世界の果てには明るい明日があるという。
これまで我々ネズ一族は一度たりとも明るい明日を見たことはない。
何としても私が長の時には見てみたいものだ。
そう思い、私は皆を引き連れこの暗闇の道を手さぐりに進む。
そんな時ふと嫌な予感がした。
我々を見ているものがいると感じたのだ。
こんな暗闇の中でどうして我々の姿を見ることができるのか不思議だ。
しかし皆を守るのが私の仕事だ。
勇気を振り絞って私はその視線の主に問いかけた。
貴方は誰だ、なぜ我々を見ているのか、と。
だが何も言わない。
いや、言葉が伝わっていない……?
それは何とも恐ろしいことか。
言葉が通じなければ、分かり合えないものがいる。
おそらく我々とその視線の主はそういう類だ。
どうすれば奴から逃げられるのか、どうすれば奴から皆を守れるのか。
奴の目は獲物を見る目だ。
機を狙い、我々が隙を見せたとたんに飛び掛かるだろう。
どうすればいい、どうすればいい……そう思った時だった。
「こらこらにゃすび……ネズミ達を狙うんじゃないぞ!!」
奴よりも気配がでかいやつが、奴を掴んでどこかへ行ったのだ!!
やったぞ、我々は生き延びたのだ!!
皆で手を取り合い、歓喜した。
そして名の知らぬ我らの救世主に感謝した。
次に出会うことがあればお礼をしよう。
そう一族のみんなで決意した。
我々の旅はまだまだ途中だ。
だからまたいつか出会えることを信じて、我々は明るい明日を探していく。
我々の旅はまだ終わらない。
彼らは知らない……暗闇の中でしか生きていけないことを。