砂漠エルフ、イルルクゥ
私の住む星は砂漠でおおわれている。
水や食べ物は配給制で、昔あった宇宙戦争で墜落した戦艦の残骸から売れそうなものを探し出して交換する。
その水や食べ物ははっきり言って吐き気を催す。
けれどもこうしなくちゃ生きていけないから、私は我慢している。
今日も私は砂漠に残る船の残骸をあさる。
ただ、今日は不幸なことにせっかく見つけた部品を、砂漠ドラゴンから逃げる最中に落としてしまった。
これじゃあ、今日のご飯を食べることができない!!
「これ、食べますか?」
そんな時、私の目の前に差し出されたのは四角い物体だった。
それを私は初めて見た。
それは淵が茶色でほとんどが白く、触ってみると穴が空くくらい柔らかかった。
これはなんだと、私は差出人に聞いた。
「パンです。食べ物ですよ」
パン、初めて聞くな。食べ物というと固いものしか私は知らない。
けれども私は何となく、これは『おいしい』食べ物だと直感した。
思い切って噛り付く。味わうように何度も何度も噛んでいく。
するとどうだろう、今まで想像もしてこなかった味が私の舌に到来した。
なんと素晴らしいものだろう、なんと美味しいものだろう!!
私はパンというものにこの瞬間、心を奪われたのだ!!
あぁ、ありがとう。私にこんな幸せを教えてくれて。
私は感動のあまり差出人の手を取った。
どうか私に恩返しさせてくれと、私は頼み込んだ。
すると差出人は頬をかきながら困ったように微笑み言った。
「それじゃあ……僕と一緒に旅してください」
旅か、いいな。私は構わん!!
あなたはいったいどこへ行くというのか。
私はどこへだってついていくぞ!!
「僕は……果てを見に行きたいんです。この宇宙の果てを……それでもついてきてくれますか?」
果てか、いいな。宇宙の果ては果てしなく遠く、だれも見たことも到達したこともない。
それは確かに無謀だが、とてもロマンがあるじゃないか!!
よし、行こう。私は君の夢の果てを共に見たい。
だからよろしく頼むよ。
「えぇ、よろしくお願いします。僕は銀河鉄道の車掌ミヤザワといいます」
ミヤザワというのだな君は!!
いい名前だ。そして私も名乗らなければ。
私の名はイルルクゥ。砂漠のエルフ、ディザトリアンだ。
私はこの命尽きるまで君と共に果てを目指すことを、砂漠の月と昼の星に誓おう!!
こうして私の砂漠での生活は幕を閉じた。
不思議な車掌ミヤザワに連れられて私は銀河鉄道に乗り込んだ。
そこには今まではなかった未知なる発見や出会い、そして別れが私を待っていた。
辛いことも、悲しいこともある。けれども喜びや楽しみもあって、私は今のこの生活を気に入っている。
銀河鉄道は今日も星の海を駆け巡る。果て無きこの世界の果てを目指して。