第十五話『黒き主』
どうも!
遅れましたが、土曜日分の投稿です。
今回は、タイトル通り、"黒き主"についてのお話です。
是非最後まで読んでいってください!!
※誤字の修正を行いました。
気力に関しては、少し戻ってきたので、次回は土曜日に投稿出来そうです…。
ナビィが『存在消滅魔法』を発動させた直後、北の森に、大きな悲鳴の様なものが響く。
………始まった。
〈マオ、1分経ったら一瞬だけ『魔王眼』起動してくれ。この指示に対しての返事もいらない〉
そう俺は端的に言い、気配を潜める。
なるべく念話を控え、物陰に隠れながら気配を隠す。
ここまでやってようやく、俺達は標的から外れる。
全ての生命と生物達の悲鳴を合わせた様な不気味な叫び声が、今の状態でも聞こえてくる。
これが、『黒き主』。
最初の生命と言える始祖竜が、初めて認識した"空間存在"。形はなく、存在するもの全てを呑み込む"黒"。
これは仮説だが、始祖竜を創ったのは、この『黒き主』だと言われている…。
これまでなんだかんだ生き残ってきた俺も、流石にこの黒を相手には何も出来ない……。
こう考えると本当に…この世界の存在って、俺より強い奴多すぎじゃない……?
俺より弱い奴、異世界人と赤ん坊、それから魔獣くらいしか居ないんだけど………?
おっかしぃなぁ……、俺、これでもそこらの神より強いんだけどなぁ………。
はぁ……、肩身が狭い………。
そんな事を考えているタイミングで、『魔王眼』が一瞬だけ起動された。
〈波動竜、1分だ。頼む〉
〈うむ!〉
予定通りそう言った俺に、波動竜は大きく返事を返し、波動を解除した。
いや、そんな元気に返事するなよ!?
まぁ、もう夜って訳じゃないし、平気か………って、左手が消えてる!?
そんな時、ナビィが『存在消滅魔法』を、マオは『飛行魔法』を解除した。
もちろん俺は対応出来ず、顔面で着地した。
なんか痛いし……、左手治るのも時間掛かりそうだし……、勝ったのに勝ったきがしねぇ………。
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「そうか、そういう事か……」
白き女神は『白き世界』で、悔しそうにそう呟いた。
持っていたティーカップが砕け、一瞬で消失する。
彼の目的は、『黒き主』に餌付けをする事。
やられた…、まんまと騙された。
このままだと、"クロ"がこっちに来てしまう……。
「『世界スキル』を目立たせて、本来の目的からずらしたのか……」
だから、ボクに呼ばれるリスクを背負ってまで、『世界スキル』を取得した………。
そう考えれば、彼の不思議な行動は全て繋がる。
そもそも、たかだか神獣一体に苦戦するほど、彼は弱くない。もし弱く見えるなら、それは彼がそう見せているからだ。
本来の『レベルの無い魔王』の実力であれば、これまでナビィやマオにやらせていた事全て、彼は一人で出来る。
だが、彼はわざと攻撃を受けたり、わざと受け身を取らなかったり、弱く見える行動を取る。
今回もその類いだと思っていた。
いや、もしかするとこれまでの行動も、この時の為の布石……?
だとすると、これは彼が考えた策ではない。
「ふふふ、ボクを騙すなんてやるじゃないか。ナビィ」
女神はそう言って静かに怒る。
ここまで先を見越した策、彼では不可能だ。
おそらく彼も、これが策であることに気づいていない…。
どうりで、ボクが騙されるわけだ……。
「…………………ボクの計画の邪魔だね。
すぐにには消せないが…………………いや、止めておこう」
そんな事をすれば、彼が何をするか分からない。
実力を隠されている今、下手に手出しは出来ない、か………。
「仕方ない、少し、計画が遅れるが、……………………と、危ない危ない、君達が居るのを忘れていたよ。
これ以上は、君達が何処かへ行ってから決めるとしよう。ふふふ」
女神は笑い、本に視線を移す。
「決めた、次は笑い話にしよう。ボク好みの……。
ふふ、じゃあね。君達は四季とともに見るといい。ボクにとっての笑い話を……、ふふふ」
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「終わったぁ………」
俺は帰ってきた魔王城の客間で、背負っていた蒼依を降ろし、そう言いながら体を伸ばす。
いろいろ大変だったけど、とりあえず異世界人は助けられた…。
「御主人様、こんな事くらい一人で解決してください。急に呼びれても困ります」
そんな俺に、少し睨みながらもナビィさんが話掛けてきた。
「それは、本当にすまん……。思ったより苦戦して………」
そう、あの場にナビィさんと波動竜が来たのは偶然ではない。
『世界スキル』を獲得する際に練り上げた膨大な魔力、あれは俺からのSOSを意味してる。
東の森に行っている筈の俺の魔力が、北の森で爆発的に膨れ上がった。
これだけでナビィさんと波動竜には意味が通じた。
「なるほどの、タイミングが良いと思っとったが、竜と世界賢者があの場に来おったのはそれが理由か……」
俺と同じ様に鷺を降ろしたイトスが、納得した様に、顎に手をやりながら言った。
「まぁな、二人には元々、俺が何処に行くかは伝えてたし、別の場所で魔力が増えれば、駆けつけてくれると思ってな。予想通り来てくれて良かったよ……」
本当に来てくれて助かった……。
あのままじゃ死んでた。俺じゃなくて蒼依が………。
「待て、今の言い方じゃと、お前さん。確証が無かったのか…?」
爺さんは少しだけ額に汗を浮かべ、聞いてくる。
その通りだ。
ま、俺は嘘を吐かないし、来てくれるとは思ってたけどね。
「あぁ、来てくれる確証は無かった。
でもまぁ、俺の仲間だ。来てくれる確信があった。それだけで、実行出来るだろ?」
「ふん!その魔王らしからぬ発言……、気に入った。世界賢者にも言ったんじゃが、改めて誓おう。ワシはお前さんらに危害は加えん。その代わり……」
「俺達は森を荒らさない。だろ?分かってるよ。
波動竜とかにはよく言っておくから安心してくれ。森に入る時も、しっかり前もって連絡する」
「ならいいんじゃ。それじゃあの、本物の夜がくる前に、ワシは森に帰る」
そう言って、イトスは一瞬で姿を消した。
おそらくもう、東の森に居るだろう。
流石、神獣……。
あの狸爺さん、疲れたふりして、全然力を余してるじゃねぇか………。
イトスが居なくなったちょうどその時、横に居た波動竜が、俺にのし掛かってきた。
「我を会話に混ぜよ!!
今回は我が一番活躍したのだぞ!!!もっと誉めよ!!!」
波動竜は俺にのし掛かりながら、子供の様に言った。
外見はいい年した大人だし、止めてほしいんだが……。
あと、誉めるわけないだろ……。
「いや、神獣が怒ってたのってお前の所為だからな?
元々は戦闘にならない筈だったんだよ……」
寧ろお前は謝れ!
俺と蒼依なんか、お前の所為で、森を走り回ったんだからな?
「うぅ……それは………!そうだ!魔獣食べるのだったな!!ハッハッ!行くぞ桃太郎!!!」
「ん?ちょっと待て!何で俺まで…っておい!聞け!!」
そんな話は全く聞かず、波動竜は後ろで休んでいた桃太郎の足を掴み、食堂へ向かってしまった。
もう当分の間は、あいつが波動竜係って事にしよう。
いろいろ大変だと思うけど、頼んだぞ。桃太郎!!
「浅学非才、私も無視ですか?
それとも挽き肉にされたかったんですか?
私、タンが食べたいですね、フフフ」
とうとう"様"すら付かなくなった……。
それと魔獣のですよね?俺のじゃないよね?
挽き肉って言ってるのに、何故にタン?
え、もしかして俺の左手って、『黒き主』じゃなくて、ナビィさんが挽き肉にしただけ!?
そう思った俺は、左手を治してみる。
通常、『黒き主』に呑み込まれたら、治癒する事が出来ない。もし治ったなら、そういう事だ。
そして、左手が綺麗に治った。
ここは治るなよ………。
えぇ………、ナビィさん、そんなにおこってるのかな……………?
俺は確認の為にもう一度ナビィさんの顔を見てみると、とても満面の笑みを浮かべていた。
「………はい。ごめんなさい。
それだけは勘弁してください…………」
俺は出来る精一杯の、美しい土下座をしながら、縮こまりながら謝った。
本当にごめんなさい………。
なんかもう…、謝ってばっかりだな、俺……。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
黒き主は、どんな風に出るかは教えませんが、これからもお話に関係してくると思います。
その時、詳細も分かるかも?
まだまだ解決しなくてはならない事は山積み!
そして女神の言う笑い話とはどんなものなのか?
次回は日曜日の19時以降に投稿します。
お楽しみに!!




