第二十四話『竜という種の在り方』
どうも!
遅れました、すいません…。日曜日の投稿です。
今回は"竜"という種族の常識、桃太郎についても分かります。
是非最後まで読んでいってください!!
「殺す?」
鋭い殺気が籠った魔力の刀を、波動竜の眼前に向ける。
桃太郎の表情は相変わらず鬼の形相のままだ。
「あぁ、返答次第では殺す」
「ふ、やっぱりお前も他の竜と変わらない。人類の敵だ!」
「然り、我は竜だ。人類の敵である事も否定はせん。
だがな、我は貴様のその態度が気に食わん。貴様は『放浪者』であろう。世界から外れた貴様が、そこで生きる者達を語るな。それは貴様が捨てた者達だ!」
『放浪者』。
世界から外れ、世界渡り生きる存在。
そのほとんどが人間から人へ至った者であり、いずれ神へと至る者。
そして、己が世界を捨てた者。
確かに、事実であれば、桃太郎が竜を怨む資格はない。
世界に生きていないのだから………。
「……それでも、駄目だ……!
お前らがやった悪行を俺は見たんだ。見てきたんだ!!」
「悪行?違う。貴様の尺度で善悪を語るな!
竜の行う事は自然現象であり、断じて悪行などではない。その在り方を全うしているだけだ」
「全う?ふざけるなっ!!
世界を終わらせておいて、それが自然現象だと?」
「ふざけてなぞおらん。
我と同じ始祖竜には、終わりをもたらす事が生命としての在り方である『破壊竜』がおる。
それが行う破壊は悪行ではなく、己が在り方を全うしているだけだ」
波動竜の言っている通り、竜が権能によって行う事は悪行ではなく、その竜としての在り方を全うしている事になる。
例えば、『雷竜』が雷で世界を滅ぼしたとしても、それは悪行ではなく、竜としては素晴らしい在り方らしい。
ま、元が人間の俺には、到底理解しがたい考え方だけどな………。
「黙れ!そんな事関係あるか!!
竜は敵だ。だから殺す!殺し尽くす!!無限に存在するなら、無限に殺し尽くす!!!」
桃太郎は波動竜の言った事を納得出来ず、声を荒立てながら反論した。
「ハッ!己が周りを見てみよ!
結界を張られ、その理由はなんだ!!
我が盟友が血を流し、傷をおった理由はなんだ!!我らが貴様に害を与えたか!!!」
「…………」
そうなんだよな……。
俺達はそこら辺を徹底している。
人間と神が大嫌いな波動竜でさえ、桃太郎への攻撃を一切していない。
「貴様の行っている事は、貴様が悪と断じて殺し尽くした鬼と変わらん事を知れ!!!」
波動竜を怒りの籠った声が、部屋に響き渡る。
今まで思い出した記憶の中にも、ここまで波動竜が怒っている記憶がない。
「俺が………鬼と同じ、だと……?違う……!」
「何が違う!同じであろう!!
対話する事を放棄し、武力を持って殺戮を行う」
「対話なんか出来るか!
お前達竜は、俺達の話を聞かないだろう!!」
「あぁ聞かんとも!我らの寝床を荒らし、我らに害を与える者共の話なぞ、そう簡単に聞く訳がなかろう!!」
「は…?何を言っている……?」
桃太郎は波動竜が言っている事の意味が分からず、困惑した顔で言った。
まぁ、そんな顔するよな……。
俺も波動竜との記憶を思い出してなかったら、きっとそんな風になってたよ………。
波動竜はそんな顔をする桃太郎にただ真実を話し続ける。
「良いか!先に我らへ害を与えたのは貴様らだ!!対話を望むのであれば、まずは謝罪からであろう!!!
世代が変わり、我らへの愚行を忘れようと、そんな事は関係ない!
貴様らが!!我らを敵としたのだ!!!」
波動竜の言葉を聞き、桃太郎の視線が下に落ちる。
同時に、俺と波動竜に向けていた刃がゆっくりとおろされ、魔力の刃も消えた。
もう、その瞳に怒りは見えない。
「…………だとしても、竜との対話なんて不可能だ。謝罪をしても殺されるのが落ちだ………」
「何故そう思う。目の前を見よ!
我は『波動竜』であり、我が盟友は『魔王』だ。四季は竜ではないどころか、元は人間であるぞ!!
人間への敵対心が強い始祖竜である我が、元人間の魔王と盟友になったのだ。無論、我から歩み寄ったのではない!四季が我に歩み寄り、我を認めさせたのだ!!」
その波動竜の言葉を聞き、俺も思い出す。
そして床にうずくまり、言葉にならない悲鳴を全力で上げた。
「ん"ん"ん"ん"ん"ん"っ!!!」
いやぁぁぁ!!何この記憶、恥っずかしいっ!?
こういう記憶は思い出したくなかったぁぁぁぁ!!!!
くそぉぉ………桃太郎の話だと思って油断してたら、思わぬ所で流れ弾喰らったんだけど………。
「……その四季なら、今お前の後ろでうずくまっめるが……?」
「何!?どうしたのだ四季!!」
「お前の所為だろうが!?
とんでもねぇ記憶思い出させやがって!!」
穴があったら入りたい!!
恥ずかしくて死にたくなる!!!
〈マスター……、その、格好いいよ……ふふ〉
〈笑ってるじゃねぇか!〉
このままだと自殺しちゃいそうだ……。
死ねないけど…。
「兎に角!桃太郎!!もう気は済んだだろ?
まだまだ仕事はたくさんあるんだ。手伝ってくれるよな?」
「……だが、俺はお前らに刃を向けた……、この世界は旅立つよ………」
真面目だなぁ……。
そこまで考えなくても、刃なんて向けられて当たり前な事してるからな……。
「ははは!お前はそのままで良いよ。無理に竜の在り方を認めなくて良いし、『放浪者』であっても世界を護ろうとする。格好いいじゃないか!!」
「…………はは、お前はお婆様の様な事を言うんだな……、四季……。
分かった、今居る赤ん坊を育てるのは手伝うよ。
でも、それが終わったら俺はここを旅立つ……」
え、お婆様……、俺、中身は男なんですが………。
まぁ、いっか……。
「ま、まぁな…、それでいい。波動竜もそれでいいだろ?」
「うむ!それだけ凹んだ顔が見れた。我はそれで満足だ。ハッハッハッ!!」
そう上機嫌に笑いながら、波動竜は俺の背中をバシバシと叩く。
「痛っ!?痛いわ!やめろ!!」
俺が傷をおった事にあれだけ怒ってたのに、お前がやるのはいいのかよ!?骨が軋む音がしたよ!?
「話は終わりましたか、御主人様?」
そんな時、少し離れた所に居たナビィさんが、俺の後ろに現れた。
「あぁ、終わったよ。ナビィさんも見てないで助けてくれよ………」
「嫌ですよ、面倒です。御主人様は傷ついても死にませんし、安心して見ています」
相変わらず、完璧な笑顔だ。
優しさが全く感じられない………。
なんか本当に、『レベルの無い魔王』になって損した気分だ……。
「じゃあ!まだちゃんと話もしてないし、食堂に行って、みんなで朝食を取ろうぜ!!」
こういう気分の時は、美味しい物を食べるに限る。
アメミの料理もなかなか美味しいからな……。
「お!我も食べるぞ!!ハンバーグを所望する!!」
「はいはい…お前はいつもそれだけだろ……」
寧ろ、食わず嫌いが多すぎて、肉しか食わねぇだろ………。
「俺も…いいのか?」
「あぁ、赤ん坊を育てるまでとはいえ、俺達の手伝いをしてくれるんだ。好きな物を食べてってくれ。
ナビィさんはどうする?一緒に来るか?」
「えぇ、私も行きます。御主人様には先ほどの食料の件で話がありますからね」
…………。
え、えーと…、何の事かな……はは。
「じゃ、じゃあ『転移魔法』使うぞ!みんな魔法陣に入ってくれ!!」
とりあえず、今回の異世界人は悪い奴じゃなかったし、良しとしよう。
〈もぉ!私が術式を構築したかったのに!!マスターの馬鹿!!〉
あ、やべ、忘れてたわ………。
そんなマオの怒った声の念話が聞こえながら、俺達は食堂へと転移した。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
『放浪者』の補足をしておくと、四季のように神との契約で人に至ったのではなく、自らの力で人へと至り、自分の世界から別の世界に移動した者の事を言います。
また、同じ世界には移動する事が出来ない為、"己が世界を捨てた"という事になります。
次回は少し短め、もしかしたら第二章の終わりも見えてきそうです。
次回は来週の水曜日、19時間以降に投稿します。
お楽しみ!!