第二十一話『その異世界人の名は………』
どうも!
すごい遅れてギリギリ2日連続投稿です。すいません…。
その分、文章量もふえてます!
今回は異世界人との戦闘?
是非最後まで読んでいってください!!
ここは、いずれ俺が死ぬ場所。
勇者が魔王を殺す為に戦う、"魔王の間"。
転移してすぐ目に入ったのは、黒くて長い髪を一纏めにした男だった。
その男は刀を振り抜いている。
え?
体を血液が吹き出し、血飛沫が上がる。
そこでようやく理解する。
斬られた!?
速すぎるぞ!?
「なっ!女!?」
俺を斬った男は驚いたように声を発し、動きが一瞬止まった。
ん?今気づいたのか?
まぁいい、とりあえず殴っとくか…。
腕に魔力を込め男にぶつける。
殴られた男は勢い良く吹っ飛び、柱に激突した。
男が激突した柱が崩れ、粉塵が煙の様に舞う。
あ、やべ、魔力込め過ぎた…。
城の柱も壊しちゃったし、後で直しとかないと……。
あと、この男が俺は斬った時、目を閉じていた…。
あれは特殊な力ではなく、天性のものだな……。
「まぁまずは名乗れよ、異世界人。
お前が強い事は分かったから、話をしないか?」
狙った相手が転移する場所を勘のみで探り当て、俺の右肩から左わき腹までを一直線に斬り裂いた。
勇者の攻撃程ではないが、俺の体に物理攻撃が通用していて、治りも遅い。
この男は間違いなく強者だ。
「魔王に名乗る名など無い。話もする気は無い。斬り裂いても死ななかったのは予想外だったが、ここでお前を殺す事は変わらない」
煙を刀で吹き飛ばし、その刀を向けながら、男は俺の提案を一蹴した。
「辛辣だな……、だが俺はお前を殺さない。話す気が無いなら、話す気になるまで待つだけだ」
「そうか、俺に斬られて死ね」
男はそう言って斬りかかってくる。
一瞬で間合いに入られ斬られそうになるが、俺はギリギリの所で避け、後ろへ跳んだ。
「話す気になるまで待つとは言ったが、避けないとは言ってないからな」
くそ…本当に話す気が無いらしい……。
昨日勇者の力を使った所為で『魔王の魔法回路』が100%起動出来ない。起動出来ても50%、これだと『魔王眼』を使えない……。
おまけに、マオが起きるのはまだ少し先だし…。
こりゃ、時間が掛かるな………。
「ならば避けられん様にしてやろう。"ドッグバインド"!」
そう男が宣言すると、一匹の犬が真横に出現し、俺の右わき腹に噛みついた。
「っ"!?痛っ!!?」
犬!?
ご丁寧に『痛覚無効』も貫通してやがる……。
これがこの男の『特殊能力』か?
俺が止まったのは一瞬だが、どうやらこのタイミングを見逃すほど、この男は弱くないらしい……。
「二分一刀」
そう男は言い、技を使った。
その技はシンプルで、一本の刀で二本の刀を出現させる神速の剣。
防ぐのは簡単だ。
この状況でも俺は『魔風壁』を使えるし、避ける事も出来る。
だが…………。
ここはあえて、喰らっておくか………。
神速の剣が俺の体を斬り裂き、力なく地面に倒れる。
「呆気ないな。魔王と言えどこの程度か……」
仰向けに倒れている俺を見下しながら、男は呟く。
「ははは……」
男の顔を見てると、自然と笑ってしまった。
「何がおかしい。何故笑う」
「いやお前、良い奴過ぎるだろ。ははは…」
この男、斬る寸前になって力を弱めた。
あれだけ殺気を込めて殺すと言っていたのに、実際は殺す寸前に力を弱める。
いくらなんでも良い奴過ぎるだろ。
「うるさい。お前に言われても嬉しくない。俺はただ、魔王であるお前を殺すだけだ」
「なら早くその刀で斬れよ。殺せるかもしれないぞ?」
「それが出来たらやっている。わざと言っているだろう」
本気ではないとはいえ、俺の拳を受けて普通に戦える程の実力者が、俺との力の差を理解出来ないとは思えないからな……。
「まぁな、話をする気にはなったか?」
「………ならない。お前だけは絶対に殺す」
「だから、その理由も含めて聞きたいんだよ…。何でそんなに俺を殺したがるんだ?」
確かに俺は魔王だし、人間に怨まれる事が多いが、この世界ではまだ悪い事してないし……。
逆に子育てしてるからね?
「お前…、お前が人間を全て殺したんだろ!!白々しいにも程がある!!」
えぇ……ガチギレ………。
もしかして、誰だか知らない別の魔王の所為で、俺は怨まれてるのか?
「いや、俺が攻略してきた世界にお前みたいな甲冑を着た奴が住む世界は無かったし、異世界人とは基本的に良好な関係だったから、お前の勘違いじゃないか………?」
おい誰だよ!?
お前の所為で知らん奴に怨まれてるよ!?
世界征服するなら正しくやれよ!!
正しい事ではないけど!!
「勘違いな訳があるか!!
この世界に来た瞬間から確信している!
勘違いなら、この世界の人間が居ない理由を説明しろ!!!」
男は怒りながら、俺の頭に突き刺そうと刀を振るった。
「いや……それは……、はは……なるほど、理解した………」
素手でその刀を受け止めながら、俺はそう言う。
俺だったよ!!
自業自得だったよ!!
「殺せないなら、殺せるまで斬る」
「いや!待て!!多分勘違いだ!!」
「問答無用!!」
刀に込められる魔力の量が増え、押しきられる。
切っ先が軽く鼻にあたり、少し血が流れた。
話聞けよ!!
このままだとまずいな……。
俺って、頭斬られても意識残るのかな…?
などと、そんな事を考えていると、横から声が掛かった。
「御主人様、赤ん坊が泣いています。人手が足りないので、遊んでないで早く手伝ってください」
「マジか!?大変じゃないか!!すぐに行くぞ!!」
俺はナビィさんの横に立ち、赤ん坊の所へ行くために『転移魔法』を起動する。
「ま、待て!お前傷は!?どうやって移動した!!
それに赤ん坊がいるのか!?人間が生きているのか!?」
男は俺があっさりとナビィさんの所に居る事に、驚いているようだ。
「どうやってって言われてもな……、普通に速く動いただけだよ。
あと赤ん坊は人間だ。この世界の人間はあの子達だけだからな。今は俺達で育ててる」
傷は少し魔力を込めれば治るし、服も同じだ。
「そうか……、なら、俺が勘違いしていたのか………」
ん???
なるほど、この男は俺がこの世界の人間を全て殺したって思ってたのか!
いや、世界終わらせたのは本当だけど……。
なんか都合良く解釈してくれたみたいだし、そのままにしておこう。
「赤ん坊は、その、しっかり育てているのか……?」
男は申し訳なさそうに俺に聞いてきた。
「んー、そこら辺の説明は面倒だし、お前もこいよ。人手が足らないんだ、増える分には問題ない」
俺はそう言って、男が立っている場所にも『転移魔法』を起動させた。
赤ん坊は可愛がらないと死んでしまうらしいし、元気な赤ん坊を見せれば、納得するだろう。
「御主人様、本当に良いんですか?
その人は信用出来るのですか?」
「大丈夫だと思うぞ?
明らかに『超越者』だし、良い奴だからな」
「そうですか、なら構いません」
ナビィさんはそう言うと、俺の起動した魔法陣の中に入ってきた。
さすがにもう慣れた。
ここで何で?っ聞けば、攻撃されるし、何も言わないでおこう……。
「そうだ!名乗れよ。まだ名前聞いて無かっただろ?俺の名は四季だ。部下になれとまでは言わないが、これからよろしくな!」
「そ、そうだな………勘違いして悪かった。
俺は"桃太郎"だ。よろしくな、四季」
「マ?」
そう俺が驚いた所で、先に起動していた『転移魔法』が展開し、俺は泣いているらしい赤ん坊の部屋へ、転移した。
まさかあの男が、転生167回目あたりで日本からの異世界人に聞いた、"桃太郎"だったとは……。
やっぱり、強かったんだな………。
泣いている赤ん坊を抱き寄せながら、俺はそう思った。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
異世界人はあらゆる世界から選ばれるので、物語であっても、例外ではありません。
この先も異世界人は増えていきます!
次回は水曜日の19時に投稿します。
お楽しみに!!




