第三十三話『思わぬ再会』
どうも!
何とか今日の間に投稿出来ました。
元々、三十二話になる予定でしたが、間に合うか不安だったので、分けて投稿しました。
是非最後まで読んでいってください!
「つまり、人口が80兆人より多くなったら減らして、人口が80兆人を越えないようにする、その為の施設がここ?」
「その通りです。国の中から無作為に選ばれた11歳以上の国民が、ここで殺されます」
…確かに、『超越者』が最大人口80兆人での人類の存続を目的としたなら、こういう事をするのも納得だ…。
だが…おかしいぞ、なら少年は何故殺された?
「少年はまだ6歳だったぞ?対象外のはずだ、何で殺されたんだ?」
「……少年はもしや、改造ホムンクルスなのですか?もしそうなら、殺される対象です。改造ホムンクルスは大人と同じとされますから」
「………あぁ、そうだよ…、少年は改造ホムンクルスだ…………」
そうか、だから少年は…自分を大人だと言っていたのか……。
俺は最後に触れておこうと思い、少年だったものに触れようとする。
しかし、触れようとした手に、巻きつく様に風が吹いた。
「!!」
それは不思議な風だ。
風が吹いたのは一瞬だったが、それが何の風なのかは分かった。
「これは…、『魔風壁』!御主人様!!この少年に教えたんですか!?」
そんな声が、俺の後ろから聞こえた。
どうやらナビィさんも気づいたみたいだ。
「あぁ、教えた。教えたのは『魔風壁』だけだけどな」
「ならおかしいですね。ただの銃弾が『魔風壁』を破れるとは思えません。それに、生き残るだけが目的なら、死んでも技が残る様にする意味がありません」
「生き残る?そんな事あるのか?」
「??だから教えたんですよね?少年に生き残ってもらうために」
ナビィさんは、何を言っているのか分からないという顔で聞いてくる。
「いや、少年が教えてくれって言うから教えただけで…その…、特に理由がないというか………」
「はぁ……。5日に1度行われる処理を生き残れば再び処理される事はないので、次に選ばれるまで、命は保証されます。まぁ、生き残る事は基本的に出来ませんけど」
ため息を吐かれたけど、ナビィさんは丁寧に説明してくれた。
少年は生き残ろうとしてたのか?
なら、何で……。
少年だった肉塊に目を向ける。すると、あることに気づいた。
少年の肉塊の下に、隠れている赤ん坊が居たのだ。
「な!赤ん坊!?」
まだ生きてる!!
何でこんな所に…、しかもこの赤ん坊、改造ホムンクルスじゃないぞ!!!
改造ホムンクルスでもない普通の赤ん坊が何で……、そうか、少年はこの赤ん坊を守ろうとしたのか……。
なら、どういう事だ?
「どういう事だナビィ!殺される子供は改造ホムンクルスだけじゃないのか!何だこの赤ん坊!!!」
「………」
俺のそう聞くが、ナビィは答えない。
「黙るな!!答えろ!!!」
ふざけるな。
ナビィが嘘を吐いてないって事は分かってる。だから怒ってるんだ。
世界のルールなら仕方ない。少年の死は悲しいが、受け入れよう。
だがな、そのルールが破られて少年が死んだなら、俺は受け入れるつもりは無いぞ。
「…この世界では、これも普通です。表向きは禁止されていますが、身寄りのない子供や赤ん坊も、『人柱』への多額の寄付を行う事で、殺す事が出来ます」
しばらくして、ナビィが口を開いた。
「寄付?金を払えば殺していいって事か?しかも、それが普通?」
「否定はしません。ここ以外の処理場でも、同じ様にある事ですから」
「なら、何で……」
"言わなかったんだ"という言葉を、俺は必死に呑み込んだ。
違う。ナビィが俺に言う必要が無いんだ…。
俺の目的は、この国の最高権力を握る事、こんな事を知れば、今の様になるのが分かってたから……。
「それでも…知っていれば………、俺は…………」
畜生……もっと早く、少年から聞き出していれば………。
「どうやら、ギリギリ間に合ったようだな」
突如、俺でもナビィでもない声が、暗闇に響いた。
「誰だ。悪いが今は機嫌が悪い。失せろ」
「断る。たとえ盟友である貴様の要求であっても、我の行動を妨げる事は許さん」
そう言いながら、何者かが俺達の所へ歩いてくる。
声からして男だと思うが、いったい何者だ?
気配が無く、わざとらしく聞こえる歩く音のみがだんだんと大きくなる。
それに……
「盟友?そんな奴は居ない」
「ん?そうだったか…、貴様は既に我と会っていると思うが…、盟友になる前に我が死んだか……」
ようやく姿が見える。
灰色の髪に赤い眼の、外見年齢は俺と同じぐらいに見える男。
『魔王眼』が弾かれたので、それ以上の情報が得られない。ナビィが俺に情報を教えないのも、俺と同じ様に『世界眼』が弾かれたのだろう。
そう考えている間に、男は俺達の前に立った。
「………」
「そうか…、本当に我を知らんのだな。なら自己紹介というやつをしてやろう」
しばらく俺が黙っていると、男が口を開いた。
「我は『波動竜』。この世に四種のみ存在する"始祖竜"が一体である。貴様は我の若い個体に会っている筈だが、本当に覚えていないか?」
「……………は?」
俺がこの世界に転移した時に目の前に現れた、この世界のレーザーで殺された筈の竜が、今ここに、人の姿で現れた。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
因みに、この世界でホムンクルスを処理する場合。4日目に、強い自害欲求を生み出す電気信号がチョーカーから発せられ、それに耐えた者が、5日目に処理場へ送られます。
ようやく彼が登場してくれました……。
これからどうなるのか?
次回は、土曜日の19時に投稿したいです(願望)。
お楽しみ!