第二十九話『少年との約束』
どうも!
投稿予定より1時間遅くなってしまってすいません……。
是非最後まで読んでいってください!
「魔王って…あの魔王?……」
少年は驚きながら確認する。
「あぁ、あの魔王だ」
「……じゃあ、この世界を支配するの?……」
うわー…子供からそんな事言われると、なんか、すげぇな…。
でも、やっぱり逃げないんだな……。
「まぁ、そうだな。いずれ世界を支配する」
「いずれって、あとどれくらい?」
「俺が頑張っても300年だ」
「300年……、そんなに掛かるの?」
「まぁな、これでも短い方だ。竜を殺せる武力を持ってる世界だ…。考えるだけで気が遠くなる……」
本当に、何で1000回目の世界が、この世界だったんだろう……もう少し簡単にしてほしい……。
「そう、なんだ……」
それを聞いた少年の肩が落ち、俺が一番嫌いな表情をした。
あぁ…、本当に悪いと思ってるよ。今すぐに、お前達を助ける事は出来ない。
「そうだ。だから生きろ、少年」
「え…、…なん…で……」
少年は、口を開けたまま唖然していた。
「俺がどんなに頑張ろうと、少年に俺の支配した世界を生きてもらう事は出来ない」
「……うん。分かってる……」
ナビィさんの計算は正確だ。加えて、俺に嘘は吐かない。だから、300年より長くなる事はあっても、短くする事は出来ない。
「でも、少年の子供が、笑って家庭を作れる世界には出来る」
「!!」
完全に支配出来るのは350年掛かるが、少年のように育てられる子供を無くすぐらいなら、少年が生きている間に作れるはずだ。
「だから生きろ。死のうなんて考えるな」
一瞬、少年は顔を上げて俺の顔を見たが、少し経つと、また下を向いた。
「……なんで……」
「ん?」
「何でおじさんは僕に正体を話したの?僕に話したって、メリットが無いどころか、リスクがある……」
少年は力なく呟く。
確かに、世界の支配する為に行動するなら、今ここで少年に正体を明かすなんて事、しない方が良い。
でもな……、
「違う。これから先、俺はお前に構ってられなくなる。魔王として行動する以上、休日と呼べるのは、おそらく今日で最後だ」
「…今日で最後…、でも…」
「それでも少年が気にするなら、俺と約束をしよう」
「…約束?」
「そうだ」
「……うん、するよ。約束する」
そう言うと少年は、どこか壊れた笑顔で、俺に笑いかける。
「ふっ、まだ内容言ってないぞ」
「はは、そうだね……」
俺はそれを鼻で笑い、少年も乾いた声で返す。
「まぁ、待ってろ。下手したらお前の子供がお爺さんになるまで時間が掛かるかもだが……。絶対に、絶対に世界を支配してやる」
普段の俺ならやらないが…、少年なら良いだろう……。
俺は少年の頭に手を置いて、ワシャッとする。
「だから生きろ少年、また俺とボール遊びをする、そんな家族を残してくれ。それが俺との約束の内容だ」
「…………」
少年は無言のまま、俺に頭をわしゃっとされている。
「で、どうするんだ?約束するか?」
「さっき答えたでしょ。わざわざ2回も言わないよ」
「そうか……」
「僕は生きる。お話、楽しかったよ」
少年はベンチから立ち、たんたんと言葉を並べる。
初めて合った時のように、無表情で。
「それは良かった。またな、少年。墓参りには毎日行ってやる」
それを聞いた少年の顔が、表情が変わった。
その表情はひねくれていて、歪んでいるが、何故か子供らしい笑顔だ。
「うん。またね、おじさん。待ってるから」
そう言って、少年は行ってしまった。
・・
・
さぁ、世界攻略が始まります………。
年中無休で………。
はぁ……さらば、休日……………。
〈なんか……、いろいろ台無しだよ、マスター………〉
マオの呆れた声が、念話空間に響いた。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
一応、少年の事を知っていると、見え方が変わるように頑張ってみました……。
次回は、土曜日の19時ぐらいに投稿します。
お楽しみに!