第二十八話『俺の秘密』
どうも!
宣言通り、4話連続投稿出来ました!
やっと話が進みます。
是非最後まで読んでいってください!
「僕、聞きたい事あるんだけど…。おじさんは何か話したいことある?」
唐突に少年からそう聞かれる。
喋れるなら別にいいんだけどね!
「あるにはあるが、聞きたい事があるなら少年からでいいぞ」
「分かった。じゃあ聞きたいんだけど、おじさんが僕の投げたボールを一瞬止めたアレって、僕にも出来るの?」
少年が言っているのは、おそらく『魔風壁』の事だろう。
「あー…、多分出来るぞ。少年はホムンクルスだしな」
「それ、僕に教えてほしい」
少年が真剣な顔で言う。
「………」
いつもの俺なら誤魔化しただろう。
『魔式戦闘術』を人間相手に使えば、確実に殺してしまう。そんな危険な技を、少年のような子供に教える訳がない。
ただ今回は、何故かそうしてはいけない気がした。
「…いいぞ。ただし、教えるのは少年の投げたボールに使ったあの技だけだ。それでもいいか?」
それを聞いた少年顔が、笑顔に変わった。
「うん。それでいい。ありがとう!!」
「感謝はするな。いいか。少年なら理解してると思うが、おじさんが教えるのは、紛れもなく殺人術なんだから、絶対に悪用するなよ」
「分かってる。悪用はしない」
「ならよし。まず空気の操作からだなーーー」
ま、教えたとしても、出来るようになるのはずっと先だろうしな。
・・・・
・・・
・・
・
「ふぅ…、っは!!」
少年を中心に空気の壁が出現する。
その技は間違いなく『魔風壁』だ。
「まじか…」
実はまだ、一時間しか経っていない。
本当に、この短時間で身に付けたよ………。
俺、この技を身に付けるのに3日かかったのに…。
「おじさん!!今の出来てた!?」
「おう、出来てるぞ…。間違いなく『魔風壁』だ」
むぅ…、少年は天才だったのか………。
「本当!これで……」
「ん?これで?」
「ううん。何でもない」
少年の顔が、しまった…という顔になった。
「その言い方、絶対に何かあるだろ。誤魔化さずに言え。手遅れになってからじゃ遅いんだよ!」
少し威圧的なってしまったかもしれない。
しかし、そういうことで毎回後悔するんだ。少年には悪いが、しっかり聞かせてもらう。
「嫌だ!!おじさんには言いたくない!!!」
少年は声をあげ、初めて全身を使って気持ちを表現した。
そこに含まれる感情のほとんどは、拒絶。
「お、おぉ…」
そんな初めての状態に驚き、次の言葉が見つからない。
とりあえず「何で、嫌なんだ?」と質問すると、
「おじさんには関係無いから……」
と、俺と一切視線を合わせず、今度は弱々しく呟く。
俺には関係無い、か……。
確かに、おじさんには関係無いんだが、俺には関係ある事なんだ…少年……。
それなら、ここは魔王として、言わなきゃな。
「少年」
「……」
返事は無い。だが続ける。
こんな事には慣れているから。
「少年に、おじさんの秘密を教えてあげよう」
俺は少年の前に立ち、頭に手を置いた。すると、視線を上げた少年と目が合う。だが普段と違い、俺は屈んで視線の高さを合わせない。
「………秘密?」
涙目の少年は、俺と目が合うと、ようやく口を開いた。
「そうだ。おじさんが何者なのかを教えてやる。少年は誤解してそうだからな」
少年は無言のまま、俺の次の言葉を待っている。ただ、少しだけ、表情が明るくなった。
ようやく、ナビィさんが言ってた少年の誤解を解けると思う。
俺は、魔王として転生し、999回の世界攻略で身に付いたとっておきの邪悪な笑顔で言った。
「俺はな、『魔王』なんだ」
それを聞いた少年の驚いた顔は、とても愉快なものだった。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
なんとか今週中にここまでこれました。
今度こそ本当に、第一章の終わりまで後少しです。
次回は、来週の水曜日か、木曜日の19時に投稿します。
お楽しみに!