第四十四話『魔王との約束』
「だってお前達、正確には異世界人じゃなくて未来人だもん」
俺の言葉に戸惑いを隠せない3人だったが、構わず続ける。
「つまりお前達は、完全な異世界からじゃなくて、この世界から無数に枝分かれした世界、その中の1つの世界から来たって事だ」
この世界は、『白き神』と『黒き神』を軸に俺が創造した世界。
番外魔法により、元になった世界は、過去に分岐した世界もろとも消滅しているため、後天的に『始祖の世界』と同一のものになっている。
本来であれば、認識した世界が同じ世界の軸に存在するかは把握出来ないが、『始祖の世界』と同じく、分岐する世界の原点の世界であれば、その世界のルールが同じな為、ある程度把握する事が出来る。
今回は本当に分かりやすい。
世界によって、魂の形は様々だ。『火の玉』だったり、『石』だったりする。
因みに、この世界の魂の形は『本』。
そしてこいつら全員、魂の形が同じ『本』の形をとっている。
この世界に来る際、魂を神によって加工されていれば同じ形をしているのも頷けるが………、
「しかもお前達、元の世界で死んでないだろ?」
「………あぁ、突然の転移だったが、私達3人共死んではいない筈だ」
やはりな…。
死んでいないなら、あの空間には入れない。
魂の形は弄られていない。
雄鬼の言葉を聞き、俺はそう確信する。
「そこまで条件が揃っていれば、この世界からお前達の居た世界に帰る事は可能だ。
で、どうする?帰りたいか?」
「なら!すぐにでも頼む!!みんなが危ないんだ!!!」
俺の問いに、勢い良く反応したのは栄紅だ。
女神さんがいつも通りなら、最悪のタイミングでの転移だった筈。焦る気持ちも理解出来る。だが、
「落ち着け、すぐに帰せる訳じゃない。早くて2年、長ければ5年は掛かる」
いくら可能だと言っても、分岐出来る世界の数に限りは無い。
俺とマオ、ナビィさんの力を使っても、見つけ出すのにそのくらいの時間が掛かってしまう。
「それは……、そうだよな………」
「まぁ、だからって落ち込むな。お前達が転移した時点で、世界も分岐してる。その時点を見つければ、何年掛かろうが絶対に元の時間に帰せる」
「そうか、なら大丈夫だな……良かった………」
「泣くな栄紅、みっともない。
それで魔王、貴様が私達を元の時間に帰せるのは分かった。だがその代わりに、貴様は私達に何をさせるつもりだ?
それが悪逆な行為であれば、私は貴様の力を借りるつもりは無い」
涙を流す栄紅を横に、雄鬼の青い瞳が俺を睨み付ける。
さすが、戦隊ヒーローっぽい格好で戦うだけあるな。言動が格好いい。
「そんな怖い顔すんな。むしろお前達が好む仕事だよ」
「ほう、その仕事とは一体?」
「………」
「ーーー」
三者三様、それぞれが俺の答えを待ち、俺に視線を送っている。
そして俺は、笑顔で言った。
「赤子の世話。もう少ししたら、幼児の世話。
世界を特定する数年の間でお前達には、50人の子供達を頼みたい」
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
3人の異世界人もここで一区切り?
次回はもうみんな忘れてる彼のお話。
是非読んでいってください!