第四十三話『食後の話し合い』
「よし!腹ごしらえも済んだし、いろいろ話をしてこうか!」
いろいろ作り直したせいで遅れた俺の食事も終わり、俺はパン!と1拍、空になった器を消滅させる。
料理に使われている皿などの器は、全部俺が魔法で創造したものだ。だから、こんな風に一瞬で片付けられる。
やっぱりこれ楽だなぁ。
器が完全に消滅すると、波動竜はすぐに立ち上がり桃太郎を小脇に抱えた。
「ならば我は再び遊びに行って来る!共に行くぞ桃太郎!!!」
「はいはい、分かったから、そんなに魔力を垂れ流すんじゃない」
桃太郎も、どこか慣れた様子で抱えられている。
案外この二人、相性良いみたいだな。
「日が沈むくらいに帰ってくるんだぞ。じゃないと夕飯は無いからな!」
「むぅ、分かった。日が沈むくらいには帰ってくる」
「じゃあまたな、四季」
桃太郎がそう言って軽く手を振ると、波動竜はそのまま何処かへ転移した。
「んじゃ、気を取り直して、蒼依 。お前今日やる事があるから、少し休憩したら、昨日作った城外の畑に来てくれ」
「やる事…ですか?」
唐突な俺の言葉に、蒼依はすこし困惑した様子で聞き返した。
そりゃ、急に呼び出されたら困惑するよな。
「あぁ、強くなりたいだろ?魔力操作を教える」
「!僕、頑張ります!!」
俺がニヤリと笑って返すと、蒼依は元気よく返事をして、拳を握りしめた。
この世界に来る時、もしかしたらそれよりも前から、蒼依は強くなる為の何らかの努力をしている。
そうでなきゃ、初日から魔力をあそこまで使える訳がない。
魔力が無い平和な世界で生きてたなら、まず魔力操作技術を既にほとんど習得している。
蒼依の場合は、魔力操作の補助をしてくれる『特殊能力』という訳でも無いし……。はっきり言って、異常だ。
まだ子供なのに、いろいろ無理をしてきたんだろう………。
「私も一緒に行っても良いですか?」
そう声を掛けてきたのは鷺だ。
質問というか……、顔を見れば、私も行きますっていう風にしか聞こえない。
いや、全然良いんだけどね?
「もちろん良いぜ。むしろ一緒に来てくれると助かる」
鷺にも手伝ってもらうしな。
俺だけじゃ絶対無理だし………いや、今は出来るか…………。
「そうですか、なら私達は先に行きますね」
「おう、俺も少し話してから行くからから、すこし休憩してからでも良いぞ。"カムス"、二人を案内してやってくれ」
俺のそんな声に反応し、気配を隠していた『家守の妖精』、"カムス"が姿を表して一礼する。
それを見た蒼依も席を立ち、鷺の横に移動した。
うん、やっぱりすげぇな『家守の妖精』……、位置がまったくつかめなかった。
「じゃあ、先に行ってます!」
「………」
そうして、2人も食堂を後にした。
残ったのは、俺とナビィさん、そして新たに来た英紅、雄鬼、No.10の3人だけだ。
しばらく静寂が場を支配するが、それを切り裂くように、俺は口を開く。
「単刀直入に聞く、お前達、元の世界に帰りたいか?」
「……帰れる……のか?」
そう言葉を溢したのは雄鬼、他の2人も驚愕の表情を浮かべている。
「あり得ません。
ここは異世界、無数に存在する世界の中で、我々の居た世界と完全に同一の世界に帰すことなど不可能に近い。出来たとしても、我々の寿命ではそれまで生きていられない」
続けてNo.10が口を開き、俺の問いを否定する。
彼の言っている通り、完全に同一の世界に帰る事は通常、不可能に近い。
「そうだな…、普通なら無理だ。お前達が普通にこの世界に来たならな」
「それはどういう………」
困惑する英紅に、俺はニヤリと笑いかける。
雄鬼とNo.10もそんな俺を見つめている。
「だってお前達、正確には異世界人じゃなくて、未来人だもん」
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
やっと三人の情報がここまで出てきました。
もっと出てくるか、私も楽しみです。
さて、次回は魔王の発言の真相が分かります。
お楽しみに!!!