第三十八話『英雄をわらう者』
どうも!
1日遅らせましたが、文章量は2日分です。
今回は新キャラが出てきます!!
久しぶりの、ちゃんとしたバトル回でもあります。
是非最後まで読んでいってください!!!!
目を覚ましてすぐ、俺は強制停止状態になっていた『魔王の魔法回路』を起動した。
よし、良い感じだ。
これなら、すぐにでも大魔法を使えるだけの効果は望めそうだ。
〈マオ、今起きた。そっちはずっと起きてたんだろ…、状況は?〉
『魔王の魔法回路』が20%程起動したタイミングで、俺はマオにそんな風に質問を投げ掛けた。
マオは、俺が意識を失っていても、個として意識を持つ事が出来る術をいつの間にか覚えている。
きっと俺が寝ている間も、何かしらしていたのだろう。
〈ん~、あんまり良くないかな。
新しく3人の異世界人がこの世界に来たみたい〉
〈あ~、そういう事か……。どうりでナビィさんが居ないわけだ………〉
〈そうだね~〉
いや、でも普通は目を覚ましたら会いに来ない?この城の主だよ……?
ま、気にしても仕方ないか………。
〈だいたい分かった。なら"魔王の間"に転移だ。よろしく頼む〉
〈オッケ~〉
そんな、マオの軽い返事が聞こえたと同時に、俺は一瞬で転移した。
・
〈あのなぁ~マオ、速ければ良いって訳じゃねぇからな……。今の、魔方陣を破棄して魔法を使ったろ………〉
〈うぅ………〉
そう俺は念話をし、すぐ後ろの玉砕に座り込む。
あまりにも一瞬で転移した事に驚いたが、とりあえずそう言って、マオに釘をさしておく。
『詠唱破棄』や『術式破棄』なら構わないが、魔方陣の破棄だけはやってはいけない。
下手すれば、魔法は呪いとなり、術者を呪う。
それだけ危険な行為だ。
まぁ流石に言わなくても、マオだって理解はしているから、今回はこのぐらいしか言わないけどね。
〈まぁ良い、今はこっちに向かって来てる異世界人の方が最優先だ〉
〈うん、そうだよね!
因みにもう3人のうち2人が城にたどり着いてるけど、私と会話してて良いの?〉
一瞬で元気になったマオのそんな質問を聞き、俺は慌てて『魔力感知』を確認する。するとマオの言っている通り、既に城の入口まで異世界人が到達していた。
「お前、そういう事は先に言えよ………」
俺はその事実に少し驚き、思わずそう言葉をこぼした。
うわ、マジで来てるし………。
それに、『魔力感知』で感じるこの魔力の流れ、間違いなく『雷神脚』だよな。
俺とナビィさん以外の使い手を視るのは、転生881回目の世界以来だな…………、面倒だ。
なんて、考えてても無駄だな。
敵なら仕方ない、ただ殺すだけだ。出来れば味方で居てほしいけどね…。
ま、覚悟は決めた。
後悔するなよ…、人間。
俺は玉座から立ち上がり、少しだけ前に歩く。
"魔王の間"を静けさが支配している。
「ナビィ、聞こえていなくとも聴け、返事はいらない。1人で様子を視ている方の異世界人を任せる。一応殺さずに捕らえろ。こっちの2人は俺だけで平気だ」
歩きながら俺は、その場に居ないナビィに向けて、そう命令をした。
当然、聴こえるわけがない。
城にも気配が無い事は分かっていた。
しかし、
〈了解です、御主人様。
ですが今回の異世界人は、人間にしては強者です。御主人様を死なせる事が出来る者も居るようですので、十分にお気を付けください〉
まるでさっきまで、すぐ側に居たかの様に、ナビィは念話で俺に返事を返してきた。
そんな事、ナビィの前では関係無い。
たとえ聞こえていなくとも、ナビィは俺の言葉を理解し、普通に返事を返す。
いつもなら恐ろしいけど、こういう時は頼もしい。
「ん、了解」
俺も小さくそう返し、"魔王の間"の中心辺りに仁王立ちする。
「全力掛かってこい。じゃなきゃ、殺しちゃうからな」
静かな城に、そんな俺の呟きが響いた。
・・・
・・
・
それは突然だった。
魔法の炎が蛇の形をなし、俺に向かって突っ込んできた。
ほぉ…、無策で城に入る程、無能でもないか……。
この魔法は『炎蛇探索魔法:ファイアスネーク』。
火炎の蛇が無数に広がり、ダンジョンや洞窟を把握する事が出来る。かなり広範囲まで効果を及ぼす魔法であり、普通に上級魔法だ。
使い方としては、ダンジョンや敵地のマッピングだったり、目的地までの最短ルートを探る為に使われる。今回は後者だな。
避けても仕方ないし、これは受けるか。
俺はそう思い、マオに端的に念話を送る。
〈マオ、防げ〉
〈ラジャ~〉
マオがそう返すと、『詠唱破棄』と『術式破棄』が使われ、魔法が発動した。
瞬間、一色の円形の魔方陣が結界となり、俺の前に出現して、迫り来る炎を全て防いだ。
『一式結界』。
以前波動竜が放った、"時殺しの咆哮"を防ぐ時に使った『八式結界』の、部分結界だ。
その効果は、1属性に限り絶対的な耐性を持つ結界を出現させる事だ。
「よしナイスだ、マオ。魔法を防いだからすぐ来るぞ。魔力を練れ!こっからは俺がやる」
えへへ~、了解!という念話とともに、俺の魔力量が膨れ上がる。
―――――『魔王の魔法回路』及び『魔王眼』、起動率80%
こんなとこか……。
「っ!?」
それは一瞬の光。
いつもの俺なら、絶対に避けられなかっだろう雷速の攻撃。
俺は『魔王眼』で認識し、それを避ける。
「避けられたか……、ならこれでどうだ!『魔技:鳴神』!!」
俺の背後に一瞬で移動した男がそう言うと、『雷神脚』から放たれる凄まじい雷が、強力な蹴りと共に繰り出された。
「"魔技"まで使えるのか……厄介だな。『二式結界』」
俺がそう宣言すると、二重の円の結界が出現し、男の攻撃を受けた。
さて、この冒険者みたいな格好の男はどうやって………、
「今だ!!雄鬼!!!」
それを聞いて、俺も気付いた。
俺が背後に気をとられている間に、その男は、ほんの数メートル前で立っていた。
「分かっているとも。正義を執行する」
2人目の男は、そう答えると、俺に向かって真っ直ぐ走ってくる。
そして一瞬で俺の間合いに入り込み、拳を構えた。
―――気配が無かった。
―――魔力を感じない。
―――強者の放つ特有のオーラもない。
だが、真っ赤な格好をしたその英雄は、紛れもなく強者だ。
この男が、俺を死なすだけの実力を持った男って事か……。
なるほど、化け物だな。これで人間なんだから………。
どうする、この英雄の拳。
信じられないが、勇者の力を纏ってやがる…。
本当に死ぬぞ。
『八式結界』は無理だ。魔力が足らない。
兎に角、防がなきゃ死ぬだけだ。
「くそっ!!『多連:一式結界』!!!」
10枚程の円形の様々な色を持つそれぞれの結界を、その拳の行く先々に展開するが、劣化したガラスの様に簡単に砕かれていく。
効果無し…。
全属性攻撃かよ!?
背後ではまだ、男が『魔技:鳴神』を放っている。
正面からは防げない拳が迫っている。
『二式結界』を展開している所為で、身動きも取れない……。
駄目だ……、しくじった。
「ナ」
そう言い掛けたその時、突如として俺の目の前に、鉄の剣が突き刺さった。
それはちょうど、英雄の男の拳が突き出される場所で………。
キーンという金属音がその場に鳴り響き、そして、英雄の拳を止めた。
同時に背後に居た男も吹き飛び、俺は助かった。
いや、助けられた?
「………は?」
どう視ても、ただの鉄だった。
あの英雄の拳を防ぐ力は確実に無かった。
だが結果はどうだ。
剣は砕けず、拳を止めた。
「おやおやおや、そろそろ目覚めているだろうと、魔王様に会いに来てみれば。
有りもしない正義を掲げる英雄に殺されかけているではありませんか。
それは困ります、えぇ、困ります。貴女には生きていて貰わなければ、笑顔を守れない」
困惑している俺に、俺を助けたそいつは、ピエロは、今も突き刺さっている剣の上に現れ、そう言った。
「はは、助かったよ、ありがとな」
「いえいえ、礼などいりません。
僕はピエロ。今回は貴女が笑顔を守れるだけの事。
ここから先は、僕のショーでございます。魔王様は、あちらの玉座でお楽しみください」
感情を読み取れない不気味な声色でピエロはそう言うと、ナイフを手に出現させる。
そうして、まさしく英雄の実力を持った異世界人達を相手に、ピエロの戦いが始まった。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
出てきました!英雄!!
個人的にも気に入っているキャラなので、是非生き残ってほしい!!!!
ピエロの過去を知っていると、より面白いですね。
次回は、土曜日の19時以降に投稿します。
お楽しみに!!