第三十二話『とっておきの笑い話 2 』
どうも!
昨日より文章増やしたら、日付が変わってしまった。
今回は、もう1人の異世界人が初登場。
是非最後まで読んでいってください!!
時は、俺が城に転移してすぐの時に遡る。
慌てて転移して、城にはたどり着いたが、部屋には誰も居なかった。
「くそ!ナビィさんこの部屋に居るんじゃなかった!?やばい!やばい!やばい!やばい!桃太郎も早くしろ!!!」
でも俺、座標はマオにお願いしなかったっけ?
〈どういう事だ、マオ!!居ないぞ!!〉
〈知らないよ!!私はちゃんと座標指定したし!
マスターが適当に『術式破棄』なんて使うから失敗したんでしょ!!!〉
〈マジかよ………〉
失敗した、失敗した、失敗した。
このタイミングで普通『転移魔法』を失敗するかよ……。
早くナビィさんの所へ行かないと……。
「な、ちょっと待て!急にどうしたんだ?」
俺が突如発動した転移魔法に、戸惑いながら異世界人を担ぐ桃太郎が、そう言って俺に聞いてきた。
「説明してる暇はねぇ!早くしないと俺が殺される!!」
桃太郎には悪いが、俺の命が掛かってるんだ。
一刻も早くナビィさんに会わなければ……。
そんな事を考えると、背後から声が掛けられる。
「あら、こんな所に居たんですね。御愁傷様」
と、一言。
見なくても分かる怒気を含んだ魔力を放ちながら、ナビィさんが現れた。
いつも最悪なタイミングで来るなぁ……。
などと思っていたのだが、いつもと違い、まだ身体が五体満足だ。
知らぬ間に皮膚が剥がされたり、ハンバーグにされたり、激痛が無い。
一体何故?
そう思って、ナビィさんの居る背後に振り向くと、その理由が分かった。
「ん?ナビィさん、隣に居るのって新しく来た異世界人か?」
道化師の様な格好をしているが、身に付けている仮面は道化師のそれではなく。少しカラフルで不気味な、笑顔の仮面だった。
うわー、怖っ!
俺が勇者なら、完全に敵で出てきそうな見た目だな…。
「ええ、そうですよ。彼はつい先程来た異世界人です」
ナビィさんはそう言って、目を瞑って顔を反らした。
え、それだけ?説明無し?
名前とかも分からないの?
などと考えている間も時間は進み、その場に変な間が生まれた。
正直、気は進まないが、俺の眼で視るか……。
そう俺が『魔王眼』を起動しようとした瞬間。
「おや、おやおや?この間はなんですか?」
まるで狙ったかのような気持ち悪いタイミングで、その道化師の男が口を開いた。
本当に狙ったのか……?
ただの人間が、そんな事出来るのか?
まぁ話してくれるなら、それで良い。
「説明が欲しいんだよ。俺はお前が誰だか知らないからな」
「あ~なるほど、ではその御厚意甘えて、自己紹介をさせていただきます。よろしいですか?」
「そんな事に許可はいらねぇよ。さっさとしろ」
俺がそう言うと、道化師の男は俺の前に現れ、深くお辞儀をして、喋り始めた。
「はい。お初にお目にかかります、魔王様。
僕はピエロ、名乗る名前はございません。笑顔を作り笑顔を守る、ただのピエロでございます。
特技と言ってはなんですが、手品は得意です」
ピエロはそう言い終わると、何も持っていなかった手のひらに、ナイフを5本出してみせた。
「へぇ……、手品は得意、ね………」
どう視ても種が分からないし、魔法でもない。
特殊能力か……、にしても、何でそれを使いこなせてるんだ?
この男はさっさ、この世界に来たばかりの異世界人だよな。桃太郎の様に元の世界が戦いに満ちていた訳でもなさそうだ。
それに、俺が魔王だなんて、話した覚えが無いんだがな……。
明らかに異常。
この人間は普通じゃない。
「えぇ、種はございますが、仕掛けはございません」
「そうかよ、じゃあピエロ。お前は今日から、俺達の仲間って事で良いのか?」
一番重要なのはそこだ。
普通かどうかなんて、この世界じゃあまり珍しくもない。寧ろ普通の人間の方が珍しいくらいだ。
この男が敵かどうか。
赤ん坊を育てる上で、まだ敵は早すぎる。
「いいえ、僕はピエロでございます。笑顔を奪う魔王の仲間にはなれません」
「ほう。なら敵になると、そういう意味か?」
情報が少ない。
それにこの人間、過去がまったく視えない。
正確には視えてはいるが、どれもでたらめな過去ばかり、化かされている。
「それも違います。今のところ、貴女は笑顔を作っているようですので、敵ではありません。
いつか、貴女が笑顔を壊す側になった時、僕は敵になるでしょう。その時まで、ともに笑顔を作りましょう」
「あぁ、その時までよろしくな。ピエロ」
俺はそう言いながら手を差し出す。
「えぇ、よろしくお願いします」
ピエロもその手を掴み、顔は見えないが、お互いに笑いながら握手をした。
謎の男だが、赤ん坊に危害を加える様な奴ではないようだな…。
じゃなぎゃ、俺が威圧しながら差し出した手を掴もうとは思わないよな……。
「話は終わりましたか?御主人様」
握手が終わると、ナビィさんは不機嫌に俺を見ながら言った。
「まぁ、一応終わったよ。こっちも異世界人が居る。部屋は用意してるよな?」
「当たり前です。アメミ、カムス!2人を部屋へ案内してください」
ナビィさんがそう言うとほぼ同時に、2人の家守の妖精が姿を現した。
もう、気配を消す技術は俺を越えてるようだ……。
桃太郎も驚きながら異世界人を渡している。
・・
・
「さて、邪魔者も居なくなりましたし。話してくれるんですよね?
私のお願いを無視した理由を」
すっかり忘れていた笑えない事実を、ナビィさんは笑顔で掘り返した。
「お?どうしたのだ四季。帰ってきておったのだな」
そう言って、俺が押し潰されそうな圧力に耐えているところへ、まったく空気を読まずに波動竜が部屋に入ってきた。
「おぉ!波動竜!!」
ナイスタイミングだ。
よし、これならなんとかなるかも……。
「波動竜様、分かって、いますよね?」
「う、うむ。分かっておるわ。それじゃあの四季、我は面倒だ、あっちで遊んでくるぞ!」
ナビィさんが意味深に言った言葉を聞いた波動竜は、何か焦るように、慌てて部屋を出ていった。
あいつ、ナビィさんに弱み握られてるのかよ……。
どうするか悩んでいると、部屋の入口付近に蒼依と鷺が居るのが分かった。
なので、助けてくれと視線を送ると………、
「………すいません」
そう静かに呟いて、2人は逃げていった。
当たり前だよね。ナビィさん強いもんね…。
てか、当然の様にマオは狸寝入りしてるな、念話が返ってこない…。
ならせめて、桃太郎を犠牲に………て、居ねぇ!?。
まさか、あの一瞬の間に、波動竜が連れてったのか?
それなら俺も連れてけよ………。
そんな地獄の様な空間がすぐに出来上がり、俺は静かに土下座をする。
「それで、何か言いたい事はありますか?」
ここからは、皆の知っている通りだ。
文字通り俺は押し潰され、意識を失った。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
やっと出てきました。
私が一番好きなキャラのピエロ。
だからといって優遇はしませんが……、彼の過去をようやく書ける。
それとすいません。
本来は明日も投稿するのですが、いろいろ私の予定が重なってしまって、おそらく投稿は出来ないと思います。
その為、次回は来週の土曜日に投稿します。
ピエロの過去、お楽しみに!!