第二十八話『名無しの鬼』
どうも!
遅れてすみません。金曜日分の投稿です。
今回、やっと新キャラ出てきます。
是非最後まで読んでいってください!!
「もう、落ち着いたか?」
田植えも完了して、俺は後ろで地面に座っていた桃太郎にそう言った。
「あぁ、落ち着いたよ。少しだけ、自分の力について考えるのが楽になった。ありがとう」
そう俺の言葉に返し、立ち上がった桃太郎は微笑む。
決して英雄らしくない、普通の青年の様な笑顔を浮かべながら。
「ふっ、俺は魔王でお前は英雄。本来は敵同士だ。感謝はするな…」
今後の世界でも、魔王が桃太郎の味方である可能性の方が低い。俺という特例を普通だとは思ってほしくない。
「だが、感謝すべき事だ。四季がなんと言おうと、俺は感謝するよ」
そんな事を考えている俺に、桃太郎は迷いなく答えた。
「……はぁ、まぁ良いか。その代わり、今度はお前の番だからな」
「??あぁ、そうさせてもらう」
桃太郎は一瞬何の事か分からず首をかしげたが、その意味を理解して、笑顔で了承する。
ま、俺の言葉にその顔で反論出来るなら、心配はいらないか……。
「よし!とりあえず今日は畑も田んぼも終わり。後は拾って帰るだけだ」
「拾って…?まさか、もう別の異世界人が……?」
「そのまさかだ。近くに居るみたいだからな、拾って帰る。そこでお前に手伝って欲しいんだ」
蒼依と鷺が目覚めてまだ3日、この世界が出来てからは、17日目だ。
いくら総人口が少ないからって、あの女神さん、頑張り過ぎなんだよなぁ……。
今回は桃太郎が居て良かったぁ…。
「何か…、あまり好ましくない事をさせられそうだな………」
「それはお前次第さ。上手くやれよ」
そう言って、俺はニヤリと笑った。
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「ここが……あの女神が言っていた、異世界……なのか?」
見渡す限り、人が見当たらない…。
ん?あれは……、城か?
視線の先にある黒色を中心とした大きな建物は、魔王城の様な不気味さを放っている。
それに………。
「俺は……、誰だ………?」
あの女神と話しているときは、絶対に自分の名前を覚えていた。
しかも、あれが魔王城の様だと思うのに、何故そう思ったのか考えても、理由が分からない……。
俺の記憶が……失くなっている、のか………?
兎に角!
今は安全の確保だ。国は無いみたいだし…、あの城に行くしかない………。
俺はそう思い、城に向かって歩き始めた。
・・
・
城まで後2~3キロ程だろうか。
進む先に、黒髪の女の人が歩いているのが見えた。
良かった……、誰か居る………。
――――――殺せ。
は?何だ?急に頭に………。
そう考えた瞬間だった。
――――――殺せ、殺せ、殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ……
頭痛とともに、頭の中にその言葉が流れ続ける。
「くそ…、なんだってんだ……。殺す。違う!俺はそんな事、考えてない……!」
痛い、苦しい……。
何だ……これ………。
あまりの苦痛に、頭を抑えながら地面にしゃがみこむ。
しかしどれだけ時間が経っても、それが治まってはくれるわけではなかった。
絶え間なく、"殺せ"という言葉が脳内に響き続ける。
「はぁはぁはぁ…、殺さな…い、殺さな……、殺……殺、す……、殺す」
俺がそう考えると、痛みはひき、楽になった。
そうか…、あの女を殺そうとすれば、この苦しみに耐えなくていいんだ。
――――――あの女を殺す。
そう覚悟が決まると、何故か特殊能力の使い方と、身体の使い方が分かる様になった。
同時に非現実な速度で移動し、俺はほんの数秒で女の真後ろに立った。
そこから、魔力で強化した手で心臓を貫く。
それで、この女を殺せる。
そう考え、勢いよく腕を突きだした。
が、その腕は何も貫かなかった。
視界から女の姿が消えたのである。
「!?どこに……」
「下だ」
聞こえたのは女ではなく男の声。
あわてて視線を移すと、先ほどまでの女の姿があった。
つまり……。
「な、男!?」
「煩い。それ以上言うな。
俺の性別は関係ない。お前の殺意は本物だった。しばらく眠ってもらう」
かなり不機嫌な男は、そう言うと俺の懐に踏み込み、次の瞬間。
俺は回転し、地面に叩きつけられた。
そして俺は意識を失った。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
やっと新キャラです。
何故この異世界人は、こんな事になったのか?
理由は次回判明します。多分。
次回は、日付的には今日の19時以降に投稿します。
お楽しみに!!