表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/138

98話 いつでもどこでも特訓!

「つまり、ここの式を組み込むことによって、魔力の伝達効率が2倍となります。これが身体能力強化魔法の基礎構造なので……」


 壇上でローラ先生が魔法についての解説をしている。

 そんな講義を聞きながら、生徒のみんなは真剣な顔で黒板を見たり、ノートに式を書き写したりしている。


 俺はというと……


「うーん」


 先生の授業を受けて、難しい顔をしていた。


 こんなことを言うのはなんだけど……

 魔法が衰退しているせいで、授業のレベルが低く感じた。


 今、ローラ先生が魔法の式を書いているが……

 あれは色々と間違っている。

 ところどころ、歪なところがあり、本来の魔法の効果を妨げてしまっている。

 正しい式ならば、魔力の伝達効率は5倍になるはずだ。


 ただ、ローラ先生の授業が悪いということはない。

 やや足りないところはあるものの……

 基礎はしっかりとしている。

 真面目に授業を受けて、日々の研鑽を忘れなければ一人前の魔法使いになれるだろう。


 でも、俺達が目指すところはもっと上だ。

 魔神と戦えるだけの力を得るところだ。


「……なにか方法を考えないといけないな」


 みんなのことはきちんと面倒をみるものの……

 俺自身の面倒もみないといけない。


 さらに強くなるためにはどうすればいいか?

 俺は授業中、あれこれと考えて……

 その後、ローラ先生に授業に集中しなさいと怒られてしまうのだった。




――――――――――




 俺自身はどうやって強くなるか?

 その答えはまだ見つかっていないものの……


 それはそれ。

 これはこれ。


 とりあえず、今はみんなに特訓をつけないといけない。


「というわけで、今日から本格的に特訓をしていこうと思う」


 一日の授業が始まる前にみんなを集めた。

 ただ、みんな不思議そうな顔をしていた。


「あのー……お兄ちゃん? もしかして、これから特訓を?」

「ああ、そうなるかな」

「でも、この後はすぐに授業ですよ? もしかして、授業をサボっちゃうんですか?」

「そんなことはしないさ。そういうのは不良生徒のすることだ。それに、授業は授業で得られるものがあるからな」


 今のみんなにとって、言い方は悪いかもしれないが、学院の授業はちょうどいいレベルの内容だ。

 全科目をマスターすることで、基礎をしっかりと学ぶことができるだろう。


 まずは授業をきちんと受けてもらうことで基礎を学んで……

 その後、今の時代にはない授業……つまり、俺のオリジナルの講義を受けてもらい、一段階、上に進んでもらう。

 それが今の計画だ。


 まずはそのために、基礎魔力の向上を図らなければいけない。

 そのための訓練をこれからする……というわけだ。


 ……そんな説明をみんなにした。


「基礎魔力の向上……なるほど、話は理解できたわ。でも、軽く言うけど、簡単にできるものなのかしら?」

「アリーシャの疑問はもっともだな。簡単にできないけど、簡単にできる」

「えっと……禅問答?」

「まあ、こればかりは実際に体験してもらうしかないか。じゃあ……シャルロッテ。ちょっとこっちに来てくれないか?」

「ええ、いいわよ」


 シャルロッテが俺の前に立つ。

 これからなにが始まるのかと、ちょっとわくわくした様子だった。


「これからシャルロッテにとある魔法……というか、呪いをかけるから」

「呪い!?」


 突然飛び出した不吉な言葉に、シャルロッテが驚いた。

 他のみんなも驚いていた。


「ちょっと、レン! あんた、あたしに恨みでもあるわけ?」

「うーん、それなりに」

「あるの!?」

「冗談だ。特にそんなものはないよ」

「なら、なんで呪いをかけられなくちゃいけないのよ」

「それこそが特訓になるんだよ」


 これからシャルロッテにかける呪いは、『魔力減衰』という、常に魔力を消費し続けるというものだ。

 この呪い、その効力だけを聞くと厄介なものとしか思えないのだけど……

 実は、意外な副次効果がある。


 魔力を消費し続けるということは、常に魔法を使い続けているのと同じようなもの。

 筋力トレーニングでいうと、体を動かしっぱなしにしているのと同じだ。


 最初は魔力が枯渇してしまい、辛い思いをすることになるだろうけど……

 それでも何日も続けていると、体が呪いに対抗しようと膨大な魔力を生成しはじめる。


「なるほど……そうやって基礎魔力の向上を試みる、っていうわけね」


 俺の説明を聞いたシャルロッテは納得してくれたらしく、落ち着いてくれた。


「この呪いに特に名前はないんだけど……まあ、名付けるとしたら、魔力養成ギプスってところかな」

「名前がダサいわ」

「センスないわね」

「お兄ちゃん、それはどうかと思います……」


 シャルロッテだけではなくて、アリーシャとエリゼからも口撃されてしまう。


 ショックだった。


「あ、あのあの……私はその、とてもいい名前だと……思いますよ?」

「フィア……口ごもりながらフォローされても効果ないよ……」

「ぷくくくっ……あの賢者が……くくくっ」


 メルは一人、楽しそうに笑っていた。

 覚えていろよ、こんちくしょう。


「それじゃあ、順番に魔法をかけていくからな」


 ちなみに、この呪いは闇属性に属している。

 エル師匠のおかげで使えるようになった魔法だ。


 エル師匠……どうしてるかなあ?

 元気でやっているかなあ?


 ふとエル師匠のことを考えて懐かしくなり、会いたいという思いが増した。


「お兄ちゃん? どうしたんですか?」

「……いや、なんでもない。それじゃあ、魔法をかけるぞ」


 俺は郷愁にも似た思いを振り払い、みんなに魔法をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ お知らせ ◆

ビーストテイマーのスピンオフを書いてみました。
【勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強の少女達ともふもふライフを送る】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ